宮崎:まず、鉄鋼から言いますと、新日鉄もJFも高炉を持っていくんです。しかしこれは大変なんですよ。この高炉で特殊鋼を作られたら、戦車から大砲からみんな向うの精度があがるんでね。この問題があるんですよ。
西尾:禁輸にはできないの、日本は政治的に。
宮崎:いや、もうこれは決めちゃっていて、向うで作っていますよ。
西尾:そういうのは、たとえばアメリカだったら防衛上のストップをかけると思う。
宮崎:日本にはその条項はありません。
西尾:だけども、それじゃ自分が自分を殺すような話ですね。
C:製鐵の投資はストップはかからない。もう少しハイテクのものになってくれば、ちがうんでしょうが。
宮崎:クルマの問題でしょ。クルマは全社でていて、しかもトヨタは、天津、広州、長春、三つ工場を作るんです。これみんな合弁でしょ。合弁というのは危ないですよ。ただ、それほどいいものは作りませんから。
問題は日産ですよ。日産は武漢の――武漢は上海から600キロあるでしょ――その武漢から200キロ山奥のところなんです。なんであんなところに行ったのかというのは、非常に不思議なんですけれど、ただあそこでつぶれかけの(とうふう汽車)というのがあって、頼むからそこと合弁してくれと、カルロスゴーンは出遅れたのを一気に挽回するためにたのみこんで、あそこと合弁して、年間30万台作るそうです。日産は、それ以前の基本の商業として、クェスチョンマークですね。
西尾:どういうクェスチョンマークなの?
宮崎:つまり、そんな山奥に作って、どこに売るんですかね。作った自動車を全国に輸送するだけでも、コストがかかりますよ。それから原料を上げるのに、船でえっちらおっちら持って行って、それから武漢の山奥まで運ぶんですかね。
西尾:そこは計算してやっているんでしょ。
宮崎:いや、もちろんやっているんですが、ただ、現地に行っている人から聞くと、なにしろど田舎で、カラオケもない、週末に200キロ運転して武漢まで行ってカラオケをしに行くっていうんですからね。それぐらいひどい所だっていうのは、分ると思うんですよね。
C:80年代の話になりますけれど、中国は松下とかトヨタに是非中国に来て、工場を作ってくれと言ったんです。松下は割りあい素直にしたがって、北京の近くにテレビの工場なんかを作ったんですが、トヨタは非常に慎重な会社ですから、これはアメリカに行くときもそうですし、ヨーロッパに行くときもそうですが、他より遅れるんですよ。いつも遅れて、あとで追い越してしまうというそれがトヨタの特徴なんですが、中国では慎重の上に慎重に、80年代は受けなかったんです。
それでヨーロッパのフォルクスワーゲンなんかがその時受けて出て、結果としてフォルクスワーゲンが中国の中では今一番大きなシェア―を取っていると思います。日本の企業もホンダあたりが出て行って、初めて、10年くらい前に、私トヨタといろいろ話しをしていた事があったんですけれども、トヨタの人もやっぱり中国に出遅れたなと、意識があって、それでダイハツに出て行ってもらったものをダイハツと一緒にやろうと、いまおっしゃったようになったんです。それでトヨタとしては、今他のマーケットと同じように、三番手、四番手だけれどもいつかは一番手になってやる、という格好でやろうとしているんじゃないかと思います。
宮崎:ただ、日本車がデモ隊に壊されましたからね。
西尾:なんで中国に進出してやりたがるんだろうかなァ。
C:それはマーケットが大きいからですよ。
西尾:いやぁ僕はそんなに目の色を変えてやらなくってもいいと思うんだけどな。
B:中国で中国向けの品物を売るというのは、比較的いいけれども、製造工場を中国へ作ると、設備投資もこれは非常に危険だから、考えてやったほうがいい。
C:作って向うで売るのは、今でも難しいと思いますよ。作ってそれをどんどん世界に売っていくほうがむしろいい。
西尾:中国向けで売るとなると、金を取れないということ?
宮崎:自動車が一昨年440万台作って、去年500万台作ったんですね。今50万台ぐらい在庫があるはずなんです。それは結局自動車ローンを組んだけれど、二回目くらい払って、そのままドロンというのが相当いるからなんですよね。金融子会社が今までなかったんですが、日本信販みたいなものをじゃあ中国が作れるかというと、作れないんで、それをつくることまでまたメーカーに頼んでいるわけですよ。
トヨタは金融子会社を出して、クレジットカードみたいに割賦を受付けるわけです。受付けているんですけれど、3回、4回くらい払ったら、そのあとドロンというのが相変わらず多い。今取りっぱぐれが非常に多いので、今度頭金を20%、30%にして、それで今売行きがガタっと落ちたんです。中間層が買い出したからこういうことになっている。
特権階級は自動車買うにせよ、マンション買うにせよ、全部キャッシュを持ってきていますからね。消費人口が変ったことで、資料を読み違えた。やはり基本的に中国人は、金は返さない。払うのは最後の土壇場で払うけれど、ただひたすらまけろっていう民族ですから・・・・
西尾:痛い目に会うんじゃないですか、日本の企業は。
D:すでに相当痛い目にあっていると思いますよ。