宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十五)

西尾:それで中国の先行きは?

宮崎:先行きは、今申し上げましたように、エネルギー投資が余りにも無謀なので、そこから破綻を来たしそうです。

 軍のエネルギー確保の発想はパラノイア的です。

 長期契約で、向こう25年間に、2000億ドルをイランに出資するといって、今700億ドルを払ったらしいんですが、今から開発するわけでしょう。開発するのに、資金切れになったらどうするのか、そんなことぜんぜん考えていません。

 ですから、中国のやることが、あんまり無謀なので、メジャーがみんなプロジェクトから撤退していくわけです。東シナ海からもユノカルなどが撤退しましたね。コスト度外視ですから。

 新疆ウイグルから上海まで持ってきているガスも、パイプラインは完成しましたが、末端の消費者にとって、国際価格の3倍もするんですよね。だれも買わないでしょ。買わないから今度は共産党が押しつける。国有企業にこれをこの値段で、買いなさいと。

西尾:日本のように、中東から輸入するというラインだけでは足りないんですか?

宮崎:中東からも石油、ガスを輸入しておりますが、足りないというよりも備蓄設備が少ない。

C:中東から輸入するだけじゃなくて、スーダンからも石油を輸入しているらしいですよ。

西尾:そこで素朴な質問ですが、なんで日本はそんなに、がつがつしないでもやっていられるのでしょうか。

C:いえいえ、過去に於て日本がやろうとした同じようなことを中国もやろうとしているんでしょう。日本は最近政府が石油公団を廃止したりしましたけれど、一時国が金を出して、石油を自分の側に抑えて、それで安定輸入先を確保しておこうということでやっていたんです。その政策があまりうまくいかなかったので、というか一部分しか成功しなかったので、そのうち堀内さんなんかが批判するもんだから、やめてしまったんです。それで今になって、石油がなくなり、天然ガスがなくなろうとしているとき、もっと日本は自分の側に抑えておくべきだったんじゃないかという議論が、今ごろまた再発しているんです。

 中国は30年前の日本と似たようなことを、わぁ~っといっぺんに金をかけてやろうとしているんです。で、今宮崎先生が言われたように、全てのプロジェクトがうまく行くとは思えませんけれども、ただ彼等としては本当に必要なのは油とガスだから・・・・・

西尾:日本はどうなの。何度もききますが、日本はのんびりしていませんか?

C:日本も同じです。石油の値段がこんなに上がったのは、中国がそうやってたくさん買おうとしているからなんですよ。ですから、影響は全世界が受けています。

西尾:中国の経済が伸びれば伸びるほど、エネルギーはより必要になるということですね。

C:宮崎先生がいっておられたように、めちゃくちゃやっているから、プロジェクトとかなんかで、おかしくなるんじゃないかというのはとおっしゃる通りではないかと思いますね。

D:アメリカの共和党は、民主党もですが、チェイニーとかラムズフェルドあたりはニクソンの時代から、ワシントンに居た人間です。彼らはマッカーサー元帥が好きなんですよ。マッカーサーが辞めた時に、議会証言の中で、彼らは朝鮮戦争の体験を心情を通して語ったんです。それはつまり、我々アメリカというのは、アジアの戦争に勝てないと言っているんですよ。そこらへんが共和党の、中国に対する考え方の根底にあるんじゃないかと私は思うのです。

 戦争しちゃいけない、封じ込めくらいはいいけれど、戦争はとにかくやっちゃいけない。今やっているのは、日本式に金持ちにして、おだやかにソフトランディングにもっていこうというのが、共和党の政策の根幹だと思います。

西尾:金持ちになるプロセスで、日本の場合は平均して金持ちになり、静かになっていった、だからよかったけれど、中国は非常にドラスティックに差ができたりするから、金持ちになったとたんに情報が過剰になって、内乱が起きる可能性は中国の場合は高いですよね。

宮崎:富の独占という意味で、中国共産党という権力だけが富を独占するわけですから、庶民のことなんか共産党はどうでもいいんです。そこで必ず不満が堆積してくるんですね。今の段階は、なんといったって飯が食えるから、まあいいのですが、これで農民が本当に食えなくなったらあちこちで一揆的な暴動を起すでしょうね。暴動が起きても、今の軍隊240万と第二軍の人民武装警察70万とで抑えられる、ただ軍がそのうち、武器を敵に渡すなどの腐敗を始めるでしょうから、そうすると昔のように、群雄割拠じゃないけれど・・・・がたがたしてくるでしょう。

西尾:中国と北朝鮮とは違いますか?そういう意味で。

宮崎:いや、かなり違いますよ。

西尾:違いますね。抑えられない。北朝鮮の軍隊、北朝鮮の民衆は抑えられるけれど、本当に餓死者が出るようになったら中国の場合は抑えられないと。

宮崎:あの半島とは違って中国のように広いところでは、山西省は山西省で何をやるかわからないし、江西省は江西省はで何をやるかわからないという状況も出ないとも限らない。ただ、この間もその議論になったんですが、かつての地方軍閥のごとくにたとえば、旧満州では張作霖が出たり、天津からは袁世凱が、山東に閻軍閥、四川に朱徳、広東に葉剣英が出て「広東覇王」をなのるというような、旧来の軍閥かといえば、それは違うと思うのです。

西尾:ということはつまり、片岡さんがさっきから言っているように、現代の国家、主権国家が武力、軍事力を持ったら、地方軍閥は手が出せないということですね。

宮崎:地方叛乱ですね。もちろんそうですが、我々が昔からイメージしていた中国の地方軍閥というのは、もう消えかけてないと思います。

 軍の近代化以来、地方軍閥を警戒してきた。

 その結果、いまあるのは、総参謀本部、総政治部、総後勤部、もう一つ。この四つの「縦の系列」があって、それぞれが地方空間を束ねている。

 軍の中の四つの「縦の系列」にそれぞれ利権があるんです。どこどこのガスはここ、たとえばどこかに労働者を派遣するのはここ、サウジアラビアのミサイル管理はここ、ホテル経営から何から全部「縦の系列」で利権を取り合っているので、それが喧嘩を始める、(ま、今も喧嘩していますけれど)そのときが大混乱の始まりでしょう。

西尾:それが流血の喧嘩になるかもしれないと?

宮崎:なる可能性はある。しかしいい部隊にはいい武器が行くわけですから。

 外国にも出している。軍は輸出で儲けていて、たとえばバングラディッシュあたりは、全部中国製の武器ですよ。90パーセント。ロシアのカラシニコフを真似た機関銃ですが。一発打ったら弾奏が壊れるので、あれみんな“チャラシニコフ”と言っている。(爆笑)

 周縁諸国は、プロチャイナの国々でも、そういうものしか持っていない。まだ、それで十分だから。一方、中国は沿岸警備を含めて、海軍の装備が格段によくなったようですね

西尾:北京オリンピックの見通しはどうでしょうか?

宮崎:オリンピックまでは強権発動で持つと思います。その前に不動産と金融の問題がどうなるかですよ。

C:さっき宮崎さんがおっしゃった、株の投機は?メタル関係は?

