小泉政変と岩手の旅

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 8月22日-23日は忙中に閑あり、少し寛いだ、いい思いをさせてもらった。岩手県花巻温泉の随一の高級旅館「佳松園」で一泊した。

 松の林に囲まれた館の位置がいい。お湯も清潔で、広々としていて、露天の眺めもいい。車を運転してくれた旅館の従業員が「私たちは時間外でも入浴禁止なんです」と言っていた。

 朝食も食材にひとつひとつきめ細かな配慮があり、京都その他の一流ホテルの朝食よりずっと上等だと思った。

 夜は中庭に篝火(かがりび)がたかれ、建物と建物の間に岩清水が湧き出ていた。平成12年の開店で、まだ桧の香も漂っている。

 それで講演は「森林と岩清水の文明」(『国民の歴史』)から始めた。東北は縄文の中心地である。そのあと乞われていたテーマに従い、領土、皇位継承、歴史教科書の順に語った。岩手県神社総代連合会定期大会である。

 午前中は、雛壇に県内の各党候補者が坐っていたそうである。私は12時半からの講演で、郵政民営化のテーマはあえて口にしなかった。ここは小沢民主党の地盤である。郵政反対票を投じた自民党議員は岩手県にはいない。しかし賛成派はいる。集った1000人から成る神社の総代さんの中には特定郵便局長もいれば、小泉シンパもいる。だから私は講演では一言半句も郵政については言及しなかった。

 新幹線は東京まで3時間半である。東京駅で『夕刊フジ』を買った。期せずして小沢一郎氏の顔写真が大きく出ていて、造反組の自民党議員について、普通いわれているのとは違った意味の厳しいことばを語っていた。私は共感した。

 

「首相の術中にはまっている。彼らは『(独裁強権の)小泉が牛耳る自民党ではダメだ』と言うのだから、自民党をぶっ壊すぐらい全面対決しなければ話にならない。それなのに『自分たちこそ自民党だ』なんて言っている。国民の目には奇異に映るし、理解されない」
――無所属で戦う造反組は「いつか復党する」と考えている。
 「復党なんか無理だ。刺客候補が比例重複で当選するんだから、いくら無所属で勝っても、その選挙区には自民党議員がいる。総裁が代わっても、現実問題として復党させられない。権力から離れた元自民党議員なんて誰も応援しなくなる。ピントがずれている。」
――彼らは腹がくくれていない。
 「郵政法案を否決した時点で造反組が総結集していたら、大変な新党になっていた。小泉マジックにも絶対負けなかった。反対する以上は徹底して戦わないとダメだ。子供のママゴトじゃないんだから。そこをまとめ切れるリーダーが」造反組にいなかったということだな」
――それにしても、同じ釜のメシを食った同志に刺客を送るなど、首相の手法は日本人の感覚を超越している。
 「それでも首相が支持されるのは、国民も『今までのやり方ではダメだ』と思い、『首相は本気で改革に取り組んでいるのでは』という期待と錯覚を持っているからだ。しかし、実像はまったく違う」
 「今回の解散は、自分の保身と権力維持のためだけの強行策だ。自民党の不始末でこういう事態を招いたのだから、本来は内閣総辞職以外にない。それなのに論理をすり替えて、権力を振り回して解散した。恐るべき人間だ」

 私はむしろこんな風に解釈する。世の中の人は自分のことでないかぎり悲劇が見たいのである。強者が出て、誰かが転落するのを見たい。退屈しているからである。

 「パンとサーカス」のうちパンは満たされているのでサーカスが見たい。小泉純一郎はこういう頭だけは発達している。

 「“笛を吹き鞭を振る”冷血な魔術師の頭脳だけは備えているわが宰相である。」は、私が佳松園の座敷にファクスで校正用に送られてきた『正論』の、6枚短文の中の一文である。

 小泉首相は再選されたとして、郵政法案を再提出する場合に、過半数でいいと思うのは間違いである。三分の二を得なければ憲法の精神に合わない。また、否決した自民党参議院議員にも衆議院造反議員にしたのと同様に、離党勧告をしなければ筋が通らない。

 彼は筋の通ったことを国民に要求しているような顔をして――そしてそういうことで国民の喝采を得て――じつはいろいろな処で筋の通らない矛盾したことをやっている。造反衆議院議員に離党勧告をしたとき、武部幹事長は自発的に離党してほしい、そうしてくれればいつかまた一緒にやれる日が来るかもしれない、さもなければ選挙後、党紀委員会にかけ罷免する」と言った。これは当事者の未来を不安にし、心をいじめる方法である。悪質である。

 それでも大衆は、「そうだ!それくらいきっぱりやれ!」と喜んでいる。人が追いつめられたり、迷ったり、苦しんだりするのを見るのは快楽だからである。

 が、いつの日かフッとこの空気が変わるときがくるかもしれない。国民が日本社会の体質の異変に気がついて、不安になったときである。その転機が9月11日までにくれば、自民党は敗北するだろう。

 私は参議院で再否決される可能性は高いと見ている。いままで参議院否決派議員の心理を不安にし、追いこんでいて、彼らを硬化させ、彼らの猜疑心を高めてしまったからである。

 公明党の神崎氏は、「もしそうなったら首相の任期を延ばして次の参議院選挙で議員を入れかえればよい」とまで言っているが、ここまで言うのは二院制の法秩序を無視し、国民をバカにした独裁者の無法の論理で、もうお話にならない。

 私は挫折した小泉純一郎の次の行動に注目している。この精神タイプは自己破壊ではなく、必ず他者破壊に向かう。彼は孤独の人である。恐しいことが起こるかもしれない。

小泉政変への友人たちの見解(二)

衛藤晟一前厚生労働大臣激励講演会

日程:平成17年8月28日(日)
時間:13:30~15:30
会場:市町村会館2階ホール
   (※大分県庁のとなり)

古川禎久議員激励講演会

日程:平成17年8月28日(日)
時間:20:00~21:30
会場:宮崎県都城市・小松原地区体育館

城内 実議員激励講演会

日程:平成17年8月29日(月)
時間:18:00~20:00(予定)
会場:静岡県浜松市・浜北市商工会館3階会議室

なお、いずれの選対も電話隊などが不足しているとのことです。
ボランティアでご支援いただける方がございましたら、ご連絡いただければ幸いです。

 この他に、
平沼赳夫(岡山3区/津山市、備前市、赤磐市、真庭市*旧北房町の区域を除く、美作市、赤磐郡、和気郡、真庭郡、苫田郡、勝田郡、英田郡、久米郡)
森岡正宏(奈良1区/奈良市*旧都祁村の区域を除く、添上郡)
古屋圭司(岐阜5区/多治見市、中津川市*旧長野県4区から旧山口村を編入、瑞浪市、恵那市、土岐市、土岐郡、恵那郡)
西村眞悟(大阪17区/堺市南部)
の諸候補を支援することを宣言し、当選を心からお祈りしている。

 
 『正論』誌の冒頭に各5枚ていどの随筆欄がある。10月号は随筆ではなく、論説にするので書いてほしい、といわれたのでどういう意味なのか編集の意図がしばらく分らなかった。

 しかもテーマは「歴史認識」だという。いままであの欄には「私の恩人」とか「わたしの贅沢」とか「銀幕の記憶」といったテーマがついていたが、今度は「歴史問題、戦後60年の今こそ反撃の狼煙を」というものものしいテーマで行くらしい。

 書く人は田久保忠衛、渡部昇一、小堀桂一郎、中西輝政、それに私である。もう一人江崎道朗氏がおられる。雁首並べて、論壇が問いつめてきた「歴史認識」という共通テーマを巻頭随筆欄で語ることを雑誌は企画している。なにか考えているのである。

 私は言った。「歴史について書くのはいいが、今は政局のほうが気になる。」「政局がらみでいいですよ、いや、ひとりくらい政局を論じてもらった方がいい。」「歴史のテーマになりませんよ。」「小泉さんの歴史認識を冒頭に振ってくれゝばいい。」「なるほど。」

 というわけで約6枚の文章を今日20日に書いた。題名は編集者と相談してつけた。「小泉のペテンにひっかかるな」。『Will』につづく第二段である。

 冒頭の3行だけいま内緒で紹介する。文の頭に振った「小泉さんの歴史認識」についてである。

 

8月15日に小泉首相は靖国参拝をしなかったが、期待していなかったので驚くこともなかった。村山談話にことばを合わせた首相談話が出たそうだが、読んでいない。四年前にも似たことがあったなとチラッと思っただけだった。

 文の最後にも5行ほど「小泉さんの歴史認識」について書いて、まとめにした。残念ながらそれは紹介できない。気をもたせるようだが、10日ほどたったら誌上でぜひ読んでいたゞきたい。

