「人権擁護法」という狂気の法案

 このところにわかに騒然としてきた「人権擁護法」の法文を私は一週間ほど前から読んで、人からも示唆を受け、考える処あって反対運動に起ち上ることにした。さし当り私にできることは産経のコラム「正論」に書くことと考え、以下の文章を11日付でようやく公表した。

 この文章は8日朝に編集部に送り、11日に掲載されるという、このコラムとしては例のないスピードであった。しかし10日朝、自民党法務委員会の会議には間に合わなかった。

 幸い自民党法務委員会は心ある議員の発言相次ぎ、法案審議はいったん延期され、11日金曜日にまた開かれるそうである。予断を許さない。私の反対意見が関係議員の目に触れ、法案の国会上程阻止に少しでも役立ってくれることを祈っている。

 この後の反対運動のプログラムも一応は考えている。名案があったらブログに書きこんでほしい。

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 「人権擁護法」の国会提出を許すな

 ――自由社会の常識覆す異常な法案――
 
 《《《定義のない「人権侵害」》》》
 
 国会に上程が予定されている「人権擁護法」が今の法案のままに成立したら、次のような事態が発生するであろう。

 核を背景にした北朝鮮の横暴が日増しに増大しながら、政府が経済制裁ひとつできない現状がずっと続いたとする。業を煮やした拉致被害者の家族の一人が政府と北朝鮮を非難する声明を出した。すると今までと違って、北朝鮮系の人たちが手をつないで輪になり、「不当な差別だ」「人権侵害は許せない」と口々に叫んだとする。

 直ちに「人権擁護法」第五条に基づく人権委員会は調査を開始する。第四十四条によってその拉致被害者家族の出頭を求め、自宅に立ち入り検査をして文書その他の物件を押収し、彼の今後の政治発言を禁じるであろう。第二十二条によって委嘱された、人権委員会は北朝鮮系の人で占められている場合がある。

 韓国政府の反日法は次第に過激になり、従軍慰安婦への補償をめぐる要求が再び日本の新聞やNHKを巻き込む一大キャンペーンとなったとする。代表的な与党政治家の一人がNHK幹部の来訪の折に公平で中立な放送をするようにと求めた。ある新聞がそれを「圧力だ」と書き立てた。

 すると今までと違って、在日韓国人が「不当な差別だ」「人権侵害は許せない」と一斉に叫び、マスコミが同調した。人権擁護法の第二条には何が「人権侵害」であるかの定義がなされていない。どのようにも拡張解釈ができる。

 《《《全国各地に巨大執行組織》》》
 
 かくて政治家が「公平で公正な放送をするように」といっただけで「圧力」になり、「人権侵害」に相当すると人権委員会に認定される。日本を代表するその政治家は出頭を求められ、令状なしで家を検査される。誇り高い彼は陳述を拒否し、立ち入り検査を拒むかもしれないが、人権擁護法第八十八条により彼は処罰され、政治生命を絶たれるであろう。人権委員会は在日韓国人で占められ、日本国籍の者がいない可能性もある。

 南京虐殺に疑問を持つある高名な学者が143枚の関連写真すべてを精密に吟味し検査し、ことごとく贋物(にせもの)であることを学問的に論証した。人権擁護法が成立するや否や、待ってましたとばかりに日中友好協会員や中国人留学生が「不当な差別だ」「人権侵害は許せない」の声明文を告知したとする。人権委員会は直ちに著者と出版社を立ち入り検査し、即日出版差し止めを命じるであろう。

 南京虐殺否定論はすでに一部のテレビにも登場し、複数の新聞、雑誌、とりわけミニコミ紙で論じられてきた。人権委員会は巨大規模の事務局、2万人の人権擁護委員を擁する執行組織を持つ。まるで戦前の特高警察のように全国をかぎ回る。

 人権擁護法第三条の二項は、南京事件否定論をほんのちょっとでも「助長」し、「誘発」する目的の情報の散布、「文書の頒布、提示」を禁じている。現代のゲシュタポたちは、得たりとばかりに全国隅々に赴き、中国に都合の悪いミニコミ紙を押収し、保守系のシンクタンクを弾圧し、「新しい歴史教科書をつくる会」の解散命令を出すであろう。その場合の人権委員の選考はあいまいで、左翼の各種の運動団体におそらく乗っ取られている。

 《《《国籍条項不在の不思議さ》》》
 
 私は冗談を言っているのではない。緊急事態の到来を訴えているのである。2年前にいったん廃案になった人権擁護法がにわかに再浮上した。3月15日に閣議決定、4月の国会で成立する運びと聞いて、法案を一読し、あまりのことに驚きあきれた。自民党政府は自分で自分の首を絞める法案の内容を、左翼人権派の法務官僚に任せて、深く考えることもなく、短時日で成立させようとしている。

 同法が2年前に廃案になったのは第四十二条の四項のメディア規制があったためで、今度はこれを凍結して、小泉内閣の了承を得たと聞くが、問題はメディア規制の条項だけではない。ご覧の通り全文が左翼ファシズムのバージョンである。もちろん、機軸を変えれば共産党、社民党弾圧にも使える。自由主義社会の自由の原則、憲法に違反する「人権」絶対主義の狂気の法案である。

 外国人が人権委員、人権擁護委員に就くことを許しているのが問題だ。他民族への侮蔑はいけないというが、侮蔑と批判の間の明確な区別は個人の良心の問題で、人権委員が介入すべき問題ではない。要するに自由社会の常識に反していて、異常の一語に尽きる法案である。予定される閣議決定の即時中断を要請する。(にしお かんじ)

産経新聞 2005.3.11

番匠幸一郎氏を囲んで (十一)

西尾:それはまだ・・・・、東中野先生、どうぞ。

東中野:余計なことを言ってすみません。現実の諸問題は現役の自衛官の方が考えていらっしゃると番匠大佐のことをうかがっているものですから、・・・・・・・・・質問させていただきたいのですが、愚問だということはわかっているのですが、最初に私が思いましたのは、大変失礼なことを申しますけれども、准将クラスの方を送るべきだったんじゃないかと思います。日本からですね、階級社会ですから。

西尾:准将って、昔の?

東中野:少将クラス、できれば中将ぐらいの方をドンと日本が送り込んで、本腰を入れてやるんだと、郡長という、600人のトップに中将というのはちょっとおかしいというのは、分っているわけですけど、そしてまた番匠さまが、大変な功績を残していらっしゃった方というのは分った上で申し上げているのですが、ですから愚問なんですけど、軍隊というのは、階級社会ですから、日本から第一陣として、それくらいの意気込みで陸幕は取り組むべきだったんじゃないかというふうに思ったんですが、その点はいかがでしょうか。

西尾:答えにくい質問じゃない?