宮崎:これは終わりました。鉄鉱石は上がっているんですが、ただ需要がもうないんです。いままで隠していたやつを今だして、それから発注っていうことになりますでしょ。

C:アメリカでも日本でも、そういうのは起っていますけれど、上がるとみんなが買いだめして。

B:上海の土地はもう下がるとおもいます。

宮崎:石油と金が上がっています。

C:日本企業の投資の問題ですが、ちょっと感想を述べさせていただきたいのです。過去10年、15年の間に中国向けの投資については、日本の企業は揺れているんですよね。中国はカントリーリスク――リスクと言う言い方はおかしいかもしれませんが――結局中国に投資して、うまくいくかということです。日本の企業も90年代の前半なんかは、相当慎重だったんです。それは現実に、うまくいかないケースもあったし、中国の中で売ろうとすると大臣が買い占めちゃうようなケースもあった。

 さっき銀行は不良債権が多いとおっしゃっていましたが、中国人は借りた金を返さない。それで日本のやおはんという会社が投資して、つぶれちゃったんです。結局、中国の中で商売しようとして、やっていけなかったのです。日本の企業はどっちかというと、中国で作らせて、それを買ってアメリカに輸出すると、その商売だったら代金はアメリカから入るわけですから、それで向うで割に伸びているのはそうです。

 私は中小企業の仕事をしていましたけれど、日本の中小企業も中国向けの投資がむずかしいなという感じをもっていたんです。ところが、90年代の終りごろから、少し様子がかわってきて、日本の大企業もうまくやるのが出てきたし、しかも中国の中で商売するイトーヨーカ堂とかですね、そういう所も出てきて割にうまく行き始めたもんだから、中国国内をマーケットにした商売の為の、投資というのが非常に増えてきて、つい最近まではものすごいブームになっていたんです。ただ、反日暴動の事件があったのでまたカントリーリスクが出て来たと思います。

 東南アジアの方に、アセアン諸国のほうにまた若干ウェイトが移っていくんじゃないかなと思います。それは中国にとっては、非常に大きな影響があると思います。しかし経済問題ですから、これはしょうがない。

宮崎:もうひとつ、今木下先生がお触れにならなかったことで、WTOの問題があるんですね。WTOで来年、金融の自由化とか知的財産権の保護とか、いろいろあるんですけれど、やはり繊維ですよね。繊維のクォーターがなくなって、中国がラオス、カンボジアに負けるんですよ。中国企業がみんなあっちへ行っているでしょ。価格競争に勝てない分野が中国でさえ今でてきた。

B:ストが起きているでしょ。賃金ストが・・・・

宮崎:ストは年中起きている。基本的にはみんな不払いなんですよ。工場長が持ち逃げしたり、約束の半分ももらえない、これ一番多いんですよ。

B:約束した金を払わないというのは、中国人なんですか。

C:中国に投資することに、通産省がかんでいます。通産省が熱心にやったような気がするんです。

西尾:台湾の悲運がここで問題になりますね。許文龍さんが涙を飲んだ事件がありましたね。愛国者だったのに、自分の会社の人間がおそらくひどい目にあって、仕方なく台湾の独立放棄なんて心にもないことを無理して書かされたんでしょうが、日本の企業も罪もないのに、10年の刑とか、そういう人があいついで出たりすると、日本の企業もこれは大変だということになって、逃げ腰になる、そんなことおこりませんかね。

宮崎:今小林陽太郎だの、一応財界が中国の言うとおりに動いているから、今のところ嫌がらせはないと思います。ただ、たとえばトヨタの会社あたりが全然違うことを言いだすと、やりかねないですね。

西尾:困ったもんですね。常識の存在しない始末に負えない国ですから、日本の企業もちゃんと分って、不当なことをされたらどうしたらよいか、今から対応策を考えておいてほしいですね。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十四)

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1)西尾幹ニのコラム 
2)新人のコラム(不定期・週1回予定) 
3)海外メディア記事の紹介(不定期)
日本に関する海外メディアの記事をピックアップして日本語に翻訳して紹介

(二)[会員制サイト設置]

(三)[オピニオン掲示板について]
上記の変更により、オピニオン掲示板は日録のコンテンツから外れ一般リンクへの組み入れとなります。

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 宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十四)

西尾:今のような内閣のやり方だと、靖国と教科書だけが悪ものになって、総理が靖国に行かない、教科書は採択させない、なんていうのがカードになって、その分だけ教育委員がびびっちゃって、採択をしない教育委員は大人だという気分になりかねない。いままでの日本の国内の空気では、教科書はどうも中国や韓国が悪いんだから、日本人は自分達の道をまっすぐ行けばいいんだと思っていた。だけど、そこは風圧が烈しくなれ、教育委員たちも、事後責任を感じるような、心理においこまれてですね、マイナスイメージになるんじゃないかと、私はそこをしきりに心配しています。

B:小泉氏があそこでまた村山談話をいいましたね、やはり影響をちょっと心配しているんです。私は村山と、河野談話を早く廃棄してもらわなければ困ると思っているのです。なかなか、やりにくくなりましたよね。むしろ村山談話に沿っているのは他の教科書ですから。

宮崎:あの人はおかしいですね。頭が。

C:どの人?

宮崎:小泉さん。

B:ないんだからしょうがないんですからね。

A:彼のやり方は、全部そうなんだけれど、憲法は私の在任中はやりませんということでやっていてね、なんでこそこそやるのか。どうして国民に語りかけて、ふつうの国になるんだからと言ったらいいんですよ。そうしたらもっと・・・・、口を開くたんびに謝罪、哀悼。

D:宮崎さんのメールマガジンに読者の方が、バンドンの会議で謝罪の話をしたのは、何も中韓に対してではなくて、欧米諸国の、元植民地国家の前で一般論を言ったことは非常にいいという論説をのせておられる方がいたと記憶していますが。村山元総理があの談話を言ったのは、社会党だからということで許せていたんですが、政府も外務省も含めて保守の小泉総理がまたあれを繰返して踏襲したというのは困ったことで、つまり一切政府の人間は、もうこれ以上言えなくなってしまっているということになると思うんですね。以前は、せめてもの言い訳は政府が言ったといっても、あれは社会党だったわけで。

B:あの件は閣議決定をしているのです。閣議決定というのはのちのちの内閣までね、ずっと縛り付けるんですよ。だから今役人は何も言えないわけなんですよ、あれに関することはね。ただ、ですが、強いて村山談話をひっぱりだす必要はないんですよ。町村さんにしても向うに行って村山談話と変らない・・・・

西尾:先に言いましたね。町村さんが。

宮崎:あの論理はね、高坂正堯みたいな人がいるんで、なんでも是認するわけですよ。いい方に、外務省の見解をみんなプラスに変えていくでしょ。高坂正堯が甦ったかと。

 年内のことよりも、もうちょっとスパンを広げて金融危機の問題はさっき申し上げました。今度はエネルギーの問題ですが、中国が今毎日240万バーレル石油を輸入しているんですけれども、おそらく10年くらいで一日500万バーレル輸入になるでしょう。それで、早め早めというのはいいんですけれども、国内的には新疆ウイグルから上海まで、4200キロのパイプラインを引きましたね。そのパイプラインを次にカザフスタンにまで伸ばしているんですが、これが1900キロ、それから、ロシアのシベリアの途中から分捕る。とうとう中国の方が先に工事をしますから、・・・

西尾:日本はそれにお金を払うんですか?

宮崎:いえ、先にするのなら日本はそこまでお金を払わない。それからサハリンのガスも一本は中国向けです。それから、イランにですね、イランには総額2000億ドルの投資をしているんですよ、中国は。それからブラジル、インドネシア、あらゆる所に投資をするんですけれど、これは日本の大東亜戦争の資源を求める戦線の拡大と同様に、ものすごく危険じゃないかと思うのです。一つは、金銭的にもうアホができなくなるんですよ。2000億だの1000億だののプロジェクトを、ぼんぼんぼんぼんやっているわけだから。そのエネルギー投資の破綻がおそらく、三年から五年くらいで出てくるだろうと思うのです。

 もう一つは国内的に、今発電所をものすごく作っているんです。今でも発電は石炭が72パーセントです。五年以内に原子力発電を30基くらい作ると。今もさかんに作っています。水力発電もそこらじゅうにダムを作っています。ダムなんですが、今22000箇所ダムがあるんですが、実際に2000くらいは機能していないんです。水力発電が壊れているんです。山峡ダムも今2mくらい亀裂が入っています・・・・(笑い)

 山峡ダムは軍が反対したんですよ。あれ破裂したら100万くらい流域が水没します。原子力にいたっては、日本製をまだ入れていませんので、ロシア製でしょ。これはチェルノブイリの二の舞があるんじゃないでしょうか。あれぐらいの原子力のレベルでは。ですから大変なことになるんですよ。そういう意味でね、次の問題は水もさりながら、このエネルギーに対する無謀な投資がどこかで破綻をきたすような気がします。

