西欧の地球侵略と日本の鎖国(一)

開催日:平成28年4月24日 
場所:豊島区医師会館
主催:日本の伝統と文化を語る集い
企画・運営:「新しい歴史教科書をつくる会」東京支部
【<歴史・公民>東京塾・第30回研修会】

(一/六)
 今日はすこし細かい話になると思います。私たちにとって重大な歴史の概念である鎖国を『国民の歴史』で「鎖国は本当にあったのか」という一節で表現しました。そうしたら歴史学者たちから、そんなことはもう言われていることだと頻りに言われました。ところが歴史の教科書その他における「鎖国の見直し論」というのはその後、だいたい15年くらいなのです。最近になると、全ての歴史教科書から鎖国という言葉は消えつつあります。「江戸時代に鎖国は無かった」と・・・。私が「果たして鎖国はあったのか?」と言ってそれに影響された、ということは口が裂けても言いたくないのですよね。(笑)でも鎖国は複雑な概念で、私は再び「鎖国はあったのだ」ということを言おうと思っています。

 「鎖国は無かった」という議論のおおむねは、日本は自分を守ったわけでもなければ、何となく余裕があったのだ、ということが言いたかったわけです。通例「鎖国論」のおおむねは「鎖国得失論」から始まります。代表的な一人は徳富蘇峰。日本は鎖国をしたために植民地獲得競争に敗れて損をしたのだという議論。得失の「失」のほうで、損をしたという議論です。もう一人は戦後になって出た和辻哲郎。これも「失」のほうで、日本は鎖国によって科学の精神を持たなかったから、科学の発展が遅れてしまい戦争に負けたのだ。分かり易く言えばそういう概念で論じて、暗いイメージで鎖国をとらえています。それに対して「得」をしたという議論もあります。その間に日本の文明が成熟する時を持ち得たのだから得をしたのだ、という議論です。しかし損とか得とかいう議論がそもそも成り立つのか、ということが大きな問題です。

 17世紀の後半にはポルトガルやスペインの衰退に続いてオランダも衰退し、代わりにイギリスとフランスが登場します。それでも日本の海域が両国に脅かされることはありませんでした。イギリスとフランスは本国でも戦争ばかりしていて、インドやカナダにおいても事々に激しい争奪戦を重ねて、日本は暫しの間高みの見物を楽しんでいればよかったのです。日本は鎖国していたのではなく、海外へ敢えて出ていく必要が無かっただけではないか? というのがもう一つの観点です。つまり損得とは違うもう一つ別の歴史の観念を受け入れてみてはどうか? ということです。

 日本は金銀銅の埋蔵に恵まれていて、無理して海外に出かけて行って危険な貿易をしなくても国内から産出する富によって、十分に外国の商品を買付けることが出来ました。日本は決して眠っていたのではありません。本の出版点数は、少なくともヨーロッパに関するものは江戸時代に入って急激に増えていて、日本の輸入した最大の商品は絹織物に次いで漢籍つまりシナの本であったことも一つの判断材料になります。しかし国内から産出する金銀が底をつく時がすぐにやってきました。八代将軍吉宗の代になると輸入を抑制して、むしろ海外から生産技術を手に入れて色々なものの国産化を急ぐようになりました。

 ヨーロッパと争って東南アジアの物産を買い入れたりしていた、といっても日本が船で出掛けて行って買付けるのではなく、オランダ船に持ってこさせていたのです。当時のヨーロッパの船はヨーロッパから「ヨーロッパの製品」を運んでアジアに売っていたのではないのです。売る物なんて大して無かったのです。ヨーロッパは貧しくアジアは富んでいたという情勢を頭の中に置いてみてください。ヨーロッパに何も無かったわけではありませんが、しかし価値のある物はシナから日本に運び、日本からシナに運ぶ・・・。オランダ船の役割は海運業だったので、ヨーロッパの人たちはそうやって稼いでいた可哀想な人たちだったのです。

 いつ頃からそれが変わり始めたかというと産業革命です。後でその話をしますが、18世紀の中頃から大きく変わり始めるのです。日本は国内に東アジアの物産を移植して、それを自ら生産するシステムを確立します。言い換えればアジアから輸入していた砂糖や他にもいろいろな物産を日本人が自家生産するようになって、だんだん国内の生産力が高まってそれによって経済的に輸出入から独立するようになります。これもヨーロッパと歩調を共にしています。ヨーロッパはイスラムと争っていて、そのイスラムを打倒するまでは行きませんが、とにかく抑えて大西洋経済圏をつくります。カリブ海から砂糖を運んできたり、アメリカ大陸で綿花の栽培をする。そういうものによって近代世界システムが生まれてきてアジア、東南アジアの物産から解放されるのです。

 それとパラレルだったのが日本における鎖国体制で、アジアの物産からの解放という点でヨーロッパと極めて合似た歴史的展開をしていました。ヨーロッパはそれをほとんど奴隷貿易で行っていました。奴隷を使っていたヨーロッパですが、日本の場合は欧米と違い国内の勤勉によってそれを保持しました。ですから近代化が始まったときの、資本の蓄積という点では、欧米は奴隷による物産の生産と交易によって資本を蓄積しましたが、日本は主に農村に貯まっていたお金によって資本主義が離陸するという経験をしているのです。日本の農村は貧しかったのではなく勤勉で、蓄積をしていた農本資本主義でした。皆さんご存知の第一勧銀という銀行がありましたが、それは昔第一銀行があったからで、第一銀行と日本勧業銀行が一緒になったからです。今はみずほ銀行ですね。軽井沢に行くと八十二銀行というのがありますし、幾つかまだ残っていますね。農村の銀行はみんな番号が付いていたのです。そして東京には第一銀行があったのです。渋沢栄一の発案で出来た銀行制度です。それによって何が言えるかというと、「農村に貯まっていたお金を基本に作られた銀行」ということです。日本は貧しいながらに独立して孤独に立ち上がった資本主義です。明治以降のことは皆さんご存知でしょうけれど、江戸時代、幕藩体制のなかで日本の近代化は少しずつ出来上がってゆきました。

 「外国を締め出す」「行ってはいけない」「人に移動の自由を否定する」ということを海禁政策といいますが、これについては東アジア共通の問題で、シナも朝鮮半島も海禁政策をとっていました。ですから徳川日本の時代は自分が諸外国から締め出されている、という閉塞感はあまりありませんでした。つまり、ごく自然なことをしていただけで「別に努力しなくともいいじゃないか。最初はお金があって、そのうち自立するようにもなって、外国からとくに滋く出入りする必要は何も無いではないか・・・」ということです。「鎖国」という言葉がそもそもなかった。国を閉ざすという意識もなかった。意識が無いのだから鎖国という言葉があるわけないのですね。オランダの通使がエンゲルベルト・ケンペルの『日本誌』を翻訳したとき、“to keep it shut up”という“shut up”という言葉を遣ったから翻訳されたときに「鎖国」という言葉が出たのですが、それはそういう文字が「翻訳された」というだけであって、日本人には自分の国を閉ざしているという自覚は無かったのです。

 ところが他国意識が生まれ、自分で自分を閉ざしていてはいけないのではないか、という認識が出てくるのは、実際に海外渡航が可能になってから、すなわち明治に入ってからです。それも明治の末年から大正期にかけてからなのです。進歩に反するとか、世界の体制から立ち遅れる・・・、というような暗いイメージが一斉に付き纏いはじめたのはこの頃から、大正文化の影響なのです。江戸時代の人はそんなことを考えていなかったのです。閉ざしているという自覚も認識も無かったのです。明治時代だって無かったのです。例えば内田銀蔵という人は、明治36年の『明治近世史』に「江戸時代を鎖国としたものの、貿易は当時むしろ盛んになり諸国との外交を閉ざしたわけではない。」ということを寧ろ強調しています。また中村孝也という人が、『江戸幕府鎖国史論』という大正3年の本でも「鎖国は幕末に出た言葉で、17世紀の用語ではなく国政の若干部分に対して自ら封鎖したのに過ぎざるなり。孤立独在に近づけるものに非ず」、ようするに「鎖国は無かった」ということをちゃんと言っているのです。

 先ほど言った徳富蘇峰と和辻哲郎の「鎖国は損をした」という得失論が出てくる背景というのは、江戸時代には意識も認識も無かったし、現実においてそんな暗いイメージは何も付き纏っていない。それが明治になって、国を開いて始めて彼方此方(あちこち)みんなで行けるようになってみたら、急にそういうことを言い出す空気になる。そして戦争に勝つか負けるかという話になったとき、徳富蘇峰は「鎖国していたから損をした」と言い、和辻哲郎は「鎖国していたから負けたのだ」という議論になりました。そのことについては今から15、6年前、ちょうど私の『国民の歴史』が出た頃から、歴史学会も鎖国を批判して、鎖国は海禁という言葉に取り換えられて歴史の教科書もそうなりつつあるかと思います。

つづく

現代世界史放談(九)