(笑い)

番匠:できるだけ、高い階級の者がいれば、それだけ影響力というか力がありますけれど、同時に高い階級の者というか、高位の者というかは、それだけ役割とか責任を多く負うことになるわけですね。今バグダットには中将が二人おりますけれども、他はおりません。それから、南東部地域のイギリスというか、イギリスを中心とした多国籍団の師団長は少将なんですね。

東中野:1万人のイギリス軍が少将なんですか、あぁ。

西尾:そうか、そんなんじゃだめですよね。

番匠:そうです、少将です。そうしますと、自衛隊が600人で少将だと、イギリスと同じ役割を果たすということの、意志表示になります。

西尾:あぁ、考えているわけですね。

番匠:逆にですね、それは将軍を出すということは、たかが数百人でいいのかと。何千人の長でなければいけないのではないかと。そうすると、何の為に来ているのかということになるんです。

東中野:やはり600人で群長だから、どうしても大佐だと。

番匠:大佐か、中佐でいいわけですね。部隊のスケールで言えば。オランダは1000人で中佐を連れて来ていました。

東中野:1000人で中佐ですか。

番匠:我々はちょっとインフレ気味だったんです。

(大笑い)

西尾:話が逆だったですね。

番匠:アメリカは15万人で中将ですね。中将二人おりますけれど。

○○:私が聞いた範囲では、日本もね、本来だったら中佐クラスのつもりだったらしいんですけれども、この任務が非常に大変な任務だということで、番匠一佐を直々に出したという話を聞きましたけれどね。

吉野:よろしいですか?

西尾:どうぞどうぞ、吉野さん、元警視総監の方です。

吉野:質問ではなくて、感想だけちょっと。今日私も国民の一人として自衛隊のイラク派兵に大変強い関心持っておりました。まぁなんと言っても、今までは報道だけでして、今日は生のお話が大変参考になりましたし、また感銘を受けました。大変ご苦労さまでございました。国民の一人として感謝申し上げます。私も警察におりましたので、やや似たような組織でありますので、大変参考になりましたが、お話を伺っていて、よき警官と、よき装備と、よき訓練ですね、徹底して射撃の訓練をやられたという話はこれは、あまり報道なんかに出ないのですが、大事だとおもうのですよ。それから、たとえ話でライオンとロバとの話をされましたが、あれは非常に大きな示唆だと思うんですよ。思い返せば、一昔前に、機関銃を持っていっていいか銃をいくら持っていくかと、子供じみた議論がありまして、あの頃から比べれば隔世の感がありまして、西尾先生の日本の未来へのいろいろなご心配もあるでしょうが、私はこの国はこの国で、一歩ずつ、遅いけれども少しずつ前へ進んでいるんじゃないかと、いい方向へ進んでいるんじゃないかと・・・・

西尾:いやぁ、僕は絶望しているんですよ。

(大笑い)

吉野:そんなことはないです。いろいろ不満がおありじゃないかとお話もありまして、質問もありまして、私は本音で与えられた範囲内できちっとやっておられて、特に不満もない。そのまま受け止めたいと思います。仮に不満がありましても、軍人さんに言わせることじゃないと思うんですよ。

西尾:それはそうですよ。

吉野:我々、或いは世論、これがね、代わって言っていくべきで・・・

西尾:そうです、その通りです。

吉野:ということではないかと、生意気ですが思うのです。そういう感じがいたします。どうもありがとうございました。

西尾:おっしゃるとおりですねぇ。

○○:先ほど西尾さんがおっしゃった、自衛権の中で認めるかどうかですが、私は自衛権というものを認めればですね、当然・・・・

西尾:警護活動?

○○:警備、警護。

西尾:そこまで伸びていいと?

○○:伸びていいと。当然ですよ、自衛権としては。

西尾:それを、うずうずして、はっきり認めないで、また現地へ出て行くという。

○○:任務遂行のための武力行使を認めないというのが間違っている。

西尾:憲法違反じゃないんですよ。別に。

○○:ええ、そうですよ。それからちょっと質問ですが、自衛隊のですね、訳語が外国に対して、JSDFなんですか?それともジャパニーズ・アーミーですか。どっちを使っておられるんですか?

番匠:今回オフィシャルには、やはりJSDFですね。ただ、しゃべるときにはもう、ジャパンアーミーになりますね、はい。文書としては、アーミーということは我々は使いません。

○○:口頭ではアーミーをどんどん使うんですか?

番匠:ええ、アーミーじゃないと通じないもんですから。

○○:そうでしょうね。

番匠幸一郎氏を囲んで (十)

○○:確かにね、それはまさに、軍人らしいといえば、軍人らしいんですがね、だけど軍人らしいものの背後の、つまり政治的な判断とか、歴史的な判断とかいうものはやはり、政治家が本来なら考えなけりゃならないんでしょうけどね。しかし、一佐ということは、昔は大佐のクラスですね。大佐ぐらいのレベルの方が、そういう政治的な課題に発言権なり、実際に一番希少な体験をして来た人間なんだから、どういうふうにこの経験をね、これからの自衛隊に反映させるかというようなことは、多分お考えだろうとは思いますが。

西尾:多分、こういうご質問でしょう。少し私の付言が誇張になるかもしれませんが、政治に対する不満、政治体制の自衛隊の努力に対してこのままでいいのかと、次の課題として、自分達の経験を生かして、政治にかくあってほしいというようなことかと思います。そう理解しましたけど。

○○:そう、そのとおりです。

西尾:質問が面倒だったら、お答えになる必要はありません。お立場上ね。

○○:よろしいでしょうか?

