宮崎正弘氏の書評
最新刊の拙著『日本をここまで壊したのは誰か』(草思社)について、宮崎正弘さんがメルマガで次の書評を寄せて下さいました。謝して掲示させていたゞきます。
西尾幹二『日本をここまで壊したのは誰か』(草思社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@『犯人』を逐一列挙せずとも西尾ファンなら明瞭である。それにしても日本をひどく劣化させ、国家の体をなさないほどに破壊し尽くした政治家とは福田赳夫、中曽根康弘、後藤田正晴、宮沢喜一、河野洋平、小泉純一郎、鳩山由紀夫、小沢一郎ら。
財界人は奥田トヨタ元会長にして経団連会長、御手洗富士夫前会長、小林陽太郎に北城格太郎もリストにのぼる。
いずれもささいな目先の利益のためには北京への土下座も辞さない、こざかしい商人(あきんど)らである。かれらのうちの何人かは「商売の邪魔になるから靖国神社へ行くな」と首相に進言したりもした。
平林たい子は生前に中曽根康弘を評して「鉋屑(かんなくず)より軽い」と言ったか「鉋屑ほど軽い」と言ったか。ただしくは「鉋屑のようにぺらぺら燃える」と言ったらしい。
青年将校として青雲の志を抱いて政治家となり「改憲」に政治生命をかけると放言した中曽根は、やがて左翼とくんで構造改革なる日本破壊をやってのけた。
ともかく中曽根大勲位は中国に巧妙に脅されるや、ある日突然、靖国神社参拝をやめた元凶であり、その権力中枢にいた後藤田は日本破壊謀略まがいの政策を実践し、外国を裨益させた極左官僚である。後藤田を『カミソリ』とかなんとか、ほめるやすっぽい評論家もいるが、いい加減にしろ、と怒鳴りたくなる。保守陣営がともすれば誤解しがちな、高い中曽根評価を根底からひっくりかえす著者の抜刀した白刃は、河野洋平などの雑魚はともかくとして、やはり保守陣営に人気が高い小泉政治をばっさりと切って捨てる。
西尾氏は小泉純一郎を「狂人宰相」と比喩した。保守期待の安倍晋三への評価も低かった。
それぞれ具体的にどこが、どうおかしいかは本書に当たっていただくにして、本欄では次の紹介をしておきたい。
「私が小泉政権時代に一番おそれていたのは、日本人の金を積んで北朝鮮の開国に突っ走るのではないかということでした。核開発の可能性を捨てない国家に巨額援助をするのではないかということでした。彼は皇室の祭祀も『行政改革』の対象と考えていた節があり、女系天皇にも平然と道を開こうとした」、まるで「デタラメな人物でした。それが強権を発動することができた。同じことがいま、小沢を中心におこっているのです」(本書97p)。
「(ながい歴史を通じて培われてきた日本人の)アイデンティティが徐々に徐々に無自覚の形で失われてきている。現在の権力喪失状態、さきほどいった砂の真ん中から穴があくような、何となく活性化しない無気力状態になった。物を考えなくなってしまった。戦おうとしなくなった。自分たちのアイデンティティを本当の意味で政治権力まで高めなければ自分たちが守れなくなる、自分を守れなくなるという自覚がなくなってきた」(226p)。
したがって、現代日本は「清朝末期」のごとし、と西尾氏は比喩する。
そうなった時限爆弾はいつ仕掛けられたか。それはGHQが置きみやげの焚書、占領政策の洗脳により、日本人が日本人としてのアイデンティティが徐々に徐々に喪失したのである、と分析されるのである。
我々戦中派は、戦後の日本国を覆った赤旋風が何だったのか、ずっと謎でした。何だったのかーー同輩と会えばその話でした。食べて行けるのならば、いや、それどころか好景気ならばいいではないかーーと放置された。そして今。そうか、そうだったのかーーー原爆投下とB29,グラマン米戦闘機の本土総爆撃の実態と、諸々の回顧録を知って力を失う。
平和憲法の「人権の尊重、自由平等」ハ素晴らしいが、実態はそう言う事だったのか。治安維持法がなくなってドドと刑務所からでてきた思想犯の、日本国破壊活動。元凶の在処に今気づき、そうか、そうか、戦後の芥川賞が「パルタイ」岩橋邦枝だった事も思いだす。全学連、赤旗の波。日比谷公園はインターだった。60年安保、70年安保、その次が「戦後は終わった」だった。我々庶民の目に姿形は見えずとも「空気の館」の地下では不確実な闇の巨大な暴力に振り回されていたのだった事に今、気づく。それは決して過去ではないと言う事。しっかりしなくては。