番匠幸一郎氏を囲んで (七)

○○:治安というのは、今度はオランダが引き上げると後はイギリスが担当するかもしれないという記事がありましたけれど、イラク全土を各国で分担して、治安任務を行っているのですか。

番匠:はい、大きく言うとですね、イラク全体を四つに分けています。図を見ていただければいいと思いますが、北の方と真ん中付近、バグダットを含めて真ん中付近をアメリカが持っております。バグダットの南から我々のいる所の北をポーランドが持っています。ここを中心とする多国籍師団。我々がいるムサンナ県から南部4県をイギリスが中心となった多国籍師団が持っております。イギリスが中心となっている多国籍師団は12カ国ぐらいで構成されております。その一部にオランダがいるんですが、治安任務だけではありません。いろんなことをやっております。

 たとえば我々が行った南部地域を申し上げますと、4つの県、バスラ県、ディカール県、メイサーン県、ムサンナ県、4つの県をイギリスが中心となった多国籍軍が持ってまして、今までは二つの県をイギリスの旅団が、一つをイタリア旅団、もう一つをオランダのこれもグループですけれどもバトルグループという大隊クラスの、連隊規模のが持っていて、この四つの隊でやっていたんです。そこを今度オランダが帰るものですから、この後にイギリスが入る。ですから、今度は四つのうちの三つをイギリスの部隊が担当して、一つをイタリアが持つという形になります。その一つの県の中に、オランダと一緒に我々自衛隊がいるという形でした。イタリアの所にはどこがいる、デンマークがいるとか、そんな感じで、混在して仕事をしているわけです。

○○:私現役時代中近東で仕事して、・・・・今度お酒と、豚肉を厳禁された、これは素晴らしいことですね、我々が考える以上に。・・・・お酒も私ども、・・・・・我々民間は・・・・・そういう点、完全に禁じられた。もちろん、それに対する隊員達の不平もあったでしょう。率直な感想だったのですが、国内に駐屯されている時は、ある程度アルコールも飲んでおられるでしょうが。

番匠:アルコールについてはですね、もう日本にいる時から、イラクに行ったら飲めないから、飲みだめて行こうと。

(大笑い)

 正直申し上げて、やはり、飲ませないでよかったと思います。人間、弱い動物ですから、多分、缶ビール一本と言っても、二本、三本、四本となるかもしれません。それから、基本的に24時間、緊張を緩められない生活ですので、寝ていてもいつ起こされるかわからない。ですから、その時にアルコールを飲んでいると、瞬間の判断力とか、そういうものがきっと緩んだんじゃないかと思うんですね。それから、隊員達もですね、アルコール飲まなくて良かったと、言ってました。もう、禁断症状で苦しむ、そんなものおりませんし、清涼飲料水とかそういうものはもちろんありますし、やはりそうですね、アルコールを飲んで、疲労を逆に増してしまうってことになったんではないかと。ということで、現地では別に酒を飲めないことによる、不平不満なかったと思います。

 それと、国内ではですね、職場で酒をがんがん飲むということはやっておりません。私がおりました、名寄駐屯地では、アルコールを飲む場所というのは、一箇所だけに決めておりまして、昔でいう、酒保ですかね。今では隊員クラブといいます。そこだけはアルコールを許可します。それ以外の場所では、禁酒にさせております。どうしても、何かのお祝いで今日はみんなでパーティーをしたいという場合には、体育館で大勢でやるときですが、私のところに許可を取りにくるんです。何時から何時までの間、ここでの飲酒を許可するという書類にはんこをついているんですね。それで飲ませるということにしています。

○○:休日はどういう生活をされるのですか?外出は出来るんでしょうが、外出しても余り行くところはないでしょうが、どういう過ごしかたを?