西尾:ちょっとお伺いしますが、日本の10倍の人口があるから、そんなにエネルギーを確保する必要があるのですか。日本は中東から順調に安定した輸入があるから、賄われているんですか。日本のエネルギーの何倍くらい、中国は必要としているのですか。

宮崎:石油消費でいえば、中国は世界第二位です。日本を越しましたから。

西尾:同じくらいなんでしょ。

宮崎:人口比から言えば、よくこんなものですんでいるなという気がするんです。

西尾:でもとんとん、同じぐらいなんでしょ。なんでそんなに・・・・

宮崎:今申し上げますが、今までは国内にあったんですよ。大慶油田があったし、勝利油田があった。大慶油田が今枯渇しています。それから勝利油田も今生産を拡大できない。ですから東シナ海も日本と衝突おこしてまでしてむちゃくちゃ開発をする。ベトナム、フィリピン、マレーシアともそうで、石油からガス重視に移管しているんですよ。ガスの契約が多いですよね。石炭はだからといって、急に壊せないんですよ。廃坑、安全基準を満たしていない炭坑を次々に廃坑を命じているんですけれど、その廃坑を温州の資本が入って、また営業をやって、ひそかに石炭を取っている。

 それからこれは我々の常識では考えられないのですが、エネルギーを盗むやつがいるんです。しかもこれがまた凄い盗み方なんです。例えば石炭を、20輌の貨物列車が通りますよね、その列車ごと全部盗んじゃうんです。その規模の強盗事件がそうとう起きています。それからガスも盗むんです。途中からパイプラインを引いて。

(笑)
C:盗んでどうするんですか?

宮崎:闇で売るんです。

西尾:でもどこかにいったん貯蔵しなくちゃならんでしょ。

宮崎:それはタンクローリーを盗むんですから。何台も盗みますから。それから漏電、漏水の問題があります。水道管が悪いんですよね。40パーセント漏水だっていうんですよ。その無駄遣いがあるでしょ、電力もおそらく30パーセントくらい無駄になっているんです。それプラス電力を盗む奴がいますからね。このエネルギーをもうちょっと日本なみに締めるとですね、漏水、漏電をなくして、省エネを図ればいいんです。石炭の電力発電のところは、公害装置を取り付ける。日本はこれで成功したから、消費がこれですんでいる。中国は目先の消費と、バクチ性があるから、儲かると思ったらそっちへ入り込んでくる。収拾がとれなくなっているんでしょう。
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宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十三)

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1)西尾幹ニのコラム 
2)新人のコラム(不定期・週1回予定) 
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という3部構成でお届けしたいと考えております。

1)は今まで通りの西尾幹ニの日録
2)についてですが、既存のメディアでまだ十分にご活躍になっていない方を対象とします。
その中には、日録の読者も含まれます。
西尾先生による選考の上、一定のレベルをクリアしている方に日録への参加権を認めることも視野に入れることとなりました。

そこで、我こそと思わん方の参加をお待ちします。

応募要綱
2)については特にジャンルを定めませんので800字程度のブログエントリとしてのコラムをnishio@hz.sub.jpまでメールにて送付してください。

※採否の発表は当日録において行ないます。個別のお問い合わせには応じられませんので、悪しからずご了承下さい。
※下記のような場合は、審査対象から除外させていただきますのでご注意下さい。
・住所、氏名等の情報が明記されていない場合

西尾先生による選考の上、このエントリ上で該当者を発表し各々1回ずつ日録上に文章が掲載されます。
その後の評判により、2)については専用カテゴリーを設け、定期的な継続をお願いする予定です。

(二)[会員制サイト設置]
これは全く新しい試みです
実名、プロフィール公開を原則とした会員制サイトを設け、より深く掘り下げた論考を展開したいと思います。
ここでは、西尾先生以外に西村幸祐氏遠藤浩一氏他何人かのプロの書き手の方にも参加いただく予定です。
何度かの議論を行なった後、西尾先生を含む可能な限り全員での飲み会を予定しています。
やはり、直接会って気心の知れたほうが議論に身が入り実りあるものになるだろうとの考えからこうなりました。
とは言え、人となりがわかりませんので当初は推薦制とさせていただきます。
メンバーの推薦により広げていくつもりです。
ソーシャルネットワーキングのようなものとお考え下さい。
まずはパスワード制の専用掲示板を設けます。
先述の2)のライターさんはもちろん当初より参加していただきます。

(三)[オピニオン掲示板について]
上記の変更により、オピニオン掲示板は日録のコンテンツから外れ一般リンクへの組み入れとなります。
つまり、西尾幹ニの公式サイトの扱いではなくなるということです。

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宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十三)

西尾:それでは話は最初に戻りますが、2プラス2の理由でもってデモをやった。中国政府はコントロールしたデモをやったつもりが、そうはいかず、ちょっと不安になった。であるならば、コントロールできてよかったなという山口さんの、最初の発言は、私はおかしいと思う。コントロールできなくて、中国政府が慌てれば慌てるほど、それみたことかと、日本の立場からはいえる。

 日本を恫喝する為にやったのですから、それでまた、日本が謝罪をするなんていうのは、バカな話で、謝罪をしたことで静めたというなら、大損をしたのは、日本だけになります。やっぱりそれはおかしい。私たちとしては、中国が冷や汗をかくどころか、泥汗をかいてほしいわけですよ。そういう状態になって初めて、少し彼らも反省をするわけで、下手な手は使えないぞとなる。そうでなければ、また日本をいじめるデモをやって、又日本がどんな反応をするかを見てやれという話になってくる。

L:よくわからないのは3月の全人代の時にね、対日三原則を出しましたよね、あの時は一応少し靖国なんかを後に置いていこうという方針だったと思うのですよね。それが2プラス2が出た後に、そういう方針を確認したらしいんですよね、全人代の協議会かなにかで。そのあとひっくり返って、今度はまた靖国がケシカランというような話を持ってくるということになると、真ん中にはいった3月の、文藝春秋なんかはそれを取り上げてやっていましたが、胡錦濤政権が靖国を諦めたとか、放棄したとかいうタイトルでなんとかという人が書いていましたよね、そうすると胡錦濤政権は、しょっちゅう変るということですね。なぜ変るんでしょう。

西尾:盧武鉉みたいだね。

L:それは内部での突き上げがあって、変ったんじゃないかなぁと、確証はないけれど、そういう感じを私は持っています。

西尾:靖国を一回我慢しようという姿勢を見せた。ところがまた元に戻ったというわけですね。

L:どこかから、そんなのはけしからんという声があがった。ネットから起ったというんだけれど、ネットだけではそういうのは起るわけはないので。

宮崎:今先生がおっしゃったのは、慶応大学の国分○○が言っているわけですがね、要するに靖国問題を一時的に引っ込めるというのを、3月の温家宝の全人代最終日の記者会見で対日三原則を出している。そのさなかに、胡錦濤を中心に特別な討論会が開かれたという、この二つの情報なんです。

 全人代というのは、2000人からの会で、その最中にそういう重要な基本路線を策定するかどうかは、疑問だと思います。それから外交に関して言えば、胡錦濤さんは外交はあまり慣れていなくて、誰がブレインかというのが問題だと思いますが、前は(せんきしん)がいましたけれど、彼が引退しので、今はどうやら唐家セン、この人は例の日本に靖国神社に行くなと厳命しましたと、えらそうなことを言ったあの人ですが、どうも影の宮崎:そう、あれは非常にうまくいったと言っていましたね。

西尾:今年短期的に見て、このデモが5月、6月、7月どうなるのか、それから経済やその他の要因とからめて、中国大陸の行方はどうなるのか、そのあたりで宮崎さん、もう少しご示唆いただければと思います。

宮崎:年内の可能性は小泉さんが靖国に行くかどうかで変わる。行かれればもうちょっと大規模な反日デモがあると思いますね。それこそ今度は火炎瓶あたりが飛んで、けが人ももう少し出るというようなことにもなりかねない。

