皇室と国家の行方を心配する往復メール(四)

西尾から鏑木さんへ(後篇)

 最近起こった愛子様不登校事件で、天皇皇后両陛下から次のようなお言葉があったと広く伝えられています。「学校や数名の児童が関係する事柄であり、いずれかが犠牲になる形での解決がはかられることのないよう、十分に配慮を払うことが必要ではないかと思う。」(週刊新潮3月25日号に依る)

 子供の世界の全体を見渡していて、皇室の与える影響の大きさを心得ているこのお言葉は、不登校事件は何事かと眉をひそめている国民にはじめて安心感を与えました。もしこのお言葉がなかったら、とても落着きのないものになりました。さすが両陛下のお心配りは違うな、と私も安堵の思いを抱きました。ご皇室と国民の関係を支えているのはやはり天皇皇后両陛下だな、とあらためて確認させられた次第です。

 一方、皇太子ご夫妻からは「愛子の欠席で国民の皆さまにご心配をかけ、私たちも心を痛めております」というコメントが発表されたが、このおっしゃり方に違和感を持った関係者も多かったようです。その後も「母親同伴四時間目限定登校」がつづいていると報ぜられていますが、詳しい事情は書かないようにと報道規制がなされています。ですからそれ以上のことは私共には伝えられていません。何が起こっているかまったく分らないので今われわれはこの事件に関して何も考えることができません。いろいろ憶測しても仕方がありませんから――。

 別の話ですが、昨秋皇太子殿下が演奏に参加された音楽会が開かれ、ご皇室の皆様が会場にお姿をみせたという報道がありました。演奏が終って、雅子妃殿下がおひとり真先に席を立ってさっさと帰ってしまったので会場から驚きの声が上ったと、報じられました。演奏会にひきつづき懇親会が催されたそうですが、妃殿下は欠席されました。そこまでは産経にも、他の新聞にも出ていました。

 むしろ私があっと驚いたのは『アエラ』がそのときのある事件を伝えた記事でした(記事を失くしているので正確に書けないのをおゆるし下さい)。演奏会の間、ご皇族の方々にショールのような膝掛けが配られていました。すでに晩秋で寒いからでしょう。妃殿下はおひとり真先に起ち上がってお帰りになったのですが、そのとき隣席の皇后陛下に、ご自分の膝掛けをぱっと渡して立ち去ったというのです。皇后陛下は驚いて、それをお付きの者に回したそうです。周囲では驚きのざわめきが起こったそうです。

 雅子妃殿下はやはりご病気なのだな、と私はそのとき思いました。以前私は妃殿下は病気ではないのではないかと言っていましたが、正常な人なら皇后に対しこんな礼を欠いた不躾な態度がとれるでしょうか。どういうご病気か分りませんが、仮病ではなく、しかも簡単に完治しないご病気なのではないでしょうか。

 昨年十一月にご病気に関する東宮医師団(じつは大野医師おひとり)からの詳しい発表があると伝えられ、十二月に延期され、一月になっても発表はなされませんでした。小和田氏がオランダから帰国しました。ご自身の病気治療もあったそうです。雅子妃は父親の病気を大変に心配した由です。小和田氏は雅子妃の病気に関する新しい情報公開を心配したのではないかと思いました。

 雅子妃ご自身が医師の予定する情報公開の内容が不満で、自分で納得のいくように手を入れているということも伝えられました。二月にやっと内容は公表されましたが、中味は今まで同様でした。徐々に快方に向かっているがまだ完治していないといういつもの言葉以外に、病気に関する新しい報告はありませんでした。

 私は全文を丁寧に読みました。気がついた新しい点は、私的な海外旅行が妃殿下の治療に役立つだろうという示唆が記されてあることでした。そうこうしているうちに愛子様不登校事件が起こりました。私は二つをつないで想像して、愛子様は国内では教育できないので海外の学校に入れる、という布石を打っているのかな、とも思いました。勿論これは私の推論にすぎません。

 さて、天皇皇后両陛下の配慮に満ちたお言葉が、今度の事件を安堵させ、騒ぎを広げない鎮静の役割を果していると私は先に書きました。勿論その通りです。しかしこのお言葉の効果はどのレベルのものでしょうか。他の子供に犠牲を出させないように、という配慮を示したお言葉は、皇室一般の国民への自制の表現ではありますが、雅子妃の一連の行動への釈明の表現ではありません。

 天皇陛下は皇族の言動がいかに周囲に大きくはね返るかを経験からご存知です。それが「他の子供に犠牲を出さないように」という社会的配慮に満ちた今度のお言葉になったものと思われます。この点を踏まえて考えると、皇太子殿下ご夫妻は皇族の言動がいかに周囲に大きくはね返るかをまったくご存知ないか、無神経なまでに意に介さないで振る舞っておられます。そこに大きな波紋の生じる理由があります。

 よくKY(空気が読めない)という二字で人を評するいい方がはやりました。まさに雅子妃はKYの典型と呼ぶべきでしょう。皇族の言動が周囲にはね返ることの恐ろしさを、天皇皇后両陛下は経験上よく知っており、皇太子ご夫妻はまったくご存知ないようです。だから学習院への干渉をめぐってモンスターペアレンツなどと呼ばれるのでしょう。自分が引き起こしていることの影響の大きさ、自分の恐ろしさが分らないのでしょう。それが経験の差なのか、ご病気のゆえなのか、それともお人柄から由来するのか――そこに国民の目が集中しているように思います。

 たゞ、皇太子ご夫妻の言動がいちいち引き起こす波動を天皇皇后両陛下はどの程度ご認識でしょうか。両陛下は自らが及ぼす波動を知っています。そこに両陛下の素晴らしさがあります。しかし、それはご自身の言動の及ぼす範囲に限られていて、雅子妃や小和田一家のKYぶりが引き起こす騒動の波紋について、両陛下はどの程度お気づきになっているのでしょうか。どの程度の危機感をお持ちになっているのでしょうか。これが今新たに湧き起こっている疑問です。

 私が憂慮しているのは、この侭放って置くと、国民の非難は次第に両陛下に向かっていくのではないかということです。両陛下は何を考えておられるのか、なぜ皇太子夫妻にもっと厳しい態度で臨まないのか、と。

 そういう声はじつはすでにあちこちで聞かれます。

 スカルノ・デビ夫人という方がいて、私は芸能人かと思い今まで関心がありませんでしたが、ある人に彼女のブログ「デヴィの独り言 独断と偏見」を教えてもらい、バランスのとれた見識のある人と分りました。鏑木さんもここを一寸読んでみてごらんなさい。彼女も天皇陛下が起ち上ってくださることを強く求めています。

 鏑木さんが心配している外国の影響、コミンテルン(?)の介入、皇室へのスパイの潜入はあり得ることですが、雅子妃がゾルゲのような強靭な意志の人で、意識的に加担しているなどとは到底思えません。彼女は弱い人で、女官も侍従も病的なまでに誰ひとりをも信用しないために孤立していると聞きます。一人の担当医と一人の教育係のほかには信頼を寄せる相手はなく、勢い実家の小和田家にすがって生きているようです。そういう意味では皇太子妃の仕事は彼女には荷が重すぎたのでしょう。十分に同情できますが、だからといって日々、皇室を毀損しつづける光景を日本人として黙って見ているわけにもいかないのです。毎日学習院に見張りに出かける元気があって、お庭掃除の奉仕団に会釈することは相変わらず一切なく、スキーに行く体力があって、どんな祭祀にも園遊会のような行事にもお出ましにならないこと今や常態となっている由であります。同じ嘆きをもうこれ以上言いたくありませんが・・・・・・。