番匠:はい、基本的に休日はありません。三ヶ月間一日も休みは、この日は休みという日は作っておりませんでした。

○○:あぁ、休日ないんですか。そうですか。

番匠:それから、外出も職務以外の外出も一切させておりません。もう少し、環境が許せば、隊員たちを町のマーケットあたりに出してもいいかなと思ったりもしたんですが、我々がおりました去年の3月から5月いっぱいというのは、例の人質事件があったり、そんなこともあったもんですから、やはり隊員達を自由に外出させて、町をぶらぶらさせるにはちょっと厳しいかなと。

西尾:別の隊との連絡のために出かけるというのは?

番匠:ですから、宿営地を出ることはしょっちゅうです。

番匠幸一郎氏を囲んで (六)

○○:さきほどの世論調査ですね。84%が自衛隊駐留賛成、残り16%が反対、16%というのは、どうなんでしょうね。それから、自衛隊はですね、人道復興支援という任務で行かれたんですけど、他の国の軍隊は一体どういう使命を持って・・・・やはり、人道復興支援というようなことをやっているんでしょうか。そうだとすると、イラクの復興に一番役に立つのは、日本で、その次はアメリカで、その次はイギリスでしたかね。

番匠:フランス、イギリスの順です。

○○:フランス、イギリスでしたか、イギリスは低いですね。イギリスが低いというのは、元々イラクとイギリスは密接な関係が昔からあったんですけれど、ちょっと意外な感じがします。あとは相当な部隊を送っているのが、ポーランドとか、ウクライナだとかですね、韓国も3000人送っていますが、そういう国に対する評価ってどうなんでしょう。その辺がよくわからないのですが・・・。

西尾:イギリスが低いのはわかるんじゃないですか。

○○:わかりますか?

西尾:もともと不信感があって、ひどいことをされたっていう記憶。

○○:そういうことなんですかね。

西尾:でも、韓国なんか上位に出てこないのは不思議ですね。

番匠:まず、16%といいますか、賛成しないこれらの人たちは何かというと、問いかけの仕方もあるかもしれませんが、やはり彼らは決して満足はしないですね。話をしていても、今やってくれていることは有り難う。でも、まだやってほしい・・・と。そういうことがありますし、やはり我々の能力には限りがあるんですね。我々が行った時に、実は唖然としたことがありまして、日本政府が拠出を約束した10億ドルが全部サマワに来ていると思っている人たちがいるんです。あれ結構有名な話になりまして、10億ドルもサマワに入るぞ、そうすると、東京ができる―と。

(大笑い)

 ハイウェイや大きな工場ができて、トヨタが来るのかと。発電所が出来て(笑い)それで、自衛隊が先遣隊で来たんだろうと。いやぁこれは素晴らしい。サマワは儲けたと言うわけですよ。我々がミッションを戴いているのは、水作りですね、医療支援をして、ま、ささやかに道路や学校の補修をする。そこに大きなギャップがありまして、私たちがやったのは、部族のところをいろいろ廻って、貴方達は誤解している、我々はこういう能力なんだからということを言って、彼らの誤解に基づく高い期待をいかに適正値に戻すか、降ろしていくかということです。

 もちろん我々行った当初は人間も揃っておりませんし、装備も届かないので、十分な活動ができません。水の支援も、給水セットというのを合計7個持っていったんですが、は最初は三機から始めました。一日何十トンというオーダーで始めますので、なかなか量も、数も少ない。それをどうやったら早くあげていくかということ。こう下げて、こうあげてこの、バランスをどう取るかということに随分エネルギーを使った。そういう意味ではこの高い期待を持っている人たちから見れば、今の自衛隊がやってくれていることは、期待はずれだとか、なかなか思ったとおりいかないという声があるのは、まちがいないと思います。

