【目次】
I
・回転する独楽のように
・上皇陛下の平和主義に対し、沈黙する保守、取りすがるリベラル
・講演筆録 歴史が痛い!
・宮内庁の無為無策を憂う
II
・言論界を動かす地下水脈を洗い出す
・そもそも「自由」を脅かすものは一体何か
・私が高市早苗氏を支持する理由
III
・安倍晋三と国家の命運
・「移民国家宣言」に呆然とする
・日本国民は何かを深く諦めている
・保守の立場から保守政権批判の声をあげよ
IV
・二つの病理
――韓国の「反日」と日本の「平和主義」
・朝鮮と日本とはまったく異なる宗教社会である
V
・中国は二〇二〇年代に
反転攻勢から鎖国に向かう
・日本とアメリカは現代中国に「アヘン戦争」を仕掛けている
・歴史の古さからくる中国の優越には理由がない
・中国に対する悠然たる優位が見えない日本人
・「反日」は日本人の心の問題
VI
・「なぜわれわれはアメリカと戦争をしたのか」ではなく、
「なぜアメリカは日本と戦争をしたのか」と問うてこそ見えてくる歴史の真実
・今の日本は具体的にアメリカに何をどの程度依存しているか
・ありがとうアメリカ、さようならアメリカ
VII
・二つの世界大戦と日本の孤独
VIII
・上皇陛下が天皇をご退位あそばされる頃合に、
「陛下、あまねく国民に平安をお与えください」と私は申し上げました。
通りすがりのものです。このコメント欄を読むたびに、いつもこんな感じがします。
昔ながらの古い喫茶店のドアを開けて中に入ると、談笑していた常連客が一斉にこちらを見る。会話を中断させて気まずい雰囲気が漂う。なんとなく場違いなところへ来たな、という感じです。経験のあるかたも多いでしょう。
通りすがりながら、ときどきこのコメント欄をのぞくのは、かっては熱烈な西尾フアンだったからです。以前書きましたように、全集はこれまで20冊、本棚に飾ってあります。ほとんど読んでません。西尾さんの本は大半は買っているので、読むなら単行本で済むからです。
今回、コメント欄に駄文を書いているのは、「水間条項TV」というのを見たからです。ああ、あの水間さんか。ネットの世界に詳しい方なら、お分かりと思います。
今から30年ほど前、経済学者の野口悠紀雄さんがインターネットについて文章を書いています。それを読んで驚きました。まだ日本人がインターネットを知らないときです。企業がホームページを開設することが新聞記事になる時代でした。カーソルもなければグーグル検索もありません。目的のホームページにたどり着くまで数字とアルファベットを組み合わせた情報を10回程度入力する必要があったかと記憶します。
その文章で野口さんはこう書いていました。ネットは下水道のようなものだ、宝石のような情報もあるが、汚物もいっぱい流れている。
ネットの動画を見ていると、怪しげなものが目につきます。この世界はすべて国際金融資本が操作しているとか、デイープステートが動かしている、というのも、その1つでしょう。本人が信じ込んでいるので始末が悪い。少し意味が違いますが、竹山道雄さんが「昭和の精神史」で使われた「上からの演繹」を思い出してしまいます。最初から結論を決めて、すべての出来事をそこへ話をもっていき、解釈する。でもこういうのに引っかかる人が少なからずいることに驚きます。いやはや。
齊藤緑雨 樣
「ああ、あの水間さんか。ネットの世界に詳しい方なら、お分かりと思います」とのことなので、ネットに詳しくない私としては、その先で、水間さんについての解説・批評があるのかと即斷して、期待、讀み進んだら、さうではありませんでした。
私が水間條項TVなるものを初めて見たのは昨年の4月、たしか「中國人3000人が特別枠(だつたか、格別の事情だつたか)で日本に入國してゐる」といつた内容でした。その後、櫻チャンネルの水島社長との間で、學歴詐稱、水島社長制作の映畫の考證などをめぐつて、罵り合ひがあつたことは少し承知してゐますが、今囘、御本人が言ふ、つくる會發足の際は、西尾先生が會長は勿論存じてゐましたが、「私が綜合司會を務めた」とは初耳でした。
「ネットの動画を見ていると、怪しげなものが目につきます」には、ほぼ素人の私も同感です。「竹山道雄さんが『昭和の精神史』」で使われた『上からの演繹』」については熟知してゐるつもりです。
それが水間さんとどうつながるのでせうか。彼も「最初から結論を決めて、すべての出来事をそこへ話をもっていき、解釈する」性向を持つてゐるといふ意味なのでせうか。それとも全然關係ない? 「こういうのに引っかかる人が少なからずいること」は正に、いやはやですが、「引つか」ける側に水間さんも?