皇室と国家の行方を心配する往復メール(三)

西尾から鏑木さんへ(前篇)

 詳しい報告をありがとうございました。貴方がとりあげた旧皇族のスピーチは、誤報と考えていいわけですね。

 若狭氏の著作からとびとびの引用は、著作そのものを丁寧に読まないと分らない内容で、いま私は簡単に応答できません。第二次大戦の旧敵国が「日本人の正義」を消す戦いに成功した、という結論はその通りと思います。ですがコミンテルンが関与したのは占領政策までの話で、小泉首相の皇室典範会議にまでコミンテルンが手を伸ばしているという論の立て方は私にはちょっと理解できません。

 いずれにせよ、他人の著作のとびとびの引用に基いてわれわれ二人の議論を発展させるのは危ういので、この議論はいずれ著作をきちんと読んでからお答えする必要があればしたいと思います。

 たゞ貴方の論の立て方ですと、アメリカよりもコミンテルンのほうが日本の破壊に貢献したというように聞こえました。その結論は、私はさしあたり判断留保しておき、アメリカ文明の破壊性をあらためて考えさせる小さな出来事に出会った話をしておきます。

 過日『アバター』という映画を見ました。3D映像革命という宣伝につられてわざわざ有楽町にまで行ってきました。舞台を宇宙に置き換えていますが、あの映画のアイデアの基本は西部劇ですね。西部の荒野におけるインディアンの掃蕩戦。インディアンはここでは宇宙人で、酋長を中心とした祈祷の大集会、復讐の誓い、弓と矢による宇宙人たちの反撃戦。騎馬ではなく大鳥に乗って地球人の航空機と戦うのですが、西部劇となんにも変わっていませんね。子供はよろこぶでしょうが、長すぎます。

 最後は地球人は自然を破壊しただけで終り、宇宙人に敗れます。映画を見ていて、フィリピン戦争、日米戦争、ベトナム戦争における暴力による地球破壊の罪がアメリカ人のメンタリティに深いトラウマになっていることを証明しているような映画だと思いました。

 地球人が総攻撃を加えるときの標的の中心に、天まで聳える一本の巨樹がありました。あの一本を倒してしまえば全部が総くずれになるといって象徴的位置に見ている巨樹は、アジア各国の王室なのだと思いました。女王蜂を除去すれば蜂の巣はつぶせるとよくいいますね。あれと同じです。アングロサクソンの植民地政策はそういうことを最初から狙っているのだと思います。

 たゞアメリカは日本の皇室を甘く見ていませんでした。ずっと恐れていました。そして今のアメリカ人は皇室をもはや恐れてもいないし、嫌ってもいないでしょう。たゞ1945年~53年頃のアメリカには皇室破壊の深謀遠慮があったと思います。その証拠が、一つは皇室の無力化政策であり、二つ目は国体論143冊を含む「焚書」(本の没収並びに消去)です。

 60年以上経ってその効果が現われ最近とくに顕著になって来ました。貴方がご指摘になっていた神秘感の消失です。国民の多くが皇室にまだ敬愛の念を持っていますが、何とはなき神々しさを感じることが少なくなってきました。今回の貴方の問題意識は国民の冷淡さや無関心もさることながら、皇室自らが国民にまだ残っている敬愛畏怖の念をこわすような自滅行動をくりかえしていることへの痛恨の思いに発していることが、拝読していて分ります。多くの人が心を傷めている問題です。たゞそれが外国の介入から始まったといえるかどうかはまだ分りません。徹底して情報不足なのです。この次にこの問題を少し考えてみます。〔続く〕

皇室と国家の行方を心配する往復メール(二)

 私と鏑木さんとの交信の中に浜田実さん(元富士通社員)から鏑木さんへの
コメントが入りました。それと、前回の私のメールへの鏑木さんのご返答を掲示します。

   浜田さんから鏑木さんへ

鏑木さま

西尾ブログ 拝読。
鏑木さんの問題提起もなかなか面白い。これに対する西尾先生の反応をみると、先生はもう皇室問題は書かないとおっしゃりながら、やはり気になって仕方がない・・・という印象を受けました。
先生は、本当に心底、皇室の将来を気にしているのですよ。

今の皇室は天皇・皇后陛下にしても、東宮御夫妻にしても、何か皇族ファミリー・・・というイメージが強すぎて、昭和天皇・皇后にも似た何とも安定した高貴な重さが感じられない。
本当に平民宣言でもしそうな雰囲気です。

雅子様は、愛子様を毎日学習院へご一緒されているとか。そして授業も参観・・・愛子様が心配だからと・・・・??
そんなことをする皇族、王族がいままでいましたか?!

こうなると、一般国民との「壁」がない。その行動を見過ごす皇太子殿下もおかしい。何も云えない憐れさが伝わってくる。何かトゲがあってそれに触れることもできないのではないか?
その言動のはしばしに、シナの工作が侵入しているのではないかと思う。

小和田 恒が「レーニンの写真」を飾っていた!とんでもないこと。

小林よしのり は、まさにそういう工作めいた動きをこそ描くべきです。

女系・・云々は、小林氏の手に負える問題ではない。

何かおそろしい、日本が溶けてしまうような空おそろしさを感じます。
友人の典型的な保守人までもが、事の本質に気付かない、まるでそうさせるような特別のビルでも飲まされたかのような反応が気になります。

  鏑木さんから西尾へ 

 西尾幹二先生

ご返事ありがとうございました。

テーミスの記事を拝見しましたが、この前の私のメール内容と妙に符合して嬉しいやら恐いやら複雑な気分が致しました。やはり小和田亘氏は共産主義者ですね。今頃こんなこと言っているのは遅れているでしょうか。

お尋ねの旧皇族のスピーチですがその内容は、「朝鮮半島出身の旧日本軍軍人の遺骨が祐天寺に返されずに残っているが、日本はこれらを返さないで拉致された人を返せというから、北朝鮮も応じないのだ。こちらが誠意をもって対応しなければならない・・・」というようなものでした。

この旧皇族の方の経歴をネットで調べたら、「日韓、日朝、日中、中台間に横たわる心の傷跡を真摯に見つめ、日本国・天皇家の立場に立った、過去の因縁解消懺悔滅罪の基本理念のもと、未来に亘っての東洋平和、世界平和を提唱していくことを目的とし、関係修復及び戦没者遺骨霊魂帰還等の活動を現在も続けている。」とあります。

旧皇族の家柄に養子で入った方で皇族とは全く関係が無いようです。以前、週刊誌で詐欺疑惑の記事も載ったようで、今回私が皇室との関連で語ったことは誤りでありました。

しかし、現実に旧皇族を語り保守の集まりに現れ、以前の天皇陛下の御言葉を悪用した主張(「過去の因縁解消懺悔滅罪の基本理念」とは今上天皇の韓国への謝罪【平成10年10月8日〔金大中大統領、訪日〕 「わが国が朝鮮半島の人々に大きな苦しみを与えた時代…深い悲しみ」】と符合します。)を口にしているわけで、工作の疑いが無いとは言えません。