西尾:やっぱりそうですか。官製デモだったんだから、私はそうならないと思う。

宮崎:いえ、それはやりますよ。今まで言ってきたことで、靖国に行かないということが勝利だと言ってきているのだから、靖国に行ったら向こうのメンツがつぶれますから。ただ、それがまずい時には、小泉さんが靖国に行ったということをいっさい報道しないでしょうね、今度は。そうするとデモは避けられますから。

B:中国が報道しない?それはやるでしょうね。

宮崎:そういうことは平気でやりますから。

B:でも、日本や世界のテレビに出れば・・・

宮崎:出てもアクセスがないんですから。携帯電話でわかりますけれど、人民日報が言わない限りは国民は動きませんから。

B:教科書採択はどうですか?やはり6月以降、7月、はっきりしてくると・・・・韓国はやろうと・・・・

宮崎:採択というよりは、検定が通ったことがけしからんということでここまでやったんですから、採択の問題はそんなに大きな問題にはもうならないんじゃないかな。むしろ韓国でしょう。

B:韓国はね、来るっていいますからね。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十二)

J:だけどね、小泉さんの公式の談話とか、見解を見ていると、首相がこれだけ謝って、哀悼だ、反省だの、靖国神社を前倒しにしますだの、あのときの談話読んでごらんなさい。あれが首相だったら、あの下にいる外務省はそれより前に出るのは不可能です。あの首相の言っていることはおかしいんだな。それで中国の裏をかくようなことをやっているんですよ。
 
 宮崎さんのテーゼっていうのは、中国に社会不安があって、それをそらすために、日本というスケープゴートを捜しているんだという推論の立て方だと思うのですが、僕は、今年の2月19日のワシントンでの戦略目標っていうのが発表されて、あれはね、中国から見ると、かなりびっくりするような方針転換だと思うんですよね。日本が台湾の防衛にコミットするなんてことは、中国は考えてもいなかったんじゃないでしょうか。日本が悪いというのではなくて、僕は当然だと思うし、台湾防衛大いにやりましょう、という鷹派なんですけれど、しかしこれは小渕氏の時や橋本さんの時は周辺事態法なんていうわけのわからない法律を作って、よく読んでみると、何もやらないって書いてあるんでしょ。あれから比べたら、小泉さんはかなり踏み込んでいるんですよね。

西尾:じゃ、それが原因なの。今度の反日暴動の原因は、台湾で共同行動を取るという外相会談だってきめてしまっていいわけ?

J:中国は最初はそう言わなかった。最初は国連の常任理事国入りを問題にした。僕はおかしいなと思ったんだ。その次に教科書とか歴史認識とか出てきて、胡錦濤が出てきたら、彼は台湾ということをはっきりと言っているんですね。

西尾:やっぱり、台湾があったから今度の官製デモがあったと?

J:だって、反分裂法というのを全人代で通したのは胡錦濤なんだから、あれはアメリカと日本に対する平手打ちみたいなものでね、正面からこんなことは許さないよと言ったんでしょ。だから小渕さんの頃の周辺事態法からみたら向うとしては、かなり脅威だと思うよ。

西尾:それだけ事柄があの時代より切迫しているということですね。だから今度の官製デモもあり得た。他の方どうですか?

K:今のとも関係があるんですけれど、一つは片岡さんも言われたんですが、先行きに中国が大きな問題を抱えていると、宮崎さんも水の問題とか、言われました。私はそこは本当にそうなのかなと、八年前にアジア経済という本を書いたのですが、その中で中国の経済の問題として、エネルギーが不足しているとか、食糧が足りなくなるとか、不良債権の問題とか、摩天楼はがらがらになって、空家と化すのではないかとかを書いたんですけれど、それぞれそういう問題になりそうではあるんだけれど、全然今の中国の経済というのは、膨張の障害にはなっていない。

 だから個々に書いてある水不足というのも、大きな問題だろうけれども、これはいざとなったら水を飲ませないようにすればいいし、環境汚染の問題だって、平気のへいざでやり過ごすのですよ。まぁ一般住民を無視するわけで、あんまり大きな問題として意識されていないんじゃないかと思うのです。本当に彼等にとって、危機意識があるんでしょうかね。ここにかかげてあるたくさんの問題。

宮崎:いや、暴動が年間20万件くらい報告されているんですが、その暴動の原因別でいうと、汚職、立ち退き問題、それから汚染、水、そんな感じです。水は深刻な問題だと思いますよ。ガンジス川でね、泥の河で顔を洗って、となりで排便をしているって、あれと同じですからね。そういう水しか飲めないような、地方の中国人の農民がたくさんいますからね。それから、ホテルは皆、ミネラルですよ。風呂はだめですよ。風呂は汚い。

 片岡先生のさっきの政策問題、今回はまさしくその政策なんですね。台湾は12月に、ちょっと国家分裂法を作るぞとアナウンスをして、三ヶ月様子を見ていたんですよ。そしたら、反撥が強そうだから、法律の条文を変えて、わずか10項目にしたんですね。ただあれは、法律というより、宣言です。それにもかかわらず、世界の反撥が強いということ等、ヨーロッパはついに、中国に対する武器輸出を1年以上延期すると、これは中国外交の大敗北ですよ。そこへもってきて、2プラス2で、日本が生意気に反中行為に走ったと。これはやってやろうということになったと思いますね。それが何時の時点なのかわかっていないですが。

 ただ早い時期に4月の確か12日だったと思いますが、北京で緊急政治局会議をやっているんですよ。で、やりすぎだと、4月10日です、その時に胡錦濤から初めて、批判的な発言が出ている。これはニューズウィークかなんかが書きましたよね。つまり、あわてたんです。ちょっとやりすぎだと。やりすぎという発言には、その裏には自分達が企画した、反日デモ・組織的なデモの動きというのが、国連の常任理事国に加盟するから云々というのは、表向きの理由で、隠された理由は2プラス2だと思います。それが企画した以上の暴力デモになったので、相当慌てたんだと思います。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十一)

宮崎:4月10日だったか、北京のデモの翌日に、外務省に呼びつけましたでしょ。王毅大使を。王毅大使がちょっと、こうやって頭を下げているんです。それを共同通信が写真で流したら、回集命令が出たんです。

西尾:あれは腰をおろす瞬間だったんでしょ。

宮崎:お辞儀しているようにみえるんですよ。おそらく大使館から抗議が来たんでしょう。共同通信はそれを配信中止にして、共同はその時APか何かに流したのを今、日本のメディアは外国から写真を買っているんですから。

B:13日に、○○委員会がありまして、その時に中川昭一さんから聞いたんですが、誰かのところに王毅が来て、助けてくださいと、言っていたというんですね。中川さんがそう言っていましたよ。その意味は中国の大衆がかんかんで、日本に於てね。

H:宮崎さん、いいですか。私一つ不思議に思ったのは、愛国無罪といったでしょ。愛国無罪と言ったら、A級戦犯も無罪になっちゃいますよ。そういう意味ではないのですかね。あれは。国を愛してやる行動は許される・・・・

宮崎:愛国ならなんでもいいと。例えば、何かサイケデリックな歌がありますよね。中国はあんまりひどいのを禁止しているんですが、あれを翻訳する時に、途中一ヶ所だけ恩愛中国と、私は中国を愛するとワンフレーズ入れると許可になるんです。全部。ですから、これは何でも免罪符なんですよ。軽い意味だと思いますよ。理論武装的にやっているのではなくて。

H:そういう意味ですね、逆に使えますね。

西尾:向うが愛国無罪ならこっちも愛国無罪だと。向うが正しい歴史認識ならこっちも正しい歴史認識。そして日本人の反日派は売国有罪。

H:やったことが正しいかどうかは別として、愛国っていうならA級戦犯も無罪。宮崎さんも今回の外相は、おかしいということを言わなかったでしょ。向うは態度を絶対に変えないから、結局こちらが何を言ったってしょうがないという感じで、宮崎さんもおっしゃったように感じたんですが。