 わが国の宰相がいかに誇りのない人物で、そしていかに知識が狭く、いかに知性が低いかを示すエピソードを二つ挙げておいた。郵政民営化のペテンはこの無知のしからしむるところである。

 なにしろ外資に売り易くするように工夫して会社をいくつにも分けて編成しているのが改革案である。双子の赤字のアメリカは110兆円がないともうやっていけない処に来ているのである。そして日本はさいごの綱である郵貯簡保を売り渡せば、銀行が頼りにならない昨今、国民は自国通貨を信用しなくなり、韓国のようにIMF管理になり、やがてアルゼンチンのように失業者が巷にあふれるような国になるであろう。

 私が12人の知友に発した決意表明のメイルに対して応答して下さった中から、今日は三編を紹介する。

西尾先生のお考えに全面的に賛成です。

小生は、家族会・救う会として北朝鮮への制裁発動を争点とせよという運動を展開すると同時に、個人として郵政反対派の中で拉致議連幹部などを応援に行くつもりです。
また、同じ趣旨の小泉批判を、本日収録した正論10月号座談会(9月1日発売)でもじっくり展開しました。

西岡力

 次の二編は匿名にさせていたゞく。お二人とも九段下会議の参加メンバーである。

西尾先生

節操ない・・見境の無い小泉のやり方。

ジェンダーフリーの使い走りのような人や 外務大臣の座を狙っているのか上昇志向が強いだけの人。 
「郵政」のみで 他の 「人権擁護法案」や「外交問題」etcでの 功績や 考え方など 考慮しない今回のやり方。

どんな思想でも 郵政賛成なら あんたは 良いのか?と 問いたい。
感情ではなく 政治の立場で 議論して欲しい。

「自民党を ぶっ壊す」だけで 「再生させる気はあるのだろうか」 と 解散以降 眠れません。
確かに郵政民営化も必要ですが 外交問題etc 問題山積みのこの時に 政治に空間を作ってしまったことに怒りを覚えます。私は無力です。抵抗の術を知りません。私に何が出来るのでしょうか?

おっしゃるとおりですね。
鍵になるのは財務省が特殊法人に資金を垂れ流しにしている実態を隠したまま、アメリカに言われたとおりに郵政民営化を主張しているという事実が、まだ国民に十分知れ渡っていないということでしょうね。本当は,財務省が、しかも主計局が問題なのだということを,一刻も早く多くの人に知ってもらうことが重要なのだと思います。私も、何か参考になることがあれば、先生にお知らせします。がんばってください。

 心のこもった応答に感謝申しあげる。

なお別件であるが8月23日12:30~14:00岩手県花巻市湯本の花巻温泉ホテル紅葉館で、岩手県神社庁主催の神社総代の定期大会にて、私は「戦後60年国家主権を考える」と題して講演する。関係者の閉ざされた会であるが、1000人から集まる大会で、つくる会や私の一部愛読者など20人くらいなら席を用意すると主催者は言っている。希望者は担当平賀裕貴氏(Tel 019-622-8648)に相談して下さい。

小泉政変への友人たちの見解(一)

 8月28日から次の表が示すとおり三人の候補者を応援する旅に出る。

衛藤晟一前厚生労働大臣激励講演会

日程:平成17年8月28日(日)
時間:13:30~15:30
会場:市町村会館2階ホール
   (※大分県庁のとなり)

古川禎久議員激励講演会

日程:平成17年8月28日(日)
時間:20:00~21:30
会場:宮崎県都城市・小松原地区体育館

城内 実議員激励講演会

日程:平成17年8月29日(月)
時間:18:00~20:00(予定)
会場:静岡県浜松市・浜北市商工会館3階会議室

なお、いずれの選対も電話隊などが不足しているとのことです。
ボランティアでご支援いただける方がございましたら、ご連絡いただければ幸いです。

 この他に、
平沼赳夫(岡山3区/津山市、備前市、赤磐市、真庭市*旧北房町の区域を除く、美作市、赤磐郡、和気郡、真庭郡、苫田郡、勝田郡、英田郡、久米郡)
森岡正宏(奈良1区/奈良市*旧都祁村の区域を除く、添上郡)
古屋圭司(岐阜5区/多治見市、中津川市*旧長野県4区から旧山口村を編入、瑞浪市、恵那市、土岐市、土岐郡、恵那郡)
西村眞悟(大阪17区/堺市南部)
の諸候補を支援することを宣言し、当選を心からお祈りしている。

 
book_home.jpg 8月19日夜ようやく最初の原稿22枚を脱稿した。調べたり考えたりするのに時間がかかり、書いたのはまる2日だった。
『Will』10月号である。
標題は「小泉『郵政改革』暴走への序曲」。

 編集長の花田紀凱氏よりファクスで返信あり、「力作です。なぜ新聞がこういう事を全く書かないのか。怠慢というしかありません。きっと評判になると思います。」と書いてあった。

 衆議院解散が憲法違反であること、今回の郵政民営化法案は財務省の積年の野放図な金融の垂れ流しを覆い隠す秘せられた意図があること、健全に経営されてきた郵便局を株式会社化する目的の一つは郵貯・簡保の資金の実体をあいまいにして財政投融資の実情をごまかすこと、小泉は愛国者ではなく竹中と組んで郵貯バンクを外資に買収させるのに歯止めになる一文を法案に明記するのを拒んだこと、日本の財政全体が破綻にまっしぐらに進んでいる事態に小泉は勇敢に立ち向かうのではなく卑屈にごまかそうとしていること、小泉政権は一種の擬似ファシズム政権であること、「役人が悪い、官僚はけしからん」という単純な感情に引き摺られてテレビや新聞まで大衆煽動に走っているのは典型的な劣情喚起の政治的誘導であること、産経がいちばん浮かれていておかしいこと、小泉が勝てば任期を延ばし独裁体制になること、だからといって民主党が勝っても救いがなく、自民党が相対多数になれば民主党と大連立になる思いもかけぬ波乱の結果が予想されること、etc.・・・・・・・・

 『Will』は8月の26~27日ごろに店頭に出るので、選挙前の動きにまだ多少とも影響を与えることができるので第一にこれを選んだ。そのあとは『正論』10月号に5枚のエッセー(最近毎号書いているので今回は短い、たゞし政変について書く)を、『Voice』10月号に25枚の同一テーマの延長をより詳しく綴る。選挙が終って、様子が少し分ってから、『諸君』11月号(9月18日〆切り)に今回の小泉政変と日本政治の今後の行方について私なりの総括を書く予定である。

 発売日は『Will』が8月26日、『正論』が9月1日、『Voice』が9月10日、『諸君』が10月1日という風に少しずつズレるので、時間差を利用しつつ、時局の微妙な変化を映し出すように、むしろ変化を役立てて書きたい。

 ところで、此度小泉政変について私は前回示した通り次のメイルを約12人の知友に送った。
 

小泉のやり方とそれに唯々諾々と付き従う無批判の自民党の大勢になんとも怒りをおさえることができない。評論界も沈黙だが、小生、無力でも抵抗するつもり。

 知友からこれに対するコメントが寄せられつづけている。今回は長谷川真美氏と福井雅晴氏のコメントをご紹介する。

 長谷川真美氏(広島県、主婦)

私のブログでの私の独り言です。
=====================

▲ 民主主義じゃないよね

亀井静香さんは余り好きではないけれど、彼がこう言っていましたね。

これ(小泉さんの手法)は恐怖政治、強権政治だと。

今、小泉さんに反対を唱えることの出来るひとはいません。
現在造反?議員となってしまった人はともかく、
郵政賛成を表明した人で、小泉手法に文句を言える人がいるでしょうか。
公認をしないと言われれば、政治生命を取られたようなもの。

次回は絶対郵政民営化の法案を通して見せると小泉さんは言っています。

つまり、次回は参議院の反対派の公認をしないということで、
賛成へもっていくということ。
脅しを実行したという実績のある恐怖で、
参議院で反対に回った人の意見を変えさせるわけね。

議員さんは、落選すればただの人。
国会議員という立場を失えば、どれほど惨めであるかは
議員をやった人にしかわからないほどのものでしょうから、
参議院で反対派に回ったひとを脅すのにこれほど有効な手はありません。

自民党改革をしているのではない、
小泉イエスマンを回りに集めているだけだと、
平沼さんも言っておられましたね。

今、小泉さんに忠告する人は、だぁれもいない。
みんな恐怖にひきつっている。
みんなイエスマン。
それでも支持率はうなぎのぼり。
大衆はそうやって、ヒットラーを熱狂的に支持したように、
強く、自分を押し通すカリスマにしびれるのかもしれない。

本当にいいのか
こんな手法を認めちゃって。
こんな手法をやんやと、はやし立てて。

恐怖で人を操るなんて、
民主主義を標榜する政治家のすることじゃないと私は思うんだけどなぁ。

福井雅晴氏(企業経営)

