お知らせ
★つくる会のホームページでは、文部科学省の許可を受けて、教科書採択の透明化の一環として教科書の一部を公開しています。(約100ページ)
なお、市販本については、現在扶桑社が諸手続きをしているところであり、時期については未定です。
★《テレビ出演》
TVタックル「靖国問題を徹底討論する」(仮題)
7月11日(月)21時~22時テレビ朝日
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九段下会議の歩みと展望 (二)
さて、これから九段下会議をどう進めるかという問題を討議するわけですけれども、ここにも皆様方の何人かの進め方に対するご提案をいただいておりますし、今日また新しい話がいろいろあると思うのですが、私は個人的な好みというか、感想を最初に申しておきます。
私は、大体が理念として片付いた問題には興味を失っちゃうという少し困った人間で、教科書問題もジェンダーフリーの問題も心の中ではもう終っているな、なんて思っているんですよ。もちろん現実の解決はこれからです。もう心の中で終ったなんてことを言うと叱られるんです、実は。一生懸命やっている人には叱られるんですが、もう具体的な方策をどうするかだけの問題になってきて、あとは身体を使って、あるいは組織を作って運動を展開するということが残っていて、思想上のレールを引くというところまでは終ったわけです。少なくとも教科書問題はそうなっています。
ジェンダーの問題も自民党が取り組んでくれ始めました。八木さんが自民党の方へ招かれて話したり、色々な形で動き出しているので、これももう、終ったと言ったら失礼かもしれませんが、私の気持の中ではいつまでもかかずりあっていてもしょうがないんじゃないかという気持があるということで、その専門、そちらの方に特化されている方々にはご無礼かもしれませんが、多少ともそういう気持があるというのは事実なんです。
九段下会議の一年を振り返ってみたら、現実の大きな変化というのが起っていました。日本は米中の谷間にあるということの深刻さが、本当に数年前から比べると一段とリアリティを帯びてきたのではないかと思うのであります。
中国が6000億ドルくらいの外貨準備を増やしていて、驚くべきことに、アメリカの会社を次々と買収すると。最近ではIBMのパソコン事業、これは最初アメリカは議会が拒否するような姿勢を見せたのですが、どうも買収されたらしい。それからユノカルという有名な石油会社の買収交渉に入って、これもブッシュ政権がなにも言わないですね。つまり、不気味な動きが急速に拡大しているように思えるのであります。
加えて、軍事的にもですね、これは今日の宮崎正弘さんのレポートからですが、アメリカのワシントンタイムズが6月26日付けで、二年以内に中国が軍事力を駆使して台湾を制圧する軍拡能力を保有するだろうということを、ペンタゴンの筋が言っているという、つまりアメリカの予想をはるかに上回るスピードで、中国の軍拡力、軍事力の増強がすすんでいるということです。しかも中国の軍事筋は北京オリンピックへの悪影響をほとんど考慮していないとワシントンタイムズは伝えているそうであります。
同時に6月29日付けの東方日報が中国が航空母艦の建造を開始したという情報を伝えております。中国という国が、さながら巨大な資本主義国家のような立場をとり始めていて、また現にそういう姿勢をとりつつあるわけでありますが、どうしてそんなことが可能なのかという謎がわれわれにあるわけであります。トータルとして最貧国中国という現実はあまり変わっていないはずなのですから。
これに対し、今日の30日のニュースですが、韓国がおたおたし始めた。中国と日本に挟まれてですね、もう韓国が中国に対して優位に立つ分野というのがほとんどなくなってきたというのです。繊維産業などは完全にもうやられてしまっていて、韓国で販売されている衣類の、6~7割は中国産だそうです。半導体と自動車など幾つかの分野でしか韓国は中国に優位を保っていない。といってもその半導体だって、自動車だって、日本の力があって韓国は成り立っているわけですから、韓国はここに来て、日本の背中をみて一生懸命威張りまくっていたところが、中国いう巨大経済大国が出現したために、後進国へ転落する門口に来ているという自覚が韓国の中に急に芽生えてきているというニュースも入っています。
これはまぁ、理由もなく自惚れるものは必ず罰せられるということで、少し肝に銘じたろという気も多少あるけれども、まあしかし、もともと韓国というのは、我々はそんなにこわくない。うるさいというか、面倒くさい連中だという感じはあり、とにかくなんかまあ嫉妬深い女に絡みつかれるような、そういう思いをいつもしておりましたけれど、中国はちょっと違うんですよね。我々のイメージも違うし、中国という大陸の持っているパワーというものが違うということ、それでそのパワーが今まで観念的に意識されていたのが、ここへ来て現実体として迫ってくるようになった。僕なんかもう中国はとおの昔から現実体として、うっとおしい巨大な圧力として意識しておりましたけれど、日本の国民も政界ものんきだから、「友好」なんていって、それほど考えないでいたわけです。
ですからODAをずっとやり続けていたり、ごく最近になっても中国の言うとおりに、靖国の参拝を自粛すれば安保理常任理事国への承認を中国は許すのではないか、というような類の有り得ない、今では誰も信じることの出来ないような甘い考えをつい2、3週間前までテレビで語っている人が少なくありませんでした。
中曽根さんまでが、首相の靖国参拝を諦めることは一つの立派な決断だ、というようなことを言ってですね、どうかしているんじゃないかと、私なんかは思いましたけれども。中曽根さんがあゝ言ったのも嫉妬かもしれませんね。小泉さんに8月15日に堂々と靖国に行かれると、自分の過去の自粛がミットモナイ失敗にみえてくる。そういうことかもしれません。
けれども、ともかく中国の力というものに関しては、日本人は今までの観念がずっと続いていて、こっちが自分のカードを捨てて譲歩すれば、無限に向こうも了解するというような、日本的な発想できたら、ごく最近になっておっとどっこいそうではないということが、やっと分ったんじゃないでしょうか。これはいいことだと私は思っているんですね。
つまり、靖国なんていうのは、向こうの中国にとっては手段なんです。これを使えば日本があたふたするから面白いからやっている。面白いからというよりそれを使えば政治的に効果があるから日本を制圧するためにやっているわけですから、従って、中国側が握っているカードとして有効だから使われているだけですよ。おどしに使われている方が悪い。ぐらぐらするのはすべて日本側の問題にすぎないわけです。
ということは、日本をとにかく屈服させるということが、彼らの最大の目的であります。しかも領土の問題で、尖閣諸島を先に中国が攻撃するなんてことは、考えられていないでしょう。まず、台湾解放です。台湾を自分のものにしてしまえば、あのあたりの海域は殆ど全部中国のものになってしまう。宮古島以下、南西諸島は完全に中国の領土になってしまうでしょう。
そんな明瞭な事態にわれわれはいま直面しているんだろうと思うんです。そこへもってきて、アメリカがどうもアジアでは戦争をしたくないと、非常に強い感情をもっているように思われてなりません。
となれば日本は心細い。中国はそこを見越していて、いち早く機先を制し、日本の精神を打ちくだいてしまいたいと思っている。靖国をうるさく言ってくるのはそのためです。