アメリカの世界支配構造

 ピルグリムファーザーというのは、最大多数がプロテストタントなんです。アメリカはプロテスタントの国であるということはアメリカの世界史の支配構造と深く関係しているんですが、これをどう説明するかは難しい。

 結論だけ言いますが、たとえばリンカーンは宗教者です。南北戦争、あれは奴隷を解放するために戦った戦争ではない。13州に分かれていたアメリカを一つのネイションにするという、英語でゼムと書いていた13州をイットにする、単数扱いにする戦争だった。複数を単数にした。それはワシントンから続くアメリカの努力目標だった。しかしその理想もまた、暴力でしか実現できなかった。それが南北戦争です。それによって強引に統一国家になった。南部にはたくさんの問題があったのに、全部切り捨ててしまった。北から南の制圧には凄まじいことが行われた。

 その制圧の仕方を真似したのが、実は日本征服なんですよ。北アメリカが南アメリカを抑えるときにとった政策、たとえば公職追放、指導者を牢屋にぶち込んで罪の意識を与えて、しばらくしてある段階になって釈放し、従順な知識人を復活させて自分たちのほうに取り込むという、アメリカ占領軍はこの北軍のやり方をそっくり日本に当て嵌めました。それが自由民主党の生まれた所以です。それから日本は肝どころを握られ、ずっと支配されっぱなしである。

核問題では日本が一番怖い

 この間、安倍首相の戦後七十年談話に先立ち、外務省主導の21世紀構想懇談会がつくられ、先の戦争を「侵略」戦争と首相に言わせようとした北岡伸一さんという座長がいましたね。懇談会のああいう人士は、いまでもアメリカのコントロール下にあると考えるべきです。少なくとも外務省がアメリカの顔色を窺って、人選に自己規制をかけていると見るのが至当で、「侵略」はそれ以外には考えられない唐突な発言でした。

 あるいはまた、NPT(核拡散防止条約)体制の管理人に天野之弥さんという日本人がなっている。それを日本では出世したかのように言う人がいますが、黒人組織を管理させるには黒人の代表者を連れてきて管理させるんです。同じことが天野さんの役割なんです。核問題では日本が一番怖い。だから日本を抑えるためには日本人を使うんです。

 アメリカは南北戦争によって統一国家kになり、国家意思というものを鮮明にしました。

 この国家の持つ膨張性格を雄弁に語ったのは、リンカーン大統領のウィリアム・スワード国務長官です。

 彼が太平洋侵略を考え出した最初の帝国主義者でした。そこから先は長い話になるので、今日はできません。太平洋をアメリカのものにするのは、リンカーンの時代から始まったのです。

 其の後、ドイツがやられ、日本がやられ、ロシアがやられ、いま中国がやられかけていますが、さてどうなるでしょう。地球は再び大破壊を被る。あと10年先か20年先か分かりませんが・・・・・・。そうなる前に、アメリカが覇権意志を本気で捨て、ドル支配もなくなり、地球はカオスに陥るかもしれません。

 何が起こるかわからないんです。今日は何が起こるかわからないという話で終わることをお許しください。(2016年2月29日、日本工業倶楽部での講演に依る)

月刊Hanada 2016年6月号より

現代世界史放談(八)

アメリカの覇権の背景

 はたしてそれを中国ができるのか、定かではありませんが、この大きな中国の賭け、その前に今日は歴史を古いところからお話をしたので、もう一度、イギリスとアメリカの覇権争いを思い出してもらいたいのです。第二次世界大戦は、アメリカがイギリスに勝利した戦争です。

 日独はだしにつかわれたようなものかもしれません。アメリカは常に地球の他の覇権国、地域の覇権国を許さないことで始まった国で、まずイギリスを、次にドイツを、そして日本を潰しにかかった。ロシアを許さなかった。次々と地域の覇権国を倒すのがアメリカの国是、いまもそうです。大統領候補のトランプが言っているじゃありませんか、アメリカの意向であり、ずっとそれできている。

 だからトランプは夢をもう一度と叫び、アメリカ人の心を摑んでいる。しかし実力がそれに伴わなければできないので、彼の主張のとおり、アメリカが「世界の警察官」であることを止めればドルは暴落し、アメリカの覇権も終わってしまうのです。アメリカはベトナム戦争からのち、一国で覇権国だったのではありません。日本という懐刀をもっていたので、アメリカは覇権国であることが可能になったのです。日本は黙って国債を買い続けて、その国際は国家予算んのなかに入れないできている不可解な構造が、日米一体でアメリカの覇権を可能にしてきたんです。トランプはそのことが全く分かっていない。

 アメリカは「世界の警察官」であることによってヨーロッパに価値、ロシアに勝ってきましたが、しかし中国に対してはどうか。中国も、アメリカと日本が手を組んで勝つという構造にするのは経済だけでやってもらいたい。それであれば日本は受けて立てばいい。

カトリックとプロテスタント

 冒頭で述べたようにペリーの来航の前から始まって、アメリカはイギリスと戦った。独立戦争ですね。それは何が原因かというと宗教が原因でした。ヨーロッパはキリスト教といってもカトリックとプロテスタントが相争っていた地域です。カトリックは日本の心とも繋がるところがあるのは、自然法を尊重するからです。カトリックは中世の初期にヨーロッパの古代神話の世界を残存させ、それと妥協した宗教なんです。ですからカトリックというのはある意味で異教徒には寛大な宗教なんです。内部の異端には厳しいが、異教徒には譲歩しなければ政治的に自分を存立もできない古い時代を生きました。

 だから、例えば靖国神社を取り潰すとマッカーサーが言ったが、ダメだと言ったのはアメリカのカトリック教徒でした。なぜならば自然法を尊重する、自然信仰があって、堕胎はいけないとか、男は女と結婚するものだとか、民族共同体のために戦った戦士に対しては何であれ、祈祷することは当たり前のことdと考えて、これが自然法で、カトリックは靖国神社を燃やすことに反対した。しかしアメリカは基本的にプロテスタントの国であり、イギリスもそうなんです。

 カトリックは古代人の信仰を残している。プロテスタントはそれを異端として退け、信仰を純粋化しようとした。その自覚が人間の主体性、近代化につながることは間違いありませんが、偏狭でときに破壊的です。

 ヨーロッパはカトリックとプロテスタントの間で17世紀に激しい戦乱を重ねます。それに疲れてしまい、宗派間の争いをやめて妥協するのが啓蒙主義です。カントの永遠の平和のために、なんてものが出てくる。ヨーロッパは宗教間闘争に疲れた。しかしそれがいかに根強いかは私が1960年代に留学した時はまだドイツの小学校はカトリックとプロテスタントに分かれていました。いまは宗派別学校闘争はやめようということになっています。

 ヨーロッパでは20世紀後半になってようやく日本に追いついてきたのです。日本は信長が比叡山を焼き討ちしたときをもって、宗教が政治の脅威となることは大体終わっている。その後島原の乱があり、大正時代に大本教もありますが、そのあと宗教が政治を脅かすことはオウムまでない。日本は大人の国なんです。それが神仏信仰なんです。

つづく

月刊Hanada 2016年6月号より

現代世界史放談(七)

EUの未来

 三番目は、EUの理念の行き詰まりです。EUの未来はどうなるか。結論を言いますが、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアの南ヨーロッパ諸国の経済破綻が非常にはっきりしてきたのはご承知のとおりで、ギリシャ問題はそれの代表例だったにすぎませんが、日本でも似たようなことが起こっているのです。

 八増五減とかいって、議員定数の調整という問題が起こっており、たとえば参院選で島根県と鳥取県を合体させるとか言っていますよね。これはヨーロッパの例と同じです。東京の繁栄と地方の衰微というドラマが、北ヨーロッパの繁栄と南ヨーロッパの衰微という形で表れているんです。

 お金になる仕事は全部、北ヨーロッパ、ドイツやノルウェーに行ってしまう。そのような仕事を持っている人たちは北へ北へと渡って行って、北の富を大きくするのに役立っている。南の国々には公務員と老人と子供ばかりが溜まってくる構造、これが日本の東京と地方の動きとよく似ている。

 日本の場合には、地方交付税という形で地方に還元するという考えがあり、このシステムに誰も反対しません。東京都民は地方を助けないといかんと思っているし、ふるさと納税なんかもあります。

 同じことでドイツが実行すべきことは二つある。ドイツが首都になることです。地方交付税と同じように、どんどんお金をギリシャやスペインに回すということです。文句を言わないで、ドイツはこれまで安くなったユーロで輸出がし易く、儲けに儲けてきたわけですから、ここいらでグローバリズムのために自分を棄てなければいけない。

 しかし、ドイツ人は絶対にやらないでしょうね。なんで我々は、とドイツ人は憤る。ギリシャ国民のあまりに有利な生活保護まで引き受けなければならないのか、と。国というものが邪魔をする。今度はナショナリズムがグローバリズムの邪魔をする。東京と島根県のようにはいかない。でも、私の常識は次のように考えます。