若狭和朋さんの本の件ですが、私が読んだのは「日本人が知ってはならない歴史」(以下、本編)、「続・日本人が知ってはならない歴史」(以下、続編)、「日本人が知ってはならない歴史・戦後編」(以下、戦後編)の3冊です。

まずフランクフルト学派コミンテルンの定義ですが、

プロレタリアート独裁とか権力の暴力的奪取を標榜するのではなく、いわば本心は「隠し」て謀略により権力内部に入り、そして権力を握りその影響力により革命に至ろうとする思想集団(戦後編P118)

とあります。

戦後の天皇制度の存続について、CIA前身のアメリカ戦略情報局(OSS)には、このコミンテルンが多く送りこまれており、そこで決められた「日本計画」が戦後の日本を運命づけたとしています。マッカーサー(GHQ)はこのOSSの指揮下にあって日本占領政策の最高意思決定でなかったとのことです。

天皇制廃止の手順として、

例えば憲法改正の構想のうち天皇制度は残すということが決められた。直接の目標は、天皇をして軍部との対立に導き日本の敗北を早めるという戦略からである。続いて第二段階目には「象徴」としての天皇を「国民主権」の下位に置き「国民の総意」により退位させ、天皇制度を廃絶させるという「二段階革命」を成就させようと構想していた。(戦後編P57)

そしてこの第二段目は現在進行中であると考えられます。これは皇室典範改正の論議があった時、小泉首相が「皇室典範に関する有識者会議」を発足させ、そこが女系天皇の容認を答申し、今日の論争になっているわけですが、この時に天皇を「国民主権の下位に置く」ということがすんなり行われてしまいます。

日本国憲法上は何ら問題ないことですが、それまでは現実に「天皇を国民主権の下位に置く」という行動は躊躇われていたと思います。保守も何かおかしいと思いながらも男系女系の論戦にシフトしていったのではないでしょうか。

私は男系女系のどちらの主張もイデオロギー色が強くて、天皇制反対の共産主義イデオロギーと対立関係という図式で調和して、日本の文化・伝統としての自然な皇室のあり方を語る姿ではないような気がします。その意味合いで共産主義勢力に仕組まれた謀略的パラダイムでなないのかと思ってしまうのです。

そのほか私が若狭さんの本で印象的だった箇所は、

コミンテルンに謀略される日米について、

アメリカのインテリゼンスの狂いこそが、日米両国のみならず世界的な厄災を招いた当の原因なのだ。・・・・・

「赤色ロシア」とコミンテルンの脅威についての判断ミスは、アメリカ政権内部にもコミンテルンの進入を許し、日米衝突と中国の運命を大きくゆがめた。日本政権内部へのコミンテルンの進入は言うまでもない。(本編P47)

日露戦争後の日本の対処について

ハリマン提案という商談のかたちをしたアメリカの国家意思を、三国干渉の再来と理解できなかった日本の痴れが、やがてハル・ノートを招じ入れた。日本人は知の病みを過去形だけで語ってはならない。今日こそが、まさに問題だからである。(本編P212)

振り返れば、日露戦争は世界のユダヤ社会の日本応援で戦い得たのであり、講和仲介のセオドア・ルーズベルト大統領が当然にアメリカとユダヤ社会の利益に立脚していたことは言うまでもない。痴れた日本の文民は桂・ハリマン協定を破棄した。以後、アメリカにはオレンジ計画が発足し、日本は最後はナチスとの同盟に迷い込み今次大戦に至った。アメリカの国家理性のなかで日米の死闘への覚悟は深刻である。ブッシュ大統領がリガでヤルタに不正義を自己批判したのは、単なる思い付きでないことは当然である。(戦後編P145)

「人民」という言葉の説明において、

リンカーンは「・・・ガバーメントオブピープル」(人々を統治する)と言った後に、この統治は「~のための、~による・・・」と言っているのです。南北戦争の激戦地・ゲディスバーグでの演説ですが、アメリカ大統領リンカーンは南部の分離を容認しないと演説しているのです。「分離・独立などは容認しない」、つまりは「われわれはピープルを統治するが、この統治は、~のための、~による統治(ガバネメント)と説いているのであって、政府(政治)は人民の所有するものだ、などと演説しているのではありません。(続編P248)

東京裁判についての

「東京裁判」とはアイデンティティー・ウォーなのである。「東京裁判」は追撃戦なのだがその戦いの本質はアイデンティティー・ウォーである。単なる復讐(その影も濃いが)ではなく周到に準備された「日本人の正義」を消す戦いが「東京裁判」であった。

ルーズベルトもOSSも大敗北したのが今次の大戦であった。勝利者はスターリンであり毛沢東だ。ただ奇妙に日本へのアイデンティティー・ウォーにだけは勝利した。(戦後編P75)

以上の様な所です。

先程サピオ(5/12号)で日本史上最強の女傑第10位「美智子皇后」の西尾先生が書かれた選出文読みました。いつもながら明確な御指摘、納得がいきました。

同サピオの小林よしのり「ゴーマニズム宣言」は、盲目的な天皇崇拝が益々パラノイア的様相を呈してきました。現皇室の方々に対しては全く注意力が働いていません。長年ファンでしたが、カルト信者のような有様と化してしまうのでしょうか、残念です。

愛子様不登校問題では、東宮職の動きがおかしいと思います。雅子妃の反応を利用して、皇室をマイナスイメージのほうへ誘導しているような気がします。外務省出身の野村東宮大夫他は、小和田亘氏かその上部からの陰謀が行われているのではないでしょうか。

返信が遅くなり申し訳ありませんでした。

納得いく返答になったか心配ですが、お目通しください。

風邪もほぼ完治しました。

お気使いありがとうございました。

皇室と国家の行方を心配する往復メール(一)

 友人の鏑木徹さん(一級建築士事務所 空工房代表)から、メールをいただいた。皇室と国家の行方を心配した内容であった。私も応答した。多くのかたがたにご関心のあるテーマと思われたので、二往復分の内容を公開する。

鏑木さんから西尾へ

西尾先生
突然メールいたしますことお許しください。
坦々塾生の鏑木徹です。

秋篠宮殿下が「皇族は少ないほうがよい」と御発言されました。
昭和天皇が三笠宮様を疎んじておられたという話や、今上天皇も皇族にしては大胆な発言が多すぎる寛仁親王など三笠宮家の方々に不信感を持たれている結果が、秋篠宮殿下の御発言に繋がっているのではないかと考えます。

もしこの考え通りに皇室が天皇直系のみとなったら、工作機関の皇室破壊・日本崩壊工作がやり易くなります。

いずれ天皇が平民宣言され、慈善団体のひとつとなられるのではないでしょうか。
ある会合で皇族系の慈善団体の方が、北朝鮮擁護のスピーチをされるのを聞いたことがあります。すっかり皇族系の能天気さが厭になりました。

すでに雅子妃による皇太子家工作はほぼ完成されつつあり、天皇皇后への工作も大分進んでいる様に見えます。

雅子妃の精神病は、西尾先生がおっしゃる通り仮病ではないでしょうか。
多分に小和田家を経由するコミンテルン等の工作ではないでしょうか。
今、大東亜戦争時のフランクフルト学派コミンテルンの工作を書いた若狭和朋さんの本を読んで衝撃を受けています。