西尾:今のことですか?ちょっと待ってください。今のこと、お答えになれないなら、しなくてもいいですから。

番匠:あのぉ、現場で武器使用の基準が不十分だから困ったんじゃないかとか、集団的自衛権の問題、或いは海外における、武力の行使というものが禁じられているが故に、現地における任務が非常に困ったんじゃないかとか言われましたけれど、実は本当に正直に申し上げて、現地ではそんなことを考えている暇もありませんでした。ないものをねだってもしょうがない。むしろ我々がいただいている武器使用基準の中で、それをどう100%ものにするのかと、100%理解をして最大に発揮するためにどうしたらいいかと。そのための訓練とか、或いは勉強といいますか、そういうやることが山ほどありまして、且つ、皆さんが思っておられるよりは実は結構柔軟性があるというか、幅は広いと私は解釈してます。ですから、そういう意味ではなんというか、ちょっとたてまえ的かもしれませんけれども、政治がやれと言われたことを、我々は淡々とやるという・・・・

西尾:実はですね、政治はですね、現状の法整備で、現状の自衛隊の体勢のままに支援行動から、さらに一歩進んで警備行動をせよというふうに進みかねない。アメリカからそう言われたからやらざるを得ないから、もっと危ない所へ行ってやれということを、これもまた自衛のうちなんて拡大解釈で、言わないとも限らないわけですよ。僕はそれをずーっととても危惧している。アメリカが更なる協力を求めてくると、そうした時に、現行体制のままで、今の自衛隊の状態のままで、もう一歩進んだことをやれという理不尽な要求を政治がしてくるという、まぁ、これは仮定の話ですけれど、いかがです。ないと思いますか?

○○:それはあるとおもうんです。ただ、今のイラク支援法の武器使用基準で例えば今までオランダがやっていたような、警備行動ですね、治安任務。

西尾:そう、やらざるを得ない。

○○:これを遂行できますか?

番匠:できません。

○○:どこが出来ないんですか?

番匠:警護任務がないんです。

○○:警護任務をつければ、今のままでもできるんですか?

番匠:つけていただければ、オランダの代わりということは出来ると思います。ただ、その警護任務というのが実は非常にむずかしくて、今憲法上の疑義があるということで、なかなかそれは、要するに任務遂行のための武器使用といわれているものですね。

西尾:警護任務というのは、町の警護もするわけですね。

番匠:町の警護というのは、自衛権ですから、これは問題ないと思います。

西尾:町ですよ、シティですよ。

番匠:あ、シティですね、

西尾:それをオランダがシティの警護してやっているわけですよね。それを今自衛隊がやらないといけない、それをやれと今の政治が好き勝手な拡大解釈で言ってくるんじゃないかと、それをうかがっています。

番匠:スーダンPKOのニュースがこの前出ておりましたけれども、あそこで同じような疑問を私たちは持っているのです。PKOがスーダンに限らず、PKO法というのは、平成3年に出来て、2001年に法改正されておりますけれど、本隊任務というのが、今まで凍結されていたんですね、法律が出来てから。2001年に本隊任務の凍結が解除されたんですけれど、その本隊の任務をよくみると、ある停戦監視地域の侵入の防止だとか、或いは鹵獲、あるいは遺棄された武器の監視、兵力の引き離しの為の監視とか、そういうことが書いてあるわけです。

西尾:ほぉ~そりゃぁもぉ

番匠:そうすると、かなりそのパトロールというか、その任務に近いわけです。ところがPKO法に書いてある武器使用基準という24条に書いてあるのは、いわゆる自然権的権利に基ずく、自己防護の為だけの武器使用というもので、非常にパッシブなもの。正当防衛、緊急避難の延長線上の武器使用権限であります。今までずっと言われてきたのは、凍結解除された任務と、それから武器使用権限というものが、マッチしてないんじゃないかという議論がこれは自民党の先生方からも出ているんですね。今回スーダンなりどこかのPKOで、この任務を、本隊任務をやるといったときに、それにふさわしい武器使用権限があるかというと、そこはなかなか難しい部分があります。

西尾:今申し上げたのはそのことです。

番匠:ですから、そこは、こちらのところをふさわしい武器使用権限というものにしていただくという手続きが、あればそこはやると。

参考:ヤフーニュース「他国軍隊になぜ警護頼る」サマワ自衛隊に豪記者質問

番匠幸一郎氏を囲んで (九)

西尾:はい。どうぞ、山口さん。

山口:イラクの対日観は、日露戦争で勝って、基本的に結構なものなんですが、さはさりながら、対米追随じゃないかと思われていないか。私はアジアや中近東のトルコにいたんですけれども、日露戦争の経験から日本に対する尊敬の念はあるんだけれども、しかし今日の日本というのは、アメリカの尻尾にくっついているという状態にあるから、向こうもあからさまには言わないんだけれども、向こうの大臣なんかに会うとですね、そういうニュアンスが出てくる。東南アジア国であるし、トルコも若干そういうところはあるんですが、先ほど世論調査で、我々に反対の16%の中には、アメリカの影響力の中で、日本がアメリカの尻馬に乗っているんじゃないかと、そういうような人もいるかなぁという感じがちょっとするんですが。実際に県知事さんなんかとお話になってですね、ほんとに諸手を挙げて、日露戦争に勝った立派な国だと思っているだけなのか、それともやはり、第二次大戦後の日本というのは、アメリカべったりになっているというようなニュアンスが言葉の端々に出てくるように感じられたかどうなのか、そこらへんをお願いします。

番匠:我々の居りましたサマーワにはアメリカのフットプリントは非常に小さいんですね。先ほどから、申し上げておりますように、イギリスを中心とした多国籍部隊なもんですから、物理的にアメリカの兵隊さんはほとんどいないんです。いるのはオランダが一番多い。それから自衛隊が多くて、イギリス辺りはしょっちゅう通る地域ですから。アメリカはコンボイで前を通過したりということはありますけど、そこで長期間宿営地を置いて勤務しているということがないもんですから、ことサマーワ、ムサンナ県辺りに関して言えば、自衛隊とアメリカ軍の関係が極めて緊密で対米追従だということを、皮膚感覚であまり感じておられなかったのかなと思います。

○○:小泉総理の対米協力でというようなのは、ニュースとしては・・・・

番匠:ま、多分全く意識していないとか、知らないわけではないかもしれませんが、実際に見ていて、我々とアメリカがそんなに近くて、アメリカのために我々がやっているとかそんなことを感じるということは、そんなに無かったんじゃないかなというふうには思います。ただ、まあ、ほんとに我々を諸手を挙げて、歓迎してくれているという部分と、正直申し上げれば、彼らもしたたかな、アラブの人たちですので、自衛隊をしっかり繋ぎとめて、日本をしっかり繋ぎとめて、自分達の地域の発展とか、自分達の利益のために、という気持ちは両方にあるんだろうなという感じがしましたですね。

○○:約一年弱かな、大過なく、大きな事故も無く、大変ご苦労されただろうということにまず感謝申し上げます。ひとつ国民の中にですね、あのサマーワで、何かのドラマが起こらないと、それが迫撃砲なのか、ロケット砲なのか何なのかわかりませんが、自衛隊法や、集団的自衛権その他の問題をクリアーしないと、やっぱりどうしようもないんだと、そういう事態が起こることを、言いにくいが、どっかで待っているという気持ちがまったくないわけではないんですね。

西尾:左翼が?

