中国人に対する「労働鎖国」のすすめ (2013/04/02) 西尾幹二 |
『正論』5月号 坂東忠信氏の書評
労働力確保を移民に頼るなかれ
本書は、20年以上前に出版された原著に一部加筆するなどしたリニューアル本だが、その先見性故に、少子高齢化が本格化して移民政策が具体性を帯びてきた今の日本にこそ鋭利に突き刺さる。本書が提示する選択肢は三つ。一つは、国民保護のため外国人労働者の権利を非人間的に規制する厳格な労働階級社会。二つ目は、日本人が外国人の引き起こす社会問題を受忍し、国民主権の割譲をも覚悟する多民族平等社会。三つ目は、労働者受け入れを拒否する「労働鎖国」。本書は選択肢がこの三つしかない理由を各国の実例と歴史を挙げて説明したうえで、日本が国家として人間社会の理想を目指すなら労働鎖国しか道はないことを示している。
そもそもなぜ「国際化」「開放」「共存」が正しく、「鎖国」「規制」「保護」は悪とされるのか?「国際化」とは何なのか?外国人を受け容れることが本当に「国際化」なのか?日本に「国際化」を迫る国が本当に国際化しているのか?単に「自国化」要求ではないのか?そもそも誰が日本に「国際化」を迫っているのか?あなたは本書の問いにハッとするだろう。それでもピンとこないなら、在日華人の実生活に踏み込んだ元刑事なりの直球表現であなたに聞きたい。
あなたは、商道徳や衛生観念の違う異民族が握る回転寿司を食えるか?
日本で多民族が「平等」に「共存」する「国際化」社会の実現は、あなたの命に直結する大問題だ。どの家庭も大量の油を台所に流す中国では、下水の汲み上げで再生される「地溝油(ドブ油)」の流通が50%にも達し、死者も出て社会問題となっている。他国の空まで汚しながら、被害者ヅラで環境暴動を起こし毎日死者が出ている。こうした民族と、あなたは同じ土地で共存できるか?いや、そんな社会で生存できるか?
国際化や人権意識などのコンプレックスを逆利用した負の想念で良心を形作る日本の偽善が、幸せを不幸に変えている。労働を「搾取」「階級闘争」と捉える労組が支配する学校で教育を受けた結果、社会に出ても仕事に感謝も喜びも見出せない精神的幼児の日本人が、職業に貴賎の別をつけ苦役を外国人にあてがって、人種差別社会を生み出そうとしているのだ。
本書読了後、私なりの結論がすでに出ていることに気が付いた。少子高齢化社会における労働力確保の決め手は、外国人移民では決してない。国民個々が仕事を通して喜びを味わい、喜ばれる存在になるという幸せの再認識である。そして真の国際化とは、虹色の世界に一角を占め日本色を鮮やかに発光させる、日本の日本化であり、日本の深化である。
会社で部下から「国際化していない」となじられ、悩む社会中核年代層に本書は必読である。
元北京語通訳捜査官 坂東忠信