お知らせ
★つくる会のホームページでは、文部科学省の許可を受けて、教科書採択の透明化の一環として教科書の一部を公開しています。(約100ページ)
なお、市販本については、現在扶桑社が諸手続きをしているところであり、時期については未定です。
★《テレビ出演》
TVタックル「靖国問題を徹底討論する」(仮題)
7月11日(月)21時~22時テレビ朝日
★《講演》
「これでよいのか!日本の姿勢」
7月9日(土)午後2時~4時30分
鎌倉市 鶴岡八幡宮境内 直会殿
(JR鎌倉駅下車 徒歩10分、Tel 0467-22-0315)
参加費: ¥1000
主 催: 教育を考える湘南地区連合会・鎌倉市の学校教育を考える会
教科書を良くする神奈川県民の会
代表連絡先: Tel 0467-43-2895(木上)
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長谷川真美
今話題になっている教科書問題とは、科目ごとにいくつもある教科書会社の15社の中に、中学校の歴史・公民の教科書としてたった1社が参入したことに対する大騒ぎをさしている。
4年前の教科書採択で、私はその決定権限が法律的にあるとされる教育委員であった。自分で調査し、歴史教科書では扶桑社を推薦する結論を提示したが、選定委員会が答申したものを覆すことはできなかった。その時の経緯については『正論』(2005・5月号)に「今だから明かす、私が教育委員を辞めさせられた理由」で詳しく書いた。あの時の無念をはらすためにも、今年こそは常識的な教科書が日本の中学生の手に渡ることを願っている。この4年の間に、教科書会社は常識を取り戻してきたのだろうか。
6月中頃から、教科書展示が日本全国で行われた。私の住んでいる市では、7月1日まで展示していると広報に載っていた。つくる会に反対している人のブログでは、扶桑社の教科書は恐ろしいと、根拠のない印象操作で、ありもしない恐怖を煽りたてている。私は真偽を確かめるためにもと、会場に出かけて行った。
市役所の6階、602会議室が展示場だ。8畳位の大きさの部屋の真ん中に大きなテーブルがあり机の対角線に1m50cmくらい、本がズラッと立てて並べてあった。その他には「本市の使用教科書一覧」「教科別教科用図書採択対象発行者一覧(平成18年~21年度使用)」と裏表に書いてある紙と、アンケート用紙が置いてあった。
30代くらいの係りの女性――市が雇ったアルバイトだそうである――が一人、静かに机について何かをしていた。一日目は最初から最後まで、他の誰も入ってこなかったので、私と彼女の二人だけ。二日目は60代の男性が入って来た。教育委員会に県の選定資料について、コピーしていいかどうかを聞いてくると言って、出て行ったきり、帰ってこなかったので、両日とも、開いたドアの向こうを市役所の人が通りすぎる気配のほかは、本をめくる音だけが聞えていた。
今回は中学校の教科書なので学年別も分けて数えると134冊ある。国語にも家庭科にも音楽にも、そして英語にも問題があることが言われているが、これら全部に目を通すわけにはいかない。私は歴史教科書の中で、自分が住んでいる市が採択しており、日本全体のシェアの半分以上を取っている東京書籍を調べることにした。
幸い、三浦朱門氏編著の「全『歴史教科書』を徹底検証する」や、東京都教育委員会の資料、広島県の選定資料(教育委員会から借りてきた)他、多くの調査資料が手元にあったので、実物をこの目で対比しながら、その指摘している問題点の真偽を確かめることから始めようと思った。その中でもまた、私は歴史上の人物に的を絞ることにした。
私自身は高校の時には世界史を選択したので、実は日本史は余り詳しいわけではない。そんな私でも知っている人物、私程度の一般的な人間が知っている人物に注目してみればいいのではないかと思った。他の教科書では大体取り上げられているのに、東京書籍には一字も取り上げられていない人物で、特に気になった人物をピックアップしてみたのが以下である。
明智光秀、新井白石、石田光成、柿本人麻呂、行基、勝海舟、小村寿太郎、、昭和天皇、高杉晋作、東郷平八郎、北条時宗、明治天皇、野口英世、吉田松陰
小学校の学習指導要領で、必ず学習するようにと指定されている人物も7人いる。明智光秀は、東京書籍以外には全部掲載されている。吉田松陰は、他の教科書会社は一社を除いて全部扱っているが、東京書籍は取り上げていない。どうやって明治維新を説明するのかと思って、その時代のページをめくると、「安政の大獄」が載っていない。索引にもない。小学生では勉強しなくても、中学校では勉強すべき人物達ではないか。
柳宗悦という人は、朝鮮半島の陶磁器を見直し、それらを作った半島の人々を敬愛した人である、と写真入りで半ページ割いて書いてあった。石井十次という人は他の教科書には全くでてこないが、これも肖像画と関連写真を使い丁寧に説明してある。私は展示場で教科書を読むまで、これらの人物が何をした人か知らなかった。有名な人を省き、無名の人を載せる、このバランスの喪失は近隣諸国への配慮から来ているのだろうか。
正直いって、本当にがっかりした。従軍慰安婦という言葉は消えたが、それ以外は以前とほとんど変わっていない。
中学校の歴史の勉強で、その後一生歴史を勉強しない人はたくさんいるはずだ。最小限度の日本の歴史常識のはずなのに、肝心の人物達を教科書に載せないのは犯罪的だとさえ思う。教科書会社最大手の東京書籍が今までと同じように採択されるとなると、日本の半数以上の中学生に歴史常識を養う機会が奪われることにもなる。
私は
「現在話題になっている歴史教科書を調べてみました。本市が今まで採用している会社の教科書には、明智光秀、新井白石、石田光成、柿本人麻呂、勝海舟、昭和天皇、高杉晋作、東郷平八郎、明治天皇、吉田松陰が載っていません。歴史常識を教えることの出来ない、この会社の教科書の採択には反対します。」
とアンケートに書いて帰った。どんなに図版が美しくても、どんなに課題学習の提示が豊富でも、歴史常識を教えることが出来なくては、歴史教科書とはいえないのではないか。