○○:でも、早く帰れという、一部にある滞在延長に反対というのはどういう意味なんでしょうかね。

番匠:そこは、例えばサドル派なんかはみんな言っておりますけれども、やはり外国の軍隊、外国が来ているということに対する気持ちがあるのかもしれません。

西尾:でも16%は低いほうですよね。

番匠:8割ぐらい、あるいはそれ以上がということは、ほとんどの人たちが日本を歓迎してくれているということだろうと思います。それと、他の部隊は何をしているかということですが、我々が居るときには、38カ国、我々をいれて38カ国でした。今は若干の後退があって32.3だと思いまけれども、国によってそれぞれです。大きなところでは、もちろん一番大きいのはアメリカで、これは15万人入っています。それからイギリスが約1万、あとポーランドだとか、ポーランドも8000人、一万弱くらい、ウクライナ○○○、韓国がアルビルというところに3000人くらい入れています。これが大口で、日本も結構多いほうなんですね。もう600人というと、クェートの航空自衛隊の200人を加えると800人の規模ですから、結構イラク全体では、ベスト10に入っております。

 それぞれの国が、それぞれのやり方をしていまして、一番多いのは治安任務です。ただ我々のように人道復興支援だけというのもあります。たとえば、タイとかは医療支援をやっておりましたし、当初我々が行った頃には韓国っていうのは医療支援と施設支援というのをやっておりました。今はアルビルという北の方面で治安のほうも受け持っていると思いますが。必ずしも、みんながみんな治安任務をやっているわけではありません。それからもう一つは後方支援というのをやっております。多国籍部隊に対するですね、ウクライナとか、小さな国エストニアだったでしょうか、バルト三国の小さな国も来ているので、あれは何をしているかといいますと、米軍基地の中で、後方支援の仕事をしているところもあります。

西尾:けれど、韓国などが評価されないのはなぜですか?

番匠:あれはですね、あの世論調査自体が去年の秋から今年の正月にかけてやっておりまして、北の方のクルドの辺りまでちゃんと行っているかどうかですね。アルビンとかにということもあるでしょう。多分、あの調査はバグダットでやっているのだろうと思います。ですから、38カ国を全部皆さんが承知しているかどうかというと、そうでもないと思います。(あぁと納得の声)日本というのは非常に有名ですから、そういう数字が出ているのかもしれません。

西尾:いやな情報が入ってこないから、ますます期待されるという。

番匠:我々は飴だけで、鞭がありませんから。
(笑い)
 やはり、アメリカとかイギリスとかを見ていて、非常に気の毒だなという感じがしました。

西尾:そうですよねぇ

番匠:犯罪者に対しての対応ってのは、厳しいものがありますし、我々は今回人道復興支援という飴の役目ですので、あの数字を見て、手放しでよろこぶっていうわけには行かない。
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講演 「これでよいのか日本の弱腰外交
――正しい現代史の考え方――」

平成17年3月13日(日)
午後3時30分より90分

会 場:横浜市中区「関内ホール」
   JR関内駅北口下車 徒歩5分
     TEL 045(662)1221
参加費:¥1000
主 催 :教科書を良くする神奈川県民の会
連絡先:大西裕氏 TEL045(575)2603

新刊西尾幹二責任編集『新・地球日本史』1 
産経新聞社刊、発売扶桑社。
  ¥1800――2月28日店頭発売

 
新・地球日本史―明治中期から第二次大戦まで (1)

新刊 「人生の深淵について」
洋泉社刊 ¥1500
3月7日店頭販売
内容目次は次の通りです。

怒りについて
虚栄について
孤独について
退屈について
羞恥について
嘘について
死について
宿命について
教養について
苦悩について
権力欲について

著者覚書
解説 小浜逸郎 

番匠幸一郎氏を囲んで (五)

○○:独自な情報網というのはあるのですか?自衛隊独自の。

番匠:えぇ、まぁ詳細はお許しいただきたいんですけれど、我々自身でもいろんなことを・・・卑近な例で言えば、我々が使う現地の人たちがたくさんおります。通訳もおりますし、現地雇用の警備を補助してもらう人たちとか、いろんな人がおりますけれど、そういう人たちから聞く話はやはり有益なんですね。例えばですね、最初のころ、ハッと思ったのは、銃声がしょっちゅう聞こえるんです。毎日のように。バリバリと。最初の頃は、そのつど、ハッとこう、緊張していたんですけれども、だんだん教えてくれるんですね。今日はどこどこの村で葬式をやるので、何時ぐらいから銃を撃つから、と教えてくれるんです。

