慰安婦と朝日新聞問題をめぐって

 8月5日に朝日新聞が慰安婦強制連行説の虚報を認めて以来、9月11日の社長の謝罪会見を経て今日までに、私は当ブログにはこれに関連する見解を発表していない。沈黙していたわけではない。沈黙したとしても引き出され、どうしても書かされるのが運命で、以下にまとめると今までに次のような発言をしているので、まとめてみる。旧作の再録もあった。

『正論』10月号―― 「次は南京だ」(これは良い題ではなかった。「朝日新聞的なるもの」に改めたい)

『正論』11月号――「ドイツの慰安婦と比較せよ」

文藝春秋臨時増刊 『朝日新聞は日本人に必要か』――「ドイツの傲慢、日本の脳天気」「朝日論説の詐術を嗤う」(1997年『諸君!』から二篇再録)

WiLL臨時増刊 『歴史の偽造!』――「外国特派員協会で慰安婦問題を語る」

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 以上のうち『正論』10月号「朝日新聞的なるもの」は近くここに掲示可能となる。

 今後の予定は、
 つくる会編 『史』に「外務省が逃げている戦後最大の外交問題」

 『WiLL』12月号 予定として、戦後の個人補償におけるドイツとの比較論の中で慰安婦のテーマが浮かび上った1995年-1997年頃の朝日の異様な意識操作について考えてみる。

「慰安婦と朝日新聞問題をめぐって」への4件のフィードバック

  1. 朝日新聞問題、なんとか廃刊に追い込みたいものです。
    先生の次の新たな評論を楽しみにいたしております。

     ところで、安倍総理のグローバリズム容認推進姿勢は、一方の靖国参拝や外交安全保障などの日本を取り戻す政策を評価しつつ、我々保守派の悩みの種です。統一地方選挙も近づいています。
     チャンネル桜の水島社長や文芸評論家の小川栄太郎氏など一定の真正保守派は、安倍総理は何らかの確信・戦略を以てグローバリズム容認推進姿勢を採って日本を取り戻そうとしていると見て、応援姿勢を一応崩していませんが、不安を感じているようです。 また、他の一定の真正保守派は、政権がグローバリズム容認推進姿勢を採った時点で、その真意心情戦略の如何にかかわらず、結果として必ず日本を毀損するので亡国の徒として断罪しています。

     私自身は、前者に近いのですが、時々後者の気分になることも多いのが実情です。後者の立場で安倍政権を見放しても、代わりが見当たりません。 前者の立場でも、安倍政権の諸政策・戦略が妥当なのか大丈夫なのかがよく見えず気持ちが晴れません。 それで、少し本腰を入れて下記の弊ブログのとおり検討を行ってみました。 拙い検討で恐縮ですが、先生および皆様のご感想を頂ければと、掲示させて頂きました。
      http://rakuaki.blog.fc2.com/blog-entry-43.html
      http://rakuaki.blog.fc2.com/blog-entry-44.html

    短縮して内容をを記すと、以下の通りです。

    (1)日本文明の存続を左右する今後の核心的課題は、①中国の膨張 ②グローバリズム ③歴史戦 ④米国の不確定性 ⑤日本経済デフレと技術凋落 の5点と考えられる。
     ①と②は直接日本文明を消滅させうるが、他の3つは間接的ないしは①と②による日本文明消滅促進要因だと思われ、また、中国問題の方がグローバリズム問題より切迫している。つまり日本の最重要の核心的課題は対中戦略であり、その次にグローバリズム、そして間接的な課題として、歴史戦、米国、経済があるとみてよい。

    (2)中国崩壊論もあるが、中国は意外としぶとく膨張する可能性もあり、また崩壊した場合も影響が大きいので、隣接する中国が日本にとっての喫緊の課題であることは間違いない。

    (3)対中戦略目標は、日本の総合的国防力を整備(憲法改正含む)したうえで、何としても中国を弱体化させ、できれば民族単位などの民主的な分裂連邦に移行させて、ナショナリズム共存共栄国際主義での世界平和に組み込むこと。
     今後、中国とはその力が増加しない程度の(できれば減少するような)経済交流にうまく制限し続け、国連のナショナリズム共存共栄国際主義を蘇生させ前面に押し立て、政府は水面下で、民間は堂々と、民主的な中華連邦への分裂を工作し、他のアジア諸国、欧米、ロシアをナショナリズム共存共栄国際主義に巻き込み回帰させる外交を展開する、という難事業をここ四半世紀目途で実施しなければならない。