○○:いやいや、保守派の人間も。

西尾:いやぁ、そこまではないんではないですか。

○○:いや、つまりそういう、今の法体系や対処の仕方では十分な危機管理が不可能なレベルというのがあるはずだと、それは多分ありますよね。抽象論としては。だから、無事に終ったことは大変素晴らしいんだが、だからそれなら今の自衛隊法並びにその他の法整備をとりあえず、先延ばしにしてよろしいのか。例えば戦死者が出た場合に保障をどうするかというふうな問題がね、出てきますよね。公務員プラスどのくらいのアルファがつくのか、或いは昔の軍人恩給的なものをどう復活させるとか、しないのかとか、いろいろの課題が結局無事なるが故に露出しなかったのかなと、そういう感じを抱くところがちょっと複雑なんですよね。つまり複雑というと、自衛隊を少なくとも、常識的な国軍にしようと、そういう国作りをしなくてはいけないだろうと思っている人間から見ますとね、無事だからよかったが、このまま何もしないでよいのかなという感じもないわけではない。

西尾:国軍の一歩手前までは行ったんだけどね。

○○:そういう、例えば、番匠さんはどういう風に、受け止められますか?ここにいるのはみんな自衛隊というものをサポートしている保守派の人間だということを前提にして。

番匠:鶏が先か卵が先かというような感じが私はしておりまして、じゃぁ我々にとって、グローバルスタンダードにピシッと整備されて、法的な環境がきちっと整えられて、隊員の処遇もきちんとできた上で、それからでないと、やはり行ってはいけないのかというと、そういうことは未来永劫あり得ないのではないかと思うんですね。

○○:そうそう、なるほどね。

番匠:正直申し上げれば、今回我々が与えていただいた法律、特措法の中に書かれてある武器使用基準というものにふさわしい任務しか、我々は戴いていないわけです。先ほど申し上げた治安任務ということはないわけです。だから、治安任務ということになると、やはりもう一つ上がってきますね。だから人道復興支援、後方支援といった任務にあう、ぎりぎりのミッションであり、ぎりぎりの武器使用基準であり、ぎりぎりの解釈というものを我々は受けて現地に行っているということです。そういう意味では常に、あるべき論よりちょっと先のところを行きながらということは、感じておりました。

 じゃあ隊員たちはどうかというと、先ほどの戦死者ということですけれど、基本的に隊員たちは全員覚悟していたと思います。私も日本を出るときにですね、お別れをして行ったつもりでおります。幸い、全隊員が今まで無事に一人も怪我もすることなく帰ってきていますけど、それはたまたま運がよかっただけなのかもしれません。迫撃砲というのは、何回も落ちましたけれども、これはわざとはずしているというふうに私は思っていません。そんなに器用なことができるわけがない。ですから、一歩違えば、それはなんらかの損害があったのかもしれませんけれども、でも、現場の隊員たちはですね、それは当たり前だと思っていました。最初から。

 迫撃砲を撃たれたときの訓練をしてきましたし、そういうもんだと思っています。迫撃砲の訓練をやっている時に、迫撃砲が落ちた弾痕に入れと言っていました。迫撃砲が落ちてきた弾痕の中に突っ込めと、そうすると、二度とそこに落ちて来ないから、というぐらいのことをやりながら、やっておりました。あと、確率論ですが、相当確立は低いんです。命中する。そんなことを考えながらやっておりましたので、あまり最悪の事態が起こったときにどうだということは、あれなんですけれど、ただ、そうですね、答えにはなっていないかもしれませんけれども、隊員たちはお金のことがどうかとか、処遇のことがどうかとか、そういうことよりも、やはりこういう仕事を与えてもらったことの意義というか、やりがいというか、そういうことの為にベストを尽くしているような気がしますですね。

番匠幸一郎氏を囲んで (八)

講演 「これでよいのか日本の弱腰外交
――正しい現代史の考え方――」

平成17年3月13日(日)
午後3時30分より90分

会 場:横浜市中区「関内ホール」
   JR関内駅北口下車 徒歩5分
     TEL 045(662)1221
参加費:¥1000
主 催 :教科書を良くする神奈川県民の会
連絡先:大西裕氏 TEL045(575)2603

新刊西尾幹二責任編集『新・地球日本史』1 
産経新聞社刊、発売扶桑社。
  ¥1800――2月28日店頭発売

 
新・地球日本史―明治中期から第二次大戦まで (1)

新刊 「人生の深淵について」
洋泉社刊 ¥1500
3月7日店頭販売
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番匠幸一郎氏を囲んで (八)

・・・・・・・テープ交換のため、少し話題が飛ぶ・・・・・・・
番匠:18.9歳の隊員から始まり、一番元気ざかりの隊員ですから、私は女性の隊員を11名お預かりして、ちょっと、あのぉー、まぁ、大事なお嬢さんたちをお預かりしていて、心配したんですけれど、全く大丈夫でした。あの暑さと勤務の中でそういう気持ちに至らない感じがしましたですね。

○○:人道支援活動のお話で、サマーワの町が非常に荒れて、これはサダムフセイン時代にそういうふうになったんではないでしょうか。イラク戦争が起こってからひどくなったのではないんじゃないかと、私ずっと思っているのですが。

番匠:これは二つあると思います。一つは彼ら自身があまり清潔な人たちではない。見ていてびっくりしたことがあったんですけれども、道路に生ごみをバンと捨てて行くんですね。で、自分の家の中はきれいになるからいいんですけど。

(笑い)

 あと、バンと捨てていくと、普通だったらそれで道路の清掃とか、ごみの回収のシステムが動いていれば町はちゃんと維持されるんでしょうが、そういうシステムがないということで、もともとあまり環境の整備とか、そういうことに関心のある人達じゃないということがあるかもしれません。我々の宿営地の回りも、私はいいましたけど、ここはもともと産業廃棄物処理場じゃないかと。ごみだらけ、ごみのみならず、不発弾じゃなくて遺棄弾が結構あるんですね。弾を捨てているんです。私たちがおりましたところは、湾岸戦争の頃の陣地のあとがあった近くでして、多分フランスの空挺部隊が降りたところで、弾をそこらへんにほったらかして、逃げたんでしょう。ごろごろしている。

西尾:あぶない~

番匠:そういうの、いっぱいありました。とにかくそんな場所でした。

西尾:それを、まず片付けるんでしょ。

番匠:そうです、それと、もう一つはじゃあ何時頃から荒れていたのか、というとですけれど、先生のおっしゃるようにですね、今回のイラク戦争ではなくて、私はイラン・イラク戦争の後ぐらいからじゃないかなと思います。特に湾岸戦争の後に、シーア派が一斉蜂起してシーア派というか、スンニ派、或いはサダムフセインに対して反旗を翻して、逆にそれで失敗して、弾圧されるということがありましたね。その頃から、イラン・イラク戦争の頃からその兆候があって、湾岸戦争直後からそれがピークになったということで、これは1980年代の半ばぐらいからつい最近まで、ずっと弾圧されてきた場所なんじゃないかなと思います。ですから、学校にしても、その他のいわゆる社会インフラというものが、ほとんど放置されたままになっておりました。

西尾:あ、どうぞ他のかた、ご質問を。まだご発言のない方どうぞ。

田中:選挙はどうでした?やはりサマーワはシーア派ですか?

