(8-43)教育界は真実を見まいとする病いにかかっている。
(8-44)何か一つを権威として祭り上げる者は、その何か一つを批判されると、自分自身の権威までが脅かされたように感じるのであろう。侵すべからざる自分の聖域に土足で踏み込まれたかのように感じた苦痛は、一時的に人を興奮させ、わけのわからぬ怒りに駆り立てる。
(8-45)九十九匹を救済した理想案は、理想的であればあるほど、それにさえも参加できない迷える一匹の小羊の不幸と苦悩を倍化させる。
(8-46)百人のうち九十九人を満足させようとする制度より、五、六十人を満足させる制度の方が、じつは百人全員の幸福につながる、
(8-47)日本には西欧的な意味での自由がない。封建社会の遺風がまだ残っているからだ、と。しかし、私はそうは考えない。そうではなく、自由を維持するにはそれなりの努力を要すること、ある自由を守るためには別の自由を犠牲にする必要があること、この認識が日本の社会には欠けているのである。
出展 全集第八巻
「Ⅴ 教育と自由―中教審報告から大学改革へ」
(8-43) P534 下段「第二章 自由の修正と自由の回復」より
(8-44) P546 上段「第二章 自由の修正と自由の回復」より
(8-45) P554 上段「第二章 自由の修正と自由の回復」より
(8-46) P555 上段「第二章 自由の修正と自由の回復」より
(8-47) P563 上段「第二章 自由の修正と自由の回復」より