お知らせ(本日です!)
日本文化チャンネル桜出演(スカパー!216チャンネル)タイトル :「闘論!倒論!討論!2008 日本よ、今...」
テーマ :「オバマ政権と米中同盟」
放送予定日:前半 平成20年12月18日(木曜日)19:30~20:30
後半 平成20年12月19日(金曜日)19:00~20:30
パネリスト:(50音順敬称略)
青木直人(ジャーナリスト)
加瀬英明(評論家)
日下公人(評論家・社会貢献支援財団会長)
西尾幹二(評論家)
西部 邁(評論家)
宮崎正弘(作家・評論家)
司会:水島総(日本文化チャンネル桜 代表)
◆歴史を捨てたドイツ
日本がアメリカに力を依存した理由の根本は、戦後の経済復興でアメリカが極めて寛大に市場を開放してくれたからです。隣の中国では戦争が続いているし、革命まで起きました。朝鮮半島でも戦争が勃発しました。したがって、日本は自らの経済復興をとげるのにはアメリカに依存する必然から逃れられなかった。
一方、ドイツはすべての西欧諸国、近隣諸国を相手にして戦争をしました。ですから、その全部と和解し、貿易をしなければ復興することができなかった。ということは、日本よりもはるかにつらい立場ですよね。だから西欧諸国に全部頭を下げなければドイツは生きることができなかったんです。
では、西欧諸国の代表はどこかというとフランスです。ですからフランスに頭を下げる。ドイツは日本と違い、日米関係でなくて独仏関係の進展を要として欧州全体と和解しました。今のEUはパリ―ベルリン枢軸といわれています。パリとベルリンが手を握って成立している。ただ、日米関係と決定的に違うのは、力の源泉の所在です。日米は米の方にありますけれど、独仏関係では誰が見ても力の源泉はドイツの方にあるんですよ。そこが全然状況の違うところです。
ただし、ドイツが強いられた苦しみというのは、日本の比ではなく、その結果、自国の歴史を捨てたということに現われます。ドイツは自国の歴史の連続性を捨てたんです。嘘をついたのですね。ナチスが支配した12年間は歴史の穴で、それ以前にナチスはなく暴力はなく、それ以降にも暴力はないという歴史を作った。つまり、悪魔が支配した、ならず者の集団が支配した12年間はドイツの歴史ではない。それ以前にならず者はいなかったし、それ以降の歴史にもならず者はいないと。ドイツ民族はならず者に集団的に捕縛されたので、自分たちも被害者であり、自分たちも犠牲者であった、と。
こんな嘘ありますか?しかし、そういう嘘をつく以外にドイツは生きて行くことができなかった。憲法にまでそう謳っている。その恐るべき嘘によってドイツは生き抜きました。ヴァイツゼッカーの演説もそれです。そしてヨーロッパ諸国はドイツを許している。ユダヤ人迫害にはフランスも、スイスも、東欧にも見に覚えがある。それに、ドイツを許さなければやっていけないからですよ。それがEUの実態なんです。
ではドイツで今何が起こっているかと言ったら、ドイツは自分の歴史を捨てたから、文化がことごとく没落しました。ドイツ哲学はなくなりました。ドイツ音楽も水準がものすごく低い。演奏でも何でも。ドイツ文学も消えました。ドイツの医学もなくなりました。昔日の花は全くないです。ドイツの教育、これももう、私が『日本の教育、ドイツの教育』を書いていたあのころまではよかったんですが、今はますます酷くなっちゃっている。
つまりドイツは生きるために文化を捨てたのです。そしてドイツにはたくさんの外国人が入ってきてしまっている。ドイツはアイデンティティを失った。アイデンティティを捨てる代わりに生存を選んだというふうに言っていいかもしれません。
あるいはヨーロッパの中にもぐりこむ形で自分のパワーを発揮する、ドイツ経済を生かす。そしてドイツ人と他のヨーロッパ文化との間の区別が分らなくなる形でドイツはそのEUという仮面でナショナリズムを満足させているといえるかもしれない。だとしても、それはやっぱり嘘ですから、何かとひずみが出てくるということに現在なっているようです。
一方、幸いなことにこの日本という国は、一人の天皇が戦争の始まる前から、そして戦争中、さらには戦争の終わった瞬間から戦後の経済繁栄の時期までの全時代を、60数年間にわたり統治してこられた。だからこそ私たちの歴史は連続性が保たれている。日本民族の経て来た時間はどこを切ったって同じなんですよ。そう思うことは非常に幸せなことでもあるんです。それを皆忘れて、戦争責任だなどと未だに言っているのでは話にならない。
とにかく私たちの文化というのはドイツと違う連続性を守られた。ただそれを本当に守っているという自覚を持っているかどうかは別ですが。無自覚的には日本の統一、日本のアイデンティティというのは無くなってないでしょう。もちろんこれは一千万人の労働者を入れたらなくなります。
だけどかろうじて日本はアイデンティティを守っている。だからこそ日本人論が盛んに言われたり、日本文化論が絶えず出版されているのです。
日本保守主義研究会7月講演会記録より
つづく