番匠:えぇ、もう圧倒的にシーア派ですね。サマーワの選挙は非常に清清といったと聞いております。

田中:もう一つ聞きたいのは、遺跡が多い、イラク全体がそういう地域ですけれども、それに対する保護というものは、どうなんですかね。この前見てますと、イラク人が略奪したり、完全にそのひどい・・・

西尾:めちゃくちゃ略奪でしたよね。

田中:これは僕は非常に重要なことだと思うんですね。これは前に『翼』にも書いたんですが、日本の自衛隊そのものが、いろんな文化の問題をね、施設というか、遺産というものを、どの程度保護しているものか・・・

西尾:サマーワの辺りには、ないんでしょ?

番匠:ありました。先ほど見ていただいたウルク遺跡というのは、サマーワのすぐ近くにあります。それからウル遺跡というのもありますけれど、これがナシリアのタリル空軍基地といって、我々が離発着で使う地域にあるんです。ですから、ビルガム史にでてくるウルとかウルクとかがほんとに目の前にあるわけです。多分小さなものはもっとたくさんあるんじゃないかと思います。ウルの遺跡あたりは、国内のかなりの大学が何十年も発掘調査をされていて、私も行く前にその資料をみながら行ったのです。もう今は管理施設も、放置されたままで、誰も管理していないのです。ウルがそうです。ウルクの方もそういう状況で、多分、盗掘にまかすままじゃないかと思います。

 ですから、彼ら自身もそれに問題意識を非常に持っていまして、ムサンナ県にも文化財保護を行う部署がありまして、そこと連携をしたら、保護の為の外柵を是非とも作ってほしいといわれ、これは我々の時に段取りを始めて、二次隊、三次隊で作ったものですけれど、十数キロの外柵を作りました。

田中:効果はあるんですか?

番匠:まぁ、全くないよりはいいでしょう。乗り越えたり、壊したりして入るのはしょうがないでしょうが、全く何もないよりは、そういうものがあればそこは保護されます。侵入を防げます。

西尾:そこを警備するものはいないのですか?

番匠:警備もやっております。我々じゃなくて、おそらくイラク側が自警をやっております。

西尾:現在までになさったことは、水道の供給、これはもう完成したわけですか。

番匠:三本柱は引き続きやっております。

西尾:水道、学校、道路。

番匠:水を自分達自身で作って配るということ、今度簡易水道の施設をODAで入れて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・途中、テープ途切れる・・・・・・・・・・・・・・・・・
これも隊員が行って自分達でブルドーザーを動かしたりということではなくて、できるだけたくさんの現地の人たちを雇用して、昨日現在で900人くらいいっていましたので、毎日1000人近い人たちを雇用して、ムサンナ県とかいろんな所でですね、道路工事とか、学校の補修とかやってもらって、それを定期的に点検しながら、完成したら向こう側に受け渡すと、そういういわゆる後方支援。あともう一つが医療支援で、これはサマーワ病院だけじゃなくて、何十箇所という診療所とか、保健所みたいなものがありますから、そういうところの、医療支援を含めてです。

西尾:それは自衛隊の医師団が出て行くということですか?

番匠:そうです。ドクター、ナース、それから薬剤。

西尾:これは600人の外ですね?

番匠:中です。

西尾:中ですか・・・。

番匠:衛生部隊というのが、中にあります。今申し上げたのは、全部中です。

西尾:あぁ、そうですか。で、薬などは日本から?

番匠:ええ、日本の自衛隊の予算やODAなどで買っていただいて、あと、クェートなんかでもけっこう薬があるそうで、そこらへんから買っています。私たちの医務官がやっていたのはですね、枕カバーとか、シーツとか買ってくれと言うんです。なんでだ?と言うと、あれはもう、とても洗濯してもだめだと、それで、我々が持っている予算の枠で、それを買ってきて配ったり、そんなことをやりました。

番匠幸一郎氏を囲んで (七)

○○:治安というのは、今度はオランダが引き上げると後はイギリスが担当するかもしれないという記事がありましたけれど、イラク全土を各国で分担して、治安任務を行っているのですか。

番匠:はい、大きく言うとですね、イラク全体を四つに分けています。図を見ていただければいいと思いますが、北の方と真ん中付近、バグダットを含めて真ん中付近をアメリカが持っております。バグダットの南から我々のいる所の北をポーランドが持っています。ここを中心とする多国籍師団。我々がいるムサンナ県から南部4県をイギリスが中心となった多国籍師団が持っております。イギリスが中心となっている多国籍師団は12カ国ぐらいで構成されております。その一部にオランダがいるんですが、治安任務だけではありません。いろんなことをやっております。

 たとえば我々が行った南部地域を申し上げますと、4つの県、バスラ県、ディカール県、メイサーン県、ムサンナ県、4つの県をイギリスが中心となった多国籍軍が持ってまして、今までは二つの県をイギリスの旅団が、一つをイタリア旅団、もう一つをオランダのこれもグループですけれどもバトルグループという大隊クラスの、連隊規模のが持っていて、この四つの隊でやっていたんです。そこを今度オランダが帰るものですから、この後にイギリスが入る。ですから、今度は四つのうちの三つをイギリスの部隊が担当して、一つをイタリアが持つという形になります。その一つの県の中に、オランダと一緒に我々自衛隊がいるという形でした。イタリアの所にはどこがいる、デンマークがいるとか、そんな感じで、混在して仕事をしているわけです。

○○:私現役時代中近東で仕事して、・・・・今度お酒と、豚肉を厳禁された、これは素晴らしいことですね、我々が考える以上に。・・・・お酒も私ども、・・・・・我々民間は・・・・・そういう点、完全に禁じられた。もちろん、それに対する隊員達の不平もあったでしょう。率直な感想だったのですが、国内に駐屯されている時は、ある程度アルコールも飲んでおられるでしょうが。

