GHQの思想的犯罪(十四)

◆奪われた歴史

 まあこういう研究をしてきたわけですが、それを通してしみじみ感じたことがひとつあります。戦意形成期の大事なこれらの本だけではなく、数多くの記録、文書類のほとんどすべてアメリカに持ち運び去られて、それっきりとなっているということです。なくなってはいないですよ。だから日本が何故戦争に立ち上がらざるをえなかったのか、ということを本格的に研究しようとするにはアメリカに行かなきゃ駄目だということになる。

 一部はすでに防衛省に戻っています。これもまあ、戻していいものだけ戻しているのでしょうけどね(笑)。

 つまり、私たちの戦意の形成の歴史というのは、占領軍にいまだに隠され、われわれは手足を縛られている。そうすると戦意形成を素直な目で理解するということはもうできなくなっているじゃないか。そういうことですよ。だからアメリカの編み出した歴史物語を頭に擦り込まれて、そこからもう脱け出せないでいるわけです。私のこの本を読んでみてください。驚くほどあっと思いますよ。

 例えば、これはおもしろいと言われたのでちょっと言っておきますが、戦争文化叢書という本がありまして、昭和14年から16年の間にかけて出た35冊のシリーズものです。

 本の題名を読んでみますと、『対英戦と被圧迫民族の解放』、『東亜とイギリス』、『東亜共同体論を撃つ』、『日英支那戦争』、『日本世界戦争』、『日本戦争経済史論』、『ファシズム教育』、『日本戦争貨幣論』、『日本史代の建設』、『ルーデンドルフの国家総力戦』、『世界航空文化闘争』云々と、そして『インド民族論』とかそういう本です。ほとんど全部イギリスですよ。アメリカは一冊しかない。いかに当時の日本人が意識していたのはイギリスかということです。イギリスが当面の敵だった。今じゃ理解できないでしょうけども、アメリカじゃなかったんです。

日本保守主義研究会7月講演会記録より

つづく

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