西尾幹二先生

色々な方とお話しをしたり、さまざまな文献を調べれば調べるほど、
「郵政民営化」の具体的スキームは彼自身が考えたものでなく、
小泉さんという郵政に対し特別な持論(悪意をも含む)を持つ人間を
「たまたま権力の座に着いたので」利用している人、あるいは組織がいるように思えてなりません。

それがアメリカであるのか、旧大蔵官僚(財務省・金融庁)であるのかまでは明言できませんが。
明言できないというのは、推論による答えは導き出せても証拠が無いということです。

いずれにせよ、こんな法案が通ったあかつきには、今回取った政治手法も含め、
その結果として国が滅ぼされてしまいます。

ヒトラーやゲッペルスがしばしば発したといわれる言葉、
「国民は私を支持したのだ。どんな結果になろうと、連中の責任だ。私はだからやつらに同情などせんよ」
を思い出してしまいます。

そして、ヒトラーに独裁の力を与えた栄養分というのが、彼の側近の怯懦とメディアに踊らされた国民の熱狂だといいます。

「歴史の転換期には、時として、ふさわしいリーダーが不在という現象が起きる。
権力を狙う勢力は、そこヘピエロを送り込み、彼を操縦しようとする。
しかし、ピエロは物理的に力を持ってしまい、社会全体がとんでもない方向へ暴走する。」

これは今上映されている映画の売り文句です。
ヒトラーのような、ただの見すぼらしい変人が、世界をおびやかす独裁者に成長する恐さが表現されています。

今、この時期にドイツ映画「ヒトラー~最期の12日間~」が封切られているというのも皮肉なものです。

 深く考えさせられる内容のお二人のコメントに心より感謝する。

 なお別件であるが8月23日12:30~14:00岩手県花巻市湯本の花巻温泉ホテル紅葉館で、岩手県神社庁主催の神社総代の定期大会にて、私は「戦後60年国家主権を考える」と題して講演する。関係者の閉ざされた会であるが、1000人から集まる大会で、つくる会や私の一部愛読者など20人くらいなら席を用意すると主催者は言っている。希望者は担当平賀裕貴氏(Tel 019-622-8648)に相談して下さい。

小泉政変への私の対応予定

 杉並区で私たちの歴史教科書が採択された日の夜、つくる会の理事会があった。議案の討議がすべて終ってから、別れる前にひとことと許しを得て、私は理事の前で、教科書とは関係がないがと断った上で、此度の政変、郵政改革の日本経済への危険な破壊性、それを無視した衆議院の無謀解散について、個人的に断固反対理論を展開するつもりだと告げて、了承を得た。

 4年前の教科書採択で、栃木県のある地区が扶桑社版をいったん正式に取り決めてから、マスコミの攻撃と韓国からの外圧で覆した事件があった。参議院で否決されたら、衆議院に再送するのが憲政の常道で、衆議院を解散するのはルール違反において栃木県の田舎芝居と同じではないか、と私は言った。教科書のことで怒るなら、この件でも怒らなければ筋が通らない、と。

 今月は月刊三誌を予定している。今日8月17日に執筆をスタートする。(論文の内容はいつもの通り当日録には発表しない)。

 8月15日に今年は靖国神社に大変な人数の人波が訪れた。日本会議主催の国民集会で2時過に頼まれていたスピーチを果した。日本人は戦争を思い出すことが難しくなった、と私は言った。私が若い人からもらったある手紙と、7月末の「朝まで生TV」の旧軍人と田原さんの対話の食い違いと、この二つから、過去を思い出すことがいかに難しいかを悟った、と語った。

 そのために、世間では反省とか責任とかをめぐって日本人が責められる議論と、それへの日本人の立場を弁明し主張する議論と、この両方の高まりがいまみられるが、後者の弁解、弁明、釈明はもうやめようではないかと私は訴えた。サンフランシスコ講和条約の11条に関連して東京裁判の受諾は「裁判」か「判決」かをめぐる議論ももちろんあってよいが、これもやはり弁解、弁明、釈明の域を出ないではないか。もうそういう受け身の姿勢をやめようではないか、と。

 これではいつまで経っても過去を思い出すことはできない。過去を思い出すのは歴史の理解を通してである。私はそう述べて、日清、日露から以後の日本史について新しいヒントを語った。5分ほどで語ったので、意を尽していない。私のヒントは大きく展開される段階にまだ達していない。

 この日小泉純一郎氏は靖国に来なかった。私はどうせ来ないと思っていたから腹も立たなかった。

 私が痛憤やるかたなく思っているのは、財務省の巨大な不始末を覆い隠すための郵政改革法案の国家犯罪的性格の危険な内容である。国民が知らぬのをいいことに、憲法違反かもしれない衆議院解散をして、大衆だましの目くらまし選挙戦術でこの国をドン底に落とす結果になりかねない独裁政権暴走の序曲の始まりである。(詳しい内容は雑誌論文を待たれたい)。

 15日夜、心ある知友の約10人に次のメイルのメッセージを送った。
 

小泉のやり方とそれに唯々諾々と付き従う無批判の自民党の大勢になんとも怒りをおさえることができない。評論界も沈黙だが、小生、無力でも抵抗するつもり。

 これに対し6人の方から返信メイルがあった。最初にまずつくる会理事福田逸氏(福田恆存先生のご次男)のメイルをご紹介する。

西尾 幹二様

メール有難うございます。
先日の「つくる会」の集まりの最後のお話を伺って、お手紙差し上げようかと思って、そのままになっておりました。昨日は早朝より昼過ぎまで靖国で参拝者などの「観察」をしていたりしましたもので。

先日のお話の折、賛意表明のタイミングを逸したのですが、最近の小泉は常軌を逸していますし、私も偶々、産経の異常な小泉寄り姿勢に不安を感じていた直後のご発言でした。おそらく遠藤さんも同じような感覚をお持ちだと思います。

昨日の、村山談話を踏襲した60年談話に到っては怒りを越えて脱力すら感じました。

この数年、僅かにせよ、日本の覚醒の兆しが見えていただけに、昨日の談話が多くの日本人に深い失望を与えたこと、どれだけか計り知れません。あの談話でも、再び、「侵略」という言葉を用い、「心ならずも」戦争に行かされた式の文言を使っていますが、どこまで英霊達を侮蔑し歴史を歪ませれば気が済むのでしょう。しかも15日参拝は見送られる。国民に対する侮蔑と裏切り以外の何物でもありません。

昨日の日本会議の集まりで、小野田氏は裂帛の気迫で「心ならずも」ではない、「誇りを持って戦い、死んだ」のだと怒りを露にしていました。

政治家は結局、選挙に当選してナンボ、権力を取ることしか頭にない、そのことを今まで以上に鮮明の浮かび上がらせた今回の解散と対立、そいて小泉追随です。
靖国、教育、経済、外交など、国家感は全く顧慮されぬ対立と野合、これは、民主も含めもはや政治とも政治家とも呼べるものではありません。そのことをマスコミは一切論難しません。おかしなことです。これから、論壇がどういう反応を見せるか、大いに関心を持っています。
せめて西尾様お一人でも敢然と戦って下さること、心から期待しております。お気持ち、つくづくお察しします。

とりあえず。ご返信無用に願います。

暑さもまで続くようです、ご自愛下さい。

 次の二例は匿名とさせていたゞく。

本当にこの世の中はスジの通らないことが往行していて、いまいましい限りです。

ついにホリエモンの名前が挙がってきましたが、今の自民党首脳は、選挙に勝つために何でもありの世界のようで、政治家としての気概、国家観など全くなくてただ地位や権力に汲々としている姿を見せ付けられると、元来日頃の議員の不勉強にもあきれていましたが、幻滅を通り越して、私もふつふつと怒りが湧いてきます。

現代のまやかしの中で生きていかなければならない中で、先生はいつも物事の本質を見抜き、それから目を逸らさず力の限り果敢にぶつかって下さるので、先生の背筋がスーと立った姿は、本当に私の苛立ちを鎮めてくださって、安心な気持ちにさせて下さいます。

先生、大変でしょうが、頑張って下さいませ。応援致しております。

昨日は、暑い中を大変でしたね。桜チャンネルで国民集会の模様を見ていたのですが、いつのまにかテレビの前でうたたねをしてしまいましたが、先生が御出演されたとき運よく目が覚めて拝見する事ができました。

