番匠幸一郎氏を囲んで (二)

 《路の会会員との質疑応答》 
 西尾:どうかどなたからでも、口火を切ってください。

黄文雄:部隊派遣隊の名前、初めて「群」という部隊名を聞いたのだけれども、たとえば筑波大学の場合は、何々学群と使っているのだけれど、群というのは普通非組織団体に使っている。なぜ軍隊なのに、群を使っているのか。義和団などは団と使う。なにか裏があるんじゃないか、違和感を感じるんです。

番匠:実は私たちの、陸、海、空を問わず部隊名の記号、部隊の種類を示す言葉として、普通に使っている言葉です。たとえば、小隊だとか、中隊、大隊だとか連隊だとか、或いは旅団とか、師団とかそういう言葉は旧軍以来ずっと使われてきました。

西尾:今も使っていますか?

番匠:今も使っています。群というのは大体、連隊と同じくらい、指揮官でいえば大佐相当ぐらいですね。同じ部隊として使っています。単一の任務を大佐が指揮をする、一佐が指揮をする部隊として、連隊というのがありますが、連隊というのは、特定の部隊につけることが決まっているのです。普通科連隊、歩兵連隊とか、あるいは砲兵の連隊とか、戦車の連隊とか、そういう特定の部隊につけることが決まっておりますので、今回のように臨時編成の任務で作る場合には連隊という名前をつける基準に、実は合致しないものですから、相当する部隊の名称として、群れというか、群というのをつけましょうということで、今までも、たとえば東ティモールに出た派遣部隊は、PKOの部隊を東ティモール派遣施設群と言っておりますので、特別他意があるわけではありません。通常部隊のスケールを表す名称として、大佐相当の一定の規模の場合には群という言い方をしている。

○○:実は自衛隊は何年ごろから使い始めたのですか。

○○:結構古いですよ。一番よく使っているのは、海上自衛隊。

西尾:これは正式の呼び名ではないんですね。

番匠:正式です。

西尾:軍は旅団、師団、とかどこかに位置付けられて、何人以上、何人規模ということになっているわけですか。

番匠:大体、陸上自衛隊の場合は連隊に相当しますが、海上自衛隊の場合は旅団に相当します。海上自衛隊の群長は将官がつきますね、陸上自衛隊の場合は群長といいますと一佐がつきます。航空自衛隊も群というのを結構使っております。

西尾:この群はこの字は、戦前はなかったですね。

○○:当時は何々派遣隊と言っていました。

西尾:僕も今日見てぎょっとしたんですよ。

黄 :米軍の用語を借りたじゃないんですか?
米軍のなにかグループというのを翻訳してそうなったのでは?

番匠:そうですね、これ英語にするとグループということになりますね。

西尾:でも今、非組織団体に使うというお話でした。

番匠:我々はもう、普通に部隊の規模として使っております。

西尾:この辺の連中はうるさがたですから。
(笑い声)
小田村:さっきのお話の中で、任務がどうであれ、とにかく装備、編成というのはしっかりとしなくてはならないという話がありました。初めにサマワ派遣の時に、○○○○(陸幕?)は700人規模が必要だということを言ったのに、官邸の方で、600人にねぎられちゃった、ということがありましたし、装備の面でも、迫撃砲がでてくるんで、レーダーを装備しなくちゃいかんと出ていましたけれど、やはり何か足りないものがありませんでしたか。

番匠:ざくっと、申し上げれば、今回のイラクにおける任務を遂行するに於いて、決定的に足りなくて困ったということはありませんでした。私、実は現場の人間として、じゃ、600じゃ足りなくて700だったらよかったのかと言われると、与えられた枠の中で作るべきことですので、600でそれなりの組織を作るということで、全力を傾注しておりました。700でやれと言われれば、700で作ります。1000でやれと言われれば1000で作ります。その中で与えられた任務をやっていくということです。

 冒頭申し上げましたように、これは政治がお決めになる、政策的な判断であろうと思います。私はそういう意味では600の部隊であるということでそれなりの装備を持たせていただいたと思います。むしろ多すぎるぐらいでした。600の人間には。たとえば、車両が200両ありますけれども、600人で200両ということは、三人に一人と思われるかもしれませんが、オフィサーが動くときには、大体下士官のドライバーと下士官とセットにしますけれど、トラックだとか工作用の車両だとかいろんなものがあります。そういう意味では600人に対しての200両というのはたくさんありすぎるぐらいでした。整備ももちろん必要になってきますから。武器についてもですが、ま、欲をいえばキリはありません。

