坦々塾(第十四回)報告(三)

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つづきにチャンネル桜出演のお知らせがあります。

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ゲストエッセイ 
浅野 正美
坦々塾会員

 鈴木敏明氏が問題提起し、西尾先生がそれを発展され、石平先生が中国の危機を分析した今回の坦々塾勉強会は、随所に新しい視点が盛り込まれていて、新鮮な感銘を受けた。特に、従来日本人の美質と思われてきた国民性が国際社会では通用せず、かえって文化摩擦を生むという西尾先生の指摘には深く考えさせられた。

  国体の本義第一部にある・肇国・聖徳・臣節・和と「まこと」というキーワードの中では、最後の和とまことこそが問題であるとされた。明き浄き直きこころ(あけき、きよき、なおき)、清明心といった神道の奥義にも通ずる思想であるが、こういった認識は日本人通しには通用しても、国際社会を相手にするときには、だまされやすさに通ずると説く。講座のタイトル「複眼の必要 日本人への絶望を踏まえて」の意味がここにあったことが理解できた。

 近頃の我が国では、過去の道徳をほめ称える風潮が盛んになってきた。また、品格、清貧、武士道、世直しといった言葉が飛び交い、政治家も美しい国、友愛といった空疎な言葉を口にする。過去への郷愁であり、日本人論好きにつながる、日本人とは何かという思いが基本にあるという。西欧の個人主義は、個人と個人の闘争(ホッブス)であり、神と自然と人が一体となって和を成す日本の思想とは相容れない。和とまこと、こそ現代日本につながる概念であり、日本人の弱さになっている。

 鈴木氏は、日本国民には変節の遺伝子があると指摘し、信念を通す人に冷たいと喝破した。日本人の極端から極端に振れる国民性について、西尾先生は、ご自身の体験として、昭和24年6月28日の日記を披露された。その日、舞鶴港にはシベリア抑留引き揚げ船の第二弾、第一船が入港したが、彼ら200人は今までの帰還者とは様子が違い、お互いを同志○○と呼び合い、明らかに人間改造、思想改造されていた。日記には、当時西尾先生が疑問に感じたことが率直に綴られている。13歳の少年の日記とは思えない、深い人間洞察力に満ちた文章である。先生にとっては、人間があのように改造されてしまうことが信じられなかった。とても不思議だった。

 当時の日本は左翼偏重時代、インテリがおかしい時代ではあったが、インテリはそうした事実に不思議を持たなかった。調査もしなかった。ラーゲリーでは日本人が日本人を苦しめた。反ソではなく、反日本人将校であった。先生はラーゲリーに戦後日本があるという。大勢に迎合し、異端を排除し、自らは考えない国民性だろうか。鈴木氏はまた、敗戦直後の昭和20年9月に発行された「日米英会話辞典」がわずか数ヶ月で360万部という大ベストセラーとなった事実をあげて、進駐軍に媚び、迎合する日本人の性向を披露された。西尾先生もまた、戦後すぐ日本人がアメリカになびいたのは、謎だといわれた。当時ソ連、アメリカという権力に、こうも簡単になびいてしまった日本人が、次は中国になびかないとどうしていえようか。

 米中接近にすり寄るために、自民党は靖國も拉致も放棄する裏切りの挙に出た。労組幹部を取締役に取り込んで、労組を弱体化するように、安倍晋三という保守の星を使って保守をつぶす行動に出た。田母神前空幕長否定は、こういった流れにつながっているのではないか。NHK幹部と自民党がつながっているのであれば、「JAPANデビュー」の真の敵は自民党である。考えたくもないシナリオだが、思考停止が一番いけないことであろう。戦後の日本は、いつかいつかといいながら、何もしないままに過ごして、どんどん悪くなるという道を歩んできたと、西尾先生はいう。今また、地殻変動のような世界再編の可能性が取りざたされているこの時期に、同じ轍を踏んではならないと思う。

 石平先生は、中国共産党の至上命題である経済成長率8%死守のからくりと、それが崩壊したときの新たな危険性について豊富な具体例と共に示された。軍、警察、秘密警察、マスコミを権力下に治め、議会も世論もない中国にあって、経済は無情である。共産党の命令を聞かない。これは中国にとって大きな地雷だという。

 ここでも最悪のシナリオが示された。かつて鄧小平が、天安門事件のもみ消しを計って、国民に金儲けに走ろうと号令をかけた「南巡講話」。以来中国は驚異的な経済成長を遂げたが、ただし永遠には続かない。また、成長にともなう腐敗や、貧富の格差の拡大といったひずみやほころびも目立って来た。格差問題が、社会的不安要素となったとき、共産党権力は権力を死守するために、毛沢東原理主義+ナショナリズムで軍国主義化する危険がある。共産党とは権力を守るための執念であり、そのためには何でもするという。現在の中国には、毛沢東時代を懐かしがる風潮があるという。皆が貧しかったが、ユートピアを作ろうとした時代という認識が広まり、毛沢東は外国にも強く主張した偉人として復活する兆しがあるという。

 中国が抱える矛盾が爆発するのを防ぐためには、反日愛国心に求心力を求め、軍事的暴発をする危険性が指摘された。それを防ぐためにも、日本は毅然として国益を守る態度を保持する必要があると強調する。

 また、天安門の時代になくて現在にあるものは、インターネットである。このツールは中国においても極めて有効に機能するであろうといわれた。我が国でも映画「三丁目の夕日」をはじめ、過去を美化する風潮がある。現実のあの時代は、政治的に左右が激しく対立し、公害が国民を苦しめていた時代であった。奇しくも日中が同時に、半世紀以上前の自国の佇まいに郷愁を持つということに何らかの共通点があるのであろうか。

 アメリカはもはや頼りにならない。

         文:責浅野正美

お知らせ

日本文化チャンネル桜出演

タイトル:「闘論!倒論!討論!2009 日本よ、今…」

テーマ:「漂流日本、どこへ行く!?」

放送予定日:平成21年6月26日(金曜日)
        20:00~23:00
        日本文化チャンネル桜(スカパー!219Ch)
        インターネット放送So‐TV(http://www.so-tv.jp/main/top.do)

パネリスト:(50音順敬称略)
       鈴木邦子(外交・安全保障研究家)
       塚本三朗(元衆議院議員・元民社党委員長)
       西尾幹二(評論家)
       西村幸祐(評論家・ジャーナリスト)
       花岡信昭(ジャーナリスト・産経新聞客員編集委員)
       水間政憲(ジャーナリスト)
       三輪和雄(日本世論の会代表・正論の会会長)

司 会:  水島 総(日本文化チャンネル桜 代表)

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