今回の解散劇に関しましては私も言いたいことは山ほどございます。

しかし敢えて筆を納めている理由は、これまでのネット論陣の言説と、今回の解散劇によるその方々の揺れは、いったいどうしたものかと思うところにあります。

彼らは政界再編の期待感があまりに強すぎ、まんまと小泉の罠に嵌りました。
そして小泉が靖国参拝を拒否してはじめて自分の判断が間違いである事に気付く次第であるわけです。
おそらく私はそれらは間違いないことだと予測しています。
掲示板を閲覧せずとも、日録や遠藤先生のブログにあるコメントを読んだだけで想像できます。

もしもこれが憲法改正という大掛かりな外科手術を国民に求められた時、はたして日本国民は冷静さを維持できるのだろうかと疑いたくなるような現実が、今回巷でおきているわけです。
とにかく殆どの意見が的外れです。
中には冷静に分析されている方もいらっしゃるのだろうとは思いますが、たぶん殆どのネット論陣は慌てふためいている事でしょう。
その証拠に今度の選挙でいったい誰に投票して良いやら判断しかねているのではないでしょうか。

私はここで国民がとるべき態度は、小泉への糾弾だと思うわけです。
いくら造反組みが浅はかな部分があろうとも、彼らの態度こそは正道を貫いている事は間違い無いわけです。何故ならこれまでさんざん議論されてきたことに忠実なのは平沼氏以下真の保守政治家だけだからです。
また賛成派に残った議員の中にも相当数の不満を抱きながらじくじたる心境でいる政治家も多かろうと思うわけです。

小泉の策略に気付いていながら、党の運営を思うばかりに手足を出せない政治家は多いはずです。その事を何故国民は援護できないのか?
持論として数年前から小泉の危険性を公で訴えてきたのは西尾先生だけであります。
しかも当初はその批判に対しあざ笑うものばかりでした。
いまここに来てそれらの人間があだ討ちに合っていると言えるのではないでしょうか。
つまり自分達の論説がいかに左右に触れているかを認識し始めているはずです。
そうなれば普通ならばとても書きこみなど出来ないわけでありまして、時代が時代なら切腹ものです。

私は解散後の小泉の言葉を聞いて幻滅しました。
日本は今目を覚ますべき時に来ています。
ここまで小泉にやりたい放題やらせてもまだ自分に降りかかる火の粉さえほろえない程度の国民の民度というものに、私は幻滅しているわけです。
全ての答えは靖国参拝拒否に答えがあるわけです。
国民の言葉よりも中国・朝鮮半島・国内の左翼団体の方が、小泉にとっては重要な立場にあり、その為には日本国民および政治家、そしてこの国の歴史までも犠牲に出来るファッショだと言えるでしょう。

とにかく先生におかれましては、ご自身の意思に忠実に行動され、少なからずこうして理解を示す人間がいる事を忘れないで頂きたいです。

 なお、私は8月28日に大分一区の衛藤晟一候補の選挙応援に出かける。ひきつづき宮崎三区の古川禎久候補の選挙応援にも行く予定で、今調節中である。

 今述べた二氏のほかに、古屋圭司(岐阜五区)、城内実(静岡七区)、森岡正宏(奈良一区)、平沼赳夫(岡山三区)の諸候補も可能な限り応援したい。西村眞悟候補(大阪十七区)も同様である。

 古屋圭司氏は教科書議連の会長。衛藤、古川、城内、森岡の四氏もいづれも教科書議連の会に属し、主導的役割を果している。平沼赳夫氏は拉致議連会長である。

 私に縁の深い九段下会議の議員団代表が衛藤晟一氏、事務局長が城内実氏である。そして何よりも特筆すべきは人権擁護法に身を張って果敢に反対した方々こそ、周知の通り、ここに名を挙げた諸氏である。

 彼らの議席は絶対に守られなければならない。全国のみなさま、よろしくたのみます。

小泉首相に関する私の一年前の論文より

 Voice平成16年8月号に私は「小泉純一郎“坊ちゃんの冷血”――ある臨床心理士との対話」を書いた。この文は拙著に収めるとき、その章の題名を「他人の運命にも国家にも無関心なあぶない宰相」とした。いよいよそのあぶなさが露骨に表立ってきた。

 丁度一年前にかいた上記Voice論文が今日を予言しているので、あらためて読者に読んでいただきたく抄録する。「郵政さわぎ」がなぜ「国家に無関心なあぶなさ」になるのかは、少し時間をいたゞいて論述する。

 

小泉首相は最初に自身が打ち出した一つのアイデアに、いつまでもこだわる性向がある。現実が変っても修正しない。人の意見を聴いて変えることを知らない。勿論、意志の強い指導者を自己演出しているので、頼もしいと思わせる一定の効果はあった。一年ごとに代わるこれまでの弱々しい首相に欲求不満を抱いていた国民のストレス解消に最初は役立った。

 けれども、長くつづくとそれにしても妙だな、と思わせる。郵政事業の民営化――これが国民生活を良くするのにどういう効果があるのか説明されないうちに、首相の頭にこびりついた妄執のごとくに最高政策として掲げられたままである。勿論、郵貯の膨大な資金の流れが財政投融資となり、政府予算の裏予算として使われていることに問題があることはわれわれも知っているが、それならこれをオープンにし、民営化することのメリットとデメリットをご自身で国民にも分るように説明し、どこぞの委員会に丸投げするのではなく、自ら勉強し、民営化の具体的な手続きの方向を本気で、冷静に、数字をあげて理詰めで提言していく誠実さとひたむきさが求められる。小泉首相には今ほどそれが期待されているときはない。

 首相になってから道路関係四公団、住宅金融公庫、石油公団の廃止民営化、特殊法人の改革を唱えつづけてきたが、掛け声ばかりで目立つ成果が上っていないことは、今ではすでに首相の責任問題になり始めていると私は判断している。地方分権論も同じように道半ばにも至っていない。首相公選論や首都移転論はすでに完全にむなしくなったが、郵政をはじめ小泉内閣の主要な改革案件が次々と同じように軒なみむなしくなるにも時間の問題であろう。

 それは政策自体に間違いがあるからでは必ずしもなく、政策提案者の精神に現実とのずれがあり、政治家も官僚も白昼夢を見ているようで、積極的に動く気になれないからである。

 どんな人にも心理的偏向がある。性格の傾きがある。病理学的観察の対象から完全に免れる人はいない。

 小泉氏の場合には、観念への固着傾向が認められることはすでに述べた通りである。言葉に人情や人間味が乏しく、表現不足もたしかに目立つ。通例、固着傾向はさまざまな異様さをその人に与え、他者との良い人間関係の醸成を妨げるケースが多いのである。また、現実に触れて、体験を積んでいく過程で得られる「学習」の成果が少ないということもいわれている。

 総合的で、柔軟な思考態勢がとりにくい。自分に余りにとらわれているので、相手のことを想像できない。共感性が欠けている。情操レベルでの不全につながり易い。他者への同情、憐憫、共感に乏しく、どんな環境にも屈することのない孤立を続けることができる反面、後ろめたさや悔いの感情を持つことがあまりない。

 一般的傾向を言っているだけで、首相にそのまま当て嵌まると言っているわけではないが、彼が所属していた「清和会」の元番記者の次の証言などは、成程と思わせるものがある。

 「小泉が本当に信用している政治家はいない。昔から他人に腹を割らないから、人も寄りつかない。赤坂プリンスホテルにある福田派の事務所で政治家連中がみんなラーメンなど中華を食べているときでも、一人離れた場所でナポリタンを黙って食っているのが小泉だった。ある代議士は『小泉の側近は小泉自身だろう』と突き放して言うほどだ」(松田賢弥『無情の宰相 小泉純一郎』講談社刊)

 彼は北朝鮮に関心などまったくなかったようである。コメ支援を率先して唱えている加藤紘一を見て、「加藤さんもよくやるよ」と冷ややかに見ていたのが小泉氏だったと聞く。その彼が北朝鮮へ行ったのは最大の政治ショーになるからと勧めてくれる姉の信子の指示があったからだそうだが、二度目の訪朝では拉致被害者家族の顔も声も訴えの内容もよく知られていて、いかな小泉氏といえども、家族の期待がどこにあるかは分っていたはずである。私が今回非常に強く感じたのは小泉氏の冷酷さ、他人の運命への無関心である。

 横田滋・早紀江さん一家が孫のヘギョンちゃんの日本招待の計画があると聴いて、これを辞退する書簡を首相に届けた。孫に会いたい気持は勿論ある。しかし今それを認めたら、娘に会えなくなる。老夫婦の自分を殺すこの切ないまでの訴えは首相の許に届いていたはずである。

 首相は金正日に向かって「横田めぐみさんは生きている。95年にあなたの子供の家庭教師をしていることがわかっている」とただちに切り出す言葉の用意をしておくべきだった。横田早紀江さんは次のように言っている。