雅子妃は病気を理由に皇太子を巧妙に籠絡し、愛子様を洗脳し、そして天皇皇后の孫可愛さの優しい心につけ込んでいる気がします。

たぶん、皇太子を身近には近づけないのでしょう。お労しい限りです。

愛子様不登校のモンスターペアレントのごとき雅子妃の行動は、皇室を貶める工作のひとつではないでしょうか。

国民の心を平民の情感レベルで皇室に近づけることで、結果、神々しい天皇(皇室)観がどんどん無くなっていきます。

そして国連施設などに出入することも、もし健常者であったならば大変な非難が起こり通うことは不可能になるでしょう。

日本崩壊を狙う勢力は天皇を落とすのが一番だと知り尽くしています。
昨今の男系女系の皇位継承問題も、何か仕掛けられているような気がしてきます。
それに乗って詰り合う、小林よしのり・桜チャンネル水島社長を見ていると、参院選を前にして保守陣営の分断を操作されているような気がしてなりません。

この前の西尾先生の講義で、これから先生の扱うテーマは国体及び政体の話になると推察しました。
そして天皇の御親政の再現に言及されるのではないかと思っております。

もはや日本は、政治家の精神が腐敗してしまい、政体・政治形態の変更に着手しなければ、閉塞状態から抜け出せないのではないかと思います。

今回の平沼新党も下手をしたら、自民党、民主党と同じ様な政党がもう一つ出来た、ということに成らないでしょうか。

以上、最近の思いを述べさせて貰いました。

私は今風邪を引きまして、苦しんでおります。
気候の変わり目で体調維持が難しい時期です。
先生は皆にとっても大事なお体ですので、体調に十分お気をつけ下さい。
失礼いたしました。

鏑木徹 拝

西尾から鏑木さんへ

鏑木徹様

 メールをありがとうございました。率直なお言葉で書かれてあり、あっあっと思いながら一息に読みました。衝撃的な内容でした。

 とりわけ「いずれ天皇が平民宣言され、慈善団体のひとつとなられるのではないでしょうか。」の一行に目が釘づけになりました。そこまでお考えになっているのですね。

 私などはまだ甘く、夢想的です。無理のないかたちでの旧宮家の復活や眞子様・佳子様とのこれも無理のないかたちでのご縁組が実現すればいいが、とまだ楽天的に考えています。しかし貴方がすでに仰せの通り、天皇家の側がそれをもう望んでいないのかもしれませんね。

 なにしろ情報不足なのです。秋篠宮家が学習院ではなくお茶の水附属の幼稚園を選ばれたのも、真意は分りません。東宮家の愛子内親王と共学になるのをお避けになった、というのが一番有力な理由かと思っていますが、それもわれわれ一般民衆の考えかもしれません。そうではなく、眞子様がICUに進学された例も含めて考えて、皇族の行かない一般の普通のコースを理想としていて、それが貴方の言ういわゆる「平民宣言」の準備なのかなと思うと空恐ろしいですね。ですが、単純に三年保育の幼稚園を求めたということにして余計なことは考えないでおきましょう。

 でも、皇室が旧皇族を避け「天皇直系」のみとなったら、貴方のいう通り先細りするだけであり、ますます工作機関の破壊工作はやり易くなるというのは本当のことですね。工作機関は今はコミンテルンではなく、中国系であったり、アメリカ系であったり、宗教系であったり、いろいろです。皇室の外務省支配を私は憂慮しています。それから何度も書いてきましたが、長期にわたる雅子妃のたった一人の担当医による情報独占は恐ろしいのです。

 それからまた、貴方のいう通り、いまその時期でもないのに、小林よしのりさんや水島総さんが男系女系の皇位継承問題を論争し合うのは妙ですよね。悠仁親王殿下がいらっしゃるので、いま急ぐ問題ではないと世間は考えているでしょう。秋篠宮家の眞子様佳子様にずっと皇族のまゝでいてほしいと私も思いますので、皇室典範改正はこの点早く手を打ってもらいたいのですが、このことと女系天皇是非論はまったく別の問題ですから、にわかに最近女系天皇を求める声が一部で高くなっているのはなぜか奇妙に思えてなりません。誰かがあせっているのでしょうか。

 ご文章で分らない個所があるので教えて下さい。皇族系の慈善団体の方による北朝鮮擁護のスピーチとは、誰がいつ何を語ったのですか。若狭和朋氏の本は、私はまだ十分に読みこんでいないのでちょっと分らなかったのです。どの本のどのページに何が書かれてあるのですか。少し引用して教えて下さい。それから、私の方からはTHEMIS 2月号の次の記事をご紹介しておきます。

 雅子妃が父の小和田恒氏を尊敬し、完全にその精神的影響下にあるという関係者の言葉を紹介したあとで、

 そんな状況におかれた皇太子ご夫妻と小和田家の内情に目をつけたのが、中国共産党を中心とする対日工作部隊である。前述したように中国政府は、「日中国交正常化40周年‘12年」に向けて皇太子ご夫妻の訪中を水面下で働きかけているのだ。

 亡くなった中川昭一氏が生前、こんなことをいっていた。

 「モスクワ時代、小和田家のアパートにはレーニンの写真が飾られていたという。中国政府がこの情報をどう使うか考えると怖い・・・」

 裏情報にも長けていた中川氏の予測が、杞憂に終わればいいのだが。

 寒かったり暑かったり気候不順の折、一日も早く風邪を治して下さい。
 お元気で。

                西尾幹二

三寒四温

 普通3月のお彼岸前に三寒四温ということがいわれるが、桜が散った4月半ばにこんなに寒くなったり、暖くなったり、気温が大きく動くのは珍しい。昨夜は会合があって外出したが、ひどく寒かった。

 東京は3月23日頃に開花した。そして4月13日、14日頃にようやく散り始めた。が、いっぺんに葉桜にならない。20日以上も開花したままの桜の姿を楽しめたのも寒さのせいと思うが、たえて例のない春だった。

 お花見は二度やった。宮崎正弘さんが主催する恒例の隅田川の遊覧船が3月27日、大石朋子さんが世話して下さった坦々塾の錦糸町公園が4月4日、どちらも二次会まであるお酒の会で、例によって花を愛でるよりも談笑が主で、しかも何を話し合ったかまったく覚えていないのもいつもの通りである。楽しさだけが心に残っている。

 4月10日に日比谷野外音楽堂で講演をした。例の平沼新党が誕生した日なので、平沼赳夫、与謝野馨、中川義雄の三議員といっしょに講演をすることになったが、私は新党とは関係はない。主催者団体が何を企図していたのかはよく分らないものの、信頼すべき方々が主催されていたので私は講演依頼を受けていた。

 この日は幸い日が照っていて一日中暖かった。日比谷の桜もまさに満開のままだった。桜のほかにもチューリップその他春の花が手入れよく苑内の花壇をきちんと整えていた。

 会場にはワック社『WiLL』編集部のNさんが駆けつけて下さった。独自に録音して、持ち帰ったものを文字におこした私の講演原稿は2日後に送られてきた。添え状にお世辞でも次のように記されていたのは嬉しい感想だった。