水間さんについて知りたかつたのですが、貴文の論旨が掴めなかつたので、質問しにくく、遲くなりました。もし間に合へば、お教へを。
*
幹二 先生&諸兄! !オッス! !!
幹二先生??俺も まだまだ全然勉強不足だけど、幹二先生も先人の足元にも及んでねーぞッ! !
*
R3.2021.10/25,16:28.
チャンネル櫻の「三島由紀夫と全共鬪そして連合赤軍50年」といふ
妙な題の討論番組(https://youtu.be/X0bTXwYKEgo)に我等が渡邊
望さんがオンライン參加されました。私はすぐに下の寸感を彼に送りま
した。
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渡邊 樣
「なんとなく波長が皆さんあっていなかった」のは當然でせうね。
渡邊さん以外にまあマトモなのは、辛うじて濱崎洋介でせうか。
「本土決選をやらなかつた負ひ目」(これは貴兄のかねてから
の持論ですね)、「コロナによる潰滅的ダメージ」、「三島につ
いては作品一つづつを愛する」(三島の長篇小説を殆ど讀めずに
きた私とは大分違ひますが)など御説に感銘を受けました。
ただし、オンライン參加のせゐで、貴兄の發言が少かつたのは
遺憾で、全體として、無駄話を長々と聞かされた思ひです。
不完全なオンラインでは、ずゐぶん疲れるでせう。御苦勞樣で
した。
池田 三寸
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渡邊 樣
「ベアフル酵素ドリンク 500ml 酵母 核酸 乳酸菌 腸内細菌 含有 全て生きたまま冷凍発送」が「原価=アマゾン等の半額以下」とはありがたい、取り敢へず2個お願ひしたく(效き目により、重ねてお願ひするかも)、よろしく御高配のほど願ひ上げます。
池田 三寸
(追伸)濱崎洋介の「全共鬪の介の姿を見たくない」には完全に同感です。當時も、50數年後の今も、氣障と厭みで練り固めたやうな男ですね。何が「これで三島の追悼ができた」か。ちやんちやら可笑しいですね。三島も介ほどの低能には、輕蔑しつつ、口を利くことは平氣だつたのですね。
渡邊 樣
特別の御配慮恐縮です。到着次第(金額が明示されてゐるでせうから)、
直ちに銀振またはクレジットカードでお支拂ひします。もしも、踏み倒した
場合は、人を見る目がなかつたとお諦め下さい。
池田 三寸
(追伸)介正彦曰く「これ(三島との”討論”場面の動畫)を分析してくれれ
ばいいんだよ」。馬鹿は死ななきや治らないどころか、この手合ひは死んで
も治りませんね。
これを、「僕の行動は僕の小説よりも難しいーーその點は自信がある」と言
つた三島が聞いたら微笑することでせう。三島は「50年後、100年後に
分るかもしれないが」とも言ひましたが、さてどうでせうか。憂國忌に集ま
つて、神妙に拜禮する人々をテレビで見ると、そんなことを思ひ出します。
犬塚潔曰く「讀んだり、人の話を聞いたり、原稿・遺墨を集めたり、あれこ
れやつて、50年後によく分つたことは、結局『(三島のことは)よく分ら
ない』といふことだ。本當に分つてゐるのは、世界中で田中美代子さんだけ
ではないか」。これはどうでせうか。私は半ば首肯しつつ、三島から「眞の
リズール」と呼ばれた田中女史の他には、西尾幹二、渡邊望・・・と指を折
つて算へます。
渡邊 樣
お世話になります。
仰せの手續は明日、家内にやらせます。
御配慮に感謝します。
池田 三寸
(追伸)三島の長篇小説を殆ど讀めない私には發言權はありませんが、
「三島論についてはいずれやりたいと思いますが、私は討論会の最後に、
池田さんの言われたことと同じ精神的ポジションで、『考えれば考えるほど
三島さんの政治はわからなくなる。だから作品論への愛情にとどめる禁欲
をしたい』といったのでして、どうも参加の皆さんの意見はシャープだけど、
空転しているという感が否めなかったんですよね」には、大いに共感しまし
た。
どう議論を進めようと自由ですが、基本は個々の作品に對する愛情ですよ
ね。貴兄ほどの見識がありながら、當面、そこに「にとどめる禁欲」の段階
にをられることに深甚な敬意を表します。
三島は「小説よりも」と言ふが、その小説も私には十分難しい。評論はよく
讀みますが、てんで齒が立たないものもあります。はつと目がさめる思ひが
したり、しみじみと胸に沁みわたるやうな氣がすることもあり、その第一は
『作家論』の「森鴎外」で、「文づかひ」を論じた次の一節です。