 「拉致被害者に関する多くの具体的なデータがあるんですから、総理には絶対にそれを出していただきたかった。『私たちは命懸けで戦っているんです。ぜひ総理の口から具体的に〈これは、こうおかしいじゃないか〉と怒ってきてください』とも細田さんたちにお伝えしました。『この外交で毅然とした態度で接していただくようでないと、小泉総理の人間性が問われると思いますよ』と、そこまで思い切ったことをいったんです。にもかかわらずそのようにしていただけなくて、とても悲しい気分になります」(『Voice』平成16年7月号)

 私はここから二つの理由を考えている。その後朝鮮総聯――破防法対象団体ともいうべき――への首相の友好的接近をみて、なんらかの形で彼は個人的に弱点を握られていて、総聯を通じて金正日から脅迫されているのではないかという推理が成り立つ。

 もう一つは、彼は自分の内面に余りにとらわれているので、相手のことを想像できない人格であること、共感性に欠けているというあの問題である。他者への同情、憐憫、共感が性格的に初めから乏しい。

 小泉氏に感じるのは悪党の冷酷さではなく、情感を持たない機械みたいな人間の無反応、分り易くいえば“坊ちゃんの冷血さ”である。

小泉首相、ご乱心

 小泉首相は演説中に、「殺されても私はやる」と口走った郵政民営化法案が参議院で否決されるや、抵抗する閣僚の一人を罷免までして衆議院を解散した。普通なら総辞職が常識だろう。が、反対した自民党議員を彼は公認候補として認めないという。郵政民営化の賛否いずれかで敵か味方かをきめている。「賛成してくれれば誰とでも協力する。野党でも味方だ。」と首相は記者会見で語った。ここまでの言い方には、非政治的な単純さ、ある種の狂気が宿っている。

 憲法改正のレベルの問題ならこういう我を忘れた熱狂も分らぬではない。しかし国民の多くが態度をきめかねている郵政のような問題には政治はもっと寛容でなくてはいけない。首相は衆議院を解散して、勝ってもう一度法案を出す積りらしいが、同じ構成の参議院でまた否決されないという保証はないだろう。そこまで一つの法案にこだわって政治の長期空白をつくることは常識的に許されない。それを黙認している自民党の執行部、首相に近い筋の議員諸氏に申し上げたい。誰も表立てて言わないが、首相の言動はすでに正常の域を越えている、と。

 解散した夜のテレビの記者会見を聴いた。首相は同じ一つのことをくりかえし語った。「なぜ民間にできることを民間に任せよ、と人は言いながら、なぜ郵政にだけそれができないというのか。民間に任せたほうがいいサービスができるはずだ。なぜ郵政だけは公務員でなくてはならないのか。本当に国民にこのことを聞いてみたい。私には当り前と思っていることをなぜみんなが反対するのか、いまだに信じられない。総裁選にこれを掲げ、党の公約にもした。みんな承知のはずではないか。衆議院で100時間、参議院で80時間も審議した。それなのになぜみんなが反対するのか分らない。なぜ民間に任せた方がいいと分っているのに、郵政にだけそれが出来ないのか。民間にできることは民間に、ではなかったのか。」・・・・・・・

 という具合で、堂々めぐりで、同じテーマに戻ってぐるぐる輪を描いてきりがない。発想の転換がない。思考の柔軟さがない。一つの小さな固定観念にこり固まって、そこを中心にエンドレスに回転するだけである。単純な観念へのこだわり、固執、一ヶ所への固着は、若いときからのものだそうで、政治的信条とは少し違う。むしろ病理学的観察の対象とすべきものである。

 首相に申し上げたいが、防衛と警察は民間に任せよ、とお考えにならないだろう。民間に任せて、万一失敗したら、取り返しがつかないからだ。ならば郵政や道路や鉄道はどうだろうか。防衛や警察ほどではないにせよ、万一失敗したら、やはり明日からもう要らないというわけにはいかない相手だ。国家が後始末をしなくてはならない。

 国鉄からJRへの改革は成功したとみんな思っているが、巨大欠損は棚上げで、赤字鉄道の廃線で苦しんでいる地方の人は多数いる。英国の鉄道の民営化は失敗し、国営に戻った。郵便局の全国ネットワークの破壊を国民が恐れるのは、国鉄の例を見ているからである。

 もしも首相の頭の中に、民間にできることを民間に任せたらすべてうまくいく、とは必ずしも限らないという「常識」がほんの少しでも存在したら、思考はもっとゆるやかになり、「私には当り前と思っていることをなぜみんなが反対するのか」などと単純で、硬直した、首相の口にすべきでない脅迫めいた言葉は出てこないだろう。私が問題にしているのは国民に対する首相の説明の仕方の閉ざされたある頑迷さである。

 巨額の公的資金をつぎこんだ長期信用銀行が外資にさらわれ、血税がドブに捨てられた事実を国民はみな知っている。郵政民営化のそもそもの要請がアメリカから来ていること、そこに警戒すべき謎があることも知られている。郵政省のお役人が民営後の経営者になるものだとしたら、武士の商法で、果してうまく行くかという不安もみな抱いている。首相は国会答弁でも、テレビでも、こうした国民の不安に丁寧に、分り易く説明したことがない。ただ一本調子の、意味稀薄なことばで単調に強弁するだけで、次第に異常にみえてくる。

 江戸時代に「主君押込めの構造」というのがあったのをご存知だろうか。「殿、ご乱心」となれば座敷牢にとじこめ、家老重臣が合意で粛々と無血革命を行った。自民党執行部の面々よ。智恵をみせてほしい。日本は愚かな国ではないはずだ。

ポスト小泉

 『文藝春秋』6月号でポスト小泉に誰がいいと思うか、理由を添えて400字以内で書け、というアンケートが来たので安倍晋三氏を挙げ、次のように答えた。安倍氏を推した解答者が一番多かったようだが、どういうわけか私の文章が誌面のトップに掲げられたので、次に再録する拙文をすでにお読みになった方も多いと思う。

 安倍氏がまだ大臣経験者でないことや、派閥内の序列で若いことなどを理由に、首相の座は次の次だという人が少くないが、自民党が選挙で勝てる党首は誰かということに自ずとしぼられてくると思う。

 今の状態の侭だと、自民党は総選挙で民主党に敗れる可能性が高い。若い議員たちを中心に危機感がある。その輪は選挙が近づくと広がってくる。イギリスのブレア首相の例もあるので、年齢は問題になるまい。

 

「ポスト小泉」大アンケート

各界著名人64人が推す  次の総理はこの人
=日本の「明日」を託すべき人物、その条件とは

《本当の大国に》 西尾幹二(評論家)

安倍晋三

 首相になった人の言葉の能力の低さは永いこと日本国民のストレスになっている。期待された小泉首相も「言語少量意味希薄」で失格。他方、大胆に明言する政治家は失言が多く、マスコミの餌食になっている。その点安倍さんは唯一、日本の国家意志を正面切って語り、思考がブレないだけでなく、NHK=朝日偏向報道の攻撃をも見事にかわし、かえって自己の立場を強固にしている。これからの日本は親米で米国に淫することなく、反中韓で大陸に足をすくわれることなく、この国を本当の大国に(ただの経済大国にではなく)蘇えらせる責務が政治家にはある。この役目を果せるリーダーは安倍さんを措いてない。あるときテレビで彼は「次の総理と目されていますね」と水を向けられたら「田中真紀子さんだってそういう風に言われていたじゃないですか」とさらりとスマートに身をかわした。この巧みさと明るさとジョークが国際外交の舞台に立ち現われる日の到来を待っている。

 安倍氏には安定した長期政権になってもらいたい。それには「保守のまき返し」があって、公明党が政権から外れることと、民主党が分裂して、党内の保守派が自民党に入るなどの理想的な政界再編成の行われることが望ましい。

 安倍氏が首相になって存分に腕をふるえる好条件が揃うのか揃わないのか、そこが今ひとつ私には読めない不安材料である。

日本会議へのメッセージ

 日本会議から私に「みんなで靖国神社に参拝する国民の会」の発起人に就任し、国民に呼びかけるメッセージを書き送って欲しいとの依頼があったので、就任を承諾し、次のメッセージを認めた。

  弁解、釈明、反論などの

「罪」を前提にした議論をすべて止めよう。

日清戦争以来の日本の戦争が中国を一国として保全し、

韓国と台湾その他に現代文明を与えた

アジアの歴史の母であることを前提にした議論を、

政治家が国際舞台で当然のごとくに語るように導こう。

敗戦国に謝罪の義務はありえず

 現在、「宮崎正弘氏を囲む―中国反日暴動の裏側」を連載中ですが、5月12日産経新聞「正論」欄に以下の文章を書きましたので、掲載します。

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敗戦国に謝罪の義務はありえず

二重謝罪招く首相のおわび表明

《《《喜べない欧米からの評価》》》

 4月22日、バンドンの首脳会議で小泉首相が例によってわが国の「植民地支配」と「侵略」を謝って以来、私はずっと胃の腑(ふ)になにか消化の悪いものがたまっているような気分から解放されない。