素晴らしいご講演を誠に有難うございました。
あの後、最後まで、全ての講演を聞いておりましたが、西尾先生のご講演時が最も聴衆が一体となり、湧き上がっていました。

昭和十七年の時点で、「日本が英米を指導しなければならない」と語っていた、哲学者がいたことに大変感銘を受けました。
日本がアジアの香港になってしまうこと、原爆を落とされた国が落とした国に向かって縋りついて生きている異常な構図がいつまで続くのか、という先生の問いかけが、非常に胸に響きました。

 題して「よみがえれ国家意識」という25分の講演は、『WiLL』の4月26日発売号(6月号)の巻頭論文にしてくださるそうで、昨日花田編集長からそう電話があった。

 日本人は高い意識を持たなければいけないのだ。世界は動いている。アメリカや中国の出方にいちいち振り回されていてはいけない。

 昨日も今日も雨模様で、東京は寒い。桜はすでに散ったのだが、まだ枝々は花の色をとどめている。私の家の周りにも桜の樹はいたるところにあり、犬を連れた散歩はこのところ毎日がお花見だった。

 『WiLL』5月号誌上の私と福地惇、福井雄三、柏原竜一の三氏による共同討議「現代史を見直す」シリーズ第5回「半藤一利『昭和史』徹底批判」には続篇がありますが、続篇の分量が多かったため、5月号で終わらず、6月号、7月号に分載されるとの連絡を受けました。3回連載となります。

「外国人制限」がタブーになった 

産経新聞3月30日(平成20年)正論欄より

 
 貴乃花が大相撲の改革に乗り出して相撲協会理事に立候補し、当選するという話題をさらう出来事があった。私は貴乃花の提案する改革の内容に注目した。誰が見ても今の相撲界の危機はモンゴル人を筆頭に外国人力士が上位を圧倒的に占有していることである。若い有能な日本人はこれでは他のスポーツに逃げてしまう。

≪≪≪「人種差別」の批判を恐れ≫≫≫
 
 しかし貴乃花は理事に当選する前も、した後も外国人制限に関する新しい何らの提言もしていない。否、スポーツ評論の世界で現実的で具体的なこの点での揚言をなす者は寡聞にして聞かない。西欧の音楽の世界では、オーケストラでもオペラでも東洋人の数を1人ないし2人に制限している。
 自分たちの文化を大切に思うなら、異邦人に対する厳格な総数制限は当然であり、遠慮は要らない。しかし貴乃花にしても誰にしても決して声を上げない。それはなぜであるか。「人種差別主義者」といわれるのを恐れているからである。外国人地方参政権問題でも、困るのはタブーが支配し、唇寒くなることである。
 
 高校授業料無償化法案をめぐって、金正日総書記の個人崇拝教育が公然と行われている朝鮮学校は対象外とするのが当然なのに、方針があいまいなままになっている。ここでも「差別はいけない」の美しい建前が、侮辱的な反日教育に日本の税金を投じるなという常識をついに圧倒してしまった。

 外国人地方参政権法案が通ると、こうした筋の通らぬおかしなことが全国いたる所に広がり、朝鮮総連や韓国民団の理不尽な権利要求は「差別はいけない」の声が追い風となって、何でも通る敵なしの強さを誇り、中国人永住権獲得者がそれに加わって、日本の市役所や教育委員などはただ頭をぺこぺこ下げて、ご無理ごもっともと何ごとにつけ押し切られてしまうだろう。
 
 政府が「国連」とか「世界市民」とか「人権擁護」といった美しい理念に金しばりに遭い、それに歩調を合わせてメディアが「人権差別」という現代のタブーに触れるのを恐れて沈黙し、言論人やジャーナリストが自由にものが言えなくなってしまうのが、外国人受け入れ問題の、受け入れ国側に及ぼす目に見えない深刻な影響である。

≪≪≪欧州では「内乱」状態に≫≫≫
 
 人口比8~9%もの移民を受け入れた西欧各国の例をみると、反対言論を封じられた怒りが反転して爆発し、フランスやオランダを一時、「内乱」状態に陥れた。ドイツは国家意志が「沈黙」を強いられた悲劇に陥っている。
 
 ドイツの首都ベルリンのノイケルンというトルコ、旧ユーゴ、レバノンからの移民が9割を占める地区の小学校の調査リポート、約9分の国営放送制作の貴重なフィルムを、今われわれはインターネットの動画(YouTube)で見ることができる。「ドイツの学校教育とイジメ・移民政策の破綻(はたん)」の文字を入力して、日本の未来を思わせる次の恐ろしい悲劇をぜひ見ていただきたい。
 
 ドイツの小学校の校内は暴力が支配し、カメラの前で2人のドイツ人少年は蹴(け)られ、唾(つば)をかけられ、安心して歩けない。ここは校内撮影を許されたが、別の小学校である児童は「お前はドイツ人か、トルコ人か」と問い詰められ、「そうさ、ドイツ人さ。神さまなんか信じない」と言ったら、いきなり殴られ、学校中の不良グループが集まってきてこづかれ、「僕は何もできなかった」と唇を噛(か)む。ある少女は宗教をきかれ、「そうよ、キリスト教徒よ」と答えると、みんなから笑われ、「あんたなんか嫌いーッ」と罵(ののし)られた。この小学校の調査訪問を申し出ると、撮影は「外国人差別を助長するから」の理由で公式に拒否された。

≪≪≪逃げ出すのが唯一の解決≫≫≫
 
 リポーターはベルリン市の行政の門を叩(たた)く。移民同化政策の担当者はフィルムを見ても「子供の気持ちは分かるが、そもそもドイツの学校はドイツ人のものだという古い考え方は倒錯した考えだ」と紋切り型の言葉を述べる。リポーターは家庭訪問もするが、母親は「街を出るのがいいのは分かっているけど、私はこの街で生まれたのよ」と言う。経済的に余裕のある人はこの地区に住んでいないとリポートは伝える。街を逃げ出すのが唯一の解決なら「共生」という名の移民政策の破綻ではないかと訴える。

 問題を公にする者は差別者のレッテルを張られ、排除される。このスキを狙い、貧困家庭をターゲットにしたカルト教団が動き出している。問題を公に口外できないタブーの支配が政治の最大の問題である、と。

 ドイツは今、税収不足を外国人移民の増加に依存し、それで救われているのが教会であり、国防軍も外国人の若者に頼るという、首根を押さえられた事態に陥っている。外国人に奪われた土俵を見て見ぬふりの貴乃花の沈黙は、やがて日本の社会全体を蔽(おお)う不幸の発端であり、象徴例であるといっていいだろう。(にしお かんじ=評論家)

はてなダイアリー ドイツでも移民問題(オランダの悲劇)

四月十日のプログラム

 四月十日のプログラムについて、主催者から次のとうり確定した、との報告を受けました。 

緊急拡散:式次第確定《「4・10:野音」過去現在未来塾:石原東京都知事ほか・登壇者一覧と設立の趣旨》

●「過去現在未来塾」発足記念講演会(日比谷公園野外音楽堂)

★第一部:4月10日午後2時から4時まで(開場:午後1時)。

■国歌斉唱

■あいさつ:中山成彬塾長(10分)

基調講演:「よみがえれ国家意識」西尾幹二先生(20分)

■主賓:石原東京都知事(15分)

■来賓:平沼赳夫先生(15分)

■来賓:中川義雄先生(15分)

■来賓:中山恭子先生(15分)

■来賓:田母神俊雄元空幕長(15分)

■来賓:・中川郁子様(15分)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

★第二部:16時から18時(19時!)まで!