    (4)上記戦略・施策には種々の障害がある。
     国内の問題としては、リベラルコスモポリタン的風潮、反日史観の蔓延の下での普通選挙のハードル。多くの平和ボケ日本人には、中国膨張を懸念しつつも、上記の戦略・施策は対決的タカ派政策と見て相当の抵抗感を持ち危険視し、また多少の経済的損失混乱を覚悟できない。 さらに、与党自民党の中に小泉以来のグローバリズム構造改革勢力、親中勢力がある。 国防力の整備には憲法改正が必須で、一政権を費やすほどのハードル。
     国外の問題としては、中国が当該戦略・施策に気づき対抗・妨害してくることに加え、欧米やロシアがその時のどのような戦略で日本に臨むか、彼らが日本をとるか中国をとるか。グローバリズムからの攻撃に関しては、現在のグローバリズムの国内外の浸透は凄まじく強力で、当面は正面衝突を絶対に避けるべき。

    (5)安倍政権の政策を吟味してみると、その積極的平和主義と地球儀俯瞰外交は、国連を前提としたナショナリズム共存共栄国際主義による外交と捉えられ、中国包囲網を構築しつつあると思われる。 集団的自衛権の憲法解釈閣議決定、秘密保護法の制定、武器輸出三原則改訂による防衛産業育成など、総合国防力強化も進んでいる。
     一方、安倍政権が対中戦略をさらに実行するには、隠密裡に同志を糾合し世論の支持を得て長期政権を維持しなければならず、そのためには、前述の多くの障害を考慮すると、残念ながら反グローバリズム的政策は取ることはできない。なぜなら、リベラル議員やエコノミストの多くがグローバリズム的政策こそが経済成長に繋がると期待し広報する中で、国民の第一の関心も景気・経済成長中心である中では、これに反する政策を選択することは得策ではない。 
     また、グローバリズム的政策の悪影響で直ちに日本文明崩壊に至ることはなく、~数十年程度で不具合・問題を摘出し、軌道修正・再規制することは期待できる。
    (6)結論としては、安倍政権のグローバリズム的政策による日本文明毀損は否定できないが修復可能であり、それよりも、安倍政権を排除することによって、緊急を要する対中戦略の実行を妨害することの方が日本文明崩壊への近道と言える。ただし、いずれも時間との競争。

     以上ですが、検討の中で私にとっては意外な発見がありました。
     国連憲章が国民国家主権を認めそれを基本単位に調整しようとしていることから、現在の国際社会は基本的にナショナリズム共存共栄国際主義の上に成立しているといえ、それが現世界の秩序維持原則といえることです。 
     それは結局日本の八紘一宇の哲学と同じで、日本文明の普遍性を物語っていると思います。 さらに言えば、意外なことにグローバリズムは国連憲章に反していると言えるかもしれません。
     国連は所詮戦勝国連合だと諦めずに、日本精神を主張し利用すべきなのだと思いました。

  2. ◇◆NSC, NIC, CIA, NSA, CSS, BND◆◇
    アメリカのNSCは単独で機能していません。それは、傘下
    に NIC, CIA, NSA, CSSがあり、Echelon(Sigint用)のよ
    うな実装システムを持つことにより、初めてそれが機能
    するようになっています。各機関は、以下の役割分担を
    持っています。
    NIC:情報収集機関からの情報を基に中長期的防衛外交予
    測を行い、大統領に提言する。
    CIA:Humint(人間を使った諜報活動)実行
    NSA:Sigint(電子機器を使った情報収集活動、分析、集
    積、報告)実行
    CSS:国防総省のもとでの国家情報活動の統合およびNSA
    への協力(トップはNSAのトップが兼任)

    NSCには、以下のようなPDCAサイクルがあります。
    Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにし
    て業務計画を作成する
    Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
    Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているか
    どうかを確認する
    Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調
    べて処置をする
    これらのどのプロセスにも情報収集分析が必要で、その
    実行システムが、上記機関です。

    このようにアメリカは、重層的有機的国家情報管理シス
    テムを持っています。(これによりロシア、中国の要人の
    資産凍結が可能になった。)敗戦国ドイツでさえ連邦情報
    局(BND)があり、Humint、Sigint、情報分析、管理、国際
    テロ対策、技術支援、教育訓練、公安の部局を持ってい
    ます。

    一方、日本にせっかく日本版NSCができましたが、それに
    ふさわしい情報収集分析システムがありません。(各省庁
    に小ぶりなモドキ物があり、ばらばらな活動を行ってい
    ますが。)日本版NSC単独では、無意味です。結果、肝心
    の大抵の情報収集は外国(主にアメリカ)まかせです。特
    に北朝鮮情報は、実質敵対的な南朝鮮依存です。また、
    ディスカウントジャパンのVANKなどの対策も手付かずで
    す。さらに、特定秘密保護法の本音が、日本の守秘性を
    認めてもらい、アメリカから情報を得やすくするため、
    というのも情けない話です。したがって、せめてドイツ
    のBNDのような自前で情報収集する統括情報機関が必要で
    す。