番匠:アルコールについてはですね、もう日本にいる時から、イラクに行ったら飲めないから、飲みだめて行こうと。

(大笑い)

 正直申し上げて、やはり、飲ませないでよかったと思います。人間、弱い動物ですから、多分、缶ビール一本と言っても、二本、三本、四本となるかもしれません。それから、基本的に24時間、緊張を緩められない生活ですので、寝ていてもいつ起こされるかわからない。ですから、その時にアルコールを飲んでいると、瞬間の判断力とか、そういうものがきっと緩んだんじゃないかと思うんですね。それから、隊員達もですね、アルコール飲まなくて良かったと、言ってました。もう、禁断症状で苦しむ、そんなものおりませんし、清涼飲料水とかそういうものはもちろんありますし、やはりそうですね、アルコールを飲んで、疲労を逆に増してしまうってことになったんではないかと。ということで、現地では別に酒を飲めないことによる、不平不満なかったと思います。

 それと、国内ではですね、職場で酒をがんがん飲むということはやっておりません。私がおりました、名寄駐屯地では、アルコールを飲む場所というのは、一箇所だけに決めておりまして、昔でいう、酒保ですかね。今では隊員クラブといいます。そこだけはアルコールを許可します。それ以外の場所では、禁酒にさせております。どうしても、何かのお祝いで今日はみんなでパーティーをしたいという場合には、体育館で大勢でやるときですが、私のところに許可を取りにくるんです。何時から何時までの間、ここでの飲酒を許可するという書類にはんこをついているんですね。それで飲ませるということにしています。

○○:休日はどういう生活をされるのですか?外出は出来るんでしょうが、外出しても余り行くところはないでしょうが、どういう過ごしかたを?

番匠:はい、基本的に休日はありません。三ヶ月間一日も休みは、この日は休みという日は作っておりませんでした。

○○:あぁ、休日ないんですか。そうですか。

番匠:それから、外出も職務以外の外出も一切させておりません。もう少し、環境が許せば、隊員たちを町のマーケットあたりに出してもいいかなと思ったりもしたんですが、我々がおりました去年の3月から5月いっぱいというのは、例の人質事件があったり、そんなこともあったもんですから、やはり隊員達を自由に外出させて、町をぶらぶらさせるにはちょっと厳しいかなと。

西尾:別の隊との連絡のために出かけるというのは?

番匠:ですから、宿営地を出ることはしょっちゅうです。

番匠幸一郎氏を囲んで (六)

○○:さきほどの世論調査ですね。84%が自衛隊駐留賛成、残り16%が反対、16%というのは、どうなんでしょうね。それから、自衛隊はですね、人道復興支援という任務で行かれたんですけど、他の国の軍隊は一体どういう使命を持って・・・・やはり、人道復興支援というようなことをやっているんでしょうか。そうだとすると、イラクの復興に一番役に立つのは、日本で、その次はアメリカで、その次はイギリスでしたかね。

番匠:フランス、イギリスの順です。

○○:フランス、イギリスでしたか、イギリスは低いですね。イギリスが低いというのは、元々イラクとイギリスは密接な関係が昔からあったんですけれど、ちょっと意外な感じがします。あとは相当な部隊を送っているのが、ポーランドとか、ウクライナだとかですね、韓国も3000人送っていますが、そういう国に対する評価ってどうなんでしょう。その辺がよくわからないのですが・・・。

西尾:イギリスが低いのはわかるんじゃないですか。

○○:わかりますか?

西尾:もともと不信感があって、ひどいことをされたっていう記憶。

○○:そういうことなんですかね。

西尾:でも、韓国なんか上位に出てこないのは不思議ですね。

番匠:まず、16%といいますか、賛成しないこれらの人たちは何かというと、問いかけの仕方もあるかもしれませんが、やはり彼らは決して満足はしないですね。話をしていても、今やってくれていることは有り難う。でも、まだやってほしい・・・と。そういうことがありますし、やはり我々の能力には限りがあるんですね。我々が行った時に、実は唖然としたことがありまして、日本政府が拠出を約束した10億ドルが全部サマワに来ていると思っている人たちがいるんです。あれ結構有名な話になりまして、10億ドルもサマワに入るぞ、そうすると、東京ができる―と。

(大笑い)

 ハイウェイや大きな工場ができて、トヨタが来るのかと。発電所が出来て(笑い)それで、自衛隊が先遣隊で来たんだろうと。いやぁこれは素晴らしい。サマワは儲けたと言うわけですよ。我々がミッションを戴いているのは、水作りですね、医療支援をして、ま、ささやかに道路や学校の補修をする。そこに大きなギャップがありまして、私たちがやったのは、部族のところをいろいろ廻って、貴方達は誤解している、我々はこういう能力なんだからということを言って、彼らの誤解に基づく高い期待をいかに適正値に戻すか、降ろしていくかということです。

 もちろん我々行った当初は人間も揃っておりませんし、装備も届かないので、十分な活動ができません。水の支援も、給水セットというのを合計7個持っていったんですが、は最初は三機から始めました。一日何十トンというオーダーで始めますので、なかなか量も、数も少ない。それをどうやったら早くあげていくかということ。こう下げて、こうあげてこの、バランスをどう取るかということに随分エネルギーを使った。そういう意味ではこの高い期待を持っている人たちから見れば、今の自衛隊がやってくれていることは、期待はずれだとか、なかなか思ったとおりいかないという声があるのは、まちがいないと思います。

○○:でも、早く帰れという、一部にある滞在延長に反対というのはどういう意味なんでしょうかね。

番匠:そこは、例えばサドル派なんかはみんな言っておりますけれども、やはり外国の軍隊、外国が来ているということに対する気持ちがあるのかもしれません。

西尾:でも16%は低いほうですよね。

番匠:8割ぐらい、あるいはそれ以上がということは、ほとんどの人たちが日本を歓迎してくれているということだろうと思います。それと、他の部隊は何をしているかということですが、我々が居るときには、38カ国、我々をいれて38カ国でした。今は若干の後退があって32.3だと思いまけれども、国によってそれぞれです。大きなところでは、もちろん一番大きいのはアメリカで、これは15万人入っています。それからイギリスが約1万、あとポーランドだとか、ポーランドも8000人、一万弱くらい、ウクライナ○○○、韓国がアルビルというところに3000人くらい入れています。これが大口で、日本も結構多いほうなんですね。もう600人というと、クェートの航空自衛隊の200人を加えると800人の規模ですから、結構イラク全体では、ベスト10に入っております。

 それぞれの国が、それぞれのやり方をしていまして、一番多いのは治安任務です。ただ我々のように人道復興支援だけというのもあります。たとえば、タイとかは医療支援をやっておりましたし、当初我々が行った頃には韓国っていうのは医療支援と施設支援というのをやっておりました。今はアルビルという北の方面で治安のほうも受け持っていると思いますが。必ずしも、みんながみんな治安任務をやっているわけではありません。それからもう一つは後方支援というのをやっております。多国籍部隊に対するですね、ウクライナとか、小さな国エストニアだったでしょうか、バルト三国の小さな国も来ているので、あれは何をしているかといいますと、米軍基地の中で、後方支援の仕事をしているところもあります。

西尾:けれど、韓国などが評価されないのはなぜですか?