■〈あいさつ〉と講演:「外交・教育・経済」中山成彬塾長(20分)

■講師:「日教組問題」伊藤玲子(15分)

■講師:「民主党マニフェスト違反問題」土屋たかゆき(15分)

■講師:「靖国神社公式参拝問題」戸井田徹(15分)

■講師:「外国人参政権問題」石原宏高(15分)

■講師:「重国籍」牧原秀樹(15分)

■講師:「拉致問題」馬渡龍治(10分)

■講師:「インターネットと選挙の融合」小名木善行(10分)

■講師:小山和伸(10)

●司会:西川京子

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
●《最終版「過去現在未来塾」発足記念講演会:「あいさつ」と「趣旨」》

〈ごあいさつ〉

拝啓 春暖の候、益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。皆さまのお力添えのもと、国会で仕事をさせていただいてきたものとして、永田町から離れ、現在の混迷した政治状況を国民目線で見ていて慚愧に堪えません。それは、国民の規範意識と国会議員との温度差が、あまりにもかけ離れていることであります。そして、その問題が倫理観のみならず、国家意識が欠落している国会議員たちによって、国の将来を危うくし、日本解体に直結する「外国人参政権付与法案」「夫婦別姓法案」「戸籍制度廃止法案」や、外国の子供にも支給できる「子ども手当」などが、矢継ぎ早に繰り出されているからであります。
そこでこの度、この日本の危機感を一人でも多くの皆様と共有し、広く国民に理解して戴けるように「過去現在未来塾」を設立することに致しました。
「過去現在未来塾」発足記念講演会は、4月10日(土曜日)午後2時から6時まで「日比谷公園野外音楽堂」で開催することになりました。
基調講演は、現在の混迷状況の核心を『よみがえれ国家意識』との演題で、西尾幹二先生に講演して戴けることになっております。
昨年、10月27日の【「日本解体法案」反対請願受付国民集会】にご参集いただいた約5000名の方々の熱気を、日比谷公園に再現できたらと切に願っております。
また、当日は今上天皇陛下のご成婚記念日でもありますので、日比谷公園の満開の桜とともに祝って戴ければ幸いです。

平成22年3月吉日

「過去現在未来塾」塾長:元文部科学大臣 中 山 成 彬

※詳細は、事務局から随時インターネット上にて発表しますので、ご確認ください。

建て直そう日本 ~この国を守る覚悟を~

「過去現在未来塾」設立の趣旨

●我々は日本人としての誇りを持ち、優れた伝統と文化を紡いできた先人に感謝し、
より良い国にして次世代に引き継ぐ責任を果たすことを目指して活動する。

●1人1人が日本民族の長い歴史の中の一存在であることを自覚し、激動する世界の中で日本の進むべき途を考えていく。

●国権の最高機関である国会においては、日本の末永い安寧を願い、国民の安全と繁栄を確保することを基本として立法する環境を整える。
尚、日本の根幹を破壊する、「外国人参政権付与法案」「夫婦別姓制度法案」「戸籍制度廃止法案」「偽装人権擁護関連法案」「1000万人移民推進法案」「二重・三重国籍(重国籍)法案」や〈日本に居住していない外国人の子供にも「子供手当」を支給する法案〉など、日本国の解体につながる法案を断固阻止する活動を実施する。

●国際化の時代における日本の在りかたとして、日米同盟を機軸とし、国連など国際機関の趣旨を尊重しながら、日本の国益を損ねることのないよう国民の合意を優先できる環境を整える。

●資源の乏しい日本は科学技術の振興により、経済力を高め、環境、少子高齢化等の制約を克服して、国民福祉の向上を図っていく。

●ゆとり教育を見直し、学力、体力を鍛え、情操豊かな子供を育てる教育改革を推進する。教員を「労働者」から本来の崇高な「教育者」の立場に戻す。

●先祖の崇拝は我が国の美風であり、英霊の追悼は、靖国神社並びに全国の護国神社で国民が日常生活の中で感謝と哀悼の意を表することができる環境を整える。
尚、未帰還の御遺骨115万柱は、最後の「1柱」までの御帰還を目指し、緊急に収集事業環境を整える。

●拉致被害者帰還事業は、総理官邸に直轄の「拉致被害者帰国推進本部」を設置して、日本国の威信をかけて推進する。

●御皇室の弥栄を祈り、継承者問題に関しては、「過去現在未来」の国民の声に耳を傾け「皇室の伝統」を尊重できる環境を整える。

以上の主旨に則して当塾は運営されます。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

※添付した写真は、4月6日の靖国神社境内の桜です。

【ネットだけ転載フリー(写真不可)】ジャーナリスト・水間政憲 http://blog.goo.ne.jp/mizumajyoukou

花冷えの日に(三)

 米ソ冷戦の終焉といわれた1989-90年を境に、安全、平和が訪れたのでは必ずしもない。日本はその逆になることが予想されたのに、20年間はほゞ無事に経過した。

 ボスニアヘルツェゴビナの戦乱からイラク戦争へかけ、地球の西方が荒れた。アメリカと中国の谷間にある日本の位置、巨大な人口と経済格差は把捉しがたいほどなので、本当はいつ何が起こってもおかしくはないほどに危うい場所にわれわれは立っている。それなのに20年間も平穏だったのは不自然で例外的だという思いが私の中にはつねにあった。世界の秩序の構造が変わったのに、基本的に不安を持たないで暮らしている人の方が私には不可解である。

 サブプライムローンに端を発する金融危機は「いよいよ来たな」という恐怖の到来を私に予感させた。あれ以来、国際社会で起こっていることも、日本の政治経済に関わることも、本当のことはなにひとつ解らないのだという自己懐疑がずっと私にはつづいているので、正直にその不明をいま披瀝しておきたいと思う。

 私も人並に経済や金融に関する論説を読み漁る時期があった。最近はやめている。生活から懸け離れた余りに巨きい金額はよく解らないし、精神衛生に悪いのである。現実を把握することをある意味で諦めた立場に立ってみたいと思っている。そういう人間の与太話と思って読んで頂きたい。

 アメリカが背負った負債総額は天文学的数字で語られていたはずである。それにしてはアメリカ経済の立ち直りは早過ぎるのではないだろうか。否、立ち直っては決していないともいわれる。これから「二番底」があるのだという説もよく耳にする。ある人の説で、リーマンショックの時点でアメリカ政府は負債総額を隠蔽したのだそうだ。ブラックホールのようなぽっかりあいた赤字の大穴を外に見せないように蓋をして、欠損を少しづつ小出しにして操作しているのだという。本当だろうか。

 金融機関の多くを国有化し、資本主義の本来のあり方を放棄したかに見えるアメリカ経済の未来はやはり薄明につつまれ、次第に暗雲に閉ざされていくほかないだろうという悲観説は、今でも正しいのだろうか。それとももうそんな段階はあっという間に踏み越えられていて未来は大丈夫と見るべきなのだろうか。アメリカの金融の失敗が世界の運命を左右したことだけは紛れもないので、ここがもう少しはっきりしないと、世界のことはなにひとつ分らないといっていい。私には判断のつかない基本的認識を誰かに教えてもらいたいと切に思うのである。