 半分冗談みたいですが、たとえば90式戦車を持っていけば越したことはないんですが、絶対何を撃たれてもびくともしませんから。そういうものがあればいいなと思いますけれども、今回の任務で戦車を持っていくということは、ありえませんし、そういう意味では今までのPKOとは違いまして、機関銃の数を心配することもありませんし、84ミリの無反動砲という対戦車砲、110ミリの対戦車けい(携)弾というこれもRPG-7よりもはるかに性能のいい、対戦車ロケット砲のようなものを持っていきましたし、けっこう装備と言う観点では、今回は充実させていただいたのかなと思います。

 それから、対砲レーダーの話ですけれども、ちょっと説明させていただくと、我々は迫撃砲という火器によって何回か撃たれたんですけれど、曲射弾道という放物線を描いて飛んでくるわけです。そうするとレーダーの波を出しておくと、二点カウントしますから、場所を特定できるわけです。落ちた所から逆算してどこから撃ってきたかを特定できます。その場所を特定できると、そこを探せば、あるいはそこにいる敵に対して、対応すればいいということになります。対砲レーダー、対迫撃砲に対するレーダーというものを我々は装備しております。今回も向こうが迫撃砲を撃ってくるんだったら、そういうのを持っていったらいいじゃないかということがありまして、かなり具体的に検討したんですけれども、結果的には、今までにもオランダも持っておりましたし、インドも入ってくる、イギリスも多分持ってくるだろうということで、自衛隊そのものが持っていかなくても、大丈夫ということで、それは今のところ、持っていかないことにしました。ただ、イギリスが持って来なければ、我々としても、持っていくのはやぶさかじゃない。

「番匠幸一郎氏を囲んで (二)」への1件のフィードバック

  1. ちょっと補足を

     いまや完全にゲリラやテロリストたちのおもちゃと化してしまった悪名高きRPG(旧ソ連時代に開発された対戦車ロケット弾)・・・こんなものが本当におもちゃに思えるほど自衛隊に装備された携帯対戦車弾の威力はすさまじいものだそうです。
     110mm 個人携帯対戦車(榴)弾、LAM(Light Antitank Munition)とも言います・・・「弾」と呼ぶのはこれが一発限りの使い捨てのため。
     ここでは個人携帯、あるいは個人携行という意味で「けい弾」とおっしゃったものと思われます。
     十分に接近した状態で命中すればどの国の主力戦車であれ一発でしとめることができるとか。
     しかし、この武器にはその性質上、大きな「欠点」があるそうです。ディスポーザブル、使い捨てということです。
     厳密には本体にすえつけられた照準器は再使用できなくもないそうです。
     が、本体と一体になった弾頭部を発射した後に別な弾頭を持ってきてもロケットランチャーのようには次弾を発射できません。
     初弾必中でなければならない武器ということです。照準が狂わないように、発射時の反動が極めて小さい仕組みにはなっていて、弾頭発射時のエナジーを相殺するために、同じ質量の物体を反対方向に射出する「デイビスの平衡原理」をとるため、「カウンターマス」と呼ばれる細かいプラスチック片を筒尾から放出することで、後方への爆風を減少させる構造になっているそうです。
     とはいえ、目標に確実に命中させるには3年4年と経験を積んだ士長・伍長でもそれなりの錬度がいるとのことです。直接照準射撃ができないので移動目標に対しての射撃は困難だそうです。
     また、撃った時にそれなりの後炎や煙は出ますのでこちらの位置を暴露する可能性は否めないとのこと。

     迫撃砲弾というのは40度以上の仰角で発射され放物線を描く、これを曲射弾道と呼び、障害物の陰に隠れる敵に対しても砲弾を投射できるそうです。
     直接目標を視認できなくてもその位置さえ特定できれば間接照準で正確に射撃できるとのこと。
     逆に弱点としては、曲射弾道のため、対砲迫レーダーに発射位置を特定されやすいそうです。

     今回、直接照準の重火器を持っていってませんが(持って行かせてくれない?)84mm無反動砲は初速が遅く、対ゲリラ戦では使い物にならないのではとの疑問を呈している人もいます。

    以上、不明な単語がありましたので、元陸上自衛隊の砲術をなさっていた方に問い合わせました。

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