● 中国は何を反日ですり替えようとしたのか?(1) 宮崎正弘
さて中国は反日で何をすり替えようとしたか?
申し上げて参りましたように、社会不安、農民暴動、ストライキ、炭坑暴動、失業対策の無策・・・・結局今民衆が一番敵視しているのは、中国共産党であって、亡命知識人達が指摘したように、一般の民衆にとって、日本なんかなんの関係もないということです。
もう一つは、日本で伝わっておりませんけれど、今共産党員の大量脱党事件っていいますか、100万人くらい脱党したんです。ニューヨーク、ロサンゼルス、その他では、共産党批判の集会が開かれてデモが開かれている。
非常に静かな、平和的な集会やデモであったりするもんですから、日本の新聞は殆ど書いておりません。共産党の党員の減少というものは、危機に直面しているという問題がございます。
また農村対策の遅れ、貧困地域のそのままの遅れ、都市戸籍の問題その他あるんですが、特に農民は過去2、3年間所得が減っているんです。出稼ぎに行って、都会部で働くわけですが、戸籍の問題があって、月に例えば千円くれるという約束があって行っても、あんたは田舎の戸籍だから、賃金は半分だとか、スシ詰めの部屋に入れられて、場合によって頻繁に給与の不払い、それから現場監督が給料の持ち逃げをやるんですね。それで、我慢できなくなって暴動がおきる、というような問題があります。
もう一つの深刻な問題は、開発に対する弊害。たとえば三峡ダムで立ち退いた農民が公式的には117万人と言われていますけれど、事実上は83万から85万立ち退いた。多くは職もなければ移転した先に家も建てられないという人がたくさんいる。
そのうち20万人くらい流れこんだのが、重慶の中の万州区で、ここへ流れこんで、スラム化をしているのです。そして、昨年の10月18日に、この重慶で5万人の暴動が起きています。3人くらい死んでいるんです。これは三峡ダムの強制立ち退きに付随した問題です。
昨年10月26日、四川省漢源県で、共産党始まって以来の15万人の暴動がございました。
理由はあそこにダムを作っておりまして、ダムの立ち退きを要求されている農民が、おおよそ13万人、補償金が1平米あたり日本円で数十円。これは死ぬか生きるかの問題で、それで農民達が立ち上がって、地方幹部に抗議をしたところ、軍隊が導入されたのです。ワシントンポストだったと思いますが、6人から8人死んでいると報道されました。その後、この場所は戒厳令がひかれておりますので、その後様子は全くわかっていません。
こういうことは、しょっちゅう起きている。外国には詳しく伝わっていないのですが、たまたまデモの参加者が、携帯電話なんか持っていると、他の地域に電話をするもんですから、それで情報が香港とか、他へ流れて出て、外国にある反共産主義的な自由派の新聞がそれを書く。ニューヨークタイムズにはその他の中国の人が知らせますので、英字新聞がほぼ同時に伝えていく、というような状況があります。
環境問題でもデモが起きています。北京の反日デモのその日に折江省の東陽で、ここは4年前に、近郊に工業団地を開いた。化学工場、染物工場、製薬、化学肥料、農薬などの工場が廃液を全部垂れ流して操業しておりまして、たとえば、妊婦が奇形児を産むとか、原因不明の病気になるとか、癌の発生率が異常に高いとかいうような状況になっています。
それで、近くの農民が自警団を組織して、原料を搬入するトラックをストップさせるというようなところから、騒ぎが発展しました。農民が封鎖線をはっているというので、警官隊が3千人導入されてやはり2、3人死んでいます。最後は5万人の暴動になって、戒厳令が引かれて、その後のことが今は分っていません。
とにかくあっちこっちで、反日デモなんてああいうやさしい、石を投げるくらいじゃなくて、本当の農民一揆を越したような状況が進展しているのです。そういうところを共産党の指導者はみんな知っている。
この矛盾をすり替えるのは、反日でやってきたわけですが、いよいよ「反日」でもすり替えが効かなくなってきた。