 ドイツが東京都になるか、EUを解体するか二つに一つしかない。当然、動きとしては後者でしょう。十年ぐらいかかるかもしれないでしょうが、そちらにいかざるを得ない。

 EUがなぜできたのかを考えますと、なぜダメになるかの理由もわかります。思想的には、共産主義が崩壊したときに歩調を合わせるかのように始まった。共産主義の普遍主義、国境を取っ払うグローバリズム、それの代替が欲しいということから始まったのがEUです。根は左翼思想なんです。アメリカニズムのグローバリズム、いわゆる連邦主義に対抗する必要もあり、その時に「日米経済同盟」が地球の40%の富を獲得していたんです。1990年代初頭です。ヨーロッパは焦った。

 この日米経済同盟のパワーに対抗するために、ヨーロッパは一つにならなければならない。もう一つは、共産主義のグローバリズムがなくなった代わりに、ヨーロッパは別のグローバリズムを作らなければならない。EUはこうした守りの動機から生まれたので、もともと消極概念でしかない。

 もう一つは1970年にニクソンショックがあって、ドルが兌換紙幣ではなくなり、ドル札を刷ればアメリカの消費は自由気儘だと予想される事態になった。ヨーロッパはすごく恐れた。アメリカは責任なしの消費大国になる可能性がある。実際、そうなっていくわけです。

 それを抑制させていたのは、共産主義社会の存在だったんです。共産主義と張り合っているアメリカがバランスを取っていたんです。つまり1970年から20年間は、ドルがそれほどめちゃくちゃなことにならなかった。

 しかし1990年に共産主義という他山の石がなくなったら、アメリカが慢心して手放しのことをやるようになって2008年のリーマンショックに立ち至るわけですが、そういうことをヨーロッパは始めから恐れていたので、自分たちがグローバリズムに立て籠もるんだということにせざるを得なかった。恐怖からきた守りの思想ですよ。決定的な間違いがそこにはあります。ユーロはドルの代わりができない。なぜなら、統一軍事力がないからです。

 かつて軍事力を伴わない国際機軸通貨があり得たかというと、ない。ボンドもイギリス英国の支えがあり、いまのドルもそうです。湾岸戦争が起こって、あれはドルとユーロの戦いですから、戦争してでもドルを守るという意志をアメリカが示したことになり、ユーロはあそこからどんどん駄目になった。ユーロが力を失っていく勢いというのも激しかったのですが、アメリカはNATO(北大西洋条約機構)を手離さなかった。そしてEUを国として認めなかった。

 EU共通軍隊というのを絶対にアメリカは許さなかった。日本に独自の軍隊を許さないように、EUもアメリカは自分のものとして囲い込み、温存させようとし続けてきたのです。いままではそれでうまくいった。それでヨーロッパ共同体を潰したんです。
 かくて次に中国というのが軍事力と金融による両面の覇権を狙い出しているというのが、アメリカがいま目の前で見ているドラマです。

つづく

月刊Hanada 2016年6月号より

現代世界史放談(六)

ドイツ銀行の破綻

 ドイツには三つの禍があると申しました。一つは難民問題、二つ目はドイツの銀行の破綻です。これはいま急速に起こっているドラマです。

 ドイツ銀行の取引総額は、67兆ユーロ(約8700兆円)。ドイツのGDPの20倍です。ところが、ここに来て、フォルクスワーゲンの1兆ユーロ(120兆円)に上る保証金を全部ドイツ銀行が背負っていることが分かった。

 ここで指摘したいのは、日本では久しく政府が赤字国債を抱えていると言いますが、日本の銀行、特にメガバンクは赤字を抱えていません。日本政府に借金を集中させているのに比して、ドイツなどの欧州は政府が借金を背負わない代わりに民間銀行にしわ寄せがいっているんです。

 日本はGDP比200%の借金大国だから大変だと大騒ぎされ、ドイツ政府は無借金で素晴らしいことのように言い、メルケルもそう言い、ドイツの知識人も自慢して日本はダメだと言いますが、何のことはない、代わりに銀行が借金を全部背負っているのです。

 ドイツ銀行が引き金になって、リーマンショックのようなことが起こるかもしれません。あのサブプライムローン事件が起こった頃、ヨーロッパのほうがむしろアメリカよりも酷い金融危機だったのですが、これはアメリカが支えた。あの時、アメリカの政策金利は5%あったんです。だから金利を下げることができた。

 ところが、いまはアメリカは極端に金利を下げていますから、これからはドイツ銀行がリーマンブラザーズのように破綻しても、アメリカは助けることはできない。ドイツは火だるまになる可能性があります。

 フォルクスワーゲンは、1兆ユーロ(120兆円)もドイツ銀行に融資をさせています。日本ならばここで公的資金の注入というスタイルで破局を避けるでしょうが、これもEUが邪魔をしている。ドイツ政府がいままでもそういうことが思い切ってできないのは、ヨーロッパ中央銀行が合意しないからです。つまり、ヨーロッパのグローバリズムが正義の建前になっていて、ナショナリズムを抑えている。ですから、この局面はドイツの三重、四重苦になるのではないかと思っています。

つづく

月刊Hanada 2016年6月号より

現代世界史放談(五)

日本人の西洋大誤解

しかし、キリスト教はそうではなかった。巨大な哲学体系が後ろに控えていて、しかもそれを強制する政治制度や軍事力が控えていた。日本人はそれを受け入れる気にはならなかった。ただ、西洋の文化や芸術や学問は危険がないので受け入れた。大変に尊敬し、いまも愛好している。しかし根っこにある宗教を受け入れていないので、日本人の西洋理解は西洋大誤解かもしれない。

日本人は、がらんどうのような何もないのが好きだったのではないでしょうか。そうとしか思えないのです。政治文化を強制してこない。哲学的理念を強いてこない。ひたすらそういう世界に憧れた。西方浄土へのあこがれ、それは平安末期辺りから強くなりますが、日本人の心をずっと摑まえていて、いまでも何か事があると、遠い国で起こった出来事を日本人は尊敬するのです。素晴らしいものは外国にあると信じ、明治以来、長い間、西洋文化を鏡としたのは「西方浄土」に代わった。つまり、仏様はいつの間にか西ヨーロッパ文明に代わったのです。それが旧制高等学校のドイツ語、フランス語崇拝、教養主義礼賛になった。

他方、世界全体の現実を見ようとしなかったのではないか。だから当時、表舞台から消えたイスラムの世界も見ていなかったのです。現実は見ていなかったけれども、西方浄土をひたすら憧れるように、西洋文化をひたすら学んだ。そして夢を育てて、自分のところでそれを移植して自分なりの西洋文化を作ってここまできた。本当にそう思いますよ。

日本では必ずどこかで西洋絵画展をやっているでしょう。ついこの間まで、モネ展をやっていました。去年はスイスのホドラー展もやっていました。近くは何度目かのカラヴァジョ展が開かれます。こんなことをやる国は、アジアで他にありません。日本中のどこかで、必ずいろんな西洋絵画展をやっています。

コンサートも盛んです。最近、ドイツ人はモーツアルトやベートーヴェンをあまり聴かないといいます。そんなもの要るのか、という話らしいのです。オーケストラはほとんど外国人だそうで、十人中八人から九人は外国人。ドイツ人の音楽家がいなくなった。文学も教育も衰滅です。音楽も哲学もダメ。ドイツの限界というか、アイデンティティの喪失ということです。中国人と一緒になって浮かれて金儲けばかりです。

ドイツの三大問題

いまのドイツには、三つの大問題があります。いうまでもなく難民、これもアイデンティティの喪失から引き起こした。ドイツはナチスを抱えた無残な国、酷い国、悪の国と言われ続けてきたことが、ドイツ人の心を破壊し続けてきたと思います。

そこでメルケルは、ドイツは立派な国だ、国際社会の模範になる国だと言いたかった。それゆえに、難民はどうぞいらっしゃいと言い出した。隙を作った。

そもそも難民は存在するのではない、発生するのです。今度の欧州の事件で、そのことがやっと分かったでしょう。隙を作った先進国を目掛けて人の波が出現し、移動してくるんです。隙を作ったら負けなんです。ドイツはそれを自らやってしまった。立派な国であるということを見せたかった。自分を否定していた戦後のドイツのイメージを逆転させたかった。この国は今度の件で、人口の20%近くがイスラム系ということになる。ドイツ文化も失われてしまうでしょう。

自分の国をネガティブに見続けているということが、仇となる。自分の心を苦しめているわけですから、いつかそれが逆になって、素晴らしいドイツにしたいと思うから、メルケルがあのようなことを言っても国民は反対しない。メディアも批判ができなかった。いまようやく反論が激しく出てきていますが、遅すぎますね。そしてそれは、EU全体を壊す問題を起こしている。