西尾:ほぉ~、それは空砲を撃つんですね。

番匠:空砲じゃありません、彼らは。実弾を使うんです。

西尾:でも、空へ撃つわけですね。

番匠:まぁ、空へ撃つこともあるでしょうし、どこへ撃つかわからないこともあるんです。
でも大体ですね、セレブレーションファイアーっていうのは、空へ撃ちます。それに曳光弾が入っているときは夜に撃ち、そのときは、ピンピンと何発かに一発くらいは見えるんです。彼らは冠婚葬祭には銃を撃ちます。

西尾:嫌だねえ。
(笑い)

番匠:そういうのは、大体わかっています。それと、魚とりで、手榴弾使ったりするんですね。突然、ドッーと音がして、ドドーンと爆発音がして、榴弾とか、砲弾とかの破裂音というのは、一種の雰囲気がありますので。と、あれは今日は魚採っているんじゃないかと。

西尾他:(笑い)いやぁ~

番匠:そういう、なんて言うんでしょうか、あまり緊張しなくていい銃声と、あとそういうものの網にひっかからない銃声があるわけですね。これは、だんだん分ってきたのは、そのセレブレーションファイヤーの類とか、あと、定期的に何時頃に撃つ銃ってのは、どこかの警備の交換の時に、武器のチェックのために○○ですとか、そういうもの。あと銃声とか、砲弾の音のあれで、訓練のやつとか、不発弾処理をしている音とか、そういうことで、だんだん消していって、それにひっかからないものは、非常にやはり怪しい、というようなことを察知するようになりました。ですから、やはりデーターの蓄積。

西尾:自衛隊も音を出すことはあるんですか?

番匠:勿論です。我々も射撃訓練をしておりますし、さっきの映像の中でですね、ピシピシっと、音が入っておりましたでしょ。あれは実はサマワなんです。これをお伝えしますが、私は隊員達にですね、全部持ち帰るなといいました。標的を。自衛隊は結構上手なんですよ。射撃訓練が終ったら標的がぼろぼろになるんです。このぐらいの標的が。それをわざわざ置いてくるんです。

(大笑い)

番匠:見ていますから。薬莢拾いにくるんです。子供達とか。これまた自衛隊はですね、100パーセント全部というほどじゃありませんが、薬莢撃ったやつをちゃんと拾って帰るんです。彼らは集まらないわけですけど、何かパーッとやってくるんです。薬莢を拾おうと思って。○○○○遠くで見ているわけですから。射撃を、自衛隊がやるやつを。真ん中にばさばさ入ってくるんです、それを見せると。自衛隊結構撃つし、当るぞと。と思わせようという・・・・。

西尾:いいことですね。

○○:情報というのはやはりアメリカとか、イギリスとか、オランダとかとの関連で、○○ですか?

番匠:そりゃもう、ありとあらゆる所からいただくし、我々自身も 集めるし。

○○:分析して。

番匠:そうですね。

3月の講演と新刊

講演 「これでよいのか日本の弱腰外交
――正しい現代史の考え方――」

平成17年3月13日(日)
午後3時30分より90分

会 場:横浜市中区「関内ホール」
   JR関内駅北口下車 徒歩5分
     TEL 045(662)1221
参加費:¥1000
主 催 :教科書を良くする神奈川県民の会
連絡先:大西裕氏 TEL045(575)2603

新刊 「人生の深淵について」
洋泉社刊 ¥1500
3月7日店頭販売
内容目次は次の通りです。

怒りについて
虚栄について
孤独について
退屈について
羞恥について
嘘について
死について
宿命について
教養について
苦悩について
権力欲について

著者覚書
解説 小浜逸郎 

番匠幸一郎氏を囲んで (四)