 サブプライムローンの赤字負債で日本の金融機関は世界の中で最も傷が浅かったとは、当時よく伝えられた。庶民感覚でもこれを聞いてホッと安心したものだった。しかしそれにしては日本の経済の立ち直りが遅い。世界をリードしていいはずなのにそうはならない。株安と円高が同時に到来し、それが長い。いつまで経っても景気は回復せずに、世界の中でも不調の国の代表例のようにみられているのはどうしてなのだろうか。単に政府の政策の失敗と政権交代な どの政局の混乱が原因しているだけなのだろうか。それとも日本の富は1990年代の「マネー敗戦」のように、知らないうちにアメリカに何かを仕掛けられ、徐々に吸い取られているのだろうか。10年の後に「あのとき日本は瞞されていた」とまたしても暴露的に論評されるような経過をいま辿っているのだろうか。

 というのも中国のことがこれと関連してまた解らないからである。北京オリンピックの前には中国の政治体制は明日にも崩壊する、との主張をなす人がかなりいたが、今はそういう説を唱える人は少なく、政治体制は崩壊しないが、中国経済はバブルがはじけて早晩破綻するだろう、という見通しを語る人が中国専門家の中では多くなったように思う。中国の好景気は上海万博までだ、というのは北京オリンピックの前から言われていたことなので、ようやくその節目の年に来ているといえるのかもしれない。

 けれども中国経済が破綻したら、何より困るのはアメリカであり、それに伴い日本であろう。周知の通りアメリカ国債を一番多く買っているのは中国であり、日本がそれに次ぐ。中国の対米輸出の増加は日本の対中輸出をも増加させる。世界のどの国もが共倒れを恐れている。中国政府もそれを知って強気である。このまゝ中国は上昇しつづけ、高止まりで自己維持する可能性のほうが大きいのではないか。

 もしも何かの変動が起こるとしたら、人々の予想に反して経済ではなく、政治体制にほころびが生じて、怒涛のような嵐が内部から突き上げてきて、抑えきれなくなるという事態ではないか。否、そういうことはない、と中国を知る人は皆いうが、アメリカの最近の中国からの政治的離反、離反とまで言えなくても、政治的に距離を置こうとする姿勢は何を意味するだろうか。いつもの「アメリカ民主主義イデオロギー」の表明にすぎないだろうか。

 アメリカは自国の経済の救済を急務としている。トヨタにまで強行した自国企業の防衛力は、中国経済をどう扱うかにより多く発揮されるであろうことは余りにも自明である。最近、世界の投資はブラジルに向かっている。リオデジャネイロのオリンピックとブラジルの工業力への期待からである。中国にあるアメリカと日本の工場がインドネシアに移動しつつある。それに加えてGoogleの中国からの撤退は大きな事件である。

 中国のインターネット検索が「天安門事件」を受けつけないことは前から聞いていたが、性的な文字まで約一万語をはねてしまうというニュースには驚いた。「胡錦濤」と検索されるのを恐れて「胡」の字をはねてしまう、というのは異常な心理状態である。

 アメリカは自国の経済が中国に深入りしたことを恐れ始めているのではないか。時間をかけて中国から脱出しようと考えているのか、それとも政治的にゆさぶって体制崩壊を誘発し、中国に握られているアメリカ国債、すなわち債務を一気にチャラにしてしまおうと狙っているのだろうか。

 そんなことを考えているとしたら中国が許すはずもないから、天下大乱となることは必至である。

 将来のことはもちろん分らないが、アメリカの自ら抱えこんだ経済危機と、中国の自ら抑えられない経済膨張とが、今の地球上の二大不安の要因であることは厳然たる事実である。そして、その中間に位置する日本が経済的にも、軍事的にも、累卵の危うきにあることは一目して瞭然である。

 この二大不安が対立し合うのは日本にとって不利ではない。衝突にまで至るのは困るが、互いにほどよく距離をもって敵対し合ってくれれば、日本に選択肢の自由の幅が広がる。

 中国がギョーザ事件の解決を急いで、いまこの時期に、犯人逮捕を告げたりしたのはなぜなのか。アメリカが普天間基地をめぐる日本政府の迷走に対し当初の高飛車な反発を押さえ、「慎重によく検討する」などと称しじっと忍耐しているのはなぜなのか。両国はともに日本を敵に回すまいとしている。日本の国民世論が反中になるのも、反米になるのも、それぞれの国が警戒している。

 両国が日本にご機嫌を伺う風があるのは、両国が多少とも相反関係に立っているからである。ただし、ご機嫌を伺うといってもせいぜいこの程度までで、アメリカのトヨタ叩きは企業問題ではなく、政府が後ろについている国家的行動であった。中国が東シナ海で譲歩する気配は勿論ない。

 そして明らかにおかしいのは、日本政府がトヨタを守ろうとする国家としての支援行動を起こさないことである。

 これから肝心なのはアメリカと中国からの寒暖両方の風、ときに日本に攻撃をしかけ、ときに日本への秋波を送ってくる対応をそのつどうまくさばき、日本が自己自身を貫く強さを発揮することだろう。その意味で現下の日本政府のしていること、あるいはしたがっていることにはナンセンスなものが多い。

 なぜ今さら核持込みがあったかなかったかと「密約」を暴く必要があるのか。外交に密約はつきものではないか。それに、外から暗黙に密約が予測されるからこそ核の傘は有効になる。アメリカの核の傘が有効でなくてもよいというのか。いよいよ国家的意志の統一が必要な時期に、なぜ「道州制」だの「地方分権」だの呑気なことを言い出しているのか。中国や韓国と歴史観を共にすることなど不可能なことは分っているのに、なぜやらんでもいい共同研究などをして無用な波風を立てるのか。

 大事を忘れ小事に囚われることが多ければ多いほど、自らを毀損することも多くなるのは、個人の生活でも国家の運営でも同じであろう。

お知らせ

 いま連載している「花冷えの日に」は三回までつづきます。

3月から4月にかけて私は次の言論活動を行います。
  
  左翼ファシズムに奪われた日本『正論』4月号

  外国人参政権、オランダとドイツの惨状『WiLL』4月号

  愛国心なき経営者は職を去れ『Voice』5月号(4月10日発売)

  半藤一利『昭和史』徹底批判
   共同討議シリーズ現代史を見直す⑤『WiLL』5月号

4月10日午後2時より次の講演を行います。

 私の持時間は約20-30分
集会の主旨は、主催団体である「過去現在未来塾」のホームページを見て下さい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【過去現在未来塾発足記念講演会のご案内】

■日時: 4月10日・午後2時~6時  開場: 午後1時より

■場所: 日比谷公園野外音楽堂

【日比谷野外音楽堂登壇者】

●主催者挨拶: 中山成彬「過去現在未来塾」塾長

●基調講演: 西尾幹二先生『よみがえれ国家意識』

●以下の登壇者は、現・前職国会議員、大学教授、文化人、ジャーナリストなど。

●司会: 西川京子

■入場料無料:尚、当塾のシンポジウム等、今後の啓蒙活動などは、広くご賛同戴ける皆様方からの浄財に支えられて運営されますので、当日入口付近にてカンパを受け承りますので、宜しくお願いいたします。

■主催: 過去現在未来塾

■実行委員: 土屋たかゆき・戸井田とおる・水間政憲(事務担当090-5560-9728)