 中国の無法に耐えて謝ったからではなく、謝罪演説が欧米で評判がいいと分かってかえって私は気分がすぐれない。

 中国が反日暴動に謝罪しない傲慢(ごうまん)さで世界の非難を浴びていたさなかだったので、小泉演説は大人の印象を与え、政治的に点数を稼いだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは25日「今度は北京が謝罪する番」と書いた。欧米や国連の論調はたしかに小泉氏に好意的だった。それだけに私はだんだん腹が立ってきた。中国の強圧的無礼に屈した形になったことより、外電が歓迎したことのほうが私にははるかに不快だった。

 アジア・アフリカ会議の出来事で欧米人がアジア人である日本人に点数をつけている。しかもドイツと比較している。そしてそれを日本人が喜んでいるような構図全体がこのまま固定したらひどくまずいな、と思った。アジアへの「植民地支配」と「侵略」をしたのはいったいどこの国々だったというのであろう。

 最近しきりに考えるのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦とでは勝者の態度に異変が見られることである。

 第一次世界大戦では4年にわたって悲惨な戦争をして、最後には毒ガスまで出て、ヨーロッパは焦土と化した。インドの詩人タゴールは文明がもたらす非文明、ヨーロッパの野蛮を指摘した。ヨーロッパの内部からも強い反省の声がわき起り、「西欧の没落」という本が書かれ、不戦条約も作られた。

 しかし第二次世界大戦の後で欧米の勝者の中から反省の強い声が出てきたであろうか。惨劇の規模は前の戦争よりずっと大きかったのに、ナチスの悪口ばかり言って、ついに異なる戦争をした日本まで巻き添えにして、大量破壊史を展開した欧米人は、自己断罪を回避した。アジア・アフリカへの「植民地支配」と「侵略」を日本の首相が謝るのはおかしいのではないか。

《《《究極の選択としての戦争》》》

 ここで「謝る」とか「わびる」とかはどういうことかを原則から考えてみたい。

 国家同士も市民社会と同じように謝るべきことはある。幼児が罪を犯せば親が謝るようにクリントン前大統領は沖縄で起こった米兵による少女暴行事件に直ちに謝罪した。

 韓国の少女ひき逃げ事件ではアメリカはやり方を間違え、それが引き金で盧武鉉大統領を誕生させてしまうというヘマをしでかした。国家としての謝罪行為はいかに大切か。

 けれども、国家との間で断じて謝罪してはならないことが一つだけある。それは戦争に対してである。戦争は言葉の尽き果てた最後に、言うべきことを言い尽くし、屈辱を重ね、反論も謝罪も当然した揚げ句の果てにどうしようもなく、とうとう最後の手段として戦火の火ぶたが切られるという究極の事態であろう。

 勝敗は言葉とは別の手段、暴力で決する。敗者は反論を封じられる。海外の権益を奪われ、賠償を取られ、領土を失い、その他あらゆる屈辱が強いられ、外交上の発言力は低下するし、国益は守りにくくなる。苦しんだ揚げ句、やっと講和条約が結ばれる。これが「謝罪」である。

《《《ドイツも戦争は謝罪せず》》》 

 当然ながら、もうこれ以上二度と「謝罪」ということはあってはならない。なぜなら双方言い分を出し尽くした結果一致せず、相手を互いに不当と信じて突入するものが戦争であるから、事後の謝罪はあり得ない。謝罪する余地がないから戦争になったのではないか。敗者は暴力に屈しても内心に多くの不満を残し、正当性の感情を蔵している。つまり敗者には敗者になる前からの理があって、結果に必ずしも納得していない。不服従の感情を抱き続けている。

 それを鎮め癒すために講和がある。講和は勝者には報復の確認だが、敗者には二重謝罪を防ぐための確約である。戦後60年も経て日本の二重謝罪三重謝罪が当然視されるのは、地球上で日本を抑えつけておこうとする「戦争」が続いていることの何よりもの証拠であろう。日本が今後謝罪を繰り返すことは将来の戦争に道を開く行為である。

 なおドイツはナチスのホロコーストには謝罪しているが、侵略戦争には謝罪していない。最近各国からドイツに賠償要求の声が上がっている。ドイツは講和さえ結んでいない。戦後処理はやっとこれから始まるのである。間違えないで欲しい。

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中国人留学生からの質問

 あるサイトに中国人から日本人に向けた、大変に興味深い歴史や政治に関する質問が出されているのを人に教えられた。読んでみると、日本人の複数の回答を含めて面白いし、今後の展開が期待されるので紹介する。

 今の若い中国人が何を考えているか、日本人の反論にどう対応しどう変化するか、関心を呼ぶだろう。

 ことの発端は「一人中国留学生の声」、留学生4月26日(18時45分)の一文である。論議が混乱しないためにいち早く司会役が登場し、日本側からの複数の反論も出された。

 当の留学生はまじめに考えたいからまず日本人の意見を聞かせてほしいと言っている。そういう応答があった。

 中国人留学生の最初の発言を日本語として分り易くリライトする人も現われた。日本人のいくつもの質問に当の留学生がどう答えるかが待たれている。

 当該サイト(桃太郎掲示板)の管理人の許可を得たので、4月26日から4月28日までの全文をここにかかげる。読者のみなさんも考え、かつ参加してみてはどうか。

 4月29日より以後の論争は元の掲示板にもどる。

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一人中国留学生の声 投稿者:留学生 投稿日:04/26(火) 18:45

たくさんの日本人は普段テレビ、新聞で中国のことを知ります。
テレビは放送している画面はもちろん真実です、しかし全面の真実ではありません、一部の真実です。カットされた画面はけっこう多いです。マスコミの特徴は伝えたくないもの、面白くないもの絶対流さないと思います。
例えば今回の反日デモについて放送は日本の大使館、企業、さらに日本学生の被害を一方的に受けあけて語る。テレビから見て、石の投げる、車の壊す、中国警察の無関心、日本国旗の燃やすの画面をくり返して放送しています。この結果、日中二つの国あいだはもと誤解、民族習慣、考え方が違うの上にわだかまりがだんだん深くなります。
日本のマスコミ視野はもっと広く、放送はもっと全面的になってほしいです。
一番大切なことは普通の中国人本当に何を考えますか?これを日本人に伝えないといけません。しかしたくさんの日本人全く知りません。ただ単純に中国人乱暴して、考え方あまい、昔のことを固執して悟らない、あほうみたいと思わないで下さい!
中国人は日本人に対して一番聞きたいことは何で日中戦争のことをよく疑問して、検討して、ちょっとずつ変わっていく?
例えば南京大虐殺の人数を疑問する、30万人ではない、20万人、10万人、さらに5万人です。何十万人の人を殺されて、多分もうはっきり数えないかもしれませんけど、日本人はこの時、残酷なことをやりました、悪いことをしたは変えない事実です。じゃ殺された人数少なくなったら、心は軽くなれます?犯罪感も薄くなれますの?日本人はいつもこのことを議論して、研究して、反論して、いったい何を考えていますか?自分の罪を隠したいの?
じゃもし中国、韓国、アメリカの教科書は広島、長崎の原子爆弾によって死んだ人の数は12万と8万人ではない6万と4万人です、さらに検討も要りますと書いたら、日本人はどう思います? また中国の教科書は天安門事件も書いていないという人もいるかもしれない、これは中国内部のことだから、日本と関係ありません。書くと書かない自分が決めれます。日本江戸時代のこと何か書いてないとか中国人絶対言わないです、言う権利ありません。他の国と関係あることは慎重に考えない、教科書を好みで書いていけません!中国だけではない韓国の慰安婦問題もそうだし。教科書は大事なものだから、子孫に何を教えていく、皆日本を見ています。ドイツは二戦の時何百万人のユダヤ人を殺した、しかしドイツは教科書の問題ありますか?日本人はやる胆力があります、承認する胆力がありません。
靖国神社の参拝もそうだし、中国人の目の中の日本人は少し反省の気持ちもない、さらに一所懸命罪を隠す、別に中国人は日本に補償する要求もないし、ただ認めてくれてほしい!これでもできない国は安理会の常任理事国になる資格はありません。
中国人はこれを日本に言いたいだから、デモを起こりました。
日本のマスコミによって中国に対して印象はすでに民主国家ではない、北朝鮮と仲良い、偽ものを造る技術上手い、在日犯罪者が多い、農産物の農薬が多い、飛行機が安全ではない、国防費が高い、経済発展して日本を追い越せる恐ろしい国になりました。中国はもちろんいろいろな問題があります、しかしそんな可笑しい国ではありません、日中現在の対立は完全にお互い理解していない、考え方、民族習慣の違いですから、私今目の中の日本と私まだ日本に来ていない時思っている日本の様子まったく違います。同じようにたくさん日本人は思っている中国と現実の中国もかなり違います。
2万人のデモ者の中に激しい人は200人しか超えません、この200人もし本当の日本が了解したら、乱暴しないと思います。たくさんの中国人は日本に対して意見を述べたい時どうすればいいですか?分からないです。一部の激しい人に影響されて、乱暴をしました。激しくしないと、日本人に注目されないと思いますから。でも関係ないの日本人学生に乱暴して本当にバカです。私からの望みは日本人今全体の中国人皆そうですと思わないで下さい!毎日テレビを見てそうおもい易いです。 また心配することはそのまま続いて日中関係にきっと悪い影響になります。私の声が小さいけど、日中仲良くになってほしいです。
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論議の開始について 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:20

留学生さん、いらっしゃい。
それでは、論議を始めたい。

日本人の参加者からの自由な質疑に、留学生さんは、率直に答えてくださるだろうか?
まず、そこから確かめよう。
当然、留学生さんには答えにくい質問も多数予想される。
そこに正対する覚悟はお有りだろうか?