宮崎:しょうがないとは私はおもいません。けれども、結論的にはいつも、言ってもしょうがないという結果に終わっていると言うことを申し上げただけです。

H:言い続けるということは、我々外交としては常に、言い続けて、一度ブッシュ大統領が中国の教科書はまずいと、あれはおかしい、少なくともアメリカの記述がぜんぜんおかしいと言って、あれに対する反応というのは、殆ど向うではないですよね。

宮崎:何か向うは反撥しただけで終わったんじゃないですか。「朝鮮戦争はアメリカの侵略である」なんて、むちゃくちゃなことを書いているんですね。

H:結局ブッシュが言っても、何も変化がないと。

宮崎:アメリカはあの時、一回言っただけで、強くその後継続的に抗議していません。その後すぐにイラクでことがおきて、うやむやなうちに、また中国は戦略的パートナーとか言い出しましたから。今対面しているんじゃないですか。

西尾:ニューヨークタイムズは叩きましたよね。

宮崎:新聞はたたいているんですよね、ワシントンポストも。日本の代理人の如くかばってくれている。

H:ブッシュが言ったのは、向うに対して言ったんじゃなくて、北京大学かどこかで講演したんで、正式に外交上の問題として取り上げたわけじゃないんでしょう。

宮崎:あれは中継しなかったでしょ。途中の都合の悪いところはノイズを入れて、結局あれをブッシュの演説を聞いた人も、よくわかっていないと思いますよ。何を言ったか。

I:私たまたま昨日、ある会で聞いたんですが、ワシントンで三極会合があったらしいですね、経済人の会合があったらしいですね。それに出た人から聞いたんですが、ヨーロッパやアメリカの人たち―その会合に出て来た人たちは歴史認識については、日本に対して厳しいことを言っていました。英米、ヨーロッパですね。私が直接出たわけではないですが、そう言っていました。

西尾:実際の事を知らないで言っているんでしょう。

K:私も仕事柄英米のメディアの論調をいくつか読んだんですけれど、確かに日を経つに従って、日本寄りの論調が増えてきたのは確かです。特に最初にデモが起ったときは、中国のやり方も問題だけど、やはり日本も歴史を反省していないとか、そういうことをイーブン、イーブン、50、50位の比率で言っているんですよね。英米メディアが今回日本寄りになってきたかというと、必ずしもそうではなくて、日本がきちんと自己主張するというのは、中国に対しても意味があるんですけれど、国際世論をこちら側に引き寄せていくという意味でも、意味があるんです。

宮崎:英米メディアには慰安婦問題が出ていましたよね。

西尾:そういうことに就ては、日本の保守系論壇では論議は尽くされている、そして論証もされ尽くされていて、議論はいつでもできるし、論客は揃っているんですけれども、残念ながらそれをメディアで英語ないし、フランス語で向うのマスコミに出すという方法を持たないんですよね。それで、いつもそのことについて、じゃあ代わりになる外務省の役人なり、政治家の代表的な人が、レトリックも鮮やかに、われわれ
がセリフをつけてあげてもいいですから、ちゃんと堂々といざとなった時に、言ってほしい、とこういうふうに思うわけなんですけれど、ですが、それは非常にむずかしくて、いつも残念に思っています。

 ついこの間、安倍晋三さんが外人記者の前で話をしてきた直後にお目にかかったことがありますが、南京のことを聞かれたといって、それで応答はちゃんとなさって、これは学問的には疑義があって、何十万人死んだなんていうことのはあり得ないんだというぐらいの反論をなさったわけです。

 だけれど、それにさらに突っ込んでですね、南京事件はありとあらゆる知見を労したけれども、要するに、なかったという論証もできないけれど、あったという論証も実は出来ないんだと、そこまで学問的には突っ込んだ研究がなされていると、いうぐらいのことを政治家の口から言ってほしいわけですよ。そこまでは言いませんでしたと、仰言っていました。これから政治家になる人たちは、そういう言論上の防衛武装をして、出て行ってほしいし、従軍慰安婦のことも、すみずみまで知って、激論が戦わせられるような人でないと困ると思うのですよ。それとあとは勿論外務省ですよね。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(十)

宮崎:しかしあの独裁政権が倒れなくては、この反日教育はなくならないでしょう。共産党延命の為の舞台装置だから、

西尾:ですから私は、よしんば大破局が起ってもいいから、共産党政権が倒れることが一日も早くこなくちゃいけないと思います。ソフトランディングなんていうのは、その分だけ日本が傷つくことが多くなる。ソフトランディングではなくて、ハードランディングを願っている。

F:宮崎先生におうかがいしたんですが、先生のお話しを最初から最後までうかがって興味深かったのですが、対日、反日デモはやらせだったと、それで、中国は非常にいろいろ問題を抱えているから、いつまでもそういう方向ばかりではやって行けなくなるだろうという感じのお話しだったと思うのですが、そういうことであるとすれば結論的に反日デモの問題は、ほっとけば自然に中国側の中の事情で消えていくという風におっしゃっているようにも聞こえたんですが、どういう感じなんでしょうか。

宮崎:強弱は出るでしょうが、消えることは無いと思います。基本的には中国は反日ですよ。我々は常に反中ですから、それは宿命的な隣人関係じゃないかと思います。

F:やらせの反日デモみたいなものは、今後はなかなかやれなくなるだろうと?

宮崎:いやいやそんなことはないでしょう。やはり日本がかなり得点を挙げてしまえば、またやると思います。半年くらいたてば。今年は5・4の後は、7月7日が盧溝橋事件、8月15日があって、9月3日が抗日勝利60周年で、その後、9・18ずっと永遠にありますから。その時は必ず何かのキャンペーンをやりますから、その前後でね。今度はまた何か違うことをやるのではないかと思いますよ。たとえば、日本の企業がまた集団買春をやったとかいってね、醜い日本人というのとか、アングルはちょっとわかりませんが、常に強弱は別にして、やることは繰り返しやると思います。

西尾:それにひたすら耐えなきゃいけないんですか。

F:それがね、橋本派がいままでいたってことが原因で、日本がこれに対して余りに無神経で、ほったらかしておいたのが、橋本派と関係があるような気がします。橋本派はこういうものに批判する声をあげた人だけど、そういう人たちをしらみつぶしにしていたでしょ。たとえば外務省の事務次官で、高柳さんでしたか、「鄧小平は雲の上の人だ」と言ったら、それだけで更迭されました。

G:柳谷さんですね。

F:ああいうことがね、大事件にならなくてもしょっちゅうあって、それで橋本派は対中ODAの利権を握っていて、日本はお金どんどんやるのに向うは感謝もしない、そういう橋本派がどうも、日本のイメージに対するダメージを与えたんじゃ< ないかと思うのです。

西尾:要するに静かにおとなしく、事柄を回避して、アジア・アフリカ会議で「侵略」と「植民地」でまた例のごとく謝罪して、小泉さんの外交の勝利であるかの如くいわれており、そして、それがあったおかげて日本の企業も安心し、世界から日本は大人だと思われたか、それとも日本は腹黒いところがある、だから演技したとかなにか分りませんけれど、今のところは治まっているように見えるわけですけれど、また繰返されるでしょう。こういうことは、実はずっと繰返されてきているのですが、そんなに遠くない時期にまた同じことがあったら、今度同じ手は使えないですよね。また総理大臣がのこのこ出て行って、ばかなことを言うということは、もう出来ないと思うのです。

F:今回は少なくとも西欧とアメリカに関する限りは日本の立場は非常に強いんですよ。今度の場合は小泉さんをブッシュがかばおうとしたんですね。

G:かばうよりも、せっかくの世界の監視の中でですからね、注視しているところにね、小泉氏がわざわざ、冷静にしろとかわけのわからんことを言ってね、わざわざジャカルタの向うの旅館にまで行ってね、会うなんてもっての他ですよ。

西尾:少なくともセリフの中に、21回目の謝罪であって、日本は十分にやりすぎるぐらいやったと、今日を以て一切を終わりにするという、宣言を世界に言うとか、それぐらいのことは総理大臣はやらなきゃ、おかしい。

