2月10日に群馬県前橋市の正論懇話会で、「国家解体をどう阻止するか」といういささか仰々しいタイトルを振り翳した講演をした。
皇位継承問題、南西諸島と台湾をめぐる中国との摩擦、男女共同参画や過激な性教育のことなど多方面にわたる話題だったが、天皇制度についての数少い私の発言が講演の冒頭でなされている。
11日の産経新聞の講演要旨にこの冒頭の部分だけが取り上げられた。
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日本解体に警鐘
群馬「正論」懇話会 西尾幹二氏講演
第6回群馬「正論」懇話会(会長・金子才十郎群馬県商工会議所連合会名誉会長)が10日、前橋市内のマーキュリーホテルで開かれ、評論家の西尾幹二氏が「国家解体をどう阻止するか」と題して講演した=写真。
西尾氏は、国家解体につながる動きとして女性天皇論の台頭、防衛政策の無策、ジェンダーフリーの流行を指摘。「日本は解体してしまっているという危機感を抱いている。手を打たないと間に合わない」と訴えた。
特に、「女性天皇」容認論について、「天皇は、万世一系で男系でなければならないとある。過去の女性天皇は中継ぎ役だった。歴史の事実を覆していいのか」と強調。「(女性天皇が誕生すれば)天皇制否定論者が、『万世一系ではない』と言い出すはず。30年後を憂慮する」と述べた。
産経新聞2月11日付 2面
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翌日、畏友小堀桂一郎君――私の大学時代の同級生であることは知る人は知っていよう――から、心強い応援だという葉書をもらった。
私は小堀君ほど天皇とその制度について詳しい知識を持たない。普段法制的な面にはあまり関心もない。私がどう考えているかを多分彼はそのころ知らなかったし、自分と相容れないと思っていたかもしれない。
前橋に行ったのは2月10日で、それから丁度一週間で『正論』4月号の拙論「中国領土問題と女帝論の見えざる敵」(短期集中連載第二回)を書いた。
例のライブドアがニッポン放送株の買い占めを始め(2月8日)、マスコミが騒然となっていた頃である。
『正論』4月号が出た3月初旬に小堀君から良く言って下さったという感謝と喜びのことばを綴った書簡をいただいた。彼が最近同誌5月号でこの問題をあらためて歴史を掘り下げて徹底して論じたことはご覧の通りである。私にその根気も知識もないが、私には私に特有の論法がある。今の日本人を説得するにはどうしたらよいか、という文章上の戦略がある。
前記「中国領土問題と女帝論の見えざる敵」で皇位継承問題について言及したのはわずか20枚弱だが、「女帝でいいじゃないか」という小泉首相と同じような考えの人が日本国民の大半であることを私は知っている。
保守層でもそうである。「路の会」でもそうだった。天照大神が女神なのだから女帝でいいのではという人さえいた。そういう人々を前提にして説くほかないというのがこのデリケートな問題のむつかしさだと思っている。
だからこのテーマに関しては頭ごなしに、叱りつけるような調子で言っても説得力がないのである。未来への不安と予想を先取りするようにして、手遅れの意識を共有しながら語りかけるしかないのだ。
私の言わんとする本意はどうか4月号の拙論を見ていただきたい。また説き方にすべて賭けた論述の仕方に目を向けてほしい。たゞ、丁度これを書く直前に、私は前橋で同じテーマについて簡略に語った。本当に簡略に、である。
皇室問題についての私の発言は少い。たまたま乞われて講演録をまとめたので、この部分だけ掲示することとした。