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「をりをりの人の肩のすきまに見ゆる、けふの晴着の水色のみぞ名殘
なりける」
といふ、餘韻に充ちた結句は、私の心に鮮明に燒付いてゐる。
これは明治前半の日本が、西歐のロマンティシズムの現場にやうやく
間に合つて驅けつけて參加したところの最後の證言のやうなもので・・
鴎外以後日本の文學者は、二度とこのやうな、身自ら西歐の物語的世
界に身を置く幸運にめぐり合はず・・・・・・
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この「最後の證言」とは我が國近代史の核心中の核心でせう。荷風が心醉した
フランスだつて、僞物だつたかもしれないといふ氣がしてきます。かくも重大
な發見・斷定を、かくも淡々と、事もなげに行ふ三島とは、なんといふ人かと
の感慨に何度捉へられたかしれません。
それを西尾先生に傳へたら、「鴎外だつて既にニーチェが告發してゐた時代の
ドイツですからね。文明の衰弱と同時に尊大なる頽廢が激しく叩かれてゐたわ
けですが、さういふドイツはまつたく鴎外には見えなかつた」と、實も蓋も無
い話にされてしまつたーーそんなこともありました。
渡邊 樣
今日午後、手續きを了へたさうです。
破格の扱ひに深謝します。
效き目は相性の問題もあり、まだ斷言はできませんが、
引續きお願ひするかもしれません。どうぞよろしく。
池田 三寸
(追伸)村松剛(私は編輯者として接し、村松先生と呼んでゐましたが)は
昭和46年の秋『三島由紀夫ーーその生と死』といふ一本を出版しました。
三島の一周忌より前ですね。
これを西尾先生は後に「許せない」と言はれました。村松にしても、待つて
ゐました、好機と思つたわけではないでせう。のちに「誤解や曲解にみちた
三島論が當時あまりにも多く、それを少しでも是正したいといふ氣持だつた」「三島論を書くやうな氣持になるためには十年はかかるだらうと、事件の直後には思つてゐた」と言ひました。これは嘘ではなく、實際は、十年ではなく、十七年かかりました。
この「許せない」について私は西尾先生に直接質したことがあります。先生は笑はれただけで、お答はありませんでした。御自身が『三島由紀夫の死と私』を書かれるよりもかなり前のことでした。西尾先生は三島のことには、ピリピリとした感じになられますね。先生が三島の本質に眞に深く迫り得たがゆゑと思ひますが、それ以上のことは申せません。
ともかく、實際に三島に接觸した人々にとつて、本氣で三島を論じることは容易ではなかつたのですね。他面、ああいふ最期を遂げた人氣作家は、商賣のタネとして、これ以上のものはなく、三島論汗牛充棟は當然でせう。私は上記の西尾先生の本と村松剛『三島由紀夫の世界』(平成9年)以外には數册讀んだだけです。世に出てゐるものの何百分の一ででせうか。
何を言つてゐるのか分らなくなつてきましたが、渡邊さんがどんな三島論をお書きになるか興味があります。三島の割腹時、この世にまだ存在されなかつたといふことはあまり關係ないやうな氣がします。私は我が子より年少の渡邊さんに對して、いはゆる世代間ギャップを全く感じないからです。三島論には固より樣々な行き方がありませうが、この一點だけについて、考察し論ぜよといふ注文に應じるとしたら、三島の何を採上げられますか。
池田さま
三島由紀夫論は、大上段から振りかざした観念論・肉体論は私の性に合わないですね。するとしたら、作品論で、これは奥野健夫さんがされたことがありますが、『美しい星』を第一に取り上げたいですよね。SFというモダニズムの限界と、星々の神々の神話性という古典主義が手法にとられていて、突き放した上での緻密壮大な哲学議論の対象は「人類」に対してでなく実は「日本」に対してなのではないかな、と思いますよね。この『美しい星』を軸に、他作品にあらわれてくる日本論、終焉論、敷いては皇室論なんかをいろいろ議論できるのではないかな、と思います。
渡邊 樣
なるほど、まづ一つの作品にじつくりと取り組んで、それを基に議論を發展させるーー根無し觀念論のお嫌ひな渡邊さんらしい。
もつとも私は『美しい星』そのものは讀んでゐません。その梗概、解説はかなり讀みましたが。大袈裟に言へば、三島のことを思はない日はないほどなのに、三島作品を何故そんなに恐れるのか、自分でもよく分りません。
西尾先生の新刊紹介
「日本の希望」 徳間書店
【目次】
I
・回転する独楽のように
・上皇陛下の平和主義に対し、沈黙する保守、取りすがるリベラル
・講演筆録 歴史が痛い!