木下:それに関連することですが、今まで迫撃弾が打ち込まれたと聞いていますが、怪我をなさった・・・・・・・宿営地から出て、事件が起こったということもありますでしょうか。そういう状況下で番匠隊長以下皆さんがですね、かっちりとやってこられたということが一番で意義が大きかったのではないかと思っておりますが、それと同時に、県知事さんとかですね、地元の方と非常に友好関係を築くという努力をなさいましたよね。そのことがやはり、プラスになっているのではないかと思われます。・・・・・・

番匠:部隊の隊員たちを無事に連れて帰るというのが、私の大事な任務でしたし、向こうにもちろん、戦闘行動に行っているわけではありませんので、引き金を引かないに越したことはないというのは当然です。私は直接間接、いつも二つのことを考えておりました。一つは直接的に我々自身が、隙を見せないで、狙われないようにするということです。結構ですね、狙われそうな雰囲気というのを感じることはあるんですね。我々にというのではなくて、隙を見せている所というのはやられるんですね。同じ軍隊、或いは自衛隊のような部隊でも、狙われる部隊があるんです。それはきっと隙を見せているだろうと。

 それから○○○中をばんばん、通っているわけですが、襲われるところは警備が薄いところがやられるんです。それは全員がテロリストじゃなくて、強盗の類がいっぱいおりますから、そうしたら、狙いやすい所というのは、狙ってくるわけですね。だから、我々は狙ってきたら撃つぞと。だから私、隊員たちに言っていたのは、いつでも撃てと。(笑い)必要だと思われるときは引き金を躊躇なく引けと言ったのは、やはりそれで躊躇してしまったら、自衛隊は撃たない、自衛隊は武器を使わないと思われたとたんに、やられるわけです。そこはですね、自分達自身、私は隊員には、イラク中で最もハードターゲットになれと言っていました。やられない存在。

 先ほどのSU作戦もですね、左手で○○やっていました。右手は離すなと。右手は引き金に絶対にかけておいて、離すなと。それから、我々は外でペットボトルを飲まないです。ペットボトルを飲むということは、目が離れるんですね。だからキャメルバックという背中に背負う水筒、リュックサックみたいなものを持っていまして、ここにこういう口があってですね、前を向きながら口にピッといれるんです。そうして水を飲む。それくらい引き金を持って、警戒心を捨てないというようなこととか。引き金を我々、ロゥ・レディという下向きの銃の向け方をしています。その時に、見ていると、もう見るだけで安全装置をつけているかつけていないか、弾倉をもちろんいれていないとこれなんか絶対、やられますね。ちゃんと弾倉入れている。それから、手をこうやって引き金に添えている。武器の向きと、目の位置は必ずこうで、こんなことをやっている部隊だと隙がでている。そういう、どこからも隙を見せないハードターゲットたれということが、一つであります。これは宿営地の○○も含めてです。

 もう一つ、間接的に我々がやはり、友好○○に置くということですね。自分達の周りが敵意の海だったら、非常に危険が高まりますけれども、先ほども学校訪問だとか、鯉昇りだとかロブ族との付き合いだとかいいましたが、これはやはり、自分達の周りを味方にしていくということが、非常に安全上大事だということです。

 ですから、直接アプローチと、間接アプローチと言うんでしょうか、そういう両方をやりながらですね、安全というものには、格段の配慮をしていると思います。

西尾:でも、にも関わらず、テロという奴は、だからやるという、つまり、地域と親和関係が高い、それを壊してやるという、逆のものすごい論旨、考えられない論理を持っていますよね。そういうことでの危機感、手に負えないテロ、テロは合理的な根拠で動かないで、最もイラク国民に愛されている日本軍だから、だからやってやろう式の発想ですね。それに恐怖は感じなかったですか。