また、他の参加者に対して要請する。
留学生さんに対する誹謗中傷や差別を目的とする発言を厳に控えていただきたい。

要は、ここで大切なのは、事実に対する論理的な評価の問題である。
それを、留学生さんも、他の参加者も肝に銘じていただきたい。

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ここで取り上げる歴史的事実 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:26

本掲示板では、日中関係を論ずるにあたり
日本と中国の関係に止まらず、日本国内の事象、中国国内の事象にわたり、広く取り上げたい。

たとえば
・日清戦争
・日中戦争
・中国内戦
・朝鮮戦争
・文化大革命
・大躍進政策
・日中国交正常化
・円借款
・中国の核開発・軍備増強
・天安門事件
・民族問題
こういった、内外の事象に対する評価も含め、論議をしていきたい。

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なお 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:27

本論議においては
平蔵は、あくまでも、「総括管理人」として振る舞う。
参加各位の活発な論議を期待する。

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論議開始の条件は 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:35

>日本人の参加者からの自由な質疑に、留学生さんは、率直に答えてくださるだろうか?

に対して、留学生さんが受諾を表明した時点をもって、論議開始とする。
本投稿から72時間を経て回答がない場合は、留学生さんは論議を忌避したものとみなす。

開始、又は忌避が判明するまで、他の参加者は、本話題に関する発言を控えていただきたく、これに反する如何なる投稿も、直ちに削除する。

また、留学生さんのIPアドレスはすでに確認しているので、他のホストからの接続はご遠慮いただきたい。
これは、複数人による、同一ハンドルでの投稿又は、同一人による複数ハンドルによる投稿を禁ずる本サイトの運営上の要請である。

では、参加者各位、留学生さんからの回答を、刮目して待て。

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はじめまして 投稿者:留学生 投稿日:04/27(水) 17:03

まず私書いた文章について皆の本気の感想を聞きたい。
それに皆は中国についての問題もできるだけ答えます。

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はじめまして、皆さん。留学生さん。 投稿者:大学生 投稿日:04/27(水) 18:30

みなさん、はじめまして。
今回の反日デモから日中関係に興味を持った一大学生です。今回、この掲示板の論議にぜひ参加させていただきたいと思います。至らぬ点もあるかと思いますがよろしくお願いします。

まず始めに、私は感情的にならず、留学生さんの意見を真摯に受け取り、決して誹謗中傷などしないことを誓います。

本題です。
留学生さんの文章についての感想です。
>日本のマスコミ視野はもっと広く、放送はもっと全面的になってほしいです。
 同意できます。ただ、放送時間が有限であるかぎり、際立った一部分を切り取った物になってしまうのは仕方ないことだとも思います。
>ただ単純に中国人乱暴して、考え方あまい、昔のことを固執して悟らない、あほうみたいと思わないで下さい!
 私は決してそんな風に思っていません。私の大学には中国からの留学生もたくさんいますし、皆良い人だと思います。留学生さんも、「日本人みんなが中国人の事をあほうみたいに思ってる」と思わないで下さい。お願いします。
>南京大虐殺
 確かに人数の事を議論するのに意味は無いかもしれません。ただ、大虐殺が本当にあったかどうかを議論するとなれば話は別です。通常の戦闘を民間の虐殺に置き換えられて断罪を叫ばれては反論しなくてはなりません。実際に無かったという一級品の状況証拠もあります。例えば蒋介石の日記には南京での死者数は6千人と書かれているそうです。これは戦闘の規模から考えると少なすぎるほどの数で、もちろん虐殺ではありません。こういう証拠があるからこそ議論になるのです。
>靖国神社の参拝もそうだし、中国人の目の中の日本人は少し反省の気持ちもない
 これはとんでもありません。私には「靖国神社に参拝する⇒反省していない」がまず理解できません。よろしければなぜそうなるのかを教えてください、多分何か誤解していらっしゃるのだと思います。また日本は、謝罪も公式の場で30回以上も行っていますし、多額のODAを中国に対し行っています。その事実を留学生さんが知らないだけではないでしょうか。
>教科書問題
 この問題は今回のデモをうけて「中国の教育が反日的なのでは?」という疑問が沸いた事で最近活発になっているのだと思います。いくら中国国内の問題と言っても、勝手に悪者にされてはたまりませんから。「天安門事件が記述されてないのは、虐殺をしたのは日本だけにしておきたいからでは?」という疑問があるから天安門やチベットの問題があがるのだと思います。今は関係ないかも知れませんが、そもそも他国の教科書に文句を言い始めたのは中国が先ですよ。日本がやりかえしたからって「国内の問題だから関わるな!」というのはさすがに勝手だと思います。

最後に、留学生さんは「日本が絶対に悪い」という前提で全ての問題を見ているような気がします。まずは「日本も中国も悪い事がある」という前提でもう一度見直していただけませんか。どちらかが絶対に悪いなどということは複雑な歴史ではありえない事でしょう。

長文失礼いたしました。皆さんの意見をお待ちしております。

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論議を開始致す。 投稿者:平蔵 投稿日:04/27(水) 20:52

『論議の開始について 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:20』
『ここで取り上げる歴史的事実 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:26』
『なお 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:27』
『論議開始の条件は 投稿者:平蔵 投稿日:04/26(火) 22:35』

上記の主旨に則り、

『はじめまして 投稿者:留学生 投稿日:04/27(水) 17:03』

を論議受諾の表示と認め、平成17年4月27日17時3分をもって論議を開始する。

本論議を、総括管理人長谷川平蔵3705が主宰・進行する。
本論議のテーマは、
「『一人中国留学生の声 投稿者:留学生 投稿日:04/26(火) 18:45』及びその他の事象を題材とした、日中関係の問題点と将来」とする。

第1段階として、各自の立場と意見の発表及び質疑を一週間(4月27日水~5月3日火)実施する。
その後、参加者は、第1段階の総括を5月5日木の18時までに投稿されたい。
総括の内容は、以下の通りとする。
1 自らの当初の立場・意見
2 他者の意見で印象に残った事項
3 第1段階終了時点での立場・意見
4 更に論じたい事項

第2段階の要領は、その時点で示す。

その他、長谷亭運営規定及び論議運営細則に準拠する。
参加者各位の正々堂々とした発言を強く期待する。

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いくつかの簡単な質問。 投稿者:たこのす 投稿日:04/28(木) 04:05

留学生様

日本語で投稿ありがとう。あなたの文章の意味は完全に分かります。

>私の声が小さいけど、日中仲良くになってほしいです。

同感です。話題を分け、簡単に質問をしながら進めたいと思います。よろしくお願いします。
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 中国人は自己主張がとても上手ですね。日本人は下手です。でも、日本人にも主張があります。
 それをこれから書きます。あなたも日本人になったつもりで読んでください。

一 日本の近代史認識

 アヘン戦争に中国が敗れたとき、日本人は驚きました。このままでは、日本も植民地になってしまう。それから、日本は軍事力の強化に頑張って日露戦争にも勝利した。最初、西洋に対して、日本は中国、朝鮮と一緒に戦おうとしました。でも、頑張れたのは日本だけで、朝鮮も中国も国は乱れ、団結できなかった。仕方なく、日本は朝鮮を併合し、満州国を建国してアジアの力をまとめて西洋に対抗しようとした。ところが、西洋は日本が強くなりすぎたと感じて経済封鎖をしてきました。石油と鉄が無ければ、日本の軍事力は無力化される。そう考えた日本人は武力で資源のある西洋の植民地を占領しようと戦争を起こしました。しかし、この大戦争には負けてしまい、この戦争を起こした責任者はA級戦犯として処刑されました。