・宮内庁の無為無策を憂う
II
・言論界を動かす地下水脈を洗い出す
・そもそも「自由」を脅かすものは一体何か
・私が高市早苗氏を支持する理由
III
・安倍晋三と国家の命運
・「移民国家宣言」に呆然とする
・日本国民は何かを深く諦めている
・保守の立場から保守政権批判の声をあげよ
IV
・二つの病理
――韓国の「反日」と日本の「平和主義」
・朝鮮と日本とはまったく異なる宗教社会である
V
・中国は二〇二〇年代に
反転攻勢から鎖国に向かう
・日本とアメリカは現代中国に「アヘン戦争」を仕掛けている
・歴史の古さからくる中国の優越には理由がない
・中国に対する悠然たる優位が見えない日本人
・「反日」は日本人の心の問題
VI
・「なぜわれわれはアメリカと戦争をしたのか」ではなく、
「なぜアメリカは日本と戦争をしたのか」と問うてこそ見えてくる歴史の真実
・今の日本は具体的にアメリカに何をどの程度依存しているか
・ありがとうアメリカ、さようならアメリカ
VII
・二つの世界大戦と日本の孤独
VIII
・上皇陛下が天皇をご退位あそばされる頃合に、
「陛下、あまねく国民に平安をお与えください」と私は申し上げました。
・あとがき
昨日の朝、越後の(小池)石松親分と電話で、先生の御新著『日本の希望』(徳間書店。1800圓+税)について話し合ひました。ただし、二人とも未讀で、新聞廣告、書評などに基いた雜談が主でした。
電話の後、一時間くらゐでアマゾンから同書が屆きました。でも、注文したのは私ではなく、家内です。優先權は當然そちらにあり、熱心に讀んでゐるやうで、當分こちらには廻つてきません。
先ほど、家内の留守を狙つて、同書を手にし、ぱらぱらと捲つてみました。各章のタイトルを見ただけで、感じたことがあり、口走りたい思ひに驅られますが、中身を讀みもしないで、それは失禮に當りますので、今は愼みます。
そこで、目次の紹介といふ手を私も考へましたが、それは管理人の長谷川さんの職權を侵すことにならないかと躊躇しました。 發行日が11月30日(あとがきの執筆は2021年10月)になつてゐるにもかかはらず、未だに本欄に、そのお知らせが載らないのは、先生からの指示がないからか、その他の事情によるのでせう。
幸か不幸か、その手は石松親分に先を越されてしまつたので、私は扉に掲げられた先生のお言葉7行(あとがきの出だしでもあります)を書き寫すにとどめます。
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「日本の希望」などと言うと意外な思い、少し楽天的な観測、
いや大袈裟すぎる見通しなどと思われる方が多いかもしれない。
しかし、この本を読んでいただけば、
希望は一方的に与えられるものではなく、
当然予想される苦難と困難をわが国が背負うという前提で、
しかしそれでもこれから迎える運命の世界的状況は、
どことなく「我に利あり」という印象を私は持っている。
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序でに、あとがきの終りに近い部分の two sentences をも引きます。
「この本は小さいながら比較的いまの問題に正面から向かって、刺激的な内容を問題意識を研ぎ澄ませて書いていますのでぜひとも心してご注目賜りたく存じます」
「私の人生の最後に比較的よく書かれているものを今度のテーマに即応するように配列して論旨の強化にあてました」(以上)
(追記)家内曰く「週刊誌を賑はしたやうな生々しい話題がずゐぶん出てくるので驚いた。先生の論鋒は鋭く、全て本質を衝いてゐる。しかも論證もきちんとしてゐて、自分は完全に納得した。もつと早く讀みたかつた」。
皇室のことらしい。私は以前、西尾先生から「天皇に徳を求めてはいけない。血統によつてのみ天皇は尊いのだ」と嚴しく戒められました。それを自らに言ひ聞かせてゐるのは當然ですが、現實の表面上の現象を目にすると、精神衞生によくないので、先帝陛下(現上皇さま)の時代から、テレビに天皇と安倍總理大臣が映ると、チャンネルを切り替へました。さういふ現實逃避が許されるのか、家内の後に讀んで、考へ直さざるを得なくなるのかしれません。