■【過去現在未来塾】設立の趣旨にご賛同いただける団体・組織が御座いましたら、インターネット上に掲載させて戴きますので、事務局へ FAX(03-3269-5873)にてお申し込み下さい。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

花冷えの日に(二)

 トヨタの豊田章男社長がアメリカの公聴会に呼ばれて、謝罪して涙を流した。謝罪したのはまずい、といった論調があったが、他にどんな手があったろう。勿論、謝罪したからには訴訟はこわい。巨額の弁済が求められよう。しかし、トヨタ車がアメリカ市場から叩き出されるという最悪の結果だけは免れたのではないか。

 へたをすると本当はそうなる可能性が十分あった。サンディエゴ近くのハイウェイでプリウスが暴走して止まらないと騒ぎ立てる男がいて、パトカーが駆けつけて止めるという事件が新たに起こった。連日トヨタ非難の声が燃えあがっていたときだったから、まずいときにまずいことが起こったものだと誰もがハラハラした。何の関係もない観客席の私だって、またしても因縁をつけられるのだろうな、とトヨタが気の毒になった。

 現地の新聞が大騒ぎしかけたが、アクセルのメモリーが入っていて、それを点検するかぎり何の異常も発見されなかった。ブレーキもアクセルも正常に作動していた。騒いだ男が怪しいことは明らかだが、トヨタは賢明にもそれを道徳的に糾弾しなかった。男はブレーキとアクセルを両方踏んだんじゃないか、と男に逃げ道を与えてやった。それが効を奏したらしい。アメリカの世論もこれ以上トヨタを弾劾するのはいかにも見苦しい、と気がついたようだ。

 今度の件でアメリカに理性が甦ったかどうかは分らない。事件の最終の帰趨も今のところ分らない。日本企業叩きのリンチ事件をアメリカはくりかえしている。日米スパコン貿易摩擦(1996)、米国三菱セクハラ事件(1996)、東芝フロッピーディスク訴訟(1999)。いずれもクリントン政権時代(1993-2000)の悪夢のような出来事である。

 80年代を通じアメリカの製造業は日本に敗れつづけた。90年代初頭に「戦勝国は日本だったのか」と悲鳴に近い憤怒の声が上ったのを私は忘れない。90年代に入ってバブルが崩壊し、日本が不利になった。アメリカは規制緩和と市場開放の名の下に日本経済の独自のシステムをひとつひとつ壊しにかかった。日本は自分が何をされているのかあのころさっぱり分らなかったのだ。そしてそのかたわら、アメリカは何だかだと難癖をつけて、威勢のいい日本企業を潰すことに余念がなかった。

 アメリカのやってきたことはつねに国家利益を目的とした国家的行動だった。少し大げさにいえば、軍事力を使わない軍事行動である。今度トヨタに加えられた仕打ちもその一つと考えていいだろう。トヨタにほんの少しスキがあれば、GMを追い抜いたトヨタを倒すために、スキを突いていくのはむしろ政治的正義とさえ考えているだろう。私はこの論理はそれなりに分るつもりである。

 私にむしろ分らないのは国家ということを考えない日本の経済人、企業人である。トヨタ自動車の会長で、日本経団連代表としても有名な奥田碩氏は次のようなことばを平然と語りつづけているのにむしろ驚くのである。

 「今のトヨタというのは、国際企業であり、地球企業なのです。」「地球全体を見ながら、社会、経済の仕組みを作っていかないと、とても二十一世紀は乗り越えられない。」「日本の技術で必要なものがあれば、日本は積極的に他国に移転していかなければいけないと思います。」(朱建栄氏との対談本『「地球企業トヨタ」は中国で何を目指すのか』2007)

 「国や地域という垣根にとらわれていては、企業も国も成長できません」「東アジアの連携を強化しグローバル競争に挑みたい。」(時事通信社の講演2003.1.20)

 「摩擦を避けながらアメリカでの業績を上げて行くには、外国人取締役を増やす必要があり、今まで現地生産やGMとの合併事業などを進めてきたが、まだまだ『日本企業』のレッテルが取れないとの思いがある。」(朝日新聞2005.5.10)

 グローバリズムであるとかボーダレスであるとか、幕末と終戦につづく「第三の開国」であるとか、そういうことばがぽんぽん出てきて、そして理想のモデルとしているのがEUの市場統合であるのはまた世の多くの、EUに対する誤解を絵に描いたようなものの考え方なのである。

 サブプライム問題に端を発した金融危機はたしかにあっという間に世界をまきこみ、国境を越え広がった。危機の波及がボーダレスであり、地球規模であったことは紛れもない事実だ。しかしその後に起こったことはまったく正反対の動きではなかったか。つまり危機の克服となると、これは国家単位でなされるほかなかたではないか。

 グローバリズムだのボーダレスだのというのはすべてが順調で、いい環境の下にあり、条件がそろっているときには理想的にみえるが、危機に至ればみな自己中心になる。自国中心行動になる。アメリカがいい例である。

 奥田氏は「日本企業」のレッテルがさながら悪であるかのようにネガティブに語り、日本という国家に守られているくせにそのことに気がついていない。自民党という親米政権が倒れたことがトヨタに不利に働いていることを少しでも考えただろうか。

 それよりもなによりも、奥田氏のような日本人としての国家意識をもっていない能天気なリーダーが指導していたがゆえに、トヨタは政治的に攻撃されたのである。トヨタ事件は技術の過失のせいでも、新社長の未熟のせいでもない。朝日新聞が「地球市民」という歯の浮くような言葉をはやらせたように、永年にわたり奥田氏が「地球企業」などという甘い概念をまき散らし、トヨタ社内にだけでなく日本社会にも相応に害毒を流してきた報いがきたのだともいえる。

 今度のトヨタ事件は、世界の各企業が多国籍のようにみえて、それは外観か衣装であって、じつは根底においてはナショナリズムで動いていることを赤裸々に証明したといえよう。

 第三の開国とか東アジア共同体とかアジアとの共生とかいうことばが日本の言語空間にだけ無反省にとび交っているが、法秩序のない中国、国家以前のあの大陸地域と共寝するつもりなのだろうか。

 最近韓国企業の活性化をよく耳にする。韓国経済の好調が伝えられる。麻生内閣の当時、だからほんの一年くらい前だろうが、韓国経済は危機にあり、日中が共同で危機打開の援助を与えたことがあった。その後、ウォン安がつづいたので、それが韓国の輸出力を上昇させている原因ともいえるが、どうもそれだけではないようだ。この国には日本にはない強烈なナショナリズムがある。李明博大統領は官民一体となって世界市場を開拓し、日本が得意としているはずの原子力発電で最近日本を出し抜いてアラブ首長国連邦との巨額契約を獲得した。

 日本が余りにも無警戒で無防備なのは、政治と経済が一体化して動くアメリカ的行動力が韓国にあって日本にない、この点だけでは必ずしもなく、日本企業から技術者が流出して韓国にどんどん技術が移転しつつあるという話をよく耳にすることだ。詳しい事情を知る者ではないが、機密保護法ひとつない戦後日本の自己防衛本能の弱さは、政治や軍事だけのことではなく、経済的な国力の基盤を毀すところにまで次第に及んでいるのではないかとの憂慮を抱いている。

つづく