番匠:あれはですね、あの世論調査自体が去年の秋から今年の正月にかけてやっておりまして、北の方のクルドの辺りまでちゃんと行っているかどうかですね。アルビンとかにということもあるでしょう。多分、あの調査はバグダットでやっているのだろうと思います。ですから、38カ国を全部皆さんが承知しているかどうかというと、そうでもないと思います。(あぁと納得の声)日本というのは非常に有名ですから、そういう数字が出ているのかもしれません。

西尾:いやな情報が入ってこないから、ますます期待されるという。

番匠:我々は飴だけで、鞭がありませんから。
(笑い)
 やはり、アメリカとかイギリスとかを見ていて、非常に気の毒だなという感じがしました。

西尾:そうですよねぇ

番匠:犯罪者に対しての対応ってのは、厳しいものがありますし、我々は今回人道復興支援という飴の役目ですので、あの数字を見て、手放しでよろこぶっていうわけには行かない。
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講演 「これでよいのか日本の弱腰外交
――正しい現代史の考え方――」

平成17年3月13日(日)
午後3時30分より90分

会 場:横浜市中区「関内ホール」
   JR関内駅北口下車 徒歩5分
     TEL 045(662)1221
参加費:¥1000
主 催 :教科書を良くする神奈川県民の会
連絡先:大西裕氏 TEL045(575)2603

新刊西尾幹二責任編集『新・地球日本史』1 
産経新聞社刊、発売扶桑社。
  ¥1800――2月28日店頭発売

 
新・地球日本史―明治中期から第二次大戦まで (1)

新刊 「人生の深淵について」
洋泉社刊 ¥1500
3月7日店頭販売
内容目次は次の通りです。

怒りについて
虚栄について
孤独について
退屈について
羞恥について
嘘について
死について
宿命について
教養について
苦悩について
権力欲について

著者覚書
解説 小浜逸郎 

番匠幸一郎氏を囲んで (五)

○○:独自な情報網というのはあるのですか?自衛隊独自の。

番匠:えぇ、まぁ詳細はお許しいただきたいんですけれど、我々自身でもいろんなことを・・・卑近な例で言えば、我々が使う現地の人たちがたくさんおります。通訳もおりますし、現地雇用の警備を補助してもらう人たちとか、いろんな人がおりますけれど、そういう人たちから聞く話はやはり有益なんですね。例えばですね、最初のころ、ハッと思ったのは、銃声がしょっちゅう聞こえるんです。毎日のように。バリバリと。最初の頃は、そのつど、ハッとこう、緊張していたんですけれども、だんだん教えてくれるんですね。今日はどこどこの村で葬式をやるので、何時ぐらいから銃を撃つから、と教えてくれるんです。

西尾:ほぉ~、それは空砲を撃つんですね。

番匠:空砲じゃありません、彼らは。実弾を使うんです。

西尾:でも、空へ撃つわけですね。

番匠:まぁ、空へ撃つこともあるでしょうし、どこへ撃つかわからないこともあるんです。
でも大体ですね、セレブレーションファイアーっていうのは、空へ撃ちます。それに曳光弾が入っているときは夜に撃ち、そのときは、ピンピンと何発かに一発くらいは見えるんです。彼らは冠婚葬祭には銃を撃ちます。

西尾:嫌だねえ。
(笑い)

番匠:そういうのは、大体わかっています。それと、魚とりで、手榴弾使ったりするんですね。突然、ドッーと音がして、ドドーンと爆発音がして、榴弾とか、砲弾とかの破裂音というのは、一種の雰囲気がありますので。と、あれは今日は魚採っているんじゃないかと。

西尾他:(笑い)いやぁ~

番匠:そういう、なんて言うんでしょうか、あまり緊張しなくていい銃声と、あとそういうものの網にひっかからない銃声があるわけですね。これは、だんだん分ってきたのは、そのセレブレーションファイヤーの類とか、あと、定期的に何時頃に撃つ銃ってのは、どこかの警備の交換の時に、武器のチェックのために○○ですとか、そういうもの。あと銃声とか、砲弾の音のあれで、訓練のやつとか、不発弾処理をしている音とか、そういうことで、だんだん消していって、それにひっかからないものは、非常にやはり怪しい、というようなことを察知するようになりました。ですから、やはりデーターの蓄積。

西尾:自衛隊も音を出すことはあるんですか?

番匠:勿論です。我々も射撃訓練をしておりますし、さっきの映像の中でですね、ピシピシっと、音が入っておりましたでしょ。あれは実はサマワなんです。これをお伝えしますが、私は隊員達にですね、全部持ち帰るなといいました。標的を。自衛隊は結構上手なんですよ。射撃訓練が終ったら標的がぼろぼろになるんです。このぐらいの標的が。それをわざわざ置いてくるんです。

(大笑い)

番匠:見ていますから。薬莢拾いにくるんです。子供達とか。これまた自衛隊はですね、100パーセント全部というほどじゃありませんが、薬莢撃ったやつをちゃんと拾って帰るんです。彼らは集まらないわけですけど、何かパーッとやってくるんです。薬莢を拾おうと思って。○○○○遠くで見ているわけですから。射撃を、自衛隊がやるやつを。真ん中にばさばさ入ってくるんです、それを見せると。自衛隊結構撃つし、当るぞと。と思わせようという・・・・。

西尾:いいことですね。

○○:情報というのはやはりアメリカとか、イギリスとか、オランダとかとの関連で、○○ですか?