G:こうやってねレンガや生卵まで用意して、大使館に石を投げることを公然と認めておったのは、外交常識においても常識外のことですよ。それを敢えてやったのは、これくらいやっても、相変わらず日本は大人しくしているだろうと。そういう風にみたんじゃないですか。

宮崎:ですから条約とか、ウィーン条約違反とかそんなことを言っても、関係ないんですよ。
(笑い)

G:この前、瀋陽の総領事館に侵入したでしょ。あの時も謝罪を求めたにも拘らず、うやむやにしちゃったでしょ。

西尾:潜水艦

宮崎:潜水艦は遺憾の意を表した。

G:潜水艦は遺憾の意を表したことにしてあるけれど、ほんとうかどうか分りません。しかし、今度のやつがまたうやむやになるんじゃないかと、瀋陽の例がありますから、日本はそういう日本に対する見方というのを許しているので、日本を見くびっているんじゃないかという感じがするんですね。

A:私はね、最低限、小泉さんにしろ、町村さんにしろ絶対に言うべきだと思うのは、向うは正しい歴史認識と言っているんですよ。正しいって何ですか?と。正しい歴史認識、賛成です。日本には日本としての正しい歴史認識がありますよと。中国の歴史認識を我々が、鵜呑みにするわけには行きませんと。これははっきりう客観的なものがあって・・・・

西尾:日本がそれに従っていないと・・・・そうすると、われわれの教科書だけが悪者になるんですよ。

A:そうなんですよ。これは最低限小泉さん、町村さんは言うべきだと思います。

西尾:そこまで踏みこんで言ってないから僕はやっぱり町村さんは期待だおれだと思っている。

A:正しい歴史認識って、何をいうかと。それは中国の。

西尾:町村さん、やっぱり予想したとおりラインを越えられない。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(九)

C:始めに戻りまして、Aさんは計画されたデモだといわれたのですが、北京の方はレンガも生卵もちゃんと用意してあったということですと、大使館への投石は初めから計画されていたと、公安の方もということですか。

宮崎:と、思います。というのは、天皇陛下が御訪中された時に、万里の長城に観光客がいましたよね、あれ全部公安だったんです。これは語り草になっているんです。最初に石を投げるというのは、市民に扮装した公安に決まっているんです。合図があって、あぁ今日は投げていいんだと、そしてみんな投げるんですよ。(爆笑)

 ですから、公安の総意であったかどうかは難しいけれど、一部はねっかえり必ずいますから、関東軍にも暴走した軍人がいましたように。

C:上海の方を見ますと、領事館に投げてはいけないと紙に書いてあるんですね。

宮崎:それは動員された、基礎動員されてきた人達にはそういう命令が廻っていたんです。

C:上海のデモと北京のデモでは、計画が少し違ったわけですか。

宮崎:計画自体は同じだと思いますよ。計画どおり行っていなかったのが、冒頭申し上げたように、携帯電話動員がでてきた。

C:北京の方では大使館に石を投げてもよろしいと。

宮崎:いやいや、そういう指示は廻っていません。

C:でも、レンガがちゃんと用意してあったので、

宮崎:ええ、それは公安が指示書で、文書で残すようなものではありませんから。

C:あぁ、文書ではね。

宮崎:ひょっとしたら口頭で、そういうことを言っていたかもしれませんけれども。

C:用意したということは、当然投げることを前提にしているのでは。

宮崎:それは、日本の大使館は昔のように、ビデオでもって、活動家の顔を撮るべきですよ。何にもしていないんですよね。本当に情報収集能力ゼロです。

C:民放の方は撮っていましたよね。

宮崎:ええ、民放各社もずい分アルバイトを入れて、フィルムをそういう所から映像を買っていたようですが、あれだって後でライブラリーを作って分析しなくちゃね。そうすれば、必ず活動家が出てきますから。

C:上海の方は予想外の出来事だったとしても、大使館に石を投げるというのは、どういう感覚ですかね。

宮崎:両方とも共通しているのは、北京は中間村といって、シリコンバレーで、ちょっと都の西北じゃないけれど、北京の西北にありまして、大使館まで20キロくらい歩いてあるんです。歩いて4時間あるんですよ。ですから当初はあの辺で、デモをやっておしまいという計画だったんですよね。ところがずーっとみんな歩き出して、人が増えて、それで途中で考えが変ったか、現場の人達が指揮を変えたか、どっちかだと思います。上海も人民広場から領事館まで、16・7キロありますから、歩いて4時間かかりますよ。当局はやはり最初はそんな遠いところまで、歩くまいと思っていたに決まっているんですね。

西尾:途中ちゃんと江沢民の私邸を迂回したりとおっしゃった。

D:大使館投石というけれど、クリントンの時にコソボでアメリカの空軍が間違って中国大使館を爆発させて、ぶっ壊して、人が死んだんでしたよね。あの時のデモは日本のデモとは違う。

宮崎:あれは完全に流れたんですよ。サッサ―というアメリカの大使は命からがら逃げたんですから。

D:あの時は本当にこれは、大使館○○・・・・・・だったんですが、

C:大きな石を投げるのは静止した、新聞にはそう出ていましたね。

宮崎:いやいや、火炎瓶を投げたんだよ。

D:中には火事がありましたね。

E:先ほど、先生は反日教育のことで、あまり影響が無いのではないかという観点からお話しになったんですが、私はこれは非常に大きな問題ではないかと思うのです。今回の先生の資料を読みますと、中国のメディアの論調がなぜ悪いかというと、それは文明国の規(のり)をはずしている。

 これは民主主義の国家であるわれわれ国際社会には受け入れられないなという観点からの、つまり今のデモでいえば、物を投げたりということへの非難というふうに受け取れるのですが、そこをはずせば、整然とデモが行われて終わっていれば、じゃあ必ずしも欧米のメディアは中国の批判へ廻らなかった可能性もある。ということは、どういうことになるかというと、そこは日本が悪い、日本と中国との構図が、日本が悪いということが相対的に上がってきてしまうと思います。

 私は盧溝橋の博物館しか見たことがありませんが、やはりああいうものを見たら、たとえ一日の参観であっても、あれを見て育つということは、潜在的に心の中に残るわけでありまして、そこをさらっと反日教育はたいしたことはないというよりも、かなり問題だという認識を持ったほうがいいのではないかと思います。

西尾:たとえば日本政府が持ったほうがいい、と・・・・

E:もちろんそれもそうですし、そこが我々も中国に対して訴えるポイントだという風に、認識をするべきではないかという気がいたします。

宮崎:よくわかりますよ。われわれの民族感情としても、腹がたってしょうがないんですけれど、あれやっぱり本気じゃないんですよ。見に来ている人たちは。学校教育でも小さい時から子供は答案にはこう書きなさいと教わっているんです。現実は違うということは、みんな百も承知なんです。

西尾:そんなに区別がついているのかな。そのうち一緒になっちゃう。

宮崎:いや、ならないんですよ。文革の現実と・・・

E:ちょっと説明の仕方が悪かったかもしれませんが、中国人の末裔が信じるということよりも、彼らがそれを使えるものだという意識をもって、要するに欧米人がそれに着目をすることが問題なんだろうなと思うのです。

 日本と中国の間だけであれば、お互いに何世紀も昔から違うことを言い合って、それで済ませてきたという歴史があると思うのですが、超大国のアメリカというものが間に入ることにより、そういう存在がある以上、彼らにもなるほど日本にはそういう非があるのかと思わせるような材料を提供することは、きわめてマイナスなんじゃないかと思います。

西尾:それを日本政府はいつも黙っているんだね。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(八)

宮崎:いい悪いは別として、客観的に大破局のような、そういうことがあり得るかという問題もあるんですよ。ロシアと中国で今まで大革命が起きたんですけれど、中国の場合は特に、共産党が一人で革命をやろうとしているときに、彼らは失敗して、江西省で、江西ソビエトを棄てて長征イデオロギー、長征というのは逃げたということですからね、それで陝西省に着いて、張学良を戦わせて、蒋介石をつかまえて、抗日戦争が始まるように仕掛けておいて、そういう過程で共産党が変化をしたんですよね。

