中国に反発するのはいい。しかしそれだけでは不十分である。中国がなぜここへきて図に乗っているかは経済上昇であり、経済上昇を可能にしたのはアメリカの製造業の没落であり、ベルリンの壁の崩壊以後の西側における手放しの自由経済の行き過ぎ、自己規律の喪失が引き起こしたドル札の濫発である。
アメリカは外国から商品を輸入し、カネが不足したらまた札を増刷して輸入するというあまりにおいしすぎる基軸通貨国特権に甘えすぎでいた。ソ連の崩壊によって、マルクス主義国家の計画経済という好敵手を失ったがために自分一国の「自由」に溺れた結果だ(小泉政権の「改革」はそのまねである)。
過剰発行されたドルは世界であふれかえり、中国やインドはそのカネで経済成長をとげたが、中国からアメリカへ輸出する企業の多くはアメリカの企業であって、国内製造業がもう成り立たないアメリカは三十分の一の労働コストで生産できる中国へ工場を移転して、自らはカネがカネを増殖する金融資本主義に走った。その揚句、サブプライムローン問題というアメリカ発の明らかな「金融詐欺」事件を引き起こし、ドルの基軸通貨体制さえ自ら危うくしているのが今の段階である。
この儘いけば当然ながら中国の輸出産業も成り立たなくなるので上海株は暴落しているが、中国はアメリカから独立して経済上昇しつづける可能性が果たしてどこまであるのか、アメリカも中国の労働力への魅力を捨てきれる自信を有しているのか、2008年前半は両国が丁度その瀬戸際に立たされている局面にあるといっていい。
(「修親」2008.5月号より)
つづく