番匠:そりゃもう、ありとあらゆる所からいただくし、我々自身も 集めるし。

○○:分析して。

番匠:そうですね。

3月の講演と新刊

講演 「これでよいのか日本の弱腰外交
――正しい現代史の考え方――」

平成17年3月13日(日)
午後3時30分より90分

会 場:横浜市中区「関内ホール」
   JR関内駅北口下車 徒歩5分
     TEL 045(662)1221
参加費:¥1000
主 催 :教科書を良くする神奈川県民の会
連絡先:大西裕氏 TEL045(575)2603

新刊 「人生の深淵について」
洋泉社刊 ¥1500
3月7日店頭販売
内容目次は次の通りです。

怒りについて
虚栄について
孤独について
退屈について
羞恥について
嘘について
死について
宿命について
教養について
苦悩について
権力欲について

著者覚書
解説 小浜逸郎 

番匠幸一郎氏を囲んで (四)

木下:それに関連することですが、今まで迫撃弾が打ち込まれたと聞いていますが、怪我をなさった・・・・・・・宿営地から出て、事件が起こったということもありますでしょうか。そういう状況下で番匠隊長以下皆さんがですね、かっちりとやってこられたということが一番で意義が大きかったのではないかと思っておりますが、それと同時に、県知事さんとかですね、地元の方と非常に友好関係を築くという努力をなさいましたよね。そのことがやはり、プラスになっているのではないかと思われます。・・・・・・

番匠:部隊の隊員たちを無事に連れて帰るというのが、私の大事な任務でしたし、向こうにもちろん、戦闘行動に行っているわけではありませんので、引き金を引かないに越したことはないというのは当然です。私は直接間接、いつも二つのことを考えておりました。一つは直接的に我々自身が、隙を見せないで、狙われないようにするということです。結構ですね、狙われそうな雰囲気というのを感じることはあるんですね。我々にというのではなくて、隙を見せている所というのはやられるんですね。同じ軍隊、或いは自衛隊のような部隊でも、狙われる部隊があるんです。それはきっと隙を見せているだろうと。

 それから○○○中をばんばん、通っているわけですが、襲われるところは警備が薄いところがやられるんです。それは全員がテロリストじゃなくて、強盗の類がいっぱいおりますから、そうしたら、狙いやすい所というのは、狙ってくるわけですね。だから、我々は狙ってきたら撃つぞと。だから私、隊員たちに言っていたのは、いつでも撃てと。(笑い)必要だと思われるときは引き金を躊躇なく引けと言ったのは、やはりそれで躊躇してしまったら、自衛隊は撃たない、自衛隊は武器を使わないと思われたとたんに、やられるわけです。そこはですね、自分達自身、私は隊員には、イラク中で最もハードターゲットになれと言っていました。やられない存在。

 先ほどのSU作戦もですね、左手で○○やっていました。右手は離すなと。右手は引き金に絶対にかけておいて、離すなと。それから、我々は外でペットボトルを飲まないです。ペットボトルを飲むということは、目が離れるんですね。だからキャメルバックという背中に背負う水筒、リュックサックみたいなものを持っていまして、ここにこういう口があってですね、前を向きながら口にピッといれるんです。そうして水を飲む。それくらい引き金を持って、警戒心を捨てないというようなこととか。引き金を我々、ロゥ・レディという下向きの銃の向け方をしています。その時に、見ていると、もう見るだけで安全装置をつけているかつけていないか、弾倉をもちろんいれていないとこれなんか絶対、やられますね。ちゃんと弾倉入れている。それから、手をこうやって引き金に添えている。武器の向きと、目の位置は必ずこうで、こんなことをやっている部隊だと隙がでている。そういう、どこからも隙を見せないハードターゲットたれということが、一つであります。これは宿営地の○○も含めてです。

 もう一つ、間接的に我々がやはり、友好○○に置くということですね。自分達の周りが敵意の海だったら、非常に危険が高まりますけれども、先ほども学校訪問だとか、鯉昇りだとかロブ族との付き合いだとかいいましたが、これはやはり、自分達の周りを味方にしていくということが、非常に安全上大事だということです。

 ですから、直接アプローチと、間接アプローチと言うんでしょうか、そういう両方をやりながらですね、安全というものには、格段の配慮をしていると思います。

西尾:でも、にも関わらず、テロという奴は、だからやるという、つまり、地域と親和関係が高い、それを壊してやるという、逆のものすごい論旨、考えられない論理を持っていますよね。そういうことでの危機感、手に負えないテロ、テロは合理的な根拠で動かないで、最もイラク国民に愛されている日本軍だから、だからやってやろう式の発想ですね。それに恐怖は感じなかったですか。

 番匠:それはおっしゃる通りです。大別してですね、どういう脅威が我々にあるのかなと。大体五つくらいかなといつも思っていました。一つはアルカイダ系のテロリストですね。これはまさに、自爆テロで、恐怖感というのを超越してですね、来るという。もう一つはこれは特に北の方で、バチバチやっていますけれど、旧バース党、フセイン残党と呼ばれる人たち。これと関連しますけれど、イスラム過激派と呼ばれる人達。それからシーア派の中で暴れていたのが、サドル派と呼ばれる人達。あとですね、強盗の類です。
(笑い声)

 犯罪者集団、そうなんです、我々のいる所もですね、もう武器の密売だとか、麻薬密売だとか、もともと犯罪者が治安機関の能力が落ちたものですから、わっと、出てしまったんですね。バグダッドなんかもかなりそうらしいです。この連中が強盗の類から含めて、悪さをするんです。あと、先ほど申し上げた、上の四つからお金をもらって悪さをするということもあり得るわけです。ですから、いろんなことにアンテナを張りながら、如何なる脅威に対しても、隙がないように。そうすると今先生が、おっしゃるように、二番目から五番目までというのはある程度、雰囲気でわかるんですけど、アルカイダ系のテロリストは自分達の体に爆弾を巻きつけて来て、引き金ぼんとやる、自爆するような、或いは、ゲートに爆弾をいっぱい積んだ車を突っ込ましてどんとやるというようなことをやる。

 実際我々が入る直前に、シリアのイタリア軍の基地に自爆テロが来てですね、十何人亡くなりました。そういうこともあるもんですから、これは徹底して、まず情報収集をし、それから宿営地をそういうことに対して脆弱にしないようにして、ということを、色々考えております。でもこれ、100%防止するというのは、大変に難しいとは思います。

(注)○○はテープで聞き取れなかった言葉です。

※ロウ・レディ(安全)ポジション-ハイ・ロウ・スルー等の警戒待機ポジションのうち、最も視線をさえぎることが少ないと言われる(陸上自衛隊では一般的な呼び方ではないとのこと、防大出の方か、むしろサバイバルゲーマーなどが好んで用いる呼び方だそうです-アメリカの影響 らしい)。
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監修・福井
写真・陸上自衛隊第8師団