 だから、ロシアの場合もドイツの参謀本部がレーニンをロシアに送って、第一次大戦で、その過程で・・・・つまり、革命というのは、既存の政府が戦争で負けて、長期戦争でね、負けた場合に威信を失って、その時に初めて改革派が成功するようなタイプの現象であって、平和の事態で、政府が軍隊を完全に握っている場合、恐らく僕は、学生や農民が立上がっても、近代化された軍隊の暴力によって、立ち向えないんじゃないかと思うのですね。

西尾:ソビエトが崩壊して、ロシアになった、というような変化は中国大陸では期待できないですか。

宮崎:それはあるかもしれないね。でもその場合はやはり・・・・

西尾:ソビエトは戦争に負けたんですね、冷戦に負けた。

C:だから、政府が威信を失って、あの場合はゴルバチョフの自由化というのは、共産主義体制の中からやったんですよね。彼は最後の共産党の指導者だった。範疇からはずれるんだけれど、僕は中国の人民解放軍がそのためにしっかりしているんだと思うのだけれど、共産党が最後に頼れるのは軍隊であって、軍隊はあそこを抑えきれるのではないかと思いますね。

西尾:抑えきれるか否かというよりも、最初に出た山口先生と僕との意見の違いなんだけれど、今回の推移を見ていて、小泉がのこのこ出て行って、収めてしまって、これはまずいなと思った。もっといらつかせて、もうちょっと混乱が起きれば胡錦濤がすっ飛ぶじゃないかと、そうなったほうがよかったんじゃないかと、何も大混乱、大破局、何百万人の人間が流出という事態じゃなくても、北京オリンピックがすっとぶくらいのことが起ってほしいと。

A:僕は西尾先生と、ぜんぜん別のことを言っているんじゃないと思います。ソ連がゴルバチョフみたいな男がやって、軟着陸したわけですね。別にそんなに大革命が起きたわけじゃなくて。ああいう風にですね、今回の混乱だって、北京オリンピックがすっとぶぐらいの事態になって、別に核が飛び交うことになるなんてそんなことはならないでですね、北京の共産党当局者、政府当局者が、少しずつ軌道修正していかなくてはならないなという風に、そういう方向に動いて、やがてスローペースでしょうけれど、軟着陸してくれる、それがシナリオとしては、一番好ましいのではないでしょうか。アジア全体、ことに日本にとっては。

宮崎:分析的にはそういう状況もあるんですが、中国にはそういう公式をあてはめても、全く意味がないことがありましてね、たとえばキャピタルフライトというのがありましてね、幹部が海外に持ち逃げしている資金がおおよそ一千億ドル。昨年マカオから大陸に旅行者が出たのは大体1650万人。マカオでバクチに使ったのが52億ドル。スイスとか、海外から入ってきた投資資金はそのまんまケイマントあたりに行ってね、どうなっているかよく分っていないんです。本当のブラックホールの恐れがあるんです。

 その辺からまず、危機が来るでしょうね。もう一つは、不動産バブルが、今上海は日本より高いんですよ。完全なマネーゲームで、去年までは温州商人といって、セッコウ省の中腹にある中国のユダヤと言われているところですが、その温州が闇資金の33パーセントくらい持っている。中国のね。闇金融をさかんにやっておりますけれど、温州商人たちの投機を越えて、今金が入ってきているんです。台湾とアメリカから入ってきている。

 アメリカの不動産ファンド筋が、それこそ巨大な額を持って、今まだ投資を続けていますので、去年も20パーセントくらい上がりました。その前は28パーセントくらい上がりました。6年前に中国の株式投資ブームは終わったんですね。それまでは株を買いさえすれば儲かるという狂乱の下に、株がうぁーっと上がって、どんと落ちて、この6年間、6年前の40パーセントくらい低いところに行って、株投機は今はないですね。

 3年前から始まったのが、例のセメント・ニッケル・石膏その他言ってみればいわゆる商品投機です。建材が7割だの、8割だのばかみたいに上がって、あれみんな買い占めしていたんです。そういう投機資金が最後のバクチ場で、上海の不動産に来ている。あとは、中国人は騙しあいの世界ですから、急にドンとくることはないんですが、お互いに騙してババを回していくうちに、最後に誰がババを引くかというところで終わりますから、不動産○○○考えにくいんですけれど、その間に減っていく金ですが、その金が結局どこに集まっていくかというのが、読めない。蒋介石の資金が、当時380億ドルあって、蒋介石達がアメリカに持って行ったドルが280億ドルぐらいで、あれ銀行だかどうだか分らないのです。今の中国の銀行もそれに近いところがありますからね。

 どうも軍の衝突とか、農民の暴動、国籍軍との対立、そういうことはまだしばらく起こらないのではないでしょうか。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(七)

 出席者は小田村四郎、石井公一郎、大島陽一(元東京銀行専務)、尾崎護、呉善花、三好範英(読売新聞国際部)、東中野修道、大塚海夫、山口洋一(元ミャンマー大使)、片岡鉄也、木下博生、大澤正道(元平凡社出版局長・歴史家)、田中英道、萩野貞樹、真部栄一(扶桑社)、力石幸一(徳間書店)、西尾幹二。

 なお、宮崎と西尾以外の発言は声で識別できないのでABCで表す。また、聞き取れなかった言葉は○じるしで示す。

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宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(七)

● ディスカッション

西尾:いろんな現実を幅広くご紹介たまわりまして、ありがとうございました。皆様にはご感想はまたいろいろあるでしょうが、いかがでしょうか、山口さんどうぞ。

A:大変興味深く拝聴しました。確かに党の中は一枚岩ではなくて、江沢民派との確執があるんでしょうが、私は今回の事態を見て、逆説的な言い方をすれば、むしろ安心した、よかったなという思いがしているんですね。というのは、やはり全体として完全に政府の演出、共産党中国政府の演出どおりに事が運んで、先生がおっしゃったようなことがあるんだけれども、全体としては政府が統制して、政府の振り付けどおりに事がすすんでいると、総じてそういうことがいえるんじゃないかと思うのです。

 一番心配なのは、共産党、中国政府自身がまさに、危惧しているんだけれども、大衆の動きが反政府、反共産党という方向に向って、収拾がつかなくなるとえらいことになるんですよね。そういう事態にならないで、まぁ、政府の振り付けどおりに事が進展したということで、一段落して、まぁまぁよかったなぁという感じがいたします。

 日本として一番恐いのは、私は中国の一党独裁制が今の情況では続けていくしか、国を束ねていく手立てはないと思いますけど、未来永劫それが続くとは思えないんで、それが暴力的な中国伝統の易姓革命で、叛乱とか、暴動とかで、今の政権がおかしくなるというのが、日本にとってばかりではなく、アジアにとって好ましくない状態ではないかと、

西尾:好ましくない?中国の叛乱とか暴動とかは私は大歓迎ですよ。大混乱に陥って、体制がひっくり返って欲しいですよ。

A:え?そうですか?私はやっぱりですね、望むらくは、軟着陸してね、

西尾:軟着陸はあり得ない。百年も二百年もかかるでしょう。

A:そう、そりゃそうですが、中国何千年の歴史で、ずっとこれまで易姓革命しかなかった国ですから、民意でもってだんだんと変っていくなんていうのは・・・・でも世界は変わっていますからね、殷、周、漢、隋、唐、宋、元、明、清と来た時代と、今の時代は世界は変わっていますからね。少し時間がかかっても、暴動とか革命で変るんじゃなくて・・・・

西尾:革命は、中国に精神的に新しい勢力が起こらなくてはおきませんけれどもね。革命が起きるのではなくて、反革命が起きてほしいんですよ。蜂の巣をつついたような大混乱が起きて、軍閥が割拠して、その中で大破局が起らない限り、あの国は変らないんじゃないかと思う。

A:だけど、大破局というのは血で血を洗うような・・・・

西尾:なればいいと思っているんです。

A:そうですか?日本に何十万という難民が押し寄せますよ。

西尾:あるかもしれませんけれど。

B:ちょっと議論はですね、いろいろパッチを貼ってですね、弥縫策(びほうさく)でよろよろよろよろやっている間に、傷が深くなると。そうすると後の始末は一層深刻になるという問題を含んでいるように思うんですね。だから、日本のバブルもあるところではじけたけれど、はじけないであと数年、よろよろ前に進んだら、もっとあとがひどいと、そこら辺の問題があると思います。

西尾:いきなり私が破局待望を言ったもので、価値観の転換が・・・

A:いずれにしろ今回の、反日デモ云々を見る限りにおいて、政府がよろしく振付けしているから、まだ破局に至るような段階には・・・

西尾:今日の段階ではそうですね。5月、6月、7月、8月はどうなるかわかりませんよね。

B:私の言ったことにお答え頂きたいのですが。

西尾:コントロールがきけばいいという?