質問 1-1 あなたは今まで、このような歴史認識を考えたことがありますか? y/n
   1-2 A級戦犯とされた人たちが処刑されたのは当然と思いますか? y/n
   1-3 日本人は A、罪を犯したと考えますか? それとも、B、頑張ったと思ってくれますか? A/B

二 日中の戦後史

 戦争が終わって、講和会議が開かれ、蒋介石が賠償を放棄した時、日本人は心の底から感謝したものです。日本人は戦争で中国に迷惑をかけたと感じたので、国交正常化以降、政府、企業、民間の各レベルで中国の発展のために尽力してきました。多額のODA、最新鋭の技術協力、中国を緑化するため生涯をかけてゴビ砂漠に植林をしている人も居ます。
 ですが、私たちは最近このような日本の努力が中国側から全く評価されていないのに気が付きました。当たり前だと思われているのです。別に私たちは感謝されたいと思っているのではありません。友好を築く土台になればよいのです。しかし、事態は友好とは逆の方向に進んでいます。もう、中国に経済的な支援をするのは止めた方がいいと考える人も増え始めています。

質問 2-1 あなたは日本の官民にわたる経済支援を知っていますか? y/n
   2-2 日本は経済支援を続けるべきだと思いますか? y/n
   2-3 日本の経済支援についてあなたの感想を聞かせてください。 
 
三  中国の近代史

 清朝末の混乱、軍閥の跋扈、辛亥革命、日中戦争、国共内戦、大躍進政策、文化大革命。ここまでの中国の歴史は困難を極めました。中国国務院は日中戦争の犠牲者を1000万人以上としてます。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-11- 04/faq12_01.html (しかし、極東軍事裁判では180万人と自己申告しているようです。) それでも多くの人が死んだのは事実です。そして、その後も困難は続きます。国共内戦の犠牲者は分かりませんでしたが、大躍進政策の餓死者、文化大革命の犠牲者は合わせて2000万人から6500万人との報告もあります。 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kak2/1209301.htm これらに比べれば、天安門事件など小さな事件です。
 多くの人が死んだ苦難の中国史において、多くの悲惨な出来事が起きていたと思います。その中の一体どれだけが日本の責任でしょうか?日中戦争の間であっても日本軍を称した中国人の残虐行為だってあったはずです。日本の歴史の中であまり日本人は残酷な行為をしていません。中国政府は記念館などで日本軍の残虐行為を展示していますが、普通の日本人には出来ないことです。

質問 3-1 上記のような中国苦難の歴史をあなたはどう学校で学習しましたか?   
    3-2 大躍進政策、文化大革命がもたらした悲惨な事態を知っていますか? y/n 
    3-3 日本人以外に近代の中国で残酷な行為をした人を知っていますか? y/n

四 ”侵略”について

 日本の戦争を”侵略戦争”だと非難する人が居ます。侵略とは他の民族が住んでいる土地を自分のものにすることだそうです。中国もこのように表現していますが、中国政府自身、戦後すぐ満州を自分のものにしました。その後、チベットにも軍事侵攻して世界を驚かせました。
 万里の長城は知っていますか?この長城は外敵から中国を守るために建設されましたね。場所は満州との境です。これは、満州(中国北東部)が本来の中国ではない何よりの証拠です。
 
質問 4-1 満州やチベットは中国本来の領土だと思いますか? y/n
    4-2 上記の質問が y ならその理由は何ですか?
    4-3 中国政府は日本の戦争を侵略戦争だとして非難しても良いと考えますか? y/n

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日日翻訳 投稿者:日本語ネイティヴ 投稿日:04/28(木) 09:24

多くの日本人は普段、テレビ・新聞で中国のことを知ります。
テレビで放送している画面はもちろん真実です、しかし、それが全ての真実ではありません、一部の真実です。
カットされた画面はけっこう多いです。
マスコミの特徴として、伝えたくないもの、面白くないものは絶対流さないと思います。

例えば今回の反日デモについて、放送は日本の大使館・企業、さらに日本人留学生の被害を一方的に受け取って語っている。
テレビを見ていると、石を投げる、車を壊す、中国警察の無関心、日本を国旗の燃やす映像をくり返し放送しています。
この結果、日中二つの国あいだは、もともと誤解や民族的習慣・考え方が違う上に、更にわだかまりが深くなります。
日本のマスコミは視野をもっと広く、放送は状況を全体的に伝えるようにしてほしいと思います。

一番大切なことは「普通の中国人が本当に考えている事は何か?」です。
これを日本人に伝えないといけないと思います。
しかし、多くの日本人はこれを全く知りません。
ただ単純に、中国人は乱暴で、無思慮で、過去を口実に現に自分が行っている暴行の悪を悟らない、そういう阿呆だと思わないで下さい!

中国人が日本人に対して一番聞きたいことは、なぜ日本人は日中戦争の歴史に疑問をもち、再検討して、少しずつ認識を改めて行くのか?です。

例えば南京大虐殺の犠牲者の人数に疑問を持って、30万人ではない、20万人、10万人、さらに5万人と認識を改めて行く。
何十万人の人が殺されたか、多分、現在ではハッキリした数を確定できないかも知れません。

しかし、兎も角、日本人は南京事件で残酷なことをやりました、つまり、日本が悪いことをしたことは争えない事実です。
もし殺された犠牲者の数が少なくなったら、日本人の心は軽くなりますか?
罪悪感も少なくなりますか?

日本人が南京事件を熱心に議論し、研究し、中国に反論して、一体どうするつもりですか?
自分の本当の罪悪を隠したいのですか?

では、もし中国・韓国・アメリカの教科書が広島・長崎での原子爆弾の犠牲者数は12万と8万人ではなく、6万と4万人です、さらに検討を要しますと書いたら、日本人はどう思うでしょうか? 

また「中国の教科書は「天安門事件」も書いていないという人もいるかも知れません。
が、これは中国内部のことだから、日本からトヤカク言われる筋合いはありません。
「書く、書かない」は中国人が自分で決める問題です。

日本の江戸時代のことについて、何が書いてないとか中国人は絶対言わないです、言う権利がありませんから。
他の国と関係あることは慎重に考えねばならず、教科書を自分の都合に合わせて書いてはいけません!

中国と関係する事だけなく、韓国の「従軍慰安婦」問題も同様です。
教科書の問題は重要ですから、日本が子孫に何を教えていくか、皆、日本を見ています。

ドイツは第二次大戦中に何百万人ものユダヤ人を殺しました。
しかしドイツには周辺諸国との間に教科書の問題がありますか?
ありません。

日本人は度量のある国民ですが、南京事件や従軍慰安婦問題を承認する度量に欠けています。
靖国神社の参拝もそうです。
中国人の目から見れば日本人は少しの反省の気持ちもなく、更に一所懸命自分の罪を隠す。
別に中国人は日本に補償を要求するつもりもない、ただ罪を認めてほしい!
これさえできない国が安保理の常任理事国になる資格はありません。

中国人は、そのことを日本に言いたかったので、デモを起こしました。
日本のマスコミによって、日本人の中国に対する印象は、民主国家ではない、北朝鮮と仲が良い、偽物を造るのが上手い、在日中国人に犯罪者が多い、農産物に農薬が多い、飛行機が安全ではない、国防費が多い、経済発展して日本を追い越せる恐ろしい国という事になっています。

中国には勿論いろいろな問題があります。
しかし、それ程おかしな国ではありません。
日中の現在の対立は、相互理解の不足、考え方・民族習慣の違いが原因です。
私の現在の日本認識と、来日以前の日本認識とは全く違います。
それと同じように多くの日本人の中国認識と中国と現実の中国もかなり違います。

2万人のデモ隊の中で過激な行動を取った者は200人程度しかいません。
この200人が、もし本当の日本を理解したていたとしたら、デモで乱暴はしなかったと思います。

多くの中国人は、日本に対して意見を表明する適切な方法がわからないのです。
一部の過激な人に影響されて、乱暴をしました。
過激にしないと、日本人に注目されないと思ったからです。

でも無関係な日本人留学生に乱暴した者は本当に愚かです。
私からの望みは、日本人は現在の中国人全体が皆、過激派だと思わないでほしい、ということです。
毎日、テレビの映像を見ていると、そう思う恐れがありますから。

また、私が心配するのは事態がこのまま拡大すると日中関係にきっと悪影響を及ぼすということです。

私の声は小さいけど、日中が仲良くなってほしいです。

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日々翻訳について 投稿者:平蔵 投稿日:04/28(木) 22:50

日本語ネイティヴさん、より読みやすい日本語に推敲していただき有り難う存じ候。
以降の論議の参考と致したい。

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