 番匠:それはおっしゃる通りです。大別してですね、どういう脅威が我々にあるのかなと。大体五つくらいかなといつも思っていました。一つはアルカイダ系のテロリストですね。これはまさに、自爆テロで、恐怖感というのを超越してですね、来るという。もう一つはこれは特に北の方で、バチバチやっていますけれど、旧バース党、フセイン残党と呼ばれる人たち。これと関連しますけれど、イスラム過激派と呼ばれる人達。それからシーア派の中で暴れていたのが、サドル派と呼ばれる人達。あとですね、強盗の類です。
(笑い声)

 犯罪者集団、そうなんです、我々のいる所もですね、もう武器の密売だとか、麻薬密売だとか、もともと犯罪者が治安機関の能力が落ちたものですから、わっと、出てしまったんですね。バグダッドなんかもかなりそうらしいです。この連中が強盗の類から含めて、悪さをするんです。あと、先ほど申し上げた、上の四つからお金をもらって悪さをするということもあり得るわけです。ですから、いろんなことにアンテナを張りながら、如何なる脅威に対しても、隙がないように。そうすると今先生が、おっしゃるように、二番目から五番目までというのはある程度、雰囲気でわかるんですけど、アルカイダ系のテロリストは自分達の体に爆弾を巻きつけて来て、引き金ぼんとやる、自爆するような、或いは、ゲートに爆弾をいっぱい積んだ車を突っ込ましてどんとやるというようなことをやる。

 実際我々が入る直前に、シリアのイタリア軍の基地に自爆テロが来てですね、十何人亡くなりました。そういうこともあるもんですから、これは徹底して、まず情報収集をし、それから宿営地をそういうことに対して脆弱にしないようにして、ということを、色々考えております。でもこれ、100%防止するというのは、大変に難しいとは思います。

(注)○○はテープで聞き取れなかった言葉です。

※ロウ・レディ(安全)ポジション-ハイ・ロウ・スルー等の警戒待機ポジションのうち、最も視線をさえぎることが少ないと言われる(陸上自衛隊では一般的な呼び方ではないとのこと、防大出の方か、むしろサバイバルゲーマーなどが好んで用いる呼び方だそうです-アメリカの影響 らしい)。
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監修・福井
写真・陸上自衛隊第8師団

お知らせ

(1)西尾幹二責任編集『新・地球日本史』1
 ――明治中期から第二次世界大戦まで――産経新聞社刊、発売扶桑社。
  ¥1800――2月28日店頭発売

 第一巻「明治中期から第二次世界大戦まで」


新・地球日本史―明治中期から第二次大戦まで (1)

(2)「中国領土問題と女帝問題の見えざる敵」42枚
  『正論』4月号、短期集中連載「歴史と民族への責任」第二回

 論文の後半で私は初めて皇位継承問題について踏みこんだ発言をした。今まで誰も予想しなかった「敵」の所在を指摘し、首相諮問機関有識者会議の迂闊さと呑気さと無自覚ぶりを指弾した。『文藝春秋』3月号の皇室問題特集を読んでも、「敵」が何であるかを誰も見ようとしないし、見えていない。国民が皇室を守ろうとする意思を示し、今しっかり用意する機会をもたなければ、20-30年後に天皇制度はなし崩しになくなるだろう。私はそう書いた。大切な論文なので注意していただきたい。

番匠幸一郎氏を囲んで (三)

西尾:それでは質問をつづけさせていただきますが、一説では、射撃を受けた時には応戦できるけれども、遠い所から、なにか怪しげなものが、遠隔地から来そうだぞとわかっていても、そこへ出てって先に殲滅することは許されていないと聞いていますが、これは事実ですか。

番匠:まず、前者ですね、至近距離から射撃

西尾:射撃されたら、応戦できる?

