財務省理財局はわずか百人しか人がいないのです。この百人でもって、九つの特別会計と、40に上る特殊法人と、特殊法人っていうのは国鉄と道路公団だけじゃありませんから、40に上る特殊法人と、それからさらに全国の地方自治体、この町もそうかもしれませんが、豊かな町で税金が沢山あればそういうことはないけれども、貧しい県があって税金が足りなくて、補ってもらわなければ成り立たない市や町がいっぱいあるわけですよ。そういうところはどっからお金が来るかというと、これまた郵貯と簡保に集っている330兆円に頼っているわけですよ。
今申し上げましたように、九つの特別会計、40の特殊法人、そして全国の地方自治体、これらに補うお金を管理しているのが、財務省理財局というところでございます。そこには人はなんと百人しかいない。百人で出来るわけがないのです。理由を言いましょう。40兆の負債を抱えている道路公団のこの40兆というお金は、東京三菱銀行が管理しているお金の約三分の二であります。東京三菱銀行がどれくらいの行員を雇って、どれくらいの検査をし、どれくらいの事後チェックをしてお金を管理しているか、銀行業を知っている皆さんはお分かりじゃありませんか。百人なんて、考えられないでしょ。当然ものすごい数の人間が管理をしています、東京三菱銀行は。その銀行を管理しているのは、財務省です。
ここで、携帯が鳴り始める。
りり~~~~ん 「今講演中です。今みんなが笑っています。」
「女房でした。」(爆笑)つまり、こういうことです。東京三菱でもこれだけの人手でやっていることを、たった百人で何が出来るかということで、百人が40兆のお金を扱っているだけではなくて、今言ったように九つの特別会計、40に上る特殊法人、そして地方自治体。お金を貸す時に、型どおりの検査しかしていないのです。している暇がないですよ、当然。それからお金を返しているか返していないかを調べるための事後チェックもほとんどしていないのです。する暇がないですよ、そんな人数で。それじゃあ、貰ったお金を借りているほうの特殊法人は、このあいだ大騒ぎしている道路公団や橋梁の公団など、お金がどこにいったかわからないんであゝいう具合ですが、完全なブラックホールです。わからないんですよ、どうなっているか。
だからたとえば、住宅金融公庫なんかが大きなマンションを東京の郊外の果てしない遠い所に作った。誰も借りる人がいなくて、ぺんぺん草が生えちゃったという話があるでしょ。ああいう無駄使いがさんざん行われているわけですね。しかし、もうそれはみんな償還不能ですよ。不良債権化しているわけですね。銀行の不良債権にあれほどうるさいことを言った政府が、政府の不良債権にはどうしてくれるのか。
これが大きな、大きな問題だから、いいですか、改革は必要です。郵政の改革じゃあないんですよ。財務省の改革なんですよ。財務省の金の使い方の改革なんです、やるべきなのは。その改革は正しいと言わなければならない。財務省は改革せよと、そうでなければ、どうにもならないところに来ているわけです。
そして1999年、6年前の小泉純一郎氏は大蔵省の嫌がることを言っていたのです。つまりこの特殊会計をはっきりさせなければだめだと、金の出所を整理してきちんとしろと、そういう改革ということを言っていたんですよ。いつのまにか言わなくなった。いつの間にか言わなくなって、今回の郵政改革法案には財務省の「ざ」の字もないし、財政投融資の「ざ」の字もない。財政投融資というのは、特殊法人にお金をおろすのをそういうのですが、名称だけ変えて今は財投債、財政投資国債というのを買わせて同じことをやっているんです。名前だけ変えて、結果は同じなんですが、いずれにしても財務省改革、財投債問題の「ざ」の字も出てこないのが今回の改革案です。
どうしてでしょう。問題の根本原因はそこにあるのです。ですから、何かが隠されているのです。財務省の杜撰、怠惰、放任、つまり不作為の犯罪を隠すということですよ。まぎれもないことです。わからなくしてしまうということです、闇を。ガラガラポンにしてしまうということなんです。そうするには、どうしたらいいかというと、金を集めた方をいじめることですよ。金を集めた方をわからなくさせる、出所をわからなくさせる。入口をわからなくさせたら、行ったほう、つまり出口もわからなくなるじゃないですか。これが今行われている、郵政民営化なんですよ。郵政民営化というのは、そういう正体をもったあやしい法案なんです。その尖兵が竹中なんですよ。
なぜこんなことが行われているのか、なぜこんなに急ぐのか、という問題を考えなければなりませんね。とてもとても、不思議なことなんですよ。
山崎養世さんというエコノミストがですね、元ゴールドマンサックスの投信社長さんで、郵政審議会で意見陳述した方ですが、こう言っているんです。
審査もしないで、事後のチェックもしない――つまり財務省理財局です――無責任体制そのものだ、と。そしてこうも言っているんです。財投の場合、貸し手の財務省理財局の責任は追及されず、特殊法人側の借り手の責任もブラックボックスの中、なのに言わば預金者の郵貯、簡保ばかりが目の仇にされ、変な構造になっている。これは郵便局をつぶして、金の入口をあいまいにするという目的があるということを物語っている、と。それが政府の狙いではないか。たとえば皆さんは10数年前になると思いますが、NTTが法人化、民営化されたとき、一株255万円の株が発売されたのを覚えておられるでしょうか。255万円で国が保証する株だということで、みんな買ったんですよね。あれ今50万円になっているんです。いつの間にか。200万円は宙に飛んじゃったんですよ。宙に飛んだということは、国民が損をしたということですよ。今回ももし郵政が民営化されれば、株を発行することになっていますから、郵便局の株だ、国が保証してくれるっていうんで、みんな安心して買う。それでまた10年経ったら、五分の一になっちゃって、パーっとなってわかんなくなっちゃうんですよ。株式会社になるということは、流動化するということですから、結局細目がわからなくなるのです。そして、それで金の入口がわからなくなると、金を使っている出口も結局わからなくなる。ここに最大の目的があるということを私は申し上げたいと思います。