    医療の研究開発の司令塔となるべき日本版NIH設立さえ、
    省庁既得権益の壁の前に絶望的になったので、統括情報
    機関設立に関しても、悲観的にならざるを得ません。そ
    れでも最低限、HumintとSigintの人材育成計画を今すぐ
    立ち上げる必要があります。日本は伝統的にHumintが弱
    点で、Sigintも、上海交通大学の世界大学ランキングの
    コンピューター部門ランキング
    http://www.shanghairanking.com/ja/SubjectCS2014.html
    によると、日本の最高位の東大が76位で、清華大学のよ
    うな漢族の大学より下位で、南朝鮮のKAISTと同順位と、
    まずい状況にあります。したがって、防衛大学等での
    HumintとSigintの教育の充実を図るべきです。

  3. メールアドレスの変更をしましたので書き込みさせて頂きました。
    西尾先生は終戦直後にGHQにより旧漢字・旧仮名遣いを廃止させられたことに対し、如何お考えでしょうか?三島由紀夫の「檄文」は戦後なのに旧漢字・旧仮名遣いです。わたしはそれが本来の日本語ではないかと考えています。

  4. 村山さん阿由葉さんが選ばれた西尾全集のアフォリズム集、毎回拝読させていただいております。私が見落としていた文章もたくさんあり、よき発見を毎回させていただいております。

     村山さんが選ばれた全集8巻の中のアフォリズムの中では、8ー4、8-10、8-12、8-18、8-22、8-26、8-30が、阿由葉さんが選ばれた全集2巻の中のアフォリズム集では2-2、2-3、2-9、2-13、2-14、2-17、2-21、2-25、2-33、2-34、2-38、2-39、2-42、2-44が秀逸でした。この中では特に2-14が自分にとって最も心に響くアフォリズムでした。

     朝日新聞問題ですが、私自身は朝日新聞が消滅すれば日本がよくなるとは必ずしも思いません。もちろん、朝日新聞が部数を激減させることはたいへん好ましいことですが、私は保守系言論界で流れている朝日攻撃には、ちょっと違和感があります。

     「反朝日で協調共同しよう」なんていう、まるで左翼の人民戦線みたいな、共同戦線的言論行動というのが好ましくない結果をもたらすということは、一番時間的に近い例で、1990年代の保守言論運動の閉塞ということがあることを早くもみんな忘れてしまったのでしょうか。私は保守統一戦線論みたいなことをいう小田村四郎さんのような方の考えはまったく間違っていると思います。お祭り騒ぎで朝日新聞を潰しても、ニュー朝日みたいな存在がそれに代わって現れては元も子もない、そういうことをこういう「人民戦線論」の持ち主はわかっていないのではないでしょうか。

     私は好き嫌いでいえば、朝日よりも読売の方が嫌いなんです。2005年解禁公開のCIA文書で暴露され、以来、このCIA文書をいち早く把握した新潮社が急先鋒になって読売を叩いていますが、読売の正力松太郎は巣鴨プリズンに収監されたとき、GHQのエージェントの密約を結び、読売の親米主義宣伝と代替に正力の政治的立場をアメリカが支えるということを戦後ずっとおこなってきた。

     朝日が中韓の手先なら、読売はアメリカの手先なわけです。しかも、トップが、正真正銘、売国密約を結んでいた。そんな内情を隠し続けてきて、左翼と保守の双方にほどほどにいい顔をしている読売の方が私は朝日よりいかがわしいと思いますね。朝日が消えたことの反動で、読売が1500万部に部数を増やしても、私は何も意味がないと思います。

     端的にいって、朝日が消えることより、産経新聞が部数を100万部増やし、「正論」の売れ行きが二倍に(ページ数も二倍に)なり、もう一つくらいよき言論雑誌ができる方が、よほど意味があると思います。それと、産経新聞全体の教養力の増進の必要ですね。産経新聞の志はすばらしいのですが、残念ながら、教養力は朝日新聞に及ばないといわざるを得ません。

     教養というのは相当程度、左翼も保守も関係ないもので、朝日の人たちはよく勉強していて、基礎体力ならぬ基礎知力はなかなかのものです。産経以外の他の新聞については、たとえば、日本経済新聞あたりは、新聞よりも経済雑誌の性格をもっと強く出す必要があるように思います。私は朝日がダメージを受けたこれを機に、各新聞勢力が自分たちの力の問題点を再検討し、21世紀に伸びていけるように策を練るべきだと思います。

     

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