番匠幸一郎氏を囲んで (三)

西尾:それでは質問をつづけさせていただきますが、一説では、射撃を受けた時には応戦できるけれども、遠い所から、なにか怪しげなものが、遠隔地から来そうだぞとわかっていても、そこへ出てって先に殲滅することは許されていないと聞いていますが、これは事実ですか。

番匠:まず、前者ですね、至近距離から射撃

西尾:射撃されたら、応戦できる?

番匠:されたらじゃなくて、されようとしても応戦できます。そこに現場性というのがありまして、狙おうとしている。正に同僚の身が、あるいは自分の身が、私たちが守ろうとしているものの安全に、危険を発生しようとしているのであれば、別に向こうが発射する前でも、撃つということは許されております。ただ、先ほども申しあげておりますけれども、迫撃砲のように、何キロか先の、

西尾:でも、わかっていると。何かがうようよしていると。

番匠:それはあり得ないですね。それは見えない。

西尾:いや、でも出掛けて行って、
(笑い声)
番匠:そうすると、現場になるんです。その場でということになります。

西尾:二キロ先で探知した場合。

番匠:二キロさき、これ我々が今居る所から、砂漠の中にいるとはいえ、いろんな施設もあったりして、

西尾:しかし、そこへイラクの人が通報してくる。

番匠:それは自分達が確認しないとだめでしょうね。自分達が。

西尾:確認して、あると。で、相手がもう撃とうとしていると分ったとして。

番匠:そこでですね、そうするとその任務は誰の仕事ですか。どこを狙ってやろうとしているか。

西尾:いや、こっちを狙っていると分った場合。
(笑い声)
それは私どもが一番、今の憲法上の問題として知りたい。だけれども僕は憲法違反にはならないと聞いている。防衛庁長官もならないと言っているわけですね、ミサイル基地を叩くかどうかという問題と同じです。

番匠:明らかにですね、自衛隊に向けて、そこに自衛官が通りかかって、で、弾を入れて撃とうとしているということであれば、そこを攻撃したとしても、許されるかもしれません。しかし、その場を見ていないで、誰かの通報によって、そこに行ってということであれば、そこに現場性というのがあるわけです。全くの見えないところから何キロか先からミサイルでバーンと撃つということはですね、やはり現場の私の判断としてはそこまではやれなかったと思います。

西尾:一度あって、二度目だってもやりませんか。
一度撃たれた、敵はどこにいるか分っている。そしたら、出て行って叩くということは?

番匠:それは出来ますね。

西尾:それはできますね。それも出来ないんだという、話があって、なんちゅうことだと思ったんですが、それは大丈夫?

番匠:それは、明確であればですね。

西尾:それから、応戦中にイラクの労働者を撃ってしまったとする。これは障害致死になると?つまり、国家が責任を取らないで、自衛官の責任になると?

番匠:まぁ、業務上過失の場合にはですね、これは国外規定はないわけです。ないというか、要するに国外におけるそれについては、犯罪というかですね、事件性というのは発生しませんので、法的にはですね、国外におけるそれは罪に問われないということです。

西尾:でしょうね。応戦中に弾が当ってしまった場合にですよ。労働者に。

番匠:ただ、実際にですね、全く無実のひとをやってしまった場合には、そこはきちっと調べることになると思います。ただ、意図が

西尾:意図がもちろん、なくて、応戦中に。

番匠:はい、それは隊員に罪を問うということは、あり得ないと思います。

西尾:そういう常識はありますね、大丈夫ですね。
そういう点でも手足が縛られているという話があってね、それにも僕は憤慨していたんだけれど。

番匠:基本的には、皆さん大変心配してくださるんですけれど、私は隊員には何て言ったかというと、撃てって言っていました。

西尾(笑い)

番匠:ええ、そうです。強盗、意図的殺人、これは守れない。そうでない隊員は勿論守る。

西尾:立派です、それは。

番匠:私、こういう風に言っていました。僕がその場にいれば、俺が一番最初に引き金を引くと。心配するなと。俺が一番に引くと。私は実際そう思っていました。毎日宿営地を出るときはですね、弾をこめて、何かあったときは一番最初に、俺が引き金を引くと。当然いつも自分が一番先に現場にいるわけではありません。たくさんの複数の場所があるのです。そうすると、その場所での最高指揮官というか、その場所での責任者がまず最初に引き金を引けと。どんどん行くと最後には一人になる、その場にお前しかいなければ、お前の判断で引いていいと。絶対に罪に問わないから。職務において、或いは自分の判断で、殺人とか、強盗とかそういうことではなくて、引き金を引いた場合には、それは隊員には罪を負わせるということはないから心配するな。というふうに言っておりました。

西尾:第二隊、第三隊にそれは全部引き継がれたのですか?

番匠:全部です。

西尾:それを聞いて安心しました。

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