B:いえ、コントロールを効かせていると・・・・

西尾:かえって後でひどくなるということですね。

B:バブルがより一層膨れ上がって、膨れ上がることによってよりダメージが大きくなり、回復に時間がかかるのではと。そうすると、破局というのは何らかの時に起るんだから、早い方がお互いに結構なんじゃないか。向うの民族にとっても、世界にとっても結構なのでは?それがどんどん時を稼いで、より一層病状を悪くすると、病気や怪我と同じで、治療が遅れることによって、病状の悪化が回復を遅らせ、ダメージを大きくするというような気がするんですが、いかがお考えかと。

A:私は必ずしもそこはちょっと、そうは思いません。漸進的に少しずつ、中国国民もこうやってガス抜きをしたり、いろいろしながら今の共産党の圧制はおかしいよと、民意をますます露にしていく。世界が、国連を始め国際世論が、かつてとはちがうなという状況は明らかですから、中国の政権も、これは時間がかかると思いますが、30年か50年かもっとかかるのかもしれませんが、少しずつ変っていって、軟着陸してくれるというのが、僕はアジアや世界全体の為には好ましいんだと思います。

 あそこがめちゃめちゃになったら、ソ連の崩壊どころじゃないですよ。アジア全体も、ことに日本はぐしゃぐしゃになるんじゃないですか。その過程で飛び道具を持っている人がいるんでしょ。核兵器を含めて、そんなのが、飛び交ったら地球は破滅ですよ。私はそういう、中国の大爆発、破局は是非とも起らないようにするのが・・・・・

西尾:それは日本の力じゃできませんから、自然に待つしかないですね。

A:漸進的にね、30年かかっても50年かかってもいいから、今日の明日、大混乱が起きて、人類社会全体が破滅するような・・・・

西尾:そりゃ、大げさですよ。

A:大げさかもしれないけれど、大混乱は大変なことになる。

西尾:早くドドーッと変わってくれないと周りが窒息しちゃいますよ。

宮崎正弘氏を囲む――中国反日暴動の裏側(六)

● 中国は何を反日ですり替えようとしたのか?(2) 宮崎正弘

 不良債権、これもやはり隠していますが、おおよそ日本円で90兆円くらいの不良債権がある。国有4大銀行だけで、4大銀行とは中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行。

 対GDP比で、中国の不良債権は50パーセントあるだろうと米国などの金融機関のシンクタンクが指摘しています。

 すると、この不良債権をどう誤魔化すかということは、日本と同様に債権買取会社を作って、そこに移管させる、帳簿上そういう操作をやっているんですね。

 また中国はさかんに赤字国債を出しています。

 赤字国債と不良債権と全部合わせると、今のところGDPの140パーセントぐらいになっているはずです。

 中国は大掛かりな詐欺を平気でやります。中国銀行と中国建設銀行を香港とニューヨークと、もうひとつどこかで上場してね、それで1千億ドルそこで集めて穴埋めをしようとした。そうしたところ、事前審査でニューヨークはこれはちょっと受付けられない、ということで、香港あたりに、上場を移行すると言われております。

 赤字を補填する為に、外貨準備高から一昨年450億ドル、追加で700億ドル外貨準備から入れる、これまた不思議な操作をやろうとしております。不良債権の爆発というのは、そのうちに成長率が止まって、外国からの投資が半減するようなことがあった場合には表面化するでしょう。

 現実に台湾の中国への投資はことし第一四半期に48パーセント激減しております。台湾に対する「反国家分裂法」の制定が原因です。

 ですからこれは、日本も進出を考えているところは遅らせたり、実際にお金を振り込むのを1ヶ月、2ヶ月遅らせて様子をみるというようなことになると、もっと表面化してくる。銀行の不良債権がすぐ出るか、或は今バブルのピークを作っている北京や上海の不動産に出るか、その辺のところはちょっと読みにくいところではあります。

 あれだけ愛国を言っている連中の、汚職と腐敗が全く絶えないという問題があります。非常に深刻な問題です。

 党の最高幹部はどれだけの汚職をやってもつかまりませんけれども、相当の幹部がつかまっている。

 たとえば中国銀行の前の頭取、それから今年の3月だったとおもいますけれども中国建設銀行の頭取が逮捕、なぜこの人たちが逮捕されるのかというと、みんな朱容基派なんですね。上海閥はそうやって、どんどんどんどん胡錦濤は影響力を削いでいく。みせしめのために逮捕したというような意味もあるかと思います。

 こういう社会的経済現象のみならず、基礎的な問題で環境汚染と水不足が深刻で、特に水に至っては四百数十の都市で飲料水がもはや飲めない、という検査結果が出ています。

 辛うじて北京、天津あたりの水は飲めるけれども、ミネラルウォーターを家庭では使いなさいという通達が出ている。

 黄河の下流流域では汚染された水を飲もうにも、水が来ていないんですね。断水しておりますから、そうすると水の汚染と水不足により、とくに人間は水がないと生きていけませんから、過去十年間の改革開放のなかで、中国は農村から都市部に1億4千万人が移動したわけですが、今度は水不足で新たに就職ではなくて、水不足が原因で長江方面に、向う5年か10年の間に1億数千万の民族移動が起る可能性があるのではないか。

 それを一生懸命対策を講じるには、長江の水を黄河までひっぱって、という非常に乱暴なプロジェクトをやっている。

 三本の運河を引く。隋の煬帝でもこういうことは出来なかったんですが、工事は2年前から始まっています。総予算680億ドル、しかし、あと20年くらいかかりますから華北の水不足に間に合うかどうか。

 江沢民派と胡錦濤派のせめぎあいですが、胡錦濤さんはどうもまだ三権を掌握していない。軍が特にそうです。軍はまだ江沢民が任命した高級軍人が、あの人が軍事委員会の主席を勤めたのは10年くらいですけれど、その間に69名の上将・大将を任命しております。その中で引退した人が20人ぐらいです。胡錦濤になってから、任命した上将はまだ3人。そうしますと、軍の中のバランスはまだ胡錦濤派には完全になびいていない。

 今、胡錦濤がやっていることは、自派から、地方の省長クラス、副省長クラス、書記クラスをどんどん自分の派閥で固めて、いずれ折江省、安徽省にも及ぶでしょう。あと一年くらいの時間を要するでしょうが、胡派が殆どの地域のトップも抑える。

 今の段階で申し上げられることは、反日デモというのは、胡錦濤派達が、外交的に日本に強く出ることによって、国内のイメージを高めようとしてやらせ始めたけれども、途中から上海閥のいやがらせが入って、上海で暴動を起して、国際的イメージを損壊させるまでの事態に至ったのです。

 そうすると胡錦濤としては今、この状況は一刻も早く静めなければならない状況に追いこまれたことになるわけです。

 これまで共産党は自分達の悪政への抗議を回避する為に、反日を利用していたんですけれど、その反日が逆のブーメランとして、跳ね返ってきて、自分達に歯向かおうとしている。

 アメリカのマスコミの分析なんかを見ておりますと、そういう視点からの日本への同情論が多いようです。

 彼らがどれだけ、中国の実状を掴んでいるかはわかりませんけれど、そういうところが今の状況ではないかと思います。以上でアウトラインを終わります。