日本も違った意味で、同じような危うい弱点があると思うのは憲法9条の愚かなる平和主義です。これが日本人の心を縛っています。とんでもない禍に転換する恐れがある。

みんな軽く考えていますが、北の核は脅威ですよ。4月号の『正論』に、私は「覚悟なき経済制裁の危険」という論文を出しました。経済制裁というのは宣戦布告ということと同じです。第二次世界大戦の直前に、アメリカに経済封鎖されたことは宣戦布告されたのと同じなんだと我々は言い続けてきたのではありませんか。同じことを、我々は北朝鮮に対してすでにやっているのではないですか。

しかもアメリカはそう言って遠くから見ていられますが、日本はすぐ目の前にある島国なんです。ミサイルが飛んで来ても文句が言えない。日本が先に手を出しているのですから。日本人は何を考えているのか。一瞬のうちに、東京のど真ん中に一千万人が焼尽する核が到着することも明日、起こらないとは言えない。

しかもそれは、アメリカや国連頼みで解決する問題ではないんです。日本人が自分で解決する以外にない問題です。国連なんて何も手伝ってくれません。

私は日本はおかしな国で、ドイツの例のように善意が全部逆になるということを申し上げているのです。自分を罪を犯さない善良の国にしたいと思うことは危険なことなんです。自分は適当に悪いこともしている国だと堂々と言えることが、バランスがとれている常識というものなんです。歴史の悪も肯定しなければいけない。これからも必要があれば危いこともしなければならない。それを全部否定してしまったがゆえに、自己を主張すべきところで主張する青磁政策まで否定してしまう。そうすればドイツの二の舞です。

つづく

月刊Hanada 2016年6月号より

「ドイツ・EU・中国」そして日本の孤独(八)

EUの陰に隠れて膨張するドイツと難民問題について、エマニュエル・トッドは著書の最初にヨーロッパの地図を載せています。EU解体を狙っている勢力とか、EUから離れたがっている国々とかを色分けしています。イギリスはユーロに入っていません。イギリスもドイツも苦境に立っていますね。ドイツはフォルクスワーゲンの問題や難民の襲来で二重苦三重苦でしょう。すでに難民の宿舎に火をつけた事件がもう250件くらいはあるのでしょうか。これから激しくなりますね。それでいて、今まで難民反対のデモをやっていたのがピタッと無くなった。難民受け入れについてのいろいろな論議もピタッと無くなった。言論統制というか、言ってはいけないこと、人種差別になると・・・。そういうことがドイツを覆っています。日本が救いなのは、私がこういうことを堂々と言えることですね。私が人種差別だなんていう人はいませんからね。私は日本が「被害者」になるとは言っていないのですよ。日本人が「加害者」になるから止めておけ、と言っているのです。必ず加害者になりますよ。ドイツも加害者になるのです。日本の場合は慰安婦問題からも分かるように、加害者になったら海外にどんな喧伝されるか分からないではありませんか。だからこういう国は警戒に警戒を重ねた方がいいのだと言っているのです。私はズルいから被害者になるなんて言わないで、「加害者になるのですよ、よく気を付けてくださいよ。」と、そこまでしか言わないのです。

「腐肉に群がるハイエナ」ということについて、IMFは人民元のSDRを認めて、中国はそのための口約束をして、その間にAIIBの支払いがあり、その前に人民元で決済をする。上手くいかないのではないか、中国は金が無いのになぜあんなことがやれるのか・・・。見ているうちに、ちゃんと人民元でAIIBで動かし始める。それをイギリスもドイツも期待しているのです。イギリスは先の総額7兆円の契約があり、ドイツは今後東へ伸びて行こうとする場合、北京からベルリンまでの鉄道を充実させて輸送路をつくるなどというド派手なプランにドイツ人は大喜びをしています。ドイツと中国が手を結ぶことに必然性があるのはロシアもなのですが、もともと陸軍国なのです。海軍国イギリスがなぜこれに参加したのか理解できませんが、ドイツ・中国・ロシアは海上のラインを抑えることはできません。海軍国ではないし港を持っていません。中国もロシアも実は太平洋に出て行くことはできません。アメリカと日本が頑張れば絶対にできません。海軍国イギリスがなぜ後押しをしたのかが分からないのです。海軍国・陸軍国というのが昔からあってロシア、中国は陸軍国で、日本もアメリカも海軍国です。第二次世界大戦は海軍国の日本がアメリカと組めていればあんなことは無かったでしょう。それはあのときの失敗ですね。

シティは怪しい闇取引、オフショアの代表で一種の闇金融です。しかしヨーロッパの社債などの5割くらいをシティで発行していますが、タックスヘイヴンの総元締めみたいなところがあります。いっぽうで2008年以来アメリカは必死になってタックスヘイヴンや闇金融を押さえようとしています。ところが2008年の金融ショックで、アメリカがタックスヘイヴンを経由してお金がテロリストに流れるということがはっきり分かったので、それを止める。北朝鮮のタックスヘイヴンも止める。マネーロンダリングを止める。アメリカはスイスの闇金融まで押さえようとしていますね。まだ完全には出来ていませんが。おかげでスイスは国家的危機に陥っています。ところがイギリスはそのタックスヘイヴンを復活させたいわけです。それを中国という闇がタックスヘイヴンを始めたらとんでもないことになりはしませんか。私はそういうことを心配しています。資本主義の大変質が起こるのではないでしょうか。アメリカがそんなバカなことを許すでしょうか。まだ信じられません。本当のことは分からないのですよ。だけれど人によっては、中国をこの制度に入れてやらせると中国も初めてまともな国になるとこういうことを言います。まともにせざるをえなくなり、開放して人民元が下がりはしても、まともな資本主義国家に変質していくステップになるだろうということです。そうされては困るということで、中国共産党内には簡単に入らない方がいいという議論があると聞いています。分かりませんが。議論はそういうところらしいですから皆さんもちょっと調べてみてください。つまり悪いところを考えれば、人民元のタックスヘイヴン化ということ。良いことを考えれば、中国はこれで表街道に引っ張り出されて、オープン化されるのではないか。どちらか分からりません。でも私は前者だと思っています。だからやっちゃいけない。いつも裏切られているではありませんか。

もともと南太平洋のことをイギリスやフランスやドイツはどう考えているのでしょうか。南沙諸島のあの島々のことをイギリスは喜んでいたのですよ。いまでこそアメリカは怒っているということを知っていますが、一時イギリスはあそこの軍事基地を喜んで応援しようとしていたのです。それくらいアジアのことをナメているのです。そういうことを騒ぎ立てるのが遅すぎたわけで、フィリピンは国際提訴したので国際政争が続くことでしょう。日本は南太平洋の人工島の要塞化を恐れているけれど、何れにしてもイギリスもフランスもドイツもあまり気にかけていません。どうでもいいことなのです。それで中国経済が盛り上ればそれでいいと思っています。

中国に恩恵を与えてやれば、お金持ちになれば民主国家になるだろう、というのが多くのひとの願いだったけれど、ぜんぜん逆の方向へ走ったというので、アメリカが怒りだしています。でもそんなことは分りきったことではないですか。あの中国人が唯我独尊になるのは初めからのことで、いつもそうしてきた民族です。嘘ではなく、思ったとおりにやっているのです。期待して恵みを与えれば感謝して「よき国」に変わるだろうという期待をもってやるのだとしたら、アメリカもおかしいですね。裏切られてやっと、というのは何とも知恵の無い話であって、アメリカは本当にやっと今気が付いたのです。アメリカはやっと気が付いているけれど、しかしイギリス・ドイツは気付いていないということです。そしてSDR、金融面での人工島が造られてしまうのではないか。私はそう思うのですが、心配のし過ぎですか。ただ、AIIBについては銀行で、政治的に日本の復興銀行とかと同じようなものでしょうから。でも日本も中国に対抗して13兆円出すとか復興銀行の条件を緩和するでしょう。

私もよく分からず、皆さんと同じように新聞やインターネットを見たりしている一介の素人です。こんな深刻な難しいテーマには入ってゆくべきではないし、入れない立場ですが経済のことは本当に分らないのです。それと政治の未来も分かりませんね。アメリカがリーマンショックで衝撃を受けて、金融を粛正しなければ自分たちが危ない。なぜならそのバブルになった金がテロリストに流れてゆく。それは今後もそうで、それを抑えなければいけない。2008年以降、アメリカの金融がそのような危機感から問題の引締めに入っているわけですね。それでもアメリカには何処かにまだタックスヘイヴン的なものが残っていると聞きました。全部は100%の排除は出来ていない。ですからイギリスのあり方には、多分ドイツもですが、アメリカの一部の指導者は渋い顔をしているだろうと思うのです。特に共和党なんかの。でもそれもよく分かりません。人民元のSDR承認については一時アメリカ議会の承認が必要だとも聞きましたが、共和党がいるので反対はするでしょうけれど、どうもそういう条件は無いらしいですね。IMFの理事会の判断らしいですね。オバマはOKを出しています。オバマっていう人も本当にノータリンですよね。今はもう完全にプーチンに手玉に取られているではないですか。任期はあと1年ですか。誰が大統領になるかで日本の運命が動いたりするというのは厭ですね。この先どういった動向に向かうかは、この年末まで世界のニュースを見守っていてください。

文章化:阿由葉秀峰

「ドイツ・EU・中国」そして日本の孤独(七)

 講演後の対談から(対談者の発言は省きます。)
 
 日本の孤独ということについて、2012年に中国で反日暴動がありましたが、世界は日本に同情をしませんでした。それで中国の味方をする。アメリカもそうでした。全く理解できないのは第二次世界大戦の前にも同じようなことがあって、日本商品はボイコットされた。「日貨排斥」といいます。「か弱いシナ人を邪悪な日本人が虐めている。キリスト教の精神からも許せない。」それが戦前のアメリカの人の大方の心理でした。今だってそうです。そしてアメリカもイギリスもドイツも中国で稼ぐだけ稼いでさっさと立ち去って、日本にだけ政治負担が残る。今回もそんな感じでしょう。これからもそうなるのではないのでしょうか。だから中国に介入しないのが一番賢い。中国から稼ごうと思わないで、他から稼いで出来るだけ中国に介入しない。少なくとも韓国にはそうですね。そのことは気づきましたね。ならば中国にも同じです。一切貿易もしなくていいんじゃないでしょうか。中国と貿易をしないと成り立たないのですか。三橋貴明さんは中国との貿易は必要ないと書いているけれど、どうなんでしょう。

 日本はドイツ帝国と中国で対立するだろうと私は言いましたが、中国とドイツが以上のような関係なので、ドイツは経済的だけではなく技術的にも軍事的にも中国を応援をするでしょう。ドイツの技術を惜しげもなく与えているようですから。日本の技術なんか要らないと中国は豪語しています。

 問題はなによりも軍事技術です。今武器輸出国の1位がアメリカで2位がロシア、3位が中国で4位がドイツという順序です。日本はやりませんから。しかし諸外国は武器輸出をした国のほうが信頼できる国と評価します。新興国や小さな国は輸入品として最新の武器が欲しいのです。いま潜水艦の問題で最終的な結論は聞いていませんが、オーストラリアが日本の潜水艦を欲しいと言っていますが、政府がはっきりしないので日本の三菱重工業も煮え切らない。アメリカの信号システムが入っているからオーストラリアは日本製が欲しいといいます。ヨーロッパ・ドイツのシステムではアメリカのものに整合できないので、システムを整合させたいとオーストラリアは思っているそうです。通信システムとかでしょうか。それにもかかわらず日本のメーカーが積極的ではないということです。日本は不思議な国です。ドイツ・中国一致と日本との対立は軍事的な面ですね。ドイツは表に出てきません。ちょうど蒋介石を応援したゼークトのように、ドイツは後ろで中国を支えることでしょう。でも皆さんは日本が戦争をするわけないと思うことでしょう。

 ドイツが日本憎しになるのは仕方のないことで、フォルクスワーゲンの走行中の検査機械は日本製だったそうですね。これでドイツはまたやられた、と思っているでしょう。でもヨーロッパはそんなバカではありません。中国が為替を変動相場制にしないとか、あの滅茶苦茶な株式マーケットのやり方を知っていながらSDRを推進する理由は、よく分りません。一方で反対している人も沢山いるわけですから、今でも分かりません。またこういう考えもあるかもしれません。SDRを引き受けるのなら、習近平が半年後に履行するなどという口約束ではだめで、これだけのことを実行せよ。そういうことになると中国経済はガタガタになると宮崎正弘さんは言っていますね。人民元が変動相場制を受け容れたら、もの凄い急落をするでしょう。4分の1くらいになるでしょう。それを待ち構えているのは禿鷹ファンドです。上がっても落ちても儲けるのです。だからじっと見ているのではないですか。人民元が轍にはまったら大変だから、中国の国内でも簡単に受けない方がいい、という声もあるようで。だからよく分からないのです。変動相場制になったら人民元が急落することだけは確かなようです。そうなると日本のGDPがまた2位に戻ってしまう。ドル高計算ですからそうなるのではないでしょうか。

 これから10年くらい中国経済はダメでしょうけれど、20年後はわかりませんね。皆さんも何かで読んでご存知でしょうけれど、中国は今の政治体制では続かないでしょう。つまり7つくらいに軍閥(今は軍管区というが)ごとに国が割れてしまうのではないでしょうか。そう言う人もいます。軍管区が7つありますね。あるいは連邦スタイルになるとか、チベットとウイグルが独立するとか、台湾もそれを望んでいるでしょうし。そうなればまともな国になるかもしれません。だいたい中国はヨーロッパみたいに各地で文化も言葉も違う地帯ですから一つになっているのがおかしいのです。ヨーロッパがバラバラなように、もともとバラバラな国なのです。中国はたくさんの地方、地域、国々があって、字を読まなければ意思伝達ができない。毛沢東が大演説をしても地方から来た議員たちは何を言っているか分からなかったそうで、そのうちにペーパーが回ってきて読んでわかるということです。ですから漢字だけが唯一の伝達手段で、発音も文法も違うのです。それは黄文雄さんも言っていますね。しかし最近は北京語が普及してきているということです。一概には言えませんが、それでも文化はバラバラです。ちょうどアイルランドやポーランドが英語を使わなければ理解できないとかそういう様なことで、インドはもっとすごいので唯一の公用語が英語にならざるを得ない。日本は珍しいのです。タクシーの運転手も日本語が通じます。最近はスポーツ選手に日本国籍の黒人が入ってきて驚きましたね。

 日本はすでに移民国家です。だから「移民国家宣言」をしたらいいのですよ。日本は移民を受け入れていないということはなく、すでに100万人くらいは受け入れているでしょう。でも宣言なんかしたら「入れてくれるんだ!」ということになって・・・。言わない方がいいのかもしれません。政治難民、迫害されている難民の受け入れについても、ある程度入れているのでしょうけれど、今はかなり少数でしょう。外国人を入れるということは「外国に依存」することになります。大相撲がはっきりした例ですね。私は制限をしたほうがいいと思います。どこそこ国からは何人とか。

 日本が他国の移民政策の失敗に学べずに政策を進めていることについて、まだ実施していないと思うけれど、安倍さんは怪しいですね。「特区」というかたちで神戸のほうで外国人の女中さんを受け入れるというのが始まるでしょう。何人受け入れるか知りませんが、やめた方がいいと思います。というのも東南アジアの若い女性を家事労働者として迎え入れて、代わりに主婦がライフスタイルを変えて外で働けるために、ということらしいけれど、そんなことをしたら子供たちは日本語を話せなくなりますよ。もう一つ大事なことは、他の国は外国人を搾取することに慣れていて、使用人は使用人として区別して暮らせるけれど、日本人はそれが出来ないから「○○ちゃん、一緒にご飯を食べましょうよ。」となるに決まっています。そんなけじめの無いことをやっていたらいつか逆転します。中国人を非常に大事にした老夫婦が殺害されているではありませんか。そんな目立つ事件がすでにいくつもありましたよね。ですから慣れていないのです。パリは道路の清掃はチェニジア人などの黒人で、不動産屋はベトナム人、花屋さんはイタリア人で、なんていうことになっているらしいのですが、そしてアパートの受付はスペイン人で持ち主はフランス人だとか。そいうことを平然と何百年とやっていますから、パリは人種差別都市なのです。だから「外国人お断り」という張り紙をしたら人種差別撤廃法に引っかかったのです。日本は迂闊でそんな背景が無いから、すぐに「人種差別をしている国」というレッテルを貼られます。差別が固定化して当たり前になっている社会とはいろんなことが違うのです。今度のフランスの事件は驚くべきことでしたが、今後も続くことでしょう。ベルギーにもパリにもそういう人が住む町がありますね。アラビア特区のような所が。東京にも大久保とか北池袋とかがありますよね。そういう地域は自然と出来るのです。排他的で警察も容易に立ち入れないということです。今日はあまり移民の話をするつもりはなかったのですが。もうこれだけ世界で広がればどうでしょう。それでも日本には無理でしょうか。これだけ世界の教訓を見ていたら学ぶのではないでしょうか。

 介護領域の雇用に外国人を使うことがいけないのは、そういうことではなく、それよりも介護要員の給料を上げるべきということなのです。つまり移民を入れればその職種の賃金はさらに下がるということを意味するのです。だから怪しからんのです。それは雇い主の側だけが利益を上げることになります。だからこそ賃金を上げることが絶対に必要なのです。スーパーマーケットだって外国人を雇ってはいけないということにすれば、アルバイト店員の給料も上げることになるのです。一時そういうことがあったではありませんか、人が来てくれないから、ということでどんどん上がったと。それは労働者にとって幸せなことではありませんか。外国人を入れると経済的減速がおこり自由競争ではなくなり、どの職種でも日本の労働者が不当な扱いを受けることになってゆくのです。

 では高等人材だったら良いだろうということですが、これもまたとんでもないことで、今6年制一貫校、麻布とか開成とかにドドッと中国人が入っているようですよ。それで彼らが東大に入って官僚機構に入っていくのですよ。恐ろしいことです。一方でそれはたいしたことは無い、例えば大昔に大化の改新のころに帰化人とかあったじゃないかとか。それは意味が全然違います。中国人やイスラム系民族大移動の時代という現代現象と古代の話は違うのです。それから石原慎太郎は昔から何かというと外国人を入れろと言い、日本人は宗教的にも懐が深いので、どんな人がどれだけ入ってきたって、いつか抱え込んでしまうから大丈夫なので、ケチなことを言っちゃいけないなどと書いています。これは知らないのですよ、あの人は。日本の文化は確かに包容力があり、いろいろ巻き込む力をもっているのですが、ある特定のものは置き去りにしてゆくのです。仲間に入れないのです。人種的にも民族的にも置き去りにしてゆきます。まずキリスト教がそうです。キリスト教は受け容れていないのです。つまり置き去りにされていくわけです。韓国儒教も受け容れないでしょう。日本の文化体系の中に入っていません。つまりこの国は「原理主義」は受け容れないのです。だから意外と拒絶的なのです。包容力があるなどというのは古代と現代を勘違していて・・・。変なことを言う人です。保守に非ざる考えですね。

(まとめ 阿由葉秀峰)

つづく

「ドイツ・EU・中国」そして日本の孤独(六)

 ここにきてドイツは、移民が入ってきて更にとんでもないことになるのではないでしょうか。良いことは絶対に起こりません。それでも私はドイツを根源的に信じているところがあって、それは何かというと、ナチスがあったためにメルケルさんがあんなセンチメンタルなことを言い出して大変なことになっているわけですけれど、ドイツはEUの陰に隠れて、ナチスのために「ドイツ・ドイツ!」と言えないのです。やってはダメだから。ドイツ主義を隠して、「EU・EU!」と言っているうちに自分が大きくなって、EUの陰に隠れて自民族の拡大を図ったのではないか。あるいは図ろうとしているのではないかと。「膨張するドイツ」とはそういうことで、「仮面としてのEU・正体はドイツ」そういうことがあるのではないでしょうか。同時にユーロが無くなることをドイツは、ドイツの企業家は最大限に恐れています。

 フランスの知識人エマニュエル・トッドはユーロを無くしたいと思っていて、ギリシャもそうなのですが、フランスはドイツ産業にすっかりやられているわけです。フランスもイタリアもドイツほどの力を出せないのです。そのためユーロから外れてそれぞれ元の通貨に戻ると一時は経済が下がりますが、しかし「平価切下げ」を行うことができるわけです。切り下げると今度は独自に展開を遂げますから、マルクに支配されないでフランスは競争力をとり戻すことができるかもしれません。フランスには独自の産業の力があるのに、マルクに思うままにされていたらダメだから、フランの復活ということです。それは国民戦線党首のル・ペンが言っています。フランを復活させようと。そうすれば平価切り下げをして。ギリシャもそうです。ドラクマに戻れば最初は大変でしょうけれど、ギリシャは黙っていても観光収入があるから、それを柱にします。国際通貨としては安いドラクマです。しかし安いから人は行く。ユーロは高いから行かなくなってしまうのです。他にもそういうことは沢山あります。私はイタリアに昔よく行きましたが、安かったからよかったのに、ローマの空港に行ったって今は高いですよね。ユーロになったら昔だったら考えられないくらい小さなパンが千円もするとか。平価切り下げをすれば競争力を持つわけですね。それがEUの失敗であり、矛盾であると私は思います。だからEUはいつか無くなるだろうと言っているわけです。

 各国の主権の回復、EU議会の権限の制限をやる。そういうことで意見が一致して、イギリスもドイツもそう言っているわけです。しかしドイツはユーロが無くなったら、各国が独立したら、ドイツの一人勝ちができなくなります。今のドイツはこの構造に守られて、ドイツの産業界だけ儲かっています。そうではないですか。日本が円高で苦しんでいるときユーロがどんどん安くなって、競争力を高めた。韓国もウォンがどんどん安くなって貿易の競争力で日本に立ち勝りましたね。あの時期ドイツと韓国は輸出立国で稼ぎに稼ぎまくりました。今日本は円安になったのでようやく競争力を回復するようになったけれど、長い間円高で苦しんだ私たちは、EUを犠牲にしたひとり勝ちのドイツのことを変だと思って見ていました。長い間ドイツは儲けるだけ儲けたのですから、いってみればドイツの力がEUにヒビを入れたと言っても良いでしょう。それは先ほど言ったように、地方が衰え東京ばかりに富が集中するというのと同じように、ヨーロッパは北にだけ偏って富が集中するから、これは解体するか、帝国ドイツが本当に出現して一国が全ヨーロッパに富を分配する、というふうになるかどちらかであるべきなのですが、難しいですね。

 ドイツが中国と組んでいるのは現実ですが、ドイツと中国の間の「二国間政府サミット」というのがあるらしいのです。それくらいドイツは中国に入れ込んでいるし、中国人はドイツ人にペコペコに頭を下げます。川口マーンさんに聞いてびっくりしたのは、ドイツは鉄道の全車輌を中国から入れることにしたというのです。それまではジーメンスだったのですが。イギリスは日本から入れます。日立がもうイギリスに送り込んでいるようですが、最近のイギリスとドイツの関係を考えると、これも将来わかりません。「中国の車輌に命を預けていいの?脱線して土に埋められちゃうよ。あれはニュースにならなかったの?」と聞いたら「ニュースにならなかった。」というのです。中国の悪いことはドイツで報道されないそうです。もちろん専門家の間では知られていますが、皆が見る時間帯のニュースにはならなかったそうです。あんな大きな事故がテレビの画像に出てこなかったのです。それから中国の株を政府が止めたことも報道されなかったというのです。つまりドイツも中国に対してなにか意図的なのです。中国も日本の悪口を言うためにドイツを利用するし、もちろんこの紛争の問題では「日本はドイツのようになれ」とうるさいことを言ってきます。(註・2015年末ごろから2016年にかけてドイツのメディアは様子が変わり、厳しい中国報道を少しづつするようになった。)

 孔子学院をご存知でしょう。これは中国共産党のイデオロギーを教える学校ですが、これがもうカナダとアメリカでは追い払われています。その理由はカナダやアメリカに逃げた中国人が共産党から逃れて来たのに、ここに来てまでこんな教育を受けるのは厭だ、と言ったそうです。ところがヨーロッパではドイツの国立大学の中に入り始めていて、ドイツのある学者は「中国の民主主義は他の国が及ばないほど立派である。」と讃えています。この姿は第一次世界大戦の戦間期のドイツとシナの関係によく似ています。

 ハンス・フォン・ゼークトをご存知でしょうか。蒋介石を応援したドイツの将軍です。ドイツは第一次世界大戦のあと、戦争放棄する形をとりますが、密かに武装を続けていてシナにも潜り込んで蒋介石を応援します。蒋介石は長い間日本を苦しめます。1937年に第二次上海事変があり、日本は大変な苦労をして、将兵4万人くらい失っていますが、そのときゼークトが指導して作らせたトーチカでやられるのです。それは1936年の日独防共協定の後なのです。「頭は左で財布は右」という言葉があるそうですが、蒋介石とドイツが繋がった一つの理由としてタングステンがあり、比重が大きく硬度が高いため軍事上としても貴重な金属です。ドイツが産出量の多いシナからタングステンを手に入れるということがひじょうに大きな動機のひとつと聞いています。それは戦間期の歴史にありますが、日本の歴史教科書には出てきません。日本の歴史教科書は話になりませんね。つまりドイツは歴史的に日本に対して非常に悪質な国なのです。やっぱり私はドイツ文学をやらなきゃよかったと・・・。

 最近のドイツはイスラエルに反発するようになりました。今までそんなことは考えられませんでした。メルケルはイスラエルで「ドイツ語」で演説しました。イスラエルは「イスラエルの地でドイツ語を使うとは何事か」と反発しましたが、これはイスラエルもおかしいですね。だからメルケルは堂々とドイツ語で演説をしました。これは評価できます。つまりユダヤ人も戦後いい気になってやり過ぎたのです。ユダヤ人がそんなことをしてドイツ人を虐めていると必ず報復される、というかまたユダヤ人殺戮が起こります。そんなことは無いと皆さんお思いでしょうけれど100年、200年後には分かりませんよ。日本と韓国だって分かりません。100年、200年後には「征韓論」を言い出すかもしれませんよ。「西郷隆盛に続け」とばかりに。歴史は分からないのです。

 中国のAIIBにイギリスが真っ先に参加すると言いましたね。私は「腐肉に群がるハイエナ」という題で論文を書きました。というのは中国はいま金が無いのですから、他国の金を当てにして自転車操業しながら過剰生産設備投資をやり過ぎていて、鉄鋼でも何でも、労働力も余り過ぎてどこかで使わなければならない。それを他人の金でやろうとしている。AIIBとはそういうことです。何で日本がそんなものに参加する必要があるのでしょう。他国の金で自国の欲望を果たそうとしている、なぜイギリスやドイツはそれが見抜けないのか。見抜いているはずです。アメリカからも私たちよりもっとたくさんの情報が入っているでしょう。見抜いても中国が潰れるまでしゃぶりぬけということか。潰れたって知ったことではない、儲けるだけ儲けよう。多分そうでしょう。習近平も同じでしょう。自分が少しでも延命するためには国民がどうなったって構わない。未来がどうなったって構わない。どんどん火ダルマのように積み上げて自転車操業すればいい。そういう悪魔同士が握手をしているということです。それがEUと中国との結びつきです。私たちはそれを呆然と見送っているばかりですが、アメリカは多少は気がついていることでしょう。中国が大きくなることはアメリカの利益に反しますから。しかしアメリカとイギリスは兄弟国だったはずです。最近ではイギリスはアメリカの意向に完全に逆らっています。でもよく考えてみると、シティとウォール街は決して別人格ではなく繋がっているのですから、お互い照らし合っていることでしょう。それがどうなのかは言えません。分かりません。分かっている人は日本にはいませんよ。私たちは歴史と時間の推移をじっと見守って正体はどこにあるのか。でも今日はどっちか分からないところにあると最初に申しましたね。サイコロを転がさなければわからない。最後はシティとウォール街が何を考えているのか分からないので何も言えないというのが正直な答えですが、もう一か月くらいでいろいろなことが分かってきますから、見つめ続けることにしましょう。どうもありがとうございました。

(まとめ 阿由葉秀峰)

つづく

「ドイツ・EU・中国」そして日本の孤独(五)

 先に中国の話を少ししましたが、昔から欧米がいつも注目するのはアジアではシナです。日本ではありません。ペリーが来航したころ、蒸気船は存在せず帆船でした。ロンドンから、またはニューヨークからアフリカ南端の喜望峰を廻って上海に行く二つの航路がありました。面白いことにニューヨークからの方が近いのです。1810年代の早い時期アメリカの対支貿易はイギリスを凌駕していたのです。スエズ運河が出来たのは明治維新の頃、1869年でした。その頃蒸気船が出来、イギリスが圧倒して、アメリカはパナマ運河の開発を考えるようになります。パナマ運河を開発しなければイギリスとのシナ貿易に敗れるからです。英米はたえず張り合っていました。貿易のターゲットは常にシナ大陸なのです。シナ大陸が富をもたらしてくれるのが幻想か実体かは分かりませんが、シナ大陸との貿易競争で英米は争っていたのです。

 大東亜戦争にも関係があり、おそらく日本もそのせいでやられたのだと思います。英米が対立しあってシナとの貿易、利権を奪い合うという事態が19世紀以降戦前の大きな特徴です。その頃シナの人口は4億くらいだったと思いますが、広大な土地とおそらく巨大な資源が眠るに違いないと思い込む世界の妄念があり、今でもそう思い込むふうがあり、人々は「シナ幻想」に踊っています。ペリーが来航してきたときはまだ太平洋航路が無かったので、喜望峰を廻って上海、沖縄を経由して日本に来ました。そこでペリーは何としても太平洋航路を作らなければいけないと海軍省に手紙を出します。シナへの中継地として日本が必要であると。そして小笠原諸島を狙います。このようにシナが本命で、日本は二次的なのです。ターゲットではありません。ターゲットはシナなのです。中継地としての日本が重要だったのです。ナメた話ですよね。でもその力学がずっと働いていて、「シナ幻想」が世界を覆っているからこそ、今でもシナに「大甘」なのです。白人は習近平のような男が居座っているのが異常だと思わないのです。

 もうひとつ別の味方をしてみます。現代はアメリカが日本と一緒になって中国にアヘン戦争を仕掛けていると思っています。アヘン戦争というのは、19世紀に銀の欠乏で茶の支払いに苦しんでいたイギリスがインドでアヘンを作らせ、清にアヘンを持ち込んだことに由来します。21世紀のアヘンは中国人にとって近代生活の富なのです。想像もつかないスピードで中国人は浮かれ出したではありませんか。アヘンに溺れたのとよく似ています。これはあっという間ですよ。おぼえているでしょう。2000年初めころ、中国は全然大したことはありませんでした。鄧小平が「南巡講話」を出したのは1992年ですから、それから10年くらいはまだ貧しい穏和しい国でしたが突然浮かれ出した。日本とアメリカの投資でどんどん膨れ上がったからです。それを「自分の力」と錯覚してどんどん借財を作って、自転車操業を繰り返すことによって力を経済的にも高めることだけに注ぎ架空の力でここまで来ているのではないでしょうか。浮かれ出した今の大陸の動きは、アヘン戦争でアヘンに溺れたシナ人を彷彿とさせます。アヘンを買い続けたシナは次には支払うべき銀が足りなくなり、どんどん国外へ銀が流出し、経済破綻します。今の中国がそれです。ドルがどんどん流出して止めようがないではありませんか。

 1990年代、アメリカは日本の経済で敗れたころ、1992年に日米構造協議で日本の社長や経営者の財布の中身にまで干渉してきました。小売店を潰して全部大型店舗にしろとかいわれて、法を変えて全部大型店舗になってしまいましたね。勝手に経営の仕方や経済構造にまで散々に突っ込んだのが日米構造協議です。それは日本を潰せということで、一斉にいろいろやるわけですが、それはアメリカの焦りでした。アメリカはメキシコなどいろいろな国で工場展開をしましたが、なかなかうまくいきませんでした。そこで中国大陸の豊富な労働力と広い土地に出会い、鄧小平は税の優遇措置として積極的に外資を導入しようとした。つまり中国の政策の魔力にアメリカは囚われてしまったのです。そして中国はまるで尻に火が点いたように走り出すのです。ちょうどれから10年から15年、その急激な変化というのは驚くべき速さです。驚くべき速さですが、これは昔のシナと非常によく似ているのです。

 19世紀の初めごろ、イギリスも貿易赤字で苦しんでいて、清から絹・茶・陶磁器・木綿などを買っていましたが、それに見合うイギリスからの輸出品は毛織物とか時計とか玩具の類で、そんなものではとても清から物産を輸入できない。そこで当時の国際通貨が銀だったので、それを利用しようと。ただしロンドンから銀を運んだのではありません。植民地インドから清へ銀が支払われました。しかしインドにもそんなに銀があるわけではないので、イギリスはインドに綿織物を運んでそれを売って得た銀をつかって清からお茶を買い入れました。大量にお茶を買いたいけれど銀が足りない。そこでイギリス人が考えたのはインド産のアヘンです。インドでアヘンを作らせてそれを銀に変えた。清にアヘンがもたらされると、アヘンを吸引する風習は忽ち心を捕えて、しかもイギリスは銀の決済をしなくてもアヘンを持って来ればお茶が買えるということで、これが悪名高い三角貿易で、問題が起こるのはそれからあとです。

 清はアヘンを吸う人が増えてしまい、アヘンが欲しいのですがお茶では支払いきれなくなります。ちょうど今の中国が近代市民生活に憧れて「爆買い」するように、アヘンをどんどん買います。そのため清にあった銀の保有量がどん減ってしまいます。銀が急速に外に流れだしたのです。そのことで戦争にもなり、清が倒される要因です。つまり簡単に言えば、中国から急速に資本が流れ出しているのです。困り果てているのです。今は清から銀が流出している時期にあたっています。これまではアヘンではなくて紙幣を国内でどんどん刷っていたわけですけれど、今度は国外へ放出しなければ維持できなくなってきている。アメリカや日本は今中国にアヘンを売っているわけではありません。しかし閉鎖的で貧しかった中国13億の民に近代生活の富の味を教えた。かくて中国は毒を食らわば皿までと、今や金持ちになることに無我夢中になっているといことで、その無理がここで祟ってきて、今度は急速に富が外に流出するという事態になっているということで「アヘン戦争・一幕」ということで、歴史は繰り返されるなぁ、と思っております。ペリー来航のときもアメリカが狙っていたのはシナ大陸であって日本ではなかった。アヘン戦争においても全く同じことが行われたと思います。つまり歴史は不思議なことに同じことを繰り返すものだと私は思います。

 もうひとつ別のことをお話しします。イスラム教とキリスト教の宗教戦争が続いているということです。日本はどちらの宗教にも関係ないのですから口出しをしてはいけません。下手なことを言うのはバカな話です。イスラムはオスマン帝国が18世紀の末まで大帝国を築いていて、大体19世紀の前半くらいまでヨーロッパはオスマン帝国に力においてだけでなく文化においても頭が上がらなかったのです。

 多くの人がそれを忘れているのは、日本での歴史教育が西洋の優位ということで全て理解されていて、明治の多くの思想家というと福沢諭吉も岡倉天心も中江兆民も内村鑑三も頭が欧米なのです。つまり明治維新以降、日本の歴史の中にイスラムは入ってこなかった。現実はその直前までイスラムが世界を支配していたのです。イスラムはアフリカの西からインドネシアの端までずうっとイスラム帝国が続いていて、それが逆転されたのが18世紀から19世紀ですから、その恨み骨髄に徹しているのが今のイスラム教なので、絶対にキリスト教徒を許していないのです。キリスト教徒が敵なのです。だから今起こっているのはそういう流れの下にある戦争です。

 イスラム諸国のイスラム教徒は決してテロリストではないとテレビで言いますね。それはその通りでしょう。ですがどこからお金が出ているのでしょうか。イスラム系の大商人から膨大なお金が裏から流れているに決まっています。それはやはりイスラム諸国です。つまり積年の恨み、イギリス・フランス・ロシア・ベルギー。皆宿年の大敵なのです。だから私たちは黙って見ていたらいいのです。下手に手を出しても何の意味もない。安倍さんは少し喋り過ぎではないでしょうか。私は口先でも言わない方がいいと思っています。

 もうひとつ付け加えると、イスラムは長年主役であったのが18世紀の終わりに逆転してしまって西洋に地位を奪われたのと同じように、シナは長年覇者と信じていたのに19世紀になって日本に逆転されてしまいました。イスラムと西洋のこの関係は中国と日本の関係とパラレルです。つまり今日の中国のあれほどの政治的な恩情は昨日今日の話ではないのですね。このことを西洋人に理解させるにはイスラム教とキリスト教を使って、日本と中国という運命を説明することが必要であると私は思います。そうすれば、ずっとずっと分かりやすくなると思いますが、日本の外務官僚にはそういう発想が全くない。

 またキリスト教の歴史をみていると酷いもので、例えば「ジハード」という言葉がありますね。あれをまるでイスラム教徒の大聖戦、一方的な攻撃戦のように言いますが、剣を振りかざして虐殺したのはキリスト教徒で、それを全部イスラム教徒に擦り付けたのですよ。ちょうど南京虐殺を日本人がやったように中国人が擦り付けるのと同じように。世界は、世界中でそういうことがやられているのです。ところが日本はそういうことをされても「ヘヘヘッ」と笑っているだけで、どうなるのかと心配に思います。

 中国は自己中心の国で思い込みが激しく閉ざされた地域です。もともとシナは鎖国文化圏なのですね。外と交わらず、自分が全ての中心だと思っている。明朝の時代、マテオ・リッチというイエズス会宣教師が、地球は丸いことを示す大きな地図「坤輿万国全図(こんよばんこくぜんず)」を初めてシナにもたらしました。それは日本にも伝わり、江戸の日本が地球は丸いということを知ったのは、リッチのこの一枚の大きな地図から始まるのですが、マテオ・リッチはシナの知識人に逆らわないようにするため、地図の真ん中にシナ大陸を置いて、つまりヨーロッパ中心ではない地図を見せたのです。そうしたら日本列島が真ん中に来るわけです。太平洋が右側で中国大陸が左半分にあるのです。それを見たシナの知識人の多くは、地球の4分の3が自分たちのものと思っていたからこんな地図は間違いだ、と言って聞き入れませんでした。しかし日本人は誰もそんなことを言う人はいませんでした。そういう意味で日本人は謙虚で外から届けられる知識については非常に慎ましく対応して自分を無にする心があると思います。これは他のアジア諸国、中国や韓半島とはまるきり違うところでしょう。

 韓国人は中国人以上に自分が絶対です。自分のイデオロギーから抜け出ることが出来ないのですから。朴槿恵大統領は本気で言っているのですよ。ああいう歴史観を子供のときから習っていて「正しい歴史観」を日本人は信じなければいけない、「正しい歴史観」に日本人を変えなければいけないと本気で信じています。「正しい歴史観」というのは、あくまで「韓国は偉い」という歴史観です。それに全部従えと言っているだけですから、きりがない話で、相手にしてもしょうがないのです。最近の韓国国民は、朴槿恵大統領は外交で一番成功を収めている政治家だと信じているそうです。アンケートをとるとそうなるのだそうです。

 ところで日本はなぜ仏教なのでしょうか。神道と仏教ですね。儒教ではないですよ。神仏儒といいますが、儒教は日本の宗教心に入っていないと思います。祖先崇拝という点では関係あります。儒教は道徳として日本に影響を与えましたが、ご承知のように儒教は皇帝制度と科挙のシステムに切り離せないほど繋がっています。韓国は儒教なのです。朱子学のイデオロギーであのようになってしまいます。日本は儒教を本格的には受け容れませんでした。天皇をずっと頂いていますし、王様が二人居続けられた国なので、それは世界に理解されなかったけれど、それはバランスをとる上で良かったのです。つまり遠いところにある無限の神・仏様と、生き神様である天皇と、超越神と現身の神、この二神を頂くことで心のバランスがとれたということです。儒教ではなく外来信仰として仏教を受け入れた背景です。この仏教は本格的に日本に入っていて日本の宗教心理の根底を形作りました。神道は超越神を持ちませんが仏教はそれを与えてくれて、二神を頂くことをもって日本人はバランスをとってきたのです。

 日本人はなぜ仏教には抵抗が無かったのか、ということを考えたことがおありでしょうか。神道に抵抗が無いのは分かりますが、日本人は仏教をほかの外来宗教と違って受け入れました。それ以外の宗教は全く受け入れていません。韓国儒教もユダヤ教もキリスト教もヒンズー教も日本人は受け入れません。しかし仏教は受け入れました。しかも日本仏教は久しく発展し独自の展開を遂げました。なぜか深いところにフィットしたのです。なぜかというと、それぞれの宗教は皆後ろに政治文化を抱えているのです。例えば儒教は皇帝制度と科挙のシステムを抱えている。ヒンズー教も同様でインドの社会風俗や生活を抱えています。ユダヤ教やキリスト教もそうですね。しかし仏教は面白いことにインドの地で徹底的な展開を遂げました。形而上的な理論展開を遂げたのは8世紀の密教に至るまでインドの地で発展を遂げますが、そこで忽然と消えてしまうのです。つまり本当に消えてしまいます。あるイギリスの植民地主義者がインドに渡ってきて大きな立派なお堂があって、それはブディズムの伽藍だと聞いているが、僧侶一人いないし仏像もないし経典もない。忽然と消えたのです。それでは仏教が消えたのかといえばそうではありません。チベット仏教・ネパール仏教・中国仏教・日本仏教、南にいけばタイなどの南伝仏教。そういう風に外に展開したのです。キリスト教はどうかというと、キリスト教はイスラエルの地ではいっさいいかなる理論展開もしないで、何をしたかというと、ローマとヴィザンチンで初めて展開しました。西ローマ帝国・東ローマ帝国。そうやって仏教と違って他の地域に移っていって、はじめて形而上的・理論的・学問的展開を遂げました。それに比べると仏教は、後ろに何も政治文化がついていないので日本人に受け入れやすかった。しかしキリスト教はそうではなかった。巨大な哲学体系が後ろに控えていて、そしてそれを強制する。日本人はそれを受け入れることには抵抗がありました。

 日本人は、がらんどうの様な何もないものが好きだったのではなでしょうか。そうとしか思えないのです。政治文化を強制されない。あるいは哲学的理念を強いてこない。ひたすらそういう世界に憧れと、西方浄土への憧れ、それは平安末期辺りから強くなりますが、日本人の心をずっと掴まえていて、いまでも何か事があると、遠い国で起こった出来事を日本人は尊敬するのです。素晴らしいものは外国にあると、明治以来長い間西洋を鑑としたのは「西方浄土」だったのですよ。だから西ヨーロッパ文明の現実を見ていなかったのではないか。だからイスラムも見ていなかったのです。現実は見ていなかったけれども西方浄土をひたすら憧れるように、西洋文化をひたすら学んだ。そして夢を育てて自分の所でそれを移植して自分なりの西洋文化を作ってここまで来た。本当にそう思いますよ。

 日本では必ずどこかで西洋絵画展ってやっているでしょう。ついこの間までモネ展をやっていましたね。スイスのホドラー展もやっていましたね。こんなことをやる国はアジアで他にありませんよ。どこかで必ずいろんな西洋絵画展をやっています。コンサートも盛んです。最近ドイツ人は全くモーツァルトやベートーヴェンを聴かないといいます。そんなもの要るのか、という話らしいのです。オーケストラはほとんど外国人だそうで、10人中8人から9人は外国人、必ずしも日本や韓国人というわけではなく、アメリカ人とか他の国々。ドイツ人の音楽家がいない。文学も教育も衰滅です。音楽も衰滅。哲学もダメ。ドイツの限界というかアイデンティティーの喪失ということですね。中国と一緒になって浮かれて金儲けばかり。こういうドイツの国の文学なんてやったのは大失敗だった・・・。

 (まとめ 阿由葉秀峰)

つづく