番匠:されたらじゃなくて、されようとしても応戦できます。そこに現場性というのがありまして、狙おうとしている。正に同僚の身が、あるいは自分の身が、私たちが守ろうとしているものの安全に、危険を発生しようとしているのであれば、別に向こうが発射する前でも、撃つということは許されております。ただ、先ほども申しあげておりますけれども、迫撃砲のように、何キロか先の、

西尾:でも、わかっていると。何かがうようよしていると。

番匠:それはあり得ないですね。それは見えない。

西尾:いや、でも出掛けて行って、
(笑い声)
番匠:そうすると、現場になるんです。その場でということになります。

西尾:二キロ先で探知した場合。

番匠:二キロさき、これ我々が今居る所から、砂漠の中にいるとはいえ、いろんな施設もあったりして、

西尾:しかし、そこへイラクの人が通報してくる。

番匠:それは自分達が確認しないとだめでしょうね。自分達が。

西尾:確認して、あると。で、相手がもう撃とうとしていると分ったとして。

番匠:そこでですね、そうするとその任務は誰の仕事ですか。どこを狙ってやろうとしているか。

西尾:いや、こっちを狙っていると分った場合。
(笑い声)
それは私どもが一番、今の憲法上の問題として知りたい。だけれども僕は憲法違反にはならないと聞いている。防衛庁長官もならないと言っているわけですね、ミサイル基地を叩くかどうかという問題と同じです。

番匠:明らかにですね、自衛隊に向けて、そこに自衛官が通りかかって、で、弾を入れて撃とうとしているということであれば、そこを攻撃したとしても、許されるかもしれません。しかし、その場を見ていないで、誰かの通報によって、そこに行ってということであれば、そこに現場性というのがあるわけです。全くの見えないところから何キロか先からミサイルでバーンと撃つということはですね、やはり現場の私の判断としてはそこまではやれなかったと思います。

西尾:一度あって、二度目だってもやりませんか。
一度撃たれた、敵はどこにいるか分っている。そしたら、出て行って叩くということは?

番匠:それは出来ますね。

西尾:それはできますね。それも出来ないんだという、話があって、なんちゅうことだと思ったんですが、それは大丈夫?

番匠:それは、明確であればですね。

西尾:それから、応戦中にイラクの労働者を撃ってしまったとする。これは障害致死になると?つまり、国家が責任を取らないで、自衛官の責任になると?

番匠:まぁ、業務上過失の場合にはですね、これは国外規定はないわけです。ないというか、要するに国外におけるそれについては、犯罪というかですね、事件性というのは発生しませんので、法的にはですね、国外におけるそれは罪に問われないということです。

西尾:でしょうね。応戦中に弾が当ってしまった場合にですよ。労働者に。

番匠:ただ、実際にですね、全く無実のひとをやってしまった場合には、そこはきちっと調べることになると思います。ただ、意図が

西尾:意図がもちろん、なくて、応戦中に。

番匠:はい、それは隊員に罪を問うということは、あり得ないと思います。

西尾:そういう常識はありますね、大丈夫ですね。
そういう点でも手足が縛られているという話があってね、それにも僕は憤慨していたんだけれど。

番匠:基本的には、皆さん大変心配してくださるんですけれど、私は隊員には何て言ったかというと、撃てって言っていました。

西尾(笑い)

番匠:ええ、そうです。強盗、意図的殺人、これは守れない。そうでない隊員は勿論守る。

西尾:立派です、それは。

番匠:私、こういう風に言っていました。僕がその場にいれば、俺が一番最初に引き金を引くと。心配するなと。俺が一番に引くと。私は実際そう思っていました。毎日宿営地を出るときはですね、弾をこめて、何かあったときは一番最初に、俺が引き金を引くと。当然いつも自分が一番先に現場にいるわけではありません。たくさんの複数の場所があるのです。そうすると、その場所での最高指揮官というか、その場所での責任者がまず最初に引き金を引けと。どんどん行くと最後には一人になる、その場にお前しかいなければ、お前の判断で引いていいと。絶対に罪に問わないから。職務において、或いは自分の判断で、殺人とか、強盗とかそういうことではなくて、引き金を引いた場合には、それは隊員には罪を負わせるということはないから心配するな。というふうに言っておりました。

西尾:第二隊、第三隊にそれは全部引き継がれたのですか?

番匠:全部です。